今朝の「天声人語」でサリンジャーが亡くなったことを知った。彼の「ライ麦畑でつかまえて」は永遠の青春の書だと書かれている。しかも「ライ麦・・」の野崎孝の訳が光っているとも。サリンジャー、まだ生きていたんだ。91歳だった。新聞によると彼は寡作だったそうだ。
「ライ麦畑・・」は原文で読んだ。だから訳本は知らない。原書購読会の若手の推薦で、この本がテキストとして選ばれたのだが、青春をはるかに過ぎて読んだので、若者の大人への反抗、孤独など、若者独特の屈折した心理は理解は出来ても、共感しなかった。むしろ用語の使い方に、当時の若者言葉を取り入れていたからだろうが、汚い文章だと好きになれなかった覚えがある。好きでない作家だから、彼の経歴を事細かに調べもしなかった。たとえ彼が多作であったとしても、他の著書を読もうとは思わなかったろう。
青春の書は青春に出会ってこそ青春の書だろう。私にとっては「チボー家の人々」がそれ。高校生のとき読んで、人生観を変えるほど、影響を受けたものだが、もちろん暗記するくらい何回も読みかえした、が、大人になって読み返して、なんだ、甘いよ、一言の下に切り捨ててしまった。
しかし、没頭した若い日の熱い思いはなつかしく、それはきっと私の成長の軌跡に埋め込まれているに違いない。
おそらくサリンジャーを読んで共感した世代も同じ思いなのだろう。