熱海のMOA美術館で開催されている三代徳田八十吉展を見に行ってきた。会期は長かったのだが、近くだといつでも行けるからと、やれ雨だ、暑いの、寒いの、と言ってなかなか腰を上げない。そうこうしているうちに行きそびれてしまうことが多い。週間予報を見ると、今日は晴れ、そしてまた雨が続く予報。思い切って出かけてきた。
久しぶりに町外へ出た。吉浜の海水浴場は海水浴客の姿もなく、波は静かに砂浜をぬらしていた。きれいだった。ほんと、久しぶりの外出、と笑っている。仲道を通っていく。こっちはもっとお久しぶりだ。
確認でMOA美術館のHPを見たら、ネット割引があった。1600円のところ、プリントしていくと1400円だというのである。アイスクリーム代が出る、と2枚プリントして持っていった。でも高齢者割引で1200円だったので、これは役には立たなかった。「高齢者割り引きなんて、なかったよね」と係りに言うと、新しく出来たのだという。そうだよね、いつも1600円払っていたもの。3階からエレベーターで2階に降り、メインロビーを歩いていくと、いつも信楽の大甕が置いてあるところに紅白梅図屏風がおいてあった。あら~、紅白梅の図だ。え~、こんな明るいところのおいていいの?いつも奥の部屋でみるから、落ち着いているけど、明るいところで見ると、金箔が光って見えるよ、胡粉の白も浮いている、情緒がない、なんてごちょごちょ言っている。近くへ寄ってみると、「複製」と書いてあった。やっぱりね。
今日から、同時展示は茶道具展。見ごたえがあった。長次郎の楽茶碗「あやめ」もあった。茶道具展を見だけでも十分堪能できる。一番奥の部屋は彫刻。なつかしい、聖徳太子の像が迎えてくれた。この美術館に通い始めた高校生のころから、この聖徳太子の像に迎えられていたのだ。当時はまだこんな立派な美術館ではなく、ホールの片隅に作られた展示場だった。熱海美術館と言っていたように思う。それからもういちど移り、そしてこの建物が出来て、MOA美術館になった。
徳田八十吉展は初代、二代の作品もあり、初代が三代を陶芸家にすべく、すべて本物を見せて英才教育したが、三代は伝統的な九谷焼が嫌いで、なかなか打ち込めなかったそうだ。そういう紆余曲折があったからこそ、独自の、といっても九谷の伝統的な手法を発展させて、三代のあのグラデーションの世界を確立したのだろう。初代は九谷焼の釉薬の研究に力を注いでいたそうだ。その受け継いだ釉薬をさらに増やし、多くの色彩を生み出した。磁器の表面を丹念に磨きあげ、ピンホールを埋め、さらに磨き、計算した設計に基づいて、丹念に色づけし、何度も焼く、しかも温度を変えて。それによってさらに表現はふくらむ。透明色のガラス釉に貫入が入り、光を反射するので、すこぶる美しい。色彩の中に吸い込まれるような気がする。
三代も亡くなり、今は娘さんが四代をついでいるようだ。四代の作品はまだ見たことがない。
パンフをここに載せようと思ったのだが、パンフの写真は透明感がないから、美しくない。で、割愛。