大分前になるが、茅ヶ崎のNさんから年末年始のご挨拶を遠慮するはがきが届いた。みるとお連れ合いがなくなった旨が書いてあり、「最愛の夫(ひと)みまかりし10月の朝に」というのがあった。その「最愛の夫」という言葉にとても胸が痛んだ。Nさんのお連れ合いは間接的にしか存じ上げないが、おしどり夫婦で、いつもNさんを支えていた人だとは知っていた。Nさんは元茅ヶ崎市議で、彼女が選挙に出るときからの仲間である。彼女は茅ヶ崎の市民派議員の草分け的存在で、茅ヶ崎の市民派議員はうらやましいことに、次の世代へとスムーズに受け継がれている。夏に久万高原町の町長選にチャレンジしたKさんはその仲間だった。Nさんが退職したのは私とあまり変らなかったと思うが、退職しても活動はずっと続けている。でも退職後は会うことも少なくなっていたので、お連れ合いの病気はまったく知らないでいた。毎年、年賀状に山登りの話が書いてあった。Nさんは登山が好きである。夫婦そろって山登りを楽しんでいたと思う。今年の年賀状に、夫が山登りが出来なくなったと書いてあったと思うが、それでも彼女は登っていたから、お連れ合いは足腰を痛めて登れない位にしか思わなかった。
「最愛の夫みまかりし・・」に胸を痛めて、はがきを出した。時は過ぎて今日、Nさんから彼女が主催している「息吹292号」を受け取った。夫の病気のことが書いてあるからと一筆箋にしたためてあった。「息吹」に書いてあるタイトルは「福祉タクシー券と特定疾患について」、これはお連れ合い自身が体験し、しかも調べて残した文章を読んでの、彼女の問題提起なのだ。かいつまんで紹介する。
彼女のお連れ合いは「再生不良性貧血」という難病(特定疾患)だった。病気が分かったのは2007年10月。おかしいと言って病院へ行くと即入院となった。健康な人の血小板は1立方mm中15万~40万個あるが、お連れ合いは万より千の単位の時の方が多く、最後は1000しかなかった。10万をきると難病になる。難病、特定疾患に認定されると、医療費が安くなる。週に一回の輸血をしなければならないが、その治療費が3万円。そこで医師に特定疾患医療受給者証をもらうために申請書を書いてもらった。
2008年5月、具合が悪くなり救急医療センターに連れて行くと、血液の中に敗血症の菌が見つかり、「どういう最後を迎えたいかご家族で話し合っておいてほしい」と宣告された。こんな状態ではもう自分で運転できないので、娘に頼んでいたが、そうばかりはできない。すると「タクシー券がもらえるのではないか」と夫が言った。そこで夫自身が高齢福祉課に聞くと「障害者でなければだめだ」と言われたが、障害福祉課に問い合わせるともらえるようだから、もらってきてほしい」と言われ行くと、すぐにタクシー券を出してくれた。
福祉タクシー制度の対象者は
1:下肢・体幹・視覚・内部障害の個別等級が1・2級の方
2:知能指数35以下の方または保育手帳A1・A2の方
3:特定疾患医療受給者証を所持している方
タクシー券は初乗り料金(基本料金)分が助成される。
お連れ合いははじめは自分でタクシーを頼んで通院していたが、あるときタクシーの運転手が初乗り料金と運賃の1割を引いてくれた。そこで特定疾患の患者も障害者並に運賃の1割引も受けられるのではないかといい、Nさんが障害福祉課に聞きに行った。二人の職員に聞いたが答えは「ノー」だった。「特定疾患は該当しない」と言うのだった。普通ならここで「そうか」と納得してしまうところだが、Nさんは調べ始めた。ここから自治体の職員とのやり取りや、県保健所の職員とのやり取りが事細かく書いてあるのだが、その部分は割愛する。また心を込めた介護の様子も割愛する。
神奈川県の「特定疾患医療受給者の更新手続きをされた方へ」のしおりには、問合せ先は県保健福祉部健康増進課となっていたので問い合わせると「すべてのタクシーではありませんが、距離運賃の1割引きが適用されます」という答えだった。要するに窓口となる自治体の職員の多くが、知らないで済ませてしまっているということだ。せっかくある制度を役に立たせるようしなければいけない。
もちろん市の担当にも知らせた。タクシー会社もタクシーの運転手にもこのことを徹底させると言う回答をもらった。Nさんのお連れ合いは亡くなってしまったが、後に続く特定疾患の人のために役立てたいと言うのがNさんの思いだ。
特定疾患はかなりの数があるが、そのうち45が公的支援を受けられるということだ。
さて、ウチの町はどうだろう?職員は特定疾患を理解しているだろうか?こういう制度を知っているだろうか?また近辺のタクシー会社はどうだろう??
◇参考:
難病センター
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/search_50_i.htm
神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/tokkan/index.html