朝のうちは晴れていて暖かかった。
「家の中でストーブたいているより出かけて光を浴びた方が暖かくていいよ」「そうだね、出かけようか、MOAに紅白梅の図を見に行こうか。この時期、まだ展示してあると思うから」「そういえば久しくお目にかかっていないね。じゃ~そうしよう」と言っているうちに空が曇ってきた。「寒くなってきたからやめよう」てなことで、外出はやめにした。
「あんこを作って饅頭でもつくろうか。」そこで小豆を火にかけた。あんこなら火にかけても見張っている必要はない。豆が煮あがって、はたと気がついた。漉し袋が穴があいていたので処分してしまったことを。さらしを出して、手ぬぐいの長さに切って、手縫いで縫い始めた。針を持つことなんて、ネコの首輪を作るときだけだ。ぶすくさいっていると「ミシン、倉庫にあるから持ってきてあげようか」「あのミシン、もう使えないと思うよ。使えたとしても、ミシンを出してもこれだけ縫ってすぐしまうんなら、手で縫った方が早いよ。」ネコの首輪より早いかもよ」袋縫いで仕上げた。袋をいったん熱湯で煮た。「泥縄とはこのことだね、これでも洋裁学校に行ったんだ」と笑いながら。
そうだなぁ、日本人が針を持たなくなってかなりになる。大量に安くて品揃えのあるい既製品が入ってはきているからだ。食品もそうだけど、これも労働力の搾取だなぁ。しかも日本の生産力は落ちているから、国内は空洞化が起こっている。たしか中南米でも安くてむしろ縫製のいい中国製品が出回って、縫製工場がつぶれ、職を失う労働者が増えていると聞いている。これもグローバリゼイションの結果かねぇ。
小豆餡はよくつくる。餡は漉し餡の方が好きだ。この餡を使って、いろんな和菓子を作っている。一時、栗の甘露煮を使って、栗蒸羊羹を作っていた。桃山、黄身時雨なんかも作った。ただし小豆餡は作るけど、白餡は作ったことがない。生餡を買ってきて、砂糖を加えて練って使っていた。あるとき、小豆の生餡も買って使ってみた。美味しくない。小豆がよくないんだ。なら、白餡も白インゲンを使って自分で煮た方が美味しいのだ出来るだろうと、それ以来白餡の必要なものは作っていない。餡は練って冷凍しておけばいいんだな。
饅頭つくりは明日にしよう。よく熱海の仲見世で、見えるところで温泉饅頭を作っているのをじっと眺めていたものだ。小さく切った粉の生地に餡を包んで、くるりと包む、ただそれだけのことなのだが、その手際のよさに見とれていたのだった。自分で作るとそうははいかない。出来上がったものは田舎饅頭のように、薄いところ厚いところ、それぞれで美しく仕上がらなかった。生地がゆるいと扱いにくいし、硬すぎても伸びない。久しくやっていないから、また田舎饅頭になってしまうかな。小麦饅頭にしようか、それともじょうよ饅頭にしようかな。