NHKの「インドの衝撃」を3夜連続で見た。一話はIT関連。インドの頭脳がこの分野で飛躍的に活躍しているのは知っている。シリコンバレーの3,4割がインドの頭脳であることも、教育の分野でも驚異的な頭脳を使う教え方をしていることも知っている。
日本では小学校で九九を教えるが、インドでは20まで二乗を教えている。さらに100までということも聞いている。あるとき75×75の計算を7と5にわけ、5×5、25そして7に一を足して7×8で56、それを前に置くと5625。75の二乗になる、とやっていた。65も、85も、末尾が5で終わる数はこの方式でできる。
だけど、76の二乗はこうはいかない。なんか方式はあるはずだと考えていたら、Papasanが(a+b)の二乗だと言った。確かめてみると確かになるが、そんな面倒なことをするくらいなら、二乗した方がいい。なんか法則がないかな。
衝撃を受けたのは2話。消費がテーマだった。消費のターゲットがムンバイであった。ムンバイは旧名ボンベイ、古くからインド経済の中心的な地である。ここにターゲットをしぼったことは当然といえば当然だが、私としてはムンバイはスラムの多く、その支援をしている人たちとつながっているので、え~という思いもある。
名前は忘れたがエール大学出の28歳の女性がビッグ・バザールのマネージャー。彼女の論文BRICが衝撃を与えたというのだ。Bはブラジル。Rはロシア。Iはインド、Cは中国。これらの国々は先進国を抜いて21世紀に飛躍するというのだ。
彼女の計算だとインドの成長率は年8%、購買力はもっと伸びる。というのはかつては一部の高所得者と大部分を占める低所得者、そしてその間に少しばかりの中間層があった。この中間層の幅をすこし広げるだけで、なんせ11億の人口だから、利益は莫大になる。そういう発想でビッグバザールを打ち立てたのだ。インドにはない、清潔で品質が良く、品揃えの多いスーパーマーケット。中間層の人たちはこぞって買い物に出かけている。生活を楽しむために買い物をする、そういう意識が夢となって、労働にも弾みがついていると彼女は言う。
おかしかったのはゴミの片付け。インド社会の、インドに限らずアジアの諸都市の、あのゴミ処理を、意識改革できれいにする。これには現地を知っていただけに笑ってしまったが、これはきれいになるだろう。
ムンバイで数店舗、インド各地でもビッグバザールの数は増え、あたっている。スラムの横にもビッグバザールを建設している。売上幅は小さくても、数で勝負だと彼女はいう。たしかに低所得者の数は絶対数が大きい。
商売としては計算は正しいのだろう。ただ心配だったのは、購買力に目覚めた中間層が、物質的豊かさを夢と思っていることだった。かつての日本のように。していること、考えてることが、かつての日本人と同じであることが、恐ろしく感じられた。物のあることが、金のあることが幸福?、それに警鐘を鳴らすようにガンジーを引き合いに出して映画が大当たりだとも。しかし・・・。それと個人商店の衰退、ドーナツ現象etc.、日本の抱えている問題も後を追うだろう。
私達は1987年のスライド作品で、「心が育っていないよ。あぶないよ」と危惧を訴えたが、実際に心が育っていない、思いやりのない、こんな社会になってしまった。それも11億屋12億の、人口の多い国で、同じ現象になったらどうなるのだろう。
3話は政治力。外交手腕を取り上げていたが、これには感心しなかった。相変わらずだと笑ってしまったのは、選挙のための利益誘導。与党が女性達にサリーを贈った話。貧しい人たちへの買収工作のようだ。
インドはもともと農業国だ。しかも地方と都市との格差は大きく、地方の貧しい農民は教育も、インフラ整備も行き届かず、うち置かれている。この実態は一応知っている。インドが飛躍するには、多数を占めるこういう人たちの生活を引き上げる政策が必要だろう。