一般に都市計画法では議会の関与は一切認められていないが、まちづくり条例では住民の代表である議会の決定権を重要視している。議会が住民の意に背くことはないと考えられているからである。ところが、今のところ、この議会の関与がむしろネックになってしまっている。
都市計画には建築基本法がある。これはごくごく単純な法律である。しかも平面上での法で、日本国のように山あり、谷あり、平野ありのでこぼこの地形にはなじまないものである。平面では建蔽率、容積率さえクリアすれば、建築許可になってしまうのだが、実際問題として、でこぼこの地形では日照や風圧、景観といった問題を引き起こす。そこで各自治体が知恵を絞って少しでも住民の生活環境が不利にならないように考え出したのが、条例である。建築基準法では建蔽率一本だが、これを逆の発想から空地率として捉えたのが、由布院の考え方である。ことほど左様に各自治体は知恵を絞っているのである。各自治たちの条例を無視したら、日本は地方のよさは失われてしまうだろう。
もういちど簡単に経緯をまとめてみる。
真鶴町の特産は、小松石という石材であり、漁業であり、一時みかん栽培でも繁栄したことがある。そのみかんが低迷し、さらに後継者の問題などで農地を手放す人が増えた。さらに歴史をさかのぼれば、敗戦直後の農地改革もかかわっている、と問題提起する人もいる。1973年、用途地域指定の作業のとき、先行きに不安を覚えた農家たちは、風致地域の網を嫌い、白地のまま残すことを要求した。その中にがけ地もあった。地目は原野か雑地であった。バブルのさなか、そこに目をつけたのがディベロッパーである。。普通なら売れそうもない土地が、といっても元が安い土地だ、そんなに高くはないが、でもこんなところが売れるならといった思惑が持ち主にはあったのだろう、買い占められていった。そしてバブル時、あちこちに建ち始めたリゾート・マンションに対して建設反対運動が起きたのはいうまでもない。金の力に翻弄され、苦悩する町、住民。そういう辛い経験を経てつくられたのが「まちづくり条例」である。
まちづくり条例はここに。
http://www.manazuruinfo.jp/index.htm
ただ町民にとって錯誤であったのは、まちづくり条例があれば、これで万全と思い込んでしまったことである。確かに条例に従って協議が進められれば、とてつもなくひどいものは建たない。町民も納得できる建物になるはずである。ところがまたしても頭越しの手を使われてしまったのだ。恐れているのはこれが突破口となったら、次々とマンション建設が押しかける危険性があることだ。私が思い出すだけでも、岩に限ってもも4つの計画があった。
さて、環境企画設計こと、ヤマザキが次にとった手は、公聴会でのやりとりを自分の都合のいいようにまとめて議事録として議員たちの送ったのである。もう、ほんとに公聴会に出席した人なら、なにをと言いたくなるようなまとめである。私のことは共産党議員とわざわざ肩書きをつけてくれてある。しかも政治家なら、そのくらい勉強せよとまで言っている。議員の発言者はひとりもいなかった。もちろん私は共産党員でもないし、現職の議員でもない。町に聞けば発言人のことぐらい正しく教えてくれただろうに、誰に聞いたのかわからないが、それでもういい加減であることがわかるというもの。
「まちづくり条例」なんかどうでもいい、と言い切る議員もいる。といっても彼らがヤマザキと利害関係があるというつもりはない。あるいは何かあるのかもしれないが、それは知らない。むしろこれは合併騒動の後遺症だと捉えている。もちろん、不動産関係の議員たちはもともとこのまちづくり条例が面白くはない。合併してしまえば、まちづくり条例も反古に出来るという思惑があったとも聞いている。とはいえ、不動産やにしたところで、真鶴の土地で生計を立てているわけである。真鶴という町があればこそである。真鶴がかわいくないわけがない。
こういう議員たちは町がよんだ弁護士たちの話も聞く必要がないと部屋から出て行ってしまったそうだ。反対でも、それなりに理由があるのならかまわないが、説明も聞かないで外に出てしまうとは、失礼だし、恥ずかしい。要するに、「まちづくり条例を守れ」とマンション建設反対を打ち出している人たちが、合併反対派が多いというのが気に入らないのである。子どもみたいだが常識とか良識とか、もう論外なのである。まこと合併問題が残した傷跡は大きい。もちろん、漁夫の利、ヤマザキ側には絶好のチャンスである。いくら憲法違反だ、とぶち上げても、町、議会、町民が一丸となって立ち向かったら、ヤマザキとても手は出せない。真鶴にとってはまことに不幸な話である。
ところで、環境企画設計について調べてみた。大手の建設会社が新規の取引をするときにする信用調査で調べてもらったのだが、会社の履歴は載っていない。マンション建設予定地も宝山建設だ。宝山建設は横須賀にある建設会社で、同じ番地に「ヤマザキ」という会社も存在する。代表者は山崎進ではないが、二つとも山崎姓である。ただし宝山建設所有のこの赤浜の土地は2億2千万の根抵当がついている。
公聴会でも何人から指摘された工事着工前に出す標識はいまだに現場に立てられていない。
一方、町民の動きとして、道沿いには「マンション建設中止せよ」「町の水はやらない」「景観を守れ」「まちづくり条例に従え」といった看板がずいぶん目立つようになった。