2020年2月17日財務省発表の2019年10月から12月のGDP=国内総生産は大幅なマイナスに転じ、2020年3月17日公表の民間エコノミスト分析の2020年1月~3月までのGDP伸び率予測では物価変動除外の実質は年率換算でマイナス2.89%という数字が提示された。
このマイナス2.89%は消費税率引き上げの影響で5期ぶりにマイナスとなった去年10月~12月をさらに下回っていて、予測どおりだと、2期連続のマイナスになるという。
2018年初頭から始まった米国の中国製品に対する追加関税措置とそれに対する中国の米製品に対する報復関税措置の米中貿易摩擦が2018年末頃から日本の産業界に影響が出初めて、2018年、2019年の自然災害による経済活動停滞、2019年10月1日からの消費税増税の影響、さらに、〈2019年11月に中国湖北省武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初に世界保健機関 (WHO) に報告された〉(「Wikipedia」)新型コロナウイルス感染症の世界的流行等が日本経済を縮小させる要因となった。
2020年3月27日に2020年度予算が成立。日本の首相安倍晋三は翌3月28日夕方6時から首相官邸で新型コロナ対応や追加の経済対策について「記者会見」を開いた。
安倍晋三「これまでになく厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例のことではありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。国税・地方税の減免、金融措置も含め、あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」
「あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」・・・・
安倍晋三「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです」
「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく」・・・・・
マスコミ記者との質疑応答でも、「強大な政策」を言い、「V字回復」を確約している・
安倍晋三「先ず、昨日、来年度予算が成立しました。先ずはこの中の26兆円の事業規模の経済対策を一日も早く執行していきたいと考えています。そして、景気を下支えしていきます。その上で、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じていますが、そのマグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」
「マグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」・・・・・
日本経済の地盤沈下の程度を地震の規模を示す「マグニチュード」という言葉で譬えている。
安倍晋三「感染の拡大が抑制された段階において、旅行や運輸、外食、イベントなど、大変な影響を受けている方々に対して、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたい。そして、正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」
「感染の拡大が抑制された段階において」、「大胆な需要喚起策を講じ」、「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」・・・・
この「V字回復」、冒頭発言では「一気に日本経済をV字回復させていく」と言い切っているのに対して質疑では、「V字回復を目指していきたいと考えています」とかなりトーンを下げている。とは言うものの、「V字回復」を将来の目標に据えた。
勇ましい言葉、聞こえのいい言葉が信用されるのも、信用されないのも、過去の実績が物を言うことになる。過去の実績が有言実行性、あるいは有言不実行性のいずれかを占う。
当然、安倍晋三が日本経済を「V字回復」に持っていく第一番の動機として「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように」と、そこに願いを置いている以上、過去、アベノミクスによって国民に「笑顔」を与えていなければならない、当然の理屈となる。
第2次安倍政権発足以来、アベノミクスによって国民に笑顔を与えることができたが、米中貿易摩擦、自然災害、消費税増税、新型コロナウイルス感染症の世界的流行等々によって日本経済が逼迫し、国民から笑顔が消えてしまった。その笑顔を再びのアベノミクスによって取り戻してやろうじゃないか。そうミエを切ったことになる。さすが、安倍晋三。
国民から笑顔を奪った大きな要因の一つを米中貿易摩擦に置いたとしても、このことが日本の経済に影響を与え始めたのは2018年末頃からであり、もう一つの大きな要因となっている新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって日経平均株価が大きく下落したのは2020年1月末からである。
つまり2013年初めから2018年末までのアベノミクス6年間に関しては米中貿易摩擦にしても、新型コロナウイルスにしても、国民から笑顔を奪う要因とはなっていないことになる。
2018年、2019年の自然災害にしても、アベノミクスの2013年から2020年までの8年間の予算で「公共事業関係費」は毎年7兆から8兆円規模を組み、この全てを防災・減災に回しているわけではないが、防災・減災に注力していたのは事実であるし、この内の「治山治水対策予算」は6年間合計で7兆円、「災害復旧費等」の予算は同じく2013年から2020年までの8年間合計で4兆4千億円近くを注ぎ込んでいる(2019年と2020年は決算額ではなくて、当初予算額)。
当然、自然災害に対する経済損失を公共事業によってそれなりにカバーしてきているはずで、公共事業費1兆円はGDP1兆円の押上効果があるとされていて、GDPに対しても貢献しているはずで、自然災害をアベノミクスの好循環を阻害する要因とする正当性はない。阻害要因として正当づけるとしたら、安倍晋三だけではなく、安倍内閣、自民党、公明党共々に「防災だ、減災だ」と大騒ぎしている割に公共事業に注ぎ込んでいるカネ相応に経済効果を引き出していないことになって、公共事業政策自体にどこか欠陥があることになる。
東日本大震災の被災地に於いて今以て引きずっている芳しくない経済状況はいくら公共事業にカネを注ぎ込んでも、人を戻す政策を欠いていることが原因となっている現状であるはずだ。東京圏一極集中が加速している昨今の状況にあって、余程の強力な人口回復策がなければ、東北に人を戻すことはできない。だが、安倍晋三は口先だけで終わらせている。
2012年12月26日の首相就任記者会見。
安倍晋三「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、あらゆる政策を総動員してまいります。これにより、単なる最低限の生活再建にとどまらず、創造と可能性の地としての新しい東北をつくり上げてまいります」
NHKが2019年12月から2020年1月にかけて岩手・宮城・福島の被災者や原発事故の避難者など4000人余りを対象にアンケート(有効回答数48%の1965人)を行った結果、今も被災者だと感じている人が有効回答の62%(1218人)にも上ったという。
〈阪神・淡路大震災から10年で専門家が行った同様の調査では、兵庫で被災者と意識していた人は25%で、岩手・宮城・福島と比べおよそ2.5倍の開きがある。〉と解説している。
今も被災者だと感じている人のうち、「地域経済が震災の影響を脱した」と回答した人が4%に過ぎなかった。〈経済的な復興の実感が乏しい人ほど今も被災者だと感じている割合が高くなっている。〉と解説しているが、安倍晋三が「最低限の生活再建にとどまらす」と言っている「最低限の生活再建」さえままならない被災者の姿が浮き彫りになる。
被災3県共に人口減少に悩んでいる。「創造と可能性の地としての新しい東北」は言葉だけのことで、どこにも見えてこない。2018年10月24日の所信表明演説でも同じことを言っている。
「東北の復興なくして、日本の再生なし。この決意の下に、『創造と可能性の地』としての東北を創り上げてまいります」
安倍晋三の立派な言葉に反する被災地の現状は復興事業とそのカネを生かしきれていない状況しか浮かんでこない。自然災害に対してそれなりのカネを注ぎ込んでいるのだから、アベノミクスの阻害要因とすることも、国民から笑顔を奪った憎き仇とすることもできないはずで、満足とは言えない復興状況は自らの政策推進能力の欠如に原因を置かなければならないはずだ。
では、消費税の2014年4月1日から5%から8%への、2019年10月1日から8%から10%への増税がアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができるのだろうか。
2014年11月18日安倍晋三解散記者会見。2014年4月1日から5%から8%へ増税した消費税は2015年10月1日に10%への増税が決まっていた。
安倍晋三「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました
・・・・・・・・・・
来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」――
再引き上げはない。その理由を「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」
2014年4月1日の5%から8%への増税も前以って分かっていたことで、そのための景気対策を打っていたはずだが、その対策の効果もなく、増税によって経済の維持にブレーキがかかった。当然、その時点から同じ轍を踏まないために2015年10月1日の10%増税に向けて新たな景気対策を構築、3本の矢をさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。
にも関わらず、アベノミクス経済政策を阻害する、これといった国外的・国内的要因がないままに2014年11月18日に至って増税延期を決定することになったのは、アベノミクスに力強いエンジンを備え付けることができなかったからに他ならない。
ところが、2014年11月18日の記者会見で「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない」と確約した力強い言葉をあっさりと反故にし、2017年4月1日引き上げ予定を、2016年6月1日の記者会見でさらに30カ月延期することを公表、2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。
消費税増税を再延期しなければならない程にアベノミクスが脆弱でありながら、2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言、2020年に向けた経済成長のエンジンと位置づけた新たな「3本の矢」を発表までしている。
(1)希望を生み出す強い経済
(2)夢を紡ぐ子育て支援
(3)安心につながる社会保障
ワンパターンのギャグで売っていたお笑い芸人がフアンのそのギャクへの食いつきが悪くなると、食いつきのいい新しいギャグを考え出そうと四苦八苦するものだが、食いつきだけを狙ったのだろう。
以下、説明することがその証明となる。
消費税増税再延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」こと。「リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落していること」、こういったことで「投資が落ち込み、新興国や途上国の経済が大きく傷ついる」ことを挙げたが、一方で、「正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えた」、「この春の高校生の就職率は24年ぶりの高さとなった」、「大学生の就職率は過去最高だ」、「政権交代前から中小企業の倒産も3割減少している」、「中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができた」とアベノミクスの成果を次々と謳い上げているが、これらの成果が消費税再増税で潰え去ってしまう恐れを抱かざるを得ない程にアベノミクスは力強くなかったことになる。
増税再延期を決めるに当たって2019年10月1日の10%増税に向けてアベノミクスの3本の矢をさらにさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。しかし10%増税が、食料品は軽減税率を設けて8%のまま維持していながら、景気の足を引っ張ることになった。アベノミクス3本の矢だけではなく、新3本の矢も国民に安心も笑顔も与えることができなかった。
要するに2014年4月1日の5%から8%への消費税増税も、2019年10月1日の8%から10%への消費税増税も国民から笑顔を奪ったアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができないということになる。
もともと、アベノミクス経済下で国民は笑顔など作っていなかった。笑顔を作っていたのは、株高と円安で潤った大企業や高額所得者だけであった。このことは「アベノミクス失敗の原因は伸びない個人消費、迫られる選択肢は2つ」(ダイアモンドオンライン/ 2020/03/24 06:00)なる記事が証明してくれる。
要約すると、アベノミクスは2%の実質経済成長率を目指していたのに対して7年間の累積で実質GDPは6.4%増加した。
要するに見事な成果と言うことができる。但し記事は、〈設備投資は15.5%増加したのに対し、個人消費は0.4%しか増加していない。〉と断じている。
企業は、特に大企業はと言うことなのだろう、15.5%も設備投資を増加できる資金を有していたが、アベノミクス7年間で個人消費は0.4%の増加のみ。
この両者間の関係構図は格差の状況以外に何も映し出していない。特に大企業は史上最高の450兆円前後の内部留保を溜め込んだ。金融・保険業を加えると、日本のGDPに相当する500兆円を超えていると言う。だが、企業のそういった史上最高の利益は給与の形で社員に、広く言うと国民に十分に再分配されることがなかった。その結果が個人消費が高々の0.4%の増加と言うことになる。
2008年平均給与(男女共) 429万6千円
2018年平均給与(男女共) 440万7千円
伸び率 2.6%
アベノミクスが始まった2013年の男女合わせた平均給与は413万6千円で、男女合わせた2008年の平均給与429万6千円から年々減り続けていって、16万円も低くなったところからアベノミクスは始まっていることになるから、一見すると、給与が増えたように見えるが、長年働いている一般的な給与所得者からしたら、目減り分を取り戻しているような感覚になって、余程の給与所得者でなければ、思い切った消費行動に出ることができないといったことも、個人消費が伸びない要因の一つのなっている可能性がある。
アベノミクス景気は戦後最長の景気期間を迎えた。一方で、大企業や高額所得者の側に立たない限り、大方の見方として、実感なき景気と言われている。当然、安倍晋三が様々な経済指標を駆使してアベノミクスの成果を如何に誇ろうと、国民はその実感のなさに笑顔を見せるどころではない状況に置かれていたことになる。
いわば国民は安倍晋三のアベノミクスの景気政策下では最初から笑顔をつくるどころではなかった。終始笑顔でいることができたのは日銀の異次元の金融政策の恩恵として出現することになった株高と円安で懐を潤すことができた企業、特に大企業と高額所得者ぐらいだろう。
当然、見栄えのしない過去との比較で評価できないという意味で「過去が過去だから」と一蹴せざるを得ないのと同じようにアベノミクスの過去の実績から言うと、安倍晋三がいくら勇ましく「強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」と言おうが、吠えようが、あるいは「V字回復」を実行可能であるかのように見せようが見せまいが、出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるとバッサリと切り捨てる以外にない。
「V字回復」の目的の一つに「全国津々浦々、また笑顔が戻ってくる」ことを挙げたとしても、大方の一般国民はアベノミクスに最初から「笑顔」など見せていなかったのかだから、これも出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるに過ぎないとしか言い様がない。
安倍晋三は自分が口にすることは全て現実の形にすることができるかのように広言する傲慢なところがあるが、自分で自分を偉大な存在だと思い込んでいる自己愛性パーソナリティ障害がそうさせているのであって、そろそろ自分の実力に気づくべきだろう。
アベノミクスは中国とアメリカの好況の恩恵を受けて成り立っていただけのことで、米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの世界的感染でその両恩恵が怪しくなると、アベノミクス自体も傾きかけてきた。結果、一般国民にはただでさえ芳しくない生活実感がなおのこと芳しくない状況に追いやられることになった。
このマイナス2.89%は消費税率引き上げの影響で5期ぶりにマイナスとなった去年10月~12月をさらに下回っていて、予測どおりだと、2期連続のマイナスになるという。
2018年初頭から始まった米国の中国製品に対する追加関税措置とそれに対する中国の米製品に対する報復関税措置の米中貿易摩擦が2018年末頃から日本の産業界に影響が出初めて、2018年、2019年の自然災害による経済活動停滞、2019年10月1日からの消費税増税の影響、さらに、〈2019年11月に中国湖北省武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初に世界保健機関 (WHO) に報告された〉(「Wikipedia」)新型コロナウイルス感染症の世界的流行等が日本経済を縮小させる要因となった。
2020年3月27日に2020年度予算が成立。日本の首相安倍晋三は翌3月28日夕方6時から首相官邸で新型コロナ対応や追加の経済対策について「記者会見」を開いた。
安倍晋三「これまでになく厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例のことではありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。国税・地方税の減免、金融措置も含め、あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」
「あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」・・・・
安倍晋三「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです」
「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく」・・・・・
マスコミ記者との質疑応答でも、「強大な政策」を言い、「V字回復」を確約している・
安倍晋三「先ず、昨日、来年度予算が成立しました。先ずはこの中の26兆円の事業規模の経済対策を一日も早く執行していきたいと考えています。そして、景気を下支えしていきます。その上で、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じていますが、そのマグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」
「マグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」・・・・・
日本経済の地盤沈下の程度を地震の規模を示す「マグニチュード」という言葉で譬えている。
安倍晋三「感染の拡大が抑制された段階において、旅行や運輸、外食、イベントなど、大変な影響を受けている方々に対して、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたい。そして、正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」
「感染の拡大が抑制された段階において」、「大胆な需要喚起策を講じ」、「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」・・・・
この「V字回復」、冒頭発言では「一気に日本経済をV字回復させていく」と言い切っているのに対して質疑では、「V字回復を目指していきたいと考えています」とかなりトーンを下げている。とは言うものの、「V字回復」を将来の目標に据えた。
勇ましい言葉、聞こえのいい言葉が信用されるのも、信用されないのも、過去の実績が物を言うことになる。過去の実績が有言実行性、あるいは有言不実行性のいずれかを占う。
当然、安倍晋三が日本経済を「V字回復」に持っていく第一番の動機として「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように」と、そこに願いを置いている以上、過去、アベノミクスによって国民に「笑顔」を与えていなければならない、当然の理屈となる。
第2次安倍政権発足以来、アベノミクスによって国民に笑顔を与えることができたが、米中貿易摩擦、自然災害、消費税増税、新型コロナウイルス感染症の世界的流行等々によって日本経済が逼迫し、国民から笑顔が消えてしまった。その笑顔を再びのアベノミクスによって取り戻してやろうじゃないか。そうミエを切ったことになる。さすが、安倍晋三。
国民から笑顔を奪った大きな要因の一つを米中貿易摩擦に置いたとしても、このことが日本の経済に影響を与え始めたのは2018年末頃からであり、もう一つの大きな要因となっている新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって日経平均株価が大きく下落したのは2020年1月末からである。
つまり2013年初めから2018年末までのアベノミクス6年間に関しては米中貿易摩擦にしても、新型コロナウイルスにしても、国民から笑顔を奪う要因とはなっていないことになる。
2018年、2019年の自然災害にしても、アベノミクスの2013年から2020年までの8年間の予算で「公共事業関係費」は毎年7兆から8兆円規模を組み、この全てを防災・減災に回しているわけではないが、防災・減災に注力していたのは事実であるし、この内の「治山治水対策予算」は6年間合計で7兆円、「災害復旧費等」の予算は同じく2013年から2020年までの8年間合計で4兆4千億円近くを注ぎ込んでいる(2019年と2020年は決算額ではなくて、当初予算額)。
当然、自然災害に対する経済損失を公共事業によってそれなりにカバーしてきているはずで、公共事業費1兆円はGDP1兆円の押上効果があるとされていて、GDPに対しても貢献しているはずで、自然災害をアベノミクスの好循環を阻害する要因とする正当性はない。阻害要因として正当づけるとしたら、安倍晋三だけではなく、安倍内閣、自民党、公明党共々に「防災だ、減災だ」と大騒ぎしている割に公共事業に注ぎ込んでいるカネ相応に経済効果を引き出していないことになって、公共事業政策自体にどこか欠陥があることになる。
東日本大震災の被災地に於いて今以て引きずっている芳しくない経済状況はいくら公共事業にカネを注ぎ込んでも、人を戻す政策を欠いていることが原因となっている現状であるはずだ。東京圏一極集中が加速している昨今の状況にあって、余程の強力な人口回復策がなければ、東北に人を戻すことはできない。だが、安倍晋三は口先だけで終わらせている。
2012年12月26日の首相就任記者会見。
安倍晋三「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、あらゆる政策を総動員してまいります。これにより、単なる最低限の生活再建にとどまらず、創造と可能性の地としての新しい東北をつくり上げてまいります」
NHKが2019年12月から2020年1月にかけて岩手・宮城・福島の被災者や原発事故の避難者など4000人余りを対象にアンケート(有効回答数48%の1965人)を行った結果、今も被災者だと感じている人が有効回答の62%(1218人)にも上ったという。
〈阪神・淡路大震災から10年で専門家が行った同様の調査では、兵庫で被災者と意識していた人は25%で、岩手・宮城・福島と比べおよそ2.5倍の開きがある。〉と解説している。
今も被災者だと感じている人のうち、「地域経済が震災の影響を脱した」と回答した人が4%に過ぎなかった。〈経済的な復興の実感が乏しい人ほど今も被災者だと感じている割合が高くなっている。〉と解説しているが、安倍晋三が「最低限の生活再建にとどまらす」と言っている「最低限の生活再建」さえままならない被災者の姿が浮き彫りになる。
被災3県共に人口減少に悩んでいる。「創造と可能性の地としての新しい東北」は言葉だけのことで、どこにも見えてこない。2018年10月24日の所信表明演説でも同じことを言っている。
「東北の復興なくして、日本の再生なし。この決意の下に、『創造と可能性の地』としての東北を創り上げてまいります」
安倍晋三の立派な言葉に反する被災地の現状は復興事業とそのカネを生かしきれていない状況しか浮かんでこない。自然災害に対してそれなりのカネを注ぎ込んでいるのだから、アベノミクスの阻害要因とすることも、国民から笑顔を奪った憎き仇とすることもできないはずで、満足とは言えない復興状況は自らの政策推進能力の欠如に原因を置かなければならないはずだ。
では、消費税の2014年4月1日から5%から8%への、2019年10月1日から8%から10%への増税がアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができるのだろうか。
2014年11月18日安倍晋三解散記者会見。2014年4月1日から5%から8%へ増税した消費税は2015年10月1日に10%への増税が決まっていた。
安倍晋三「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました
・・・・・・・・・・
来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」――
再引き上げはない。その理由を「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」
2014年4月1日の5%から8%への増税も前以って分かっていたことで、そのための景気対策を打っていたはずだが、その対策の効果もなく、増税によって経済の維持にブレーキがかかった。当然、その時点から同じ轍を踏まないために2015年10月1日の10%増税に向けて新たな景気対策を構築、3本の矢をさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。
にも関わらず、アベノミクス経済政策を阻害する、これといった国外的・国内的要因がないままに2014年11月18日に至って増税延期を決定することになったのは、アベノミクスに力強いエンジンを備え付けることができなかったからに他ならない。
ところが、2014年11月18日の記者会見で「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない」と確約した力強い言葉をあっさりと反故にし、2017年4月1日引き上げ予定を、2016年6月1日の記者会見でさらに30カ月延期することを公表、2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。
消費税増税を再延期しなければならない程にアベノミクスが脆弱でありながら、2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言、2020年に向けた経済成長のエンジンと位置づけた新たな「3本の矢」を発表までしている。
(1)希望を生み出す強い経済
(2)夢を紡ぐ子育て支援
(3)安心につながる社会保障
ワンパターンのギャグで売っていたお笑い芸人がフアンのそのギャクへの食いつきが悪くなると、食いつきのいい新しいギャグを考え出そうと四苦八苦するものだが、食いつきだけを狙ったのだろう。
以下、説明することがその証明となる。
消費税増税再延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」こと。「リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落していること」、こういったことで「投資が落ち込み、新興国や途上国の経済が大きく傷ついる」ことを挙げたが、一方で、「正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えた」、「この春の高校生の就職率は24年ぶりの高さとなった」、「大学生の就職率は過去最高だ」、「政権交代前から中小企業の倒産も3割減少している」、「中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができた」とアベノミクスの成果を次々と謳い上げているが、これらの成果が消費税再増税で潰え去ってしまう恐れを抱かざるを得ない程にアベノミクスは力強くなかったことになる。
増税再延期を決めるに当たって2019年10月1日の10%増税に向けてアベノミクスの3本の矢をさらにさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。しかし10%増税が、食料品は軽減税率を設けて8%のまま維持していながら、景気の足を引っ張ることになった。アベノミクス3本の矢だけではなく、新3本の矢も国民に安心も笑顔も与えることができなかった。
要するに2014年4月1日の5%から8%への消費税増税も、2019年10月1日の8%から10%への消費税増税も国民から笑顔を奪ったアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができないということになる。
もともと、アベノミクス経済下で国民は笑顔など作っていなかった。笑顔を作っていたのは、株高と円安で潤った大企業や高額所得者だけであった。このことは「アベノミクス失敗の原因は伸びない個人消費、迫られる選択肢は2つ」(ダイアモンドオンライン/ 2020/03/24 06:00)なる記事が証明してくれる。
要約すると、アベノミクスは2%の実質経済成長率を目指していたのに対して7年間の累積で実質GDPは6.4%増加した。
要するに見事な成果と言うことができる。但し記事は、〈設備投資は15.5%増加したのに対し、個人消費は0.4%しか増加していない。〉と断じている。
企業は、特に大企業はと言うことなのだろう、15.5%も設備投資を増加できる資金を有していたが、アベノミクス7年間で個人消費は0.4%の増加のみ。
この両者間の関係構図は格差の状況以外に何も映し出していない。特に大企業は史上最高の450兆円前後の内部留保を溜め込んだ。金融・保険業を加えると、日本のGDPに相当する500兆円を超えていると言う。だが、企業のそういった史上最高の利益は給与の形で社員に、広く言うと国民に十分に再分配されることがなかった。その結果が個人消費が高々の0.4%の増加と言うことになる。
2008年平均給与(男女共) 429万6千円
2018年平均給与(男女共) 440万7千円
伸び率 2.6%
アベノミクスが始まった2013年の男女合わせた平均給与は413万6千円で、男女合わせた2008年の平均給与429万6千円から年々減り続けていって、16万円も低くなったところからアベノミクスは始まっていることになるから、一見すると、給与が増えたように見えるが、長年働いている一般的な給与所得者からしたら、目減り分を取り戻しているような感覚になって、余程の給与所得者でなければ、思い切った消費行動に出ることができないといったことも、個人消費が伸びない要因の一つのなっている可能性がある。
アベノミクス景気は戦後最長の景気期間を迎えた。一方で、大企業や高額所得者の側に立たない限り、大方の見方として、実感なき景気と言われている。当然、安倍晋三が様々な経済指標を駆使してアベノミクスの成果を如何に誇ろうと、国民はその実感のなさに笑顔を見せるどころではない状況に置かれていたことになる。
いわば国民は安倍晋三のアベノミクスの景気政策下では最初から笑顔をつくるどころではなかった。終始笑顔でいることができたのは日銀の異次元の金融政策の恩恵として出現することになった株高と円安で懐を潤すことができた企業、特に大企業と高額所得者ぐらいだろう。
当然、見栄えのしない過去との比較で評価できないという意味で「過去が過去だから」と一蹴せざるを得ないのと同じようにアベノミクスの過去の実績から言うと、安倍晋三がいくら勇ましく「強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」と言おうが、吠えようが、あるいは「V字回復」を実行可能であるかのように見せようが見せまいが、出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるとバッサリと切り捨てる以外にない。
「V字回復」の目的の一つに「全国津々浦々、また笑顔が戻ってくる」ことを挙げたとしても、大方の一般国民はアベノミクスに最初から「笑顔」など見せていなかったのかだから、これも出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるに過ぎないとしか言い様がない。
安倍晋三は自分が口にすることは全て現実の形にすることができるかのように広言する傲慢なところがあるが、自分で自分を偉大な存在だと思い込んでいる自己愛性パーソナリティ障害がそうさせているのであって、そろそろ自分の実力に気づくべきだろう。
アベノミクスは中国とアメリカの好況の恩恵を受けて成り立っていただけのことで、米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの世界的感染でその両恩恵が怪しくなると、アベノミクス自体も傾きかけてきた。結果、一般国民にはただでさえ芳しくない生活実感がなおのこと芳しくない状況に追いやられることになった。