要するに1ヶ月で緊急事態宣言の効果が出ると見た。但し万が一の場合の保険のためなのだろう、経済再生担当相の西村康稔は緊急事態宣言発出2日後の4月9日午前10時50分過ぎに経団連会長の中西宏明、日本商工会議所会頭の三村明夫とテレビ会議を行い、緊急事態宣言が目指す最低7割、極力8割程度の人と人との接触機会の削減の成果は2週間後に表れるが、想定通りの削減で進まない場合には2週間を待つことなく、さまざまな措置を取らざるを得なくなると述べたという。
その後、午前11時過ぎの内閣府での記者会見に望んで、「この接触機会の8割削減が達成できれば、2週間で成果が出る。8割削減が実行されていなければ、施設の使用制限を要請するなど、より強い措置に踏み切らざるを得ない」と同じことを述べている。
しかしより強い措置の発出はあくまでも結果であって、緊急事態宣言の発令そのものは1ヶ月で効果が出ると想定して行った。想定しなければ、1ヶ月と期限を区切ることはできない。効果が出なければ、さらに強い措置を取ることを想定して、取り敢えずは1ヶ月ということにしましたといった法律の出し方はない。
4月7日に緊急事態宣言を発令したものの、4月8日の携帯電話の位置情報などのデータでは人手が3割から4割程度の削減にとどまっていることが分かったということで、政府はこの状況に危機感を抱いて、より強い措置という警告を発出せざるを得なかったということなのだろう。
いずれにしても、今回の緊急事態宣言は人と人との接触機会の最低7割、極力8割程度の削減成果は2週間後に表れ、その後の2週間、合計1ヶ月で大幅な感染収束に向けた効果が出てくると想定した発令でなければならない。
安倍晋三は発令同日の午後7時から記者会見を開いて、発令についての説明を行っている。
安倍晋三「医療への負荷を抑えるために最も重要なことは、感染者の数を拡大させないことです。そして、そのためには何よりも国民の皆様の行動変容、つまり、行動を変えることが大切です。特別措置法上の権限はあくまで都道府県の知事が行使するものでありますが、政府として、関東の1都3県、大阪府と兵庫県、そして福岡県の皆様には、特別措置法45条第1項に基づき、生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えます。事態は切迫しています。東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。 しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。そうすれば、爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます。その効果を見極める期間も含め、ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して、7割から8割削減を目指し、外出自粛をお願いいたします。 繰り返しになりますが、この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません。これまでもテレワークの実施などをお願いしてまいりましたが、社会機能を維持するために必要な職種を除き、オフィスでの仕事は原則自宅で行うようにしていただきたいと思います。どうしても出勤が必要な場合も、ローテーションを組むなどによって出勤者の数を最低7割は減らす、時差出勤を行う、人との距離を十分に取るといった取組を実施いただけるよう、全ての事業者の皆様にお願いいたします。レストランなどの営業に当たっても、換気の徹底、お客さん同士の距離を確保するなどの対策をお願いします」 |
「人と人との接触の7割から8割削減」は国民任せの他力本願ではない。特定した業種の営業自粛や自粛指示によって一定程度の成算を見込んだ自力本願でなければならない。でなければ、法律を作った意味も、作った法律の発令も意味がなくなる。
つまり発令によって効果が出ると予測した安倍晋三の発言でなければならない。次の発言も効果を想定した発言となる。
安倍晋三「今回の緊急事態宣言は、海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものでは全くありません。そのことは明確に申し上げます。今後も電車やバスなどの公共交通機関は運行されます。道路を封鎖することなど決してありませんし、そうした必要も全くないというのが専門家の皆さんの意見です。海外では、都市封鎖に当たり、多くの人が都市を抜け出し、大混乱と感染の拡大につながったところもあります。今、私たちが最も恐れるべきは、恐怖それ自体です。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で広がったデマによって、トイレットペーパーが店頭で品薄となったことは皆さんの記憶に新しいところだと思います。ウイルスという見えない敵に大きな不安を抱くのは、私も皆さんと同じです。そうしたとき、SNSは本来、人と人の絆(きずな)を深め、社会の連帯を生み出すツールであり、社会不安を軽減する大きな力を持っていると信じます。しかし、ただ恐怖に駆られ、拡散された誤った情報に基づいてパニックを起こしてしまう。そうなると、ウイルスそれ自体のリスクを超える甚大な被害を、私たちの経済、社会、そして生活にもたらしかねません」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 安倍晋三「率直に申し上げて、政府や自治体だけの取組みでは、この緊急事態を乗り越えることはできない。これは厳然たる事実です。感染者の爆発的な増加を回避できるのか。一人でも多くの重症者を死の淵(ふち)から救うことができるのか。皆さんを、そして皆さんが愛する家族を守ることができるのか。全ては皆さんの行動にかかっています。改めて御協力をお願いします。 |
「都市封鎖、ロックダウン」まで行う必要はない。今回の緊急事態宣言が指示内容とした外出自粛や営業自粛、在宅勤務とそれに代わるテレワーク等々の措置だけで感染収束に事足りると、その効果を前提とした発言となっている。
後段の発言は国民の協力にかかっているとしているが、国民の協力を得ることができることを想定した緊急事態宣言の発令でなければならないのだから、国民の協力に対する念押しの発言でなければならない。
国民の協力が期待できないままに発令したとなると、大いなる矛盾を抱えることになる。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下に置かれた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーである感染症専門家の科学的・合理的根拠に基づいた、感染収束に向けて効果あると見込んだ発令でなければならない。
冒頭発言最後の次の言葉も緊急事態宣言発令の効果を見込んだ物言いとなる。
安倍晋三「9年前、私たちはあの東日本大震災を経験しました。たくさんの人たちがかけがえのない命を失い、傷つき、愛する人を失いました。つらく、困難な日々の中で、私たちに希望をもたらしたもの、それは人と人の絆、日本中から寄せられた助け合いの心でありました。今、また私たちは大きな困難に直面しています。しかし、私たちはみんなで共に力を合わせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この緊急事態という試練も必ずや乗り越えることができる。そう確信しています」 |
東日本大震災の前例に鑑みて、「私たちはみんなで共に力を合わせ」ることが期待できることを見込んだ発言でなければ、到底、発令などできない。
発令が遅すぎたのではないかと見る意見もあるが、この記者会見質疑でも同じ質問が飛んだ。
NHK松本記者「今回の決断に至るまで、いろんなデータや調整があったのだと思いますけれども、この判断のタイミングについて遅過ぎると、遅いという批判もございます。今回の決断がもう少し早ければ、今のような感染拡大は防げたのではないかという声もあろうかと思いますが、そうした声にどのようにお答えになりますか。 また、ここに至るまで異例の対応が続いてきたと思います。イベント自粛や一斉休校。それでも感染拡大を抑えることができなかった。この原因についてどのように分析されていますでしょうか、お答えください」 安倍晋三「先ず、この特措法を改正した日から、いつ緊急事態宣言を出すべきか、ずっと緊張感を持って考えてきました。でも、今、御質問がございましたが、あのときにどういう議論があったか。むしろ緊急事態宣言は私権を制限するから慎重に出すべきだという議論が随分ありましたよね。しかし、私たちは出すべきときには出すべきだと考え、その中で最大限の緊張感を持って、事態を、感染者の数の拡大状況、専門家の尾身先生を始め、専門家の皆さんに分析をしていただいてまいりました。そこで、我々、イベント等の自粛、また、学校の一斉休校も行いました。だけれども、感染者の拡大を防げなかった。確かにそのとおりです。しかし、スピードはどうなのかということでありまして、今、世界を見ていて、一時スピードが上がっていく、このスピードをどれくらい抑えることができるかということが重要であります。 中国、韓国においては、日本よりも感染者の数は相当多いですが、死亡者の数も多いですが、今、スピードは相当落ちてきている。日本も早くそのピークをはるかに小さいところで抑えていきたい。そして、言わば減少に転じさせたいと、こう思っています。 先週から、我々は、いつ出すべきか、西村大臣と尾身先生と毎日、緊密に協議をし議論をしました。これはやみくもに出せません。専門家の皆様が判断をする。準備をすべきだという判断をいただきました、昨日。その理由については、先ほど申し上げたとおりであります。専門家の皆さんのこの判断、言わば、一つは、累積の感染者の数、スピード、そして医療の提供体制との関係、そして我々行政の場では何を考えるべきかということについて言えば、言わば緊急事態宣言を出す段階において、十分な医療体制をしっかりと対応できるものを、体制をつくっていく必要があります。ですから、先週、私も含めてホテルチェーンの社長さんたちにお願いをしまして、軽症者等を受け入れるお願いをさせていただいた。そういうお願いもさせていただき、準備を整えた上で、言わば緊急事態宣言を出せば、そういうところが、言わばそういう感染者の皆さん、軽症者あるいは無症状者の皆さんを収容していただくことができるわけであります。 同時に、混乱を起こさないようにする必要があります。国民の皆様の理解を進めていく。最初はロックダウンになるのではないかという間違った認識が広がりました。こういう認識をしっかりとなくしていくという準備も整えながら、尾身会長としっかりと心を合わせながら、昨日、ああした形で準備をせよという御判断をいただき、本日の緊急事態宣言となったわけであります」 |
緊急事態宣言の発令は「専門家の皆様が判断をする」と、専門家に丸投げした。行政がすることは緊急事態宣言を発令した場合の受入れの十分な医療体制の構築だとしている。
だが、発令如何に関わらず、行政はどのような状況にあっても十分に構築された医療体制で応じなければならない。しかも2020年2月末には新型コロナウイルスの発生源とされている中国湖北省武漢では医療体制の崩壊が指摘されていた。日本でも感染者が増加の状況に遭遇したなら、医療体制の逼迫、次に崩壊を想定し、それらの想定の段階に応じて専門家の意見を借りながら、医療体制が対応可能かどうか精査し、万が一対応不可能性の答が出たなら、そのことに備えておかなければならないのだから、発令は遅くはなかった、タイミング的に正しかったことの理由とはならない。
厚生労働省は2020年4月2日の時点で新型コロナウイルス感染の軽症者あるいは無症状者のホテルや自宅療養を可能とする「事務連絡」を既に発出している。正式名は「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」となっている。
つまり、厚生労働省は4月2日の時点でホテル利用(宿泊療養)や自宅療養を可能とする準備を指示する事務連絡を都道府県向けに行った。これは東京都が軽症・無症状の患者に関しては病院外で療養させられるよう感染症法の運用見直しを国に諮り、調整した結果だと言うから、緊急事態宣言を発令するかしないに関係しないところで決められたことになって、緊急事態宣言を発令したから、ホテル療養や自宅療養が可能となったということではない。
要するに安倍晋三は発令が遅かったかどうかに答えることができずにゴマカシ答弁をしたことになる。
この記者会見で質疑の間安倍晋三と同席していた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長の尾身茂が宣言の対象地域が7都府県となったことの理由を次の3点を挙げて説明している。
「累計の報告者数」
「倍加時間」(感染者が2倍になるのにどのぐらいの時間がかかっているかということ)
「リンクの追えない孤発例の割合」
尾身茂「東京と大阪は、もう累計報告数が400を超えているということと、倍加時間も、実はヨーロッパのイタリアなんかは大体2(日)とか2.5ぐらいなのですけれども、東京都は3月の上旬は10とか11でしたけれども、最近になって5、大阪も6.6、それから孤発例(感染経路を追うことができない症例)が令東京では68パーセント、大阪でも5割近くはリンクが追えないということです。神奈川、埼玉、千葉というのは、東京ほどではないですけれども、生活圏、行政区としては別ですけれども、生活圏としてはほぼ同じということで、その3つ。
それから、大阪は今、言ったようなことですけれども、その近隣県としては、兵庫県が感染状況も大阪に近いし、生活圏としても一体であるということ。それから福岡ですけれども、実は福岡は累積の報告数はいまだ少ないのですけれども、2つの重要な特徴がありまして、1つは倍加時間が、先ほど言ったように2倍になるのに必要な時間が、これは全国で最大、最も短い。昨日の時点で2.9日、最も短い。それから孤発例の割合もこれは全国で一番高くて、昨日の時点で72パーセントです。
こういうことがあって7つの都府県ということで、その他の県は、こういう7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども、今日、昨日の段階では、その7都府県に比べてまだそこまで達していない。ただし、感染拡大のおそれがあるので、十分これからも3密を中心に警戒を怠れない状況だと思います。
尾身茂は7都府県以外は「7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども、今日、昨日の段階では、その7都府県に比べてまだそこまで達していない」、つまり「累計の報告者数」、「倍加時間」、「リンクの追えない孤発例の割合」の3点で7都道府県程に切迫した状況に至っていないから、発令対象地域から除外したと言うことになる。
だが、安倍晋三にしても、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の感染症専門家にしても、緊急事態宣言の発令によって「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」との計算に立って、人と人との接触機会の7~8割削減を想定内とし、宣言終了期間の5月6日には大幅な感染抑止に効果があると見て発令したのである。
当然、発令の効果は感染者数がより少ない間に在宅勤務やテレワーク等による人と人との接触機会の削減や密閉、密集、密接の3密の危険性の高い居酒屋やライブハウス等々の営業自粛や営業時間の短縮等々を要請した場合の方がより高くなるはずである。病気が進行してから医者にかかるよりも、体の調子が悪くなったら医者にかかる方が治りが早いのと同じ道理である。
だが、尾身茂はこの単純な道理を踏まずに7都府県以外は「7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども」と、悪く言うと、政府としては感染のあり得る拡大を待つ姿勢で、いわば感染の拡大まで何も手を打たない姿勢で発令を見送った。
2020年4月12日のNHK日曜討論「緊急事態宣言 必要な対策を問う」に西村康稔などと出席した尾身茂が宣言発令のタイミングについて発言している。
中川緑キャスター、「このタイミングでの緊急事態宣言を出すことを妥当だと判断した、その一番の理由は何かということと、もう一つ、宣言から5日経って、ここまでの効果と課題、どう見ていますか」
尾身茂「宣言を政府に提言した理由は二つございます。一つはこのまま放っておくと、ヨーロッパでね、言われている、いわゆるオーバーシュート(感染者の爆発的拡大)ですね、その軌道に入った。オーバーシュートになるわけではないが、その軌道に入ってしまうということ。
それから、横倉(義武・日本医師会会長)先生が仰ったように医療の機能不全、もう起こりつつあるということで、タイミングについてはもっと早くしてもいいという意見もあったということは十分承知ですが、私は一般の市民がですね、この時期なら、協力してくれるというタイミングがあるんで、ほぼそのタイミングが来たんじゃないかと、ま、そういう感染対策上と、国民がどれだけね、協力してくれるか、この2点で政府に提言させて、まあ、適切な時期じゃなかったかと、私は思っております」
尾身茂は宣言発令のタイミングの一つの理由として、このまま宣言を出さずにいたら、「オーバーシュートの軌道に入ってしまう」懸念があったからとしている。と言うことは、「オーバーシュートの軌道に入ってしまう」懸念が生じる程に感染が拡大する状況に至るまで宣言の発令を待っていたことになる。
もし東京都やその他の府県の感染の拡大状況を最悪の事態を想定する危機管理意識のもと、読むことができていたなら、「ヨーロッパみたいにオーバーシュート軌道に入ったわけではないが、その軌道に入ってしまう懸念がある」から、そこに発令のタイミングを置いたといった趣旨の発言はできない。
大体が宣言が効果あるものと見做していたなら、発令を前倒ししても、効果自体が前倒しできて、その分、経済の回復に向けた政策の着手も前倒しできることになる。感染が拡大する前に手を打つという発想はどこにも見当たらない。
尾身茂は宣言発令のタイミングのもう一つの理由として、「医療の機能不全、もう起こりつつある」ことと、「一般の市民がですね、この時期なら、協力してくれるというタイミングが来た」ことを挙げているが、前者の「医療の機能不全」の解消に向けた対応の一つは厚労省が「事務連絡」で既に行っているが、「医療の機能不全」が「もう起こりつつある」ことに発令のタイミングを置くことに何の矛盾も感じないらしい。置くとしたら、医療の機能不全が起こる前に置かなければならないからだ。
感染症の専門家でありながら、このことができなかった。自身の判断が間違っていたのか、多分、政権から早期の発令を止められていたために、その遅れを隠すために矛盾したことを強弁する必要に迫られたとしか考えられない。
「一般の市民がこの時期なら協力してくれる」と言っていることの「時期」とは一般市民が新型コロナウイルスの感染拡大状況に切迫感を持つに至っている「時期」を意味していて、その切迫感が増す「時期」を発令のタイミングとしたことになって、感染拡大状況とその状況に対する一般市民の切迫感を前以って読んだ発令ではないことになる。
要するに宣言発令のタイミングを合理的な知見に基づいて感染拡大の推移とその状況に置いたのではなく、SNSでの発言やマスコミ報道から感知してのことなのだろう、知ったことになる一般市民の切迫感を発令の一つの理由に置いたことになって、合理性を疑わせることになる。
宣言の発令が遅すぎたのではないかとする意見に合理的な答弁ができないことからの、言うことに事欠いて、理由とならない理由を並べたとしか見えない。少なくとも安倍晋三にしても、尾身茂にしても、発令は遅くはない、グッドタイミングだったと周囲が納得できる答を口にしてはいない。
大体が4月7日の記者会見で発言した、「累計の報告者数」、「倍加時間」、「リンクの追えない孤発例の割合」の3点を宣言発令の根拠に置いたことと、合理性の点で著しく劣ることになる。
麻生太郎が緊急事態宣言の早期の発令を「経済がとんでもないことになる。ガタガタになる」と反対、官房長官も慎重姿勢だったとマスコミが報道していることが安倍晋三の決断を鈍くしたことの理由と考えられるが、発令を待つまでもなく、新型コロナウイルスの抑止することができない感染拡大と営業自粛や外出自粛の要望による人の移動の激減、インバウンドの急激な激減等によって日本経済が満足に回転しなくなり、かつてない程に低迷することになった。
安倍晋三は記者会見で「雇用と生活は断じて守り抜いていく」、「GDP(国内総生産)の2割に当たる事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策を実施する」、「困難に直面している御家族や中小・小規模事業者の皆さんには、総額6兆円を超える現金給付を行います」、「史上初めて事業者向けの給付金制度を創設した」等々、予算の勇ましい配分なのか、勇ましい大判振舞いなのか、さも立派なことであるかのように述べ立てたが、このことも宣言の発令が早ければ、収束時期も早まることになって、応じて経済の回復も早まることになる道理に反した宣言の発令の遅れを隠す政治パフォーマンスの一面を顔を覗かせているように見えた。
安倍晋三がやってもおかしくない政治パフォマンスである。