民主党のメール問題は、衆議院懲罰委員会での永田議員に対する弁明聴取の質疑が24日(3月)から行われることがほぼ決定したということだが、17日朝のテレビでは、民主党内では永田辞職包囲網が敷かれ、誰が鈴をつけるかというところまで進んでいるといったことを伝えていた。いわば情報仲介者の名前も含めて、虚偽のメールを掴まされた経緯の解明と、虚偽と見抜けずに事実と見なして国会で追及するに至った永田議員の取るべき責任の程度に集中している。議員辞職すべきか、させるべきか。そこまでしなくてもいいか。
野田国対委員長の後任に決まったときは、亡霊が出てきたとしか思えなかった新国対委員長の渡部恒三流に言えば、「腹を切るべきか、切らなくてもいいか」となる。渡部氏本人は、「腹を切れ」と言っている。一旦は党員資格停止で片付けた前原代表にしても、「いわゆる懲罰委員会、衆議院の決定に従う」と、結果次第では辞任止むなしの態度だ。
すべては、永田議員どまりの問題となっている。
玉を出し過ぎたパチンコ台なら話は分かるが、果たして永田議員のみで打ち止めとしていい問題なのだろうか。
民主党の鳩山幹事長の談話によると、「党首討論でも、新しい決定的な事実を示すに至らなかった。100%の信憑性を立証できていない」といった状況にあったにも関わらず、前原代表はその党首討論で、「確証を得ている。国政調査権の発動をお願いします」と小泉首相に若さ溢れる断固とした厳しい口調で迫った。
「党首討論を楽しみにしていてほしい」と気を持たせる予告編を打ってまでして、それを裏切って、「新しい決定的な事実」という物的証拠に関わる切り札を持たないまま党首討論に臨み、国政調査権の発動を迫ったというわけである。それがどういうことなのか譬えるなら、カード賭博で言うところの〝no trump〟(切り札なしの勝負)に賭けたということだろう。そうとしか解釈しようがない。そうでなけれ、辻褄が合わなくなる。
「国政調査権」が発動された場合の手に入れることができると推定し、賭けに出た「確証」が問題となる。前原氏は「資金提供が武部氏の次男を通じてなされたのではないかという確証を得ている」と公言していたのだから、その「確証」とは、証拠はないものの、公言に添った事実の存在を推定していたとしなければならない。
物的証拠という前提なしに国政調査権が発動されて、前原氏の推定どおりに「資金提供が武部氏の次男を通じてなされ」ていた「確証」を、3千万円が振込まれたとする武部氏の次男の口座から確認できたとしたら、その成功を前例として、物的証拠なしの国政調査権の発動が合理化される危険性を孕むことにならないだろうか。
このことを正当とする主たる根拠は、火のない所に煙は立たないを正しい道理とする他人や世間の噂への信頼であり、そのことの補強材料が、叩けばホコリが出ない人間はいない、あるいは後ろ暗いところのない人間はいないという決め付けではないだろうか。目的の容疑で物的証拠を見い出せなくても、噂を頼りに誰もが抱えているに違いないホコリや後ろ暗さを突ついて何らかの罪をつくり出すことができれば、その手続きを正当化し得ることを前提としてのみ、調査や捜査が可能となる。
いわば、目に現れていない憶測の疑いを対象に調査・捜査が行われ、例え目的の容疑は立証できなかったとしても、微罪相当であっても、余罪を摘発できさえしたら、間違っていなかったをルールとすることができる。
こういったプロセスへの展開は、気に入らない人間を陥れようとしてありもしない噂を振り撒いて非難の対象、最悪の場合は捜査の対象に仕向ける密告の風潮を呼び込み、また官憲を含めた真偽を確かめる側も、物的証拠を探す努力を省略して、疑わしさへの見込みのみで判断する傾向への助長を結果とするに違いない。
このような社会はもはや警察国家を意味する。証拠があるなしに関係なしに、気に入らないとか、何となく胡散臭いといった理由だけで、上位権威にある者は下位権威の者に対して罪を着せたり、名誉を傷つけたり、貶めることが可能となるからである。
前原代表は自分では気づかずに、そのような方向に向けた意志を働かせたのである。裁判に於いても、犯罪捜査に於いても、「疑わしきは罰せず」、つまり「推定無罪」が大原則である。このことは裁判や犯罪捜査でけではなく、政治家だろうが誰だろうが決して侵してはならない人間関係に於ける絶対的社会規範としてあるものだろう。疑わしいというだけで、あの人が盗んだとは断定も断言もできないのは、「疑わしきは罰せず」・「推定無罪」が社会のルールとしてもあることの証明である。
大袈裟に言うなら、政治家として前原氏は公党の代表を務める責任ある立場にありながら、「疑わしきは罰せず」とか「推定無罪」を頭に思い描くことなく、国会で警察国家を誘導することになるかもしれない無謀な要求を行ったのである。
このことは永田議員以上の罪であり、永田議員以上の責任を取らなければならない大いなる過ちではなかっただろうか。
「市民ひとりひとり」
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