昨日のブログで、「国家を問題にしないと、また国家に騙される」という言葉を入れるべきだなとあとから気づいて、この言葉を使うために題名にして今日のブログを書くことにしようと決めていたところ、戦没者追悼式、その他で話す戦没者追悼の言葉が、戦争が国家行為でありながら、その国家、戦前の日本国家を問題とせずに、戦争の個人化に努めている言葉ばかりであることにも気づいた。
勿論、戦没者追悼だから、戦没者全体のことを話してどこが間違っていると主張するだろうが、戦争が国家行為でありながら、国家を語らずに戦没者のみを語るのは戦争の個人化に他ならないはずだ。
いわば戦争の個人化とは戦争への国家の関わりを抹消して、個人(戦没者)だけの問題とすることを言うことになる。
国家を問題にしないから、戦争の総括・戦争の検証を不要とすることになる。
国家を問題とせず、戦没者の犠牲のみをクローズアップすることによって戦争の個人化は成功する。
要するに戦争の個人化が逆に戦争の国家行為を個人化の背景に限りなく遠ざけることになる。
正義の文脈で戦争の個人化を取り上げた場合、その背景に隠した国家そのものをも正義の文脈に包み込んでいることになる。
戦争に於ける個人が正義で、国家は不正義とすることは二律背反以外の何ものでもない。
いわば安倍晋三たちは個人を正義とすることによって、戦前日本の国家行為たる戦争を正義としている。
安倍晋三自身の言葉から、そのことを証明してみる。
安倍晋三は「国の指導者が参拝し、英霊に尊崇の念を表するのは当然だ。首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極みだ」と言っていたその信念を裏切り、8月15日の靖国参拝を見送り、自民党の萩生田・総裁特別補佐を通じて、「自民党総裁・安倍晋三」名で私費で玉串料を納めたという。
このことに関して安倍晋三は首相官邸で記者団に答えている。
安倍晋三「本日は、国の来し方を思い、静かに頭を垂れ、み霊を悼み、平安を祈る日だ。国のために戦い、尊い命を犠牲にされたご英霊に対する感謝の気持ちと尊崇の念の思いを込めて、萩生田総裁特別補佐に玉串を奉てん(奉奠=謹んで供えること)してもらった」(NHK NEWS WEB)
「国の来し方を思い」と言い、「国のために戦い」と言って、「国」という言葉を使っているが、戦争が国家行為であることを捕捉しながら発言している国家への言及ではない。
特に後者は戦没者が戦う動機としていた国家の、その動機づけと動機づけに対する対応の是非・正否を問題としないまま、「尊い命を犠牲にされたご英霊」云々と言葉を続けて、その行為を正義のレベルに置いて、戦没者のみを問題としているのは、結果として戦争の個人化そのものとなる。
いわば戦争の国家行為を兵士個々の尊い命の犠牲行為に変えて、戦争の個人化を果たしている。
当然、安倍晋三は8月15日に行われた全国戦没者追悼式でも、同じ戦争の個人化を演じることになる。
安倍晋三「「祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に倒れられた御霊、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷に亡くなられた御霊の御前に、政府を代表し、式辞を申し述べます。
いとしい我が子や妻を思い、残していく父、母に幸多かれ、ふるさとの山河よ、緑なせと念じつつ、貴い命を捧げられた、あなた方の犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。そのことを、片時たりとも忘れません」――
国家を問題にしているのは、「私たちが享受する平和と、繁栄」云々の戦後の国家であって、戦前の日本国家は一切問題としていない。戦没者の犠牲行為のみを讃えている。
戦没者の犠牲行為に言及しながら、「犠牲」を動機づけた戦争の国家行為に言及しない場合、心のこもった、真に公平無私な戦没者追悼となるだろうか。
安倍晋三以下、懸命に戦争の個人化に務めて、戦争が国家行為であることから目を逸らさせているとしか思えない。
昨日のブログで、戦前の大日本帝国は無能な政治家・官僚によって、大日本帝国軍隊は無能な軍人によって支配されていたと書いた。無能な政治家・官僚・軍人がそれぞれの権力を戦略も戦術も先見性もなく恣意的に行使した。その結果の戦争の結末であり、内外に亘る何百万という犠牲であった。
個人は戦争の国家行為と共に語られるべきであって、戦争の個人化は許されるべきではない。両者は相互反応として存在するからだ。
国家行為である戦争の戦没者追悼を通した個人化は国家を問題にしないことによって可能となる作業であり、国家を問題としない姿勢は国家権力の恣意性をも見逃すことになり、再び国家に騙される動機づけとならない保証はない。
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