鹿児島出水市4歳女児虐待死:安倍政権の虐待防止対策不徹底と野田市10歳女児虐待死から何も学ばなかった市と児相と警察

2019-09-02 11:56:41 | 政治
 【追記】(2019年9月3日 8:20)

 このブログ記事で親の虐待を受けて幼い子が死亡する事件について新聞で大きく扱われた範囲内でのことだが、今回の2019年8月31日の鹿児島県出水市での4歳の女児の虐待死が2018年3月2日の東京都目黒区で5歳女児が両親から虐待を受けて死亡した事件と2019年1月24日に千葉県野田市の小4の10歳女児の虐待死に続いての事件のように扱ったが、昨日9月1日夜のNHKニュースで、最近の虐待死事件として目黒区の事件と野田市の事件に続いて、2019年6月の札幌市での虐待死事件について伝えていた。

 札幌市の虐待死についてはすっかり頭から抜け落ちていた。そんな事件があったっけかという思いでPCに保存してある新聞記事を探してみると、この事件を取り扱った記事が確かに残っていたが、それでも思い出すことができなかった。21歳の母親の交際相手の24歳の男が母親の2歳の長女に日常的に暴行や食事を与えないなどの虐待を繰り返して衰弱させ、死なせてしまい、2019年6月5日に逮捕されている。

 当方の記憶から抜け落ちていたとしても、児童相談所や警察の虐待事案取扱部署の生活安全課は過去の虐待事案の全てを学習して、新たな虐待事案の参考資料としなければならない。札幌市の逮捕された24歳の男が21歳の母親の交際相手であったこと、死なせた2歳の長女と血が繋がっていなかったことは今回の鹿児島県出水市の逮捕された21歳の男が20代の母親の交際相手であり、死なせた4歳の女児とは血が繋がっていなかったことと両関係性は似ている。

 血が繋がっていない子供に対して父親の立場にある男、あるいは母親の立場にある女が全て虐待を働くわけではないが、そういった関係性で虐待を疑わせる事案が持ち上がった場合は、よくある例として特に気をつけて対応しなければならないはずだが、出水市の虐待事例では市や児童相談所、警察の動きからはマスコミ報道を見る限り、そういった注意深い対応を見て取ることができない。少なくとも虐待事案が持ち上がった際、実の父親なのか、母親なのか、特に注意して確認しなければならない。

 札幌市の事案では虐待通告受理から原則48時間以内に安全確認をする「48時間ルール」は守られていなかったし、虐待の緊急性を評価する「リスクアセスメントシート」も作成していなかった。児童相談所は北海道警が母子と面会した際、同行要請を断ってもいる。こういったことだけではなく、他の虐待事案での対応不足をも含めて、子どもの命というものを考えた場合、決して二度と繰り返してはならない反省材料としなければならないはずだが、今回の出水市の事案では過去と同様の対応不足が多々見受けることになる。

 マスコミが報道する虐待死事件を見る限り、市も児童相談所も警察も、一通りの仕事をこなすのみで、それ以上の、過去の虐待事案を参考にした臨機応変な対応への心がけは持ち合わせていないように見える。このことを裏返すと、一通りの仕事をこなすだけの市や児童相談所や警察では、虐待を把握しても、その虐待が度を越していた場合、虐待死にまで進んでしまうのを止めることができないように思える。

 親の虐待を受けて児童が死亡する事件が再び起きた。虐待死が起きるたびに政府は対策強化を叫ぶ。虐待の有無や程度の緊急点検を行う。政府の虐待防止対策が手ぬるいのか、対策は立派だが、虐待関係機関が立派な虐待対策どおりに十分な機動性(状況に応じて素早く活動できる能力。「コトバンク」)を発揮し得ないのか、政府が自らの虐待防止対策通りに関係機関を動かすだけの権威を欠いているのか、いずれなのだろうか。

 東京都目黒区で5歳女児が両親から虐待を受けて死亡した2018年3月2日から約3ヶ月半後の2018年6月15日、政府は「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を題目に「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」を首相官邸4階大会議室で開いている。

 但し「時事ドットコム 首相動静」で見ると、午前7時56分から同8時7分までのたった11分間に過ぎない。

 安倍晋三「僅か5歳の結愛(ゆあ)ちゃんが死の間際どんな思いでノートにあの言葉をつづったのか。虐待を受けながらも両親の思いに応えようとする幼い心の中を思うとき、私は本当に胸が潰れる思いであります。

 虐待によって多くの幼い命が奪われています。こんな痛ましい出来事をもう繰り返してはならない。子供の命を守るのは私たち大人の役割であります。政治の責任にお
いて、抜本的な対策を講じます。子供たちの命を守ることを何よりも第一に据え、全ての行政機関があらゆる手段を尽くすよう、加藤大臣を始め、関係大臣は緊急に対策を講じてください」

 「こんな痛ましい出来事をもう繰り返してはならない」。当然、「もう繰り返してはならない」対策を講じる責任を政府は負う。

 なぜ「繰り返してはならない」かと言うと、上記2018年6月15日の「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」に引き続いて2018年7月20日に開催した「児童虐待防止対策に関する係閣僚会議」「児童虐待防止対策に関する係閣僚会議」の議事録には、〈児童相談所への児童虐待相談対応件数は2016年度には12万件を超えており、5年前と比べて倍増している。また、児童虐待により年間約80人もの子どもの命が失われている。〉と記載されていて、それ程にも深刻な事態となっているからだろう。

 〈年間約80人もの子どもの命が失われている。〉とすると、マスコミ報道されるのはほんの一部ということになる。

 最初に挙げた関係閣僚会議では、〈児童相談所間・自治体間の情報共有の徹底や児童相談所・警察・学校・病院等の関係機関の連携強化〉を謳っている。

 「もう繰り返してはならない」謳い文句も虚しく、目黒区の事件の2018年3月2日から約11ヶ月後の2019年1月24日、千葉県野田市立小4年10歳の女児が父親の虐待を受けて殺害された。この事件を受けて、2019年2月8日、安倍政府は「児童虐待防止対策に関する取組について」と題して、「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」を開いている。

 残念ながらと言うべきか、怠慢と言うべきか、7ヶ月も経過するにも関わらず、厚労省の「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」開催日記載ページには当該会議の「議事録」はまだ載っていない。「議事次第」には、「千葉県野田市において女児(10歳)が虐待により死亡した事案の経緯等について」、「千葉県野田市における児童虐待事案への対応状況等」と題した資料等、具体的には「配付資料1」、「配付資料2」、「配付資料3-1」、「配付資料3-2」、「参考資料1-1」、「参考資料1-2」、「参考資料2-1」、「参考資料2-2」と、8点も提出されている。

 8点の資料とその他を議論するのに「時事ドットコム」の2019年2月8日の「首相動静」を見ると、「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」は午前7時58分から同8時6分までのたったの8分。これだけの資料をもとに8分も議論したとすれば、相当熱のこもった遣り取りができたはずだ。でなければ、「こんな痛ましい出来事をもう繰り返してはならない」、「子供の命を守るのは私たち大人の役割であります」、「政治の責任において、抜本的な対策を講じます」は全て空回りしたことになる。

 政府も児童虐待に関わる専門家も、警察の役割の重要性、関係機関と警察との連携、時と場合に応じて警察が前面に出ること、その主導性への期待を頻繁に口にするようになった。

 2018年6月15日の「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」で、〈児童相談所間・自治体間の情報共有の徹底や児童相談所・警察・学校・病院等の関係機関の連携強化〉を謳い、虐待の防止に警察の力を一枚加えていることを既に紹介しているが、安倍晋三も野田市の虐待死事件の4日後の2019年1月28日の衆参本会議「施政方針演説」で、「何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取組みを警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります」と、警察の全面的なバックアップの重要性を訴えているし、2019年2月7日の参議院予算委員会でも、「自治体の取組に対する警察の全面的バックアップなど、関係省庁が連携してやれるべきことは全てやるという強い決意で取り組んでいきます」と、虐待防止の重要なコマに警察を一枚噛ませている。

当然、警察が一枚噛むについては安倍晋三は自身が頭がいいだけではなく、頭のいい閣僚や官僚を大量に抱えているのだから、警察がどう関わったなら、虐待防止に最善・最大限の力を発揮し得るか、その連携方法を議論し、案出して、案出した方法の徹底を全警察に向かって指示したはずだ。

 2019年8月31日、鹿児島県警は鹿児島県出水市の20代の母親の交際相手の21歳の男を同居する4歳の女児を殴ったとして暴行容疑で逮捕した。

 マスコミ記事を纏めて見ると、女児への殴打は2019年8月27日の夜。翌8月28日に病院に搬送。その日の夜死亡。病院から「風呂で溺れたという女の子が死亡した」と警察に通報。司法解剖の結果、死因は風呂場での溺死とのこと。一体、どう溺死したのだろうか。

推測するに、病院に連れて行く前に既に溺死していたのだが、病院は心肺停止状態ということで、蘇生を試みたのだろう。だが、蘇生することはなかった。

21歳の男は2019年7月まで鹿児島県薩摩川内市に居住。鹿児島県出水市に居住を移している。

2019年3月18日、市から県警薩摩川内署に虐待が疑われると情報が寄せられ、18日と19日に署員や児童相談所の職員らが自宅を訪問。女児と母親に面会したが、体に傷などは確認されなかったという。その上、3月下旬から4月上旬にかけて同市内で「夜間に児童が一人で外出している」との通報が薩摩川内署に計4回あり、署員が自宅近くで璃愛来ちゃんを保護。ネグレクトの疑いで児童相談所に2回通告した。

薩摩川内市は発育状況に問題はなかった上に虐待は確認できないという認識のもと、母親に対し子どもの面倒をきちんとみるよう指導し、児童相談所などと会議を開き、同じようなことが起きた場合、一時保護する方針を決め、見守りの対象にしたという。引っ越しした際には出水市にも情報を引き継いだ。但し母親の交際相手で同居していた21歳の男に関しては「虐待が確認されなかったので、詳しい家庭環境まで踏み込めなかった」

 転居先の出水市も、顔などにあざがあるという情報をもとに21歳の男の暴行の前日に女児と面会したが、あざが確認できなかったことなどから、警察などに連絡しなかったという。

虐待の方法は殴打だけでない。発育状況に問題はなかったということだから、食事を与えない虐待はなかったのだろうが、野田市の虐待では体に傷跡を残さない方法としてなのだろう、冬に冷水シャワーを浴びせる虐待を行っていたし、目黒区の女児虐待死では母親から水を張った洗面器に顔をつける虐待でしかない練習をさせられ、頭を抑えつけられでもしたののだろう、「ママ、苦しい。やめて」と女児の声が外にまで洩れて、それが何日も続いたために住人に通報されたり、男から毎朝4時頃起床の平仮名を書く過酷な日課を課せられる虐待そのものの仕打ちを受けていただけではなく、最終的には食事を満足に与えられない虐待を受けて、死に至らしめられている。

だが、市も警察も児童相談所も殴打だけが虐待の方法だと決めつけて、体に傷が確認されなかったことを以って虐待の可能性をいとも簡単に排除しいる。

 交際相手、再婚相手、あるいは同棲相手、特に男の方が血の繋がっていない児童に対して虐待を振るう前例を多々あるのだから、それを学習して、21歳の男が女児と血の繋がりのないことを虐待を犯し得る危険な兆候の一つと見て、それ相応の対応を取らなければならなかったはずだが、虐待の可能性を簡単に排除しただけではなく、そのことを以って「詳しい家庭環境まで踏み込めなかった」と、自らの学習能力不足に思い至らないままに最悪の事態を想定することもしなかった。

野田市の虐待死は実の父親が犯したことだが、目黒区の虐待死の場合は女児が母親と元夫の間に生まれ子どもで、父親とは血縁関係がなかく、虐待を起こし得る兆候の一つと捉える、子供の命に対する危機管理意識すら働かすことはなかった。

2019年1月24日の千葉県野田市10歳女児虐待死から7ヶ月しか経過していないにも関わらず、市や児童相談所、特に役割の重要性を期待された警察の学習能力の欠如はどう考えたらいいのだろうか。安倍晋三等は関係機関と警察の連携の重要性を主張、当然、政府は警察はどう動くべきか、既に上に書いたとおりにその最善・最適な対処方法を考え出して、指示しているはずだが、どの機関も満足に対応できなかったところを見ると、「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」での議論も、安倍晋三の虐待防止に関わる国会答弁も、議論を済ますだけ、答弁を済ますだけで終わっていることになる。

野田市の虐待事件を取り上げた2019年2月5日の当「ブログ」で、〈ある児童に対する虐待の疑いが出てきたとき、その習慣性を考慮して、児童相談所の対応だけではなく、警察は隣近所の住人をより確かな情報源として確保、聞き込み等の接触を図った場合は虐待加害者に見咎められ、一悶着を起こされかねない危険性から、電話連絡で秘密裏に情報収集を図る必要があるのではないだろうか。〉と書いた。

今回の虐待死でも、全裸での自宅外放置されている、下着一枚の姿で玄関の外にいるといった通報は近所の住民からのもので、2019年9月1日付「NHK NEWS WEB」には、アパートの隣の部屋に住んでいる男性の話として、「引っ越してきたのは、この2、3か月ではないかと思います。毎日は帰ってきていないようでした。ここ1か月くらい、夜中に泣き声を聞くようになりました。結構大きな声でした。どなり声や悲鳴は聞いたことはありませんでした」と伝えている。

 隣の部屋で4歳の女児の鳴き声が聞こえるとしたら、かなり大きな声で泣いていたと見なければならないし、自身が1か月も放置して、通報も何もしなかったことから、どなり声や悲鳴は聞こえなかったことにした可能性を疑うこともできる。

 記事はこの証言の一方で近くに住む50代の男性の「家族が2、3日前に警察から『子どもの泣き声を聞かなかったか』と尋ねられました。日渡容疑者は自治会に入っていないので交流もありませんでした。児童虐待のニュースは最近よく聞くので、自分の周りでも起きていたとしたらショックです」との証言を伝えている。

つまり警察は隣近所の住人をより確かな情報源として聞き込みを行っていたが、それ以上に確かな情報源となるアパートの住人に対しては何ら接触は図っていなかったことになる。警察の方から情報源の厳格な秘匿を条件に承諾を取った上で相手の都合のいい時間に定期的に電話を入れて、「何か変わったことはないか」と情報を収集する方法は取らなかった。

関係機関の学習能力の欠如の上に、「こんな痛ましい出来事をもう繰り返してはならない」、「子供の命を守るのは私たち大人の役割であります」、「政治の責任において、抜本的な対策を講じます」は言っているだけ、対策を取っていますと言うだけで、その対策を生かすことも、関係機関に徹底させることもできないでいる。


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