ケイの読書日記

個人が書く書評

上野千鶴子 「ひとりの午後に」 NHK出版

2018-06-19 17:54:56 | その他
 先回、香山リカを読んだせいか、フェミニストで有名な上野千鶴子のエッセイを読んでみたくなる。でも、数ページ読んで、京都の美味しい和菓子(上野先生は学生時代、京都に住んでいた)の所で、気が付く。これって、以前、読んだことある!!って。
 エッセイって、同じ題材を何度も別のエッセイに仕立てる事があるから、それなのかな?と思い、先に進んでいくと…上野先生の生まれ育った金沢の町の事、開業医だった父親から溺愛された事、母と祖母の折り合いが悪かったこと、などなどの文章がドッサリ載っていて、既読を確信!
 これを止めて、別の本を読み始めようか…とも考えたが、数年前読んだ時とは違った発見があるかもしれないと、最後まで読む。

 記憶力が悪いので、まるで初めて読むように新鮮な感動がある。
 これって、そんなに古い本じゃない。2010年発行だから、上野先生のベストセラー『おひとりさまの老後』の後に出された本なのだ。だから、上野千鶴子を有名にしたフェミニズム運動の本じゃなくて、高齢者問題にかなりの紙面をさいている。

 エイジズム(高齢者差別)という言葉があるそうだ。アメリカのフェミニスト バーバラ・マクドナルドさんの言葉が引用されている。

 若い女たちは、あなたがどんなふうに生きてきたかを聞かせてくださいと、年老いた女のもとへライフヒストリーのインタビューにやって来る。だれも、私が日々何を感じ何をして生きているかを訊こうとしない。そう、彼女たちは、私の「現在」にではなく私の「過去」にしか関心を払わない。しかし私は「過去の人」ではなく、こうして日々を生きている、ただ高齢なだけの女だというのに。高齢者は過去の抜け殻ではない。それどころか、だれも経験したことのない年齢という日々に新しい現実を探検している最中だというのに。


 ただ、ただですよ。このバーバラさんが20歳だった時に、80歳の女性に探検家としての敬意を払っていたかは、分からない。20歳の女性は、自分が将来80歳になるという事が実感できないんだ。若いという事は、そういう事。

 自分が今、86歳の母のお守りをしていて言いたい事は「では、あなたはそうしましたか?」だ。母は繰り返し体調の悪さを愚痴り、私がそれに真面目に答えないので文句ばかり言うが、では、あなたは自分の親や舅姑の愚痴に付き合い、優しい言葉をかけてやったの? それどころか、ろくに顔もみせなかったでしょうに。
 自分がやってきたことを思えば、あきらめもつくんじゃないの?と言いたい。

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