ケイの読書日記

個人が書く書評

湊かなえ 「少女」 早川書房

2017-08-09 10:03:04 | 湊かなえ
 高2の夏休み前、由紀と敦子は、転入生から、彼女の友人が自殺した話を聞く。その告白に魅せられた二人は「人が死ぬ瞬間を見たい」という思いにとらわれる。
 由紀は病院でボランティアをし、重病の少年の死を目の当たりにしたいと願い、敦子は老人ホームで手伝いをして、入居者の死を目撃しようとする。

 
 彼女たちは偉い!! 願いが「人が死ぬ瞬間を見たい」であって「人を殺してみたい」じゃないから。「人が死ぬ瞬間を見たい」と相談されたら…「看護師さんになったら?」とアドバイスするかなぁ。でも、そういう事じゃないんだよね。周囲は何も知らない子ども。私だけが『死』を知っている大人だ。だって私は「親友の死を目の前で経験したんだもの」といった特権意識にひたりたいんだろう。

 「人を殺してみたい」と相談されたら…困る。外人部隊に志願するか(給料、良いらしい)、テロリストの仲間になるか(自爆テロを起こせと言われ腹に爆弾まかれそう)、自殺志願の人と出会って委託されるか(それでも罪を問われるだろう)


 この小説では『因果応報』も大切なファクター。生徒の小説を盗作した国語教師は、成績表データが流出し退職に追い込まれ、電車に飛び込む。うそ痴漢をでっち上げ、気の弱いサラリーマンからお金を巻き上げた女子高生は、自分の親が犯罪にかかわったとして、クラスから迫害され自殺する。
 家庭内で居場所が無いおじさんは、職場のモデルハウスで、娘と同じ年頃の女子高生にセクハラし、ストレスを解消しようとするが、逆に訴えられる。
 自称小説家と援助交際していた女の子は、悲惨な最期を…。

 そういえば、由紀の認知症のおばあちゃんだけは、どんなに人に暴力をふるっても報いが来ないね。それとも、ボケながら生き永らえているのが『因果応報』なのかも。
 しかし由紀など、命に係わるほどの暴行を受けたのに、後遺症が残って、左手で物が持てないほどのケガを負わされたのに、両親は身内の恥は外に出さないと言って、由紀が自分でガラスを割ってケガをしたと医者に伝えている。こういう所が分からない。
 施設に入所しても、職員に暴力をふるい、その人が泣きながら辞めていったのに、何のお咎めもなし。これって傷害事件だよ。


 そうそう、青酸化合物を使った連続殺人事件で、男性4人への殺人罪に問われた筧千佐子被告も、弁護側は、被告は認知症なので無罪、と主張している。認知症って無敵なのね。驚くワ。


 まとまりのない事を書いたが、さすが湊かなえ、面白い。一気に読めます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 酒井順子 「朝からスキャン... | トップ | 安達正勝 「物語 フランス... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

湊かなえ」カテゴリの最新記事