ケイの読書日記

個人が書く書評

ジェーン・スー 「生きるとか死ぬとか父親とか」 新潮社

2019-08-18 09:50:07 | その他
 以前にも書いたけど、ジェーン・スーさんは東京生まれ東京育ちの日本人。中国系ではない。1973年生まれだから、現在は40代半ばか。
 ラジオのパーソナリティーやってるらしいが、聴いた事はない。でもエッセイは読んでる。面白いよ。特にタイトルが。『貴様、いつまで女子でいるつもりだ問題』『私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな』『今夜もカネで解決だ』 ね? 思わず読みたくなっちゃうでしょう?

 さて、本作は、ジェーンさんのお父様の事が色々書いてある。彼女のエッセイにお父様はよく登場し、すごく存在感のある人なので、どんな人生を送ってきたのか興味があった。
 昭和13年生まれの戦中派。中退しているが大学には通っていたので、それなりのお家だったんだろう。仕事をいろいろ経験して、貴金属の販売会社を立ち上げる。一時は某有名デパートに店を出していたっていうんだから、スゴイ。
 そして小石川に4階建ての豪邸を建てる。1,2階が会社。3,4階が住居。この時が絶頂期。本業はそれなりに儲かっていたが、サイドビジネスはことごとく失敗。そうしているうちに本業の方も傾いていき、精神的な支えである奥様が(ジェーンさんのお母様)ガンで亡くなり、ますます経営状態は悪くなっていった。
 
 ジェーンさんは、勤めを辞め家業を手伝い出すが、なんともならない。4階建ての家はとっくに借金のため人手に渡り、家賃を払ってその家に住み続ける。ジェーンさんの15万円ほどの給料も、誰かから借りていた。それどころか、支払いが足りず、ジェーンさんは自分の貯金をくずして支払いに充てる始末。
 2年頑張ったがどうにもならず、家を手放し商売を畳んだ。
 ジェーンさんは本当に頑張った。お父様は…うーん、沈むと分かっている船でも、自分のものだとなかなか手放せないんだよね。

 親子なんて皆そうだろうが、ジェーンさん親子も仲のいい時もあるが、ケンカばかり。特にお父様は、経済的に厳しいので、1人娘のジェーンさんが色々援助している。友人達は「オレオレガチ」と言ってるそうだ。ニセ息子がオレオレと電話口で言ってお金をせしめるのではなく、本当の親がオレオレと言って、お金を娘から引っ張るのだ。
 お父様は、羽振りの良かった頃の贅沢が忘れられずにいる。一人娘のジェーンさんも、自分の子どもがいないし、それなりに稼いでいるので、お父様に甘い。帽子や服や靴などをどんどん買ってあげるし、会う時にはいつも有名レストランで食事する。
 冷ご飯にたくあん載せて、お茶漬けでいいじゃん!と私なら思うけど、何年間か裕福な暮らしをした人たちは、そういう訳にはいかないんだろう。
 それ以上に、お父様には、人の気持ちを引き付ける魅力があるというべきか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 深緑野分 「戦場のコックた... | トップ | 田丸公美子 「シモネッタの... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事