ケイの読書日記

個人が書く書評

出久根達郎 「セピア色の言葉辞典」 文春文庫

2018-10-07 12:26:00 | その他
 今では使われないが、昔はよく使った言葉の語源とか使用法、意味の変遷など、古本屋店主の筆者が、エッセイ風にまとめてある。

 一番最初から衝撃を受けた。「ぼる」これって、私は最近の俗語だと思っていたけど、結構古いんだ。明治の西洋史学者滞欧日記に、この「ぼる」が使われているらしい。「明治32年11月28日、先頃マルセーユにて同行者と一緒に写したる写真は、7枚にて80フランという非常なるぼられ方をしたるが…」  へーーー、当時のエリートが日記に書いているんだ。
 「むさぼる」から来てるんじゃないかと、筆者は推測する。

 それから「現ナマ」。現金をギャング風に言うとこうなる。どう考えても戦後の言葉だと思ってたが、江戸時代からあるらしい。ビックリ!!! 1800年代ごろには、すでに常用されていたようだ。
 しかし…時代劇で「現ナマで百両」なんて悪代官が越後屋に要求してたら、時代考証ちゃんとしろ!と怒る視聴者がいるだろうね。

 こういった分かりやすい文章ばかりじゃなくて、しっかり読んでいるつもりでも、私が物を知らないからだろう、意味が分からないエッセイがある。例えば、業界用語や花柳界言葉。まあ、業界用語の符丁など、意味が分からなくても全くOKだが、花柳界の言葉なら、意味を知りたい。でしょ?
 そうそう、「訳知り」は、一般的に使われている言葉だが、もともとは「情事に通じている人」を指すんだそうだ。遊郭で使われだした言葉らしい。
 そういえば「訳あり」の訳って、雰囲気的に色っぽい事情を想像しちゃうよね。

 また筆者は猫が好きなので、猫の話もよく出てくる。 
 ある時、寒川猫持という人から、歌集が贈られたそうだ。その中に、猫の歌ばかりが載っている。こんな歌がある。
 「食っちゃ寝て 起きりゃまた食い十六年 ドラえもんにもバスにもならず」   笑っちゃいました! 私も、みぃ太郎の川柳を作ろうと思っているが、なかなか難しい。猫持さんのようにはいかない。

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