ケイの読書日記

個人が書く書評

井上荒野「だれかの木琴」

2013-10-26 10:10:26 | Weblog
 秋の夜長、就寝前に少しずつ読んでいくつもりだったが、一気に読んでしまった。面白いというか痛々しすぎて、ページをめくる手を止めることができなかった。

 
 41歳の専業主婦・小夜子は、初めて入った美容院でカットしてもらった若い男性美容師を気に入り、つきまとうようになる。
 最初は頻繁に美容院に通い、つぎに彼の住居を突き止めプレゼントし、彼の行きつけの居酒屋に押しかける。ストーカー行為はどんどんエスカレートし、彼の恋人の勤務先にも現れるようになる。
 ここまで来ると、最初は面白がっていた彼の恋人も、プチッときれて、彼を引きつれ、小夜子のダンナにぶちまける。「あなたの奥さんが何をしてるか知ってるんですか?ストーカーですよ」

 小夜子が、その若い男性美容師に好意を持っているのは事実だが、2人の間に何があった訳でもない。男性美容師は、だた髪をカットして、後で「またよろしく」の営業メールを送っただけだ。小夜子の彼に対する気持ちは、恋愛感情というより、執着といった方が正しい。うーん、しかし、ただ髪をカットしてもらい営業メールをもらっただけの男に、そんなに執着できるかな。
 できるんだろう。ある事件を思い出した。


 ずいぶん前の事件だが、運送会社の経理に勤める20代の女の子が、総額2億円ほどの会社のお金を横領し、男に貢いだ事件があった。(その女の子が名古屋在住だったので、よく覚えている)
 よくある横領事件だが、驚くべきことに、なんと、この2人、一度も会ったことが無いのだ。彼らが顔を合わせたのは、逮捕起訴され、裁判で顔をあわせたのが初めてだったという。信じられる? 一度も会った事ない男に、2億円貢ぐなんて。
 出会い系サイトで知り合って、男は、全く別人の男性モデルの写真を自分のだと言って、女の子に送ったという。
 お金も、最初は5万10万が、膨らんでいったのだろう。

 それにしても…。男の騙す手管が上手いというより、女の子の中にある執着気質が、どうしようもなく大きくなっていたんじゃないだろうか?

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