ケイの読書日記

個人が書く書評

山本文緒 「アカペラ」

2016-11-14 09:05:56 | その他
 帯の惹句に「あなたの心を温める物語3篇」とあったので、もっとハートフルな話かと思ったが…ちっとも心が温まらなかったよ。
 山本文緒は、甘い恋愛話の中に少し毒があるのが魅力の人だったが、少し変化したのかな? 親や祖父母の病気や介護や死の話が出てきて、ああ、この人もそういう年代になったんだ、そうか、私と同い年じゃない?! などと気づく。

 3篇とも近親相姦みたいな雰囲気があり、それも嫌。

 第1話「アカペラ」では、異常に仲の良いおじいちゃんと孫娘がでてくる。孫娘は中3で、両親の不仲など問題を抱えているが、お友達がいっぱいでキラキラ楽しい中学生活を送っている。
 ああ、こういうの、わたしダメ。女子中学生っていうのは、村田沙耶香が書くようにスクールカーストの底辺で喘いでいたり、津村記久子の書くように家庭の問題で押しつぶされそうになっていたりしなくちゃ、共感できないんだ。

 第2話「ソリチュード」は、イケメンの男が、父親の死を機に家に戻り、昔の恋人と再開する話。冒頭「おれは駄目な男です」で始まるので、どれだけダメなんだろうかと楽しみに読み始めると、そのイケメンがいかに女にモテたかの話が、延々と続く。

 第3話「ネロリ」は、生まれた時から病弱で39年間一度も働いたことのない弟と、会社勤めして家計を支えている50歳の姉の二人所帯が登場する。弟と仲良くなり、家に出入りするようになる若い女の子と、姉にプロポーズする男も登場。
 最後に少し驚くどんでん返しがあるんだけど、これ、年齢的に無理なような…。


 三話ともファッションにこだわる人が出てくる。「秋物のセーターは、たぶんディーゼルで、椅子の背にかけてあるジャケットのタグはポールスミスで、スニーカーはパトリックです」(アカペラ)
「リーバイスを1本、レッドウィングのブーツを1足、カルバンクラインの下着を数枚買った」「バーバリブラックレーベルの店員に春物ジャケットを勧められた」(ソリチュード) 「彼女の服装が変」「色や素材の組み合わせがちぐはく」(ネロリ)

 そうだよね。山本文緒のエッセイも読んだことあるけど、彼女もブランドにはうるさい人みたい。

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