ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「しかばね台分譲住宅」

2012-05-18 11:37:32 | Weblog
 『怪笑小説』という短篇集の中の1作品。すごく気に入った。ストーリーが、というより題材が。

 東京都心へ3時間かかる『しろかね台分譲住宅』。緑が多く環境がいい(内心は値上がりを期待)という事で、引っ越してきた家族達は、バブル崩壊、転売してもっと都心の近くに住もうというアテがはずれ、ガックリきている。

 そんな折、分譲住宅の道の真ん中に、他殺体が転がっているのを発見!

 住民達は恐る恐る他殺体を眺めていたが、彼らの取った行動は驚くべきものだった。
 ここで他殺体が発見されると、家がもっと値下がりする。だから警察に連絡するのではなく、どこかに捨てに行こうというの!!

 ここでは、殺された男の身元も,動機も,殺害方法も全くどうでもいい。ただ、自分達の家の市場価値を落とす、憎い物体となっている。


 そうだよね。自分の家の前で他殺体が発見されたら、本当に困るだろう。
 それだけじゃない。オ○ム真理教の道場が同じ町内にあっても、ヤクザの組事務所が近くにあっても、騒音おばさんが隣に住んでいて、大音量でラジオをつけていても、我が家の市場価値はかぎりなくゼロに近づく。
 家を買うことは、本当に大きなバクチです。


 若者達よ!! バブル崩壊後の、住宅価格の下落の恐ろしさを覚えていないだろう(当たり前か)
 同じ分譲地内の、売れてない家が、折込チラシに載るたびに、200万円・300万円・500万円と値引きされていくのだ。
 これじゃあ、必死になって働いて、ローンを返済していくのがバカバカしくなるのは当然。あの頃は、こういったトラブルが各地で相次いだなぁ。

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