ケイの読書日記

個人が書く書評

「鉄の檻の中の男」 平井呈一翻訳

2021-09-12 15:03:07 | その他
 創元推理文庫の中の「世界怪奇実話集」のうちの一編。よくあるポルターガイストとか幽霊が家の中をウロウロするという怪異話。
 こういう話は、古今東西よくあるので飽きてくるが、この「鉄の檻の中の男」は、1785年or86年の話で、イギリスの裕福な地主階級の家族が、子どもたちにフランス語を習わせるため、フランスのリーユという土地に行き、そこで大きな屋敷を借りて滞在するという話。

 1785年or86年という事は、フランス革命の数年前(フランス革命は1789年)で、当時フランス国内は色々と騒がしかったんじゃないだろうかと思って読んだら、まったくのんびりしたもの。当時はイギリスはヨーロッパの片田舎で、フランスこそヨーロッパの中心。つまり世界の中心。だから上流階級の人々は、母語よりもフランス語の習得に熱心だったんだろう。
 子どもだけをフランスの学校に入学させる…というのではなく、家族みんなで使用人たち(女中頭、乳母、小間使い、給仕、御者、馬丁たち)も連れて、イギリスからフランスに渡っている。そうそう、さっきフランスの学校に入学と書いたが、こういったハイクラスの人々は、学校ではなくフランスの家庭教師をつけるのだ。

 知人友人もフランス国内にたくさんいるし、自分の領地は信用のおける人に任せ、外国暮らしをするんだろうね。すごいなぁ、EUで統合しなくても、上流階級はとっくに統合してるんだ。

 そういう事ばかりに感心していたので、肝心の「鉄の檻の中の男」の幽霊については、特に何も書く事が無い。皆さんが想像するように、この屋敷の正当な跡取りが、腹黒い親戚によってこの檻の中に閉じ込められ殺されてしまい、その怨念が彼を幽霊にし、屋敷内を歩き回らせているんだろう。
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