萩原朔太郎の散文詩風な短編小説に、イラストレーターのしきみが絵を載せている。立東舎という出版社が出している『乙女の本棚シリーズ』の1冊。とてもキレイな絵本。しきみさんは『刀剣乱舞』のキャラクターデザインをやった人なんだね。
萩原朔太郎は、彼の詩が高校の教科書に載ってたから、有名な詩人だという事は知っていたが…残念ながら、それ以上ではない。小説も書いているんだ。この『猫町』は、1935年に発表されたので、1886年生まれの朔太郎の49歳の時の作品。
もう、とっくに日中戦争は始まっていて、あと6年で日米開戦という時代に、よく発表出来たなと思えるほど、退廃的な雰囲気が漂っている作品。
現実の旅に興味を持てなくなった「私」は、薬物によってトリップ旅行をするようになる。ただ、それは私の健康をひどく害した。健康を回復させようと散歩をするようになるが、その中で、私の風変わりな旅行癖を満足させる1つの新しい方法を、偶然発見する。
私の散歩コースはいつも同じだが、ある日、知らない横丁を通り方向がわからなくなる。迷子になってしまい、早く家へ帰ろうと焦っていると、私の知らないどこかの美しい街の往来に出た。こんなキレイな町が、私の家の近くになぜあるんだろう、夢を見ているんだろうか怪訝に思っていると、私の記憶の常識が回復する。
気づくと、それは近所のありふれた退屈な町なのだ。単に私が道に迷って、方向を錯覚したのが原因。いつも南のはずれにあるポストが北に見えた。いつも左側にある街路の町家が右側に見える。これらの変化が、町を珍しく新しいものに見せたのだ。
そして私は、以前、北越地方のK温泉に逗留していた時の不思議な経験を思い出す。
K温泉から鉄道でU町に向かう時、途中下車して徒歩でU町の方へ行った。物思いにふけりながら歩いていると、自分が迷子になった事に気づく。焦りだすとますます道が分からなくなり、不安はますます大きくなる。ようやく細い山道をみつけふもとまで行くと、そこには思いがけないほど繁華な美しい街があった。
こんな辺鄙な山の中に、どうしてこんな立派な大都会があるのか信じられない。男は紳士的で女は上品で美しく、音楽のような声で話していた。町全体が、繊細な意思で構成されていた。
そこに、黒いネズミのような動物が、町の真ん中を走って行った。
その瞬間、世にも奇怪な恐ろしいい異変事が出現。
猫の大集団が、町のいたるところを、うようよ歩いている。どこをみても猫ばかり。
恐怖に身がすくみ、もう一度目を見開いてみると…猫の姿は消えていた。町は何の異常もなく、がらんとしていた。美しいと思った街並みはどこにもなく、よく知っている鄙びたU町だった。
これが狐だと日本むかし話になるけど、猫だと少しコケテッシュ。素敵な話だと思う。
萩原朔太郎は、彼の詩が高校の教科書に載ってたから、有名な詩人だという事は知っていたが…残念ながら、それ以上ではない。小説も書いているんだ。この『猫町』は、1935年に発表されたので、1886年生まれの朔太郎の49歳の時の作品。
もう、とっくに日中戦争は始まっていて、あと6年で日米開戦という時代に、よく発表出来たなと思えるほど、退廃的な雰囲気が漂っている作品。
現実の旅に興味を持てなくなった「私」は、薬物によってトリップ旅行をするようになる。ただ、それは私の健康をひどく害した。健康を回復させようと散歩をするようになるが、その中で、私の風変わりな旅行癖を満足させる1つの新しい方法を、偶然発見する。
私の散歩コースはいつも同じだが、ある日、知らない横丁を通り方向がわからなくなる。迷子になってしまい、早く家へ帰ろうと焦っていると、私の知らないどこかの美しい街の往来に出た。こんなキレイな町が、私の家の近くになぜあるんだろう、夢を見ているんだろうか怪訝に思っていると、私の記憶の常識が回復する。
気づくと、それは近所のありふれた退屈な町なのだ。単に私が道に迷って、方向を錯覚したのが原因。いつも南のはずれにあるポストが北に見えた。いつも左側にある街路の町家が右側に見える。これらの変化が、町を珍しく新しいものに見せたのだ。
そして私は、以前、北越地方のK温泉に逗留していた時の不思議な経験を思い出す。
K温泉から鉄道でU町に向かう時、途中下車して徒歩でU町の方へ行った。物思いにふけりながら歩いていると、自分が迷子になった事に気づく。焦りだすとますます道が分からなくなり、不安はますます大きくなる。ようやく細い山道をみつけふもとまで行くと、そこには思いがけないほど繁華な美しい街があった。
こんな辺鄙な山の中に、どうしてこんな立派な大都会があるのか信じられない。男は紳士的で女は上品で美しく、音楽のような声で話していた。町全体が、繊細な意思で構成されていた。
そこに、黒いネズミのような動物が、町の真ん中を走って行った。
その瞬間、世にも奇怪な恐ろしいい異変事が出現。
猫の大集団が、町のいたるところを、うようよ歩いている。どこをみても猫ばかり。
恐怖に身がすくみ、もう一度目を見開いてみると…猫の姿は消えていた。町は何の異常もなく、がらんとしていた。美しいと思った街並みはどこにもなく、よく知っている鄙びたU町だった。
これが狐だと日本むかし話になるけど、猫だと少しコケテッシュ。素敵な話だと思う。
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