日々是マーケティング

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再編が進まない百貨店?その理由を探る

2008-10-04 21:23:22 | ビジネス
三越と伊勢丹が共同で持ち株会社を作り、経営統合をするという話は、昨年のことだったと思うのだが、どうもその話が順調に進んでいないようだ。
今日の産経新聞のWEBサイトに、三越・伊勢丹、リストラでせめぎ合い 関係ぎくしゃく?という記事が、掲載されている。

百貨店の再編成は、「松坂屋と大丸」や「阪急と阪神」などがあった。
それらの次に注目されたのが、三越と伊勢丹の経営統合だったのだ。
しかし、この経営統合は最初から難しさが指摘されていた。
というのも、企業文化がまったくといってよいほど違う、百貨店同士だったからだ。
対極にある企業文化を持っているといっても過言ではない、百貨店同士といっても良いのかも知れない。

伊勢丹は、売上が低迷する百貨店の中で、唯一といってよいほどの「勝ち組」だ。
「勝ち組」となった理由は、それまでの百貨店には無い生活者への提案や、新規顧客層の取り込みが、実に上手かったからだ。
今や百貨店だけではなく、小売店でも当たり前になった「セレクトショップ」という提案も、伊勢丹が先駆け的に行い、成功した売場スタイルだ。
それに対し、三越は「今日は帝劇、明日は三越」という名コピーがある程、伝統ある百貨店
伝統というよりも、今では当たり前になった「店頭現金販売」、「定価販売」という「日本における百貨店ビジネス」を始めたのも、三越が最初だったといわれている。
その意味で三越は、現代の小売業のビジネスモデルを創りた誇り高い百貨店だ。

その様な対極にある企業文化をもった、二つの百貨店が経営統合するのだから、それなりの摩擦があってもおかしくは無いだろう。
むしろ企業文化摩擦が起きなくては、おかしい。
問題は単なる経営統合ではなく、伝統と先進性を持った百貨店文化を創りあげていくのか?という点なのだ。
それが、経営統合という一点だけに集中してしまっている事が、今回のようなギクシャクした関係となっているのではないだろうか?

実はこの事例とは別に、気になっている百貨店がある。
正しくは、「百貨店があった」だ。
私が子供の頃過ごした浜松には「松菱百貨店」という、古い百貨店があった。
第二次世界大戦でもその建物は焼け残り、昭和初期の重厚な大理石のエントランスが素敵なクラシックな建物だった。
その松菱百貨店が倒産をし、引き継ぐ事になった大丸が建物取り壊し、進出をするという話になっていた。
イメージとしては、日本橋三越百貨店(大阪であれば阪急百貨店)の店舗を取り壊して、新しい百貨店が建つような感じだ。
この話を聞いた時、「大丸は浜松の人達から、支持されるのだろうか?」という懸念したのだ。
そしてやはりというべきか?白紙に戻ってしまった。
白紙になった理由(紹介記事は、朝日新聞・静岡版)は、浜松の人達云々ということが理由ではないようだが、浜松の人達にとって松菱という百貨店の存在は、単なるお店だけではないと感じていたのだ。

百貨店は時代とともに変化していくモノだが、反面、「買い物という思い出」も提供してきて場所でもあるはずなのだ。
しかしそれは、売場の雰囲気であったり空気のような目に見えるモノではない。
また、大手スーパーなどが中心となっている大型ショッピングセンターとも違う、独特な空気感がある場所でもある。
その独特な空気感こそ、個々の百貨店の企業文化であり、経営統合とはその企業文化をお客様と共に古い空気感+新しく創っていく文化摩擦でもあるのではないだろうか?

何も百貨店だけに限ったことでは無いが、「経営統合」には、そんな覚悟もまた必要なのだと考えるのだ。