日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

地方だからできるコト

2012-10-03 19:37:11 | アラカルト
先日FMを聞いてたら、岐阜県高山の左官職人さんのお話があった。
左官という仕事自体、今では余り聞かなくなってしまった様な気がしたので、チョッと気になった。

その方のお話だと、左官の仕事と言っても今はコンクリートの壁を塗るのが主な仕事で、それもクロスの下塗りのような仕事が主だという。
確かに、マンションの様な集合住宅はもちろん、戸建てであっても多くはいわゆる「ハウスメーカー」が建てている。
工務店と建築家が一緒になって、建てる家そのものを見かけるコトが少なくなってきた。
もっとも最近では、「シックハウス症候群」などの問題から、あえて無垢の木材に珪藻土の塗り壁で家を建てる方もいらっしゃる様だが、その様なこだわりのある家を作られる方はまだまだ限られている様に思う。
そう考えると、確かに左官職人さんの主な仕事が、昔の様な漆喰や土壁を塗ると言う仕事はほとんど無い、と言うコトわかる。
そんな現状に疑問を感じ、自ら違う方向性を見いだしていると言う左官職人さんのお話だった。

その様なお話を聞きながら、明治時代~昭和初期にかけて数多く見られた「鏝絵」を思い出したのだった。
古い蔵の明かり取りの扉などに左官職人たちが、鏝で描いた漆喰の絵は日本独特のもの。
建築物の中に芸術が違和感無く取り込まれている、と言う点では世界的に見ても面白い存在だと思う。
そしてそのモチーフも様々。
その時々の流行を思わせるモノや蔵の持ち主の趣味趣向を感じさせるモノもある。

衰退の一途を辿っていた「鏝絵」だが、最近再評価される様になってきていると聞く。
地方によっては「鏝絵」を観光の目玉にして、町おこしをしているトコロもあるようだ。
開発のサイクルが早い都市部では、まず保存するコトが難しいだろう。
ただ「古いモノが良い」と言う訳では無いと思う。
むしろこの様な技術の継承の為には、「新しい鏝絵」という考えが必要だと思うし、それができるとしたら、昨年甚大な被害にあった東北地方なのではないだろうか?という、きがしたのだった。

宮城県から岩手県にかけての沿岸部は、巨大津波によって壊滅的な被害を受けた。
当然、住民の方たちの「高台移転」は必要だと思う。
その時、できればかつて自分たちが住んでいた地域の再現とまではいかなとしても、何かシンボル的な町並みづくりをしてはどうだろうか?
被災地には、古い建物も数多くあったと聞く。
とすれば、「鏝絵」で飾られた蔵などもあったのではないだろうか。
古い酒蔵があったなら、その酒蔵を新しい町のシンボルとして「鏝絵」を何処かに飾る。
そんな町作りと職人芸術が出会うコトで、コレまでとは違う「復興の姿」が生まれるのではないだろうか。
そしてそれらが新しい観光となっていけば、もっと素敵だと思う。