日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

30代~40代の夫に求められる「家庭スキル」

2015-06-04 15:30:35 | ライフスタイル

「VERY」という女性月刊雑誌がある。
一説によると、年収2千万円程度のご主人を持つ、30代~40代の主婦を対象とした、ファッション誌だ。
子育て世代の女性を対象とした雑誌ではあるが、その中心はメイクやファッションなど。
姉妹誌が「JJ」→「CLASSI」(→「VERY」)→「STORY」→「HERS」なので、大体の読者層というか、読者の生活志向がわかる雑誌でもある。

その「VERY」が発売日の今日、なかなか挑戦的?な広告を新聞に掲載している。
創刊20周年の広告のようだが、タイトルが「妻たちの逆襲、に気を付けて!」と、読者である女性のご主人に向けたカタチの広告になっている。
この「妻たちの逆襲」の切り口が、妻から突然切り出される「離婚話」の原因(と思われること)をいくつか列挙している。
その最初に取り上げられているのが
「ほぼ仕事だけしているくせに、俺ってちょっとイケダン?とか思っている世の中のご主人~!大丈夫ですか?たぶん大丈夫じゃないですよ。」
という、一文。
「仕事だけしているくせに」とは、すごい言い回しだな~と思うのだが、要は「仕事だけではなく、家庭でもそれなりに働いてほしい」ということを言っているようだ。

確かに、この文章の続きは
「子どもが熱を出したとき、仕事を切り上げ帰ってくるのは奥さんが8割ではないですか?子どもの(学校の)時間割、あなた(=読者のご主人)もちゃんと把握していますか?
忙しすぎて洗えなかった夕飯のお皿を、咎めたことはありませんか?」
になっている。
仕事をしながら子育てをされている、ワーキングマザーなら頷く文章だと思う。
そして、続く文章は
「子どもがママに甘えるのは当たり前。でも旦那さんまで甘えてどうする!」
となる。
「旦那さんまで甘えて・・・」というのは、「私は、あなた(旦那さん)のママではないのよ」という読者の本音かもしれない。

広告全体を読むと、「ご主人も、時にはVERYを読んでください」という内容なのだが、そこに書かれている広告文を読むと「これからの男性に求められるのは、家庭スキル」ということのようだ。
この「家庭スキル」というのは、たとえばトイレットペーパーが切れそうになる前に、何気なく取り替えておくとか、もう一歩進んでストックの状況をみて、買い足しておくといったことだ。
実際、この広告文には
「ストックが切れそうなトイレットペーパーを買ってこよう。言葉より、そろそろ態度で示そうよ。」
とある。

この文を読んだとき、今から20年以上前のドラマを思い出した。
そのドラマそのものはタイトルを含めストーリーそのものは覚えていないのだが、家庭の崩壊と再生のようなテーマのドラマで、母親が自分勝手な家族に対して「夏になれば、当たり前のように扇風機が出。冬になれば勝手にストーブが出ると思っているでしょ。あなたたちは気づかないかもしれないけど、全部お母さんがやってきたことなの」というセリフがあった。
その言葉で、家族が「家族とは何か?」ということに気付く、という場面だったのだが、「なかなかの名セリフ」という印象が残っている。
そうなのだ、この母親は家族が当たり前のように感じていることに関して、「違う!」と言いたかっただけではなく「自分」に対しての評価をしてもらいたかったのだ。

そのドラマから20年以上経っても、社会はあまり変わっていないのかもしれない。
ただ、今は「じっと耐える」のではなく、「女性を企業などで活用するなら、男性は家庭で活用させていただきます」という本音が、「VERY」のような広告となって表現されるようになった、ということだろう。

安倍さんだけではなく、今の日本の社会全体が「女性の活躍」などと言う反面、どこか違和感を感じるのは、その視点のなさが、今の日本の社会の中での「ズレ感」となっているのではないだろうか?