日経新聞のWEBサイトに、映像サイトがある。
日経新聞の関連雑誌などの担当者が、業界動向などを説明したりしている映像サイトだ。
そのサイトに、「カンヌ・ライオン」が紹介されていた。
「カンヌ・ライオン」といっても、広告に携わっている人以外は、「何?」と思われると思う。
いわば「広告界のカンヌ映画祭」のような位置づけの、広告祭だ。
それこそ、世界各国から選りすぐりの「広告(主にテレビCM)」が、紹介・評価される。
日経新聞:もう一つのカンヌ 広告は社会を良くする道具
ここ数年、「カンヌ・ライオン」では一つの流れのようなモノがある、と言われている。
それは、「社会とのかかわり」をテーマにした広告が、高い評価を受ける、という点だ。
今回トップで紹介されている「Volvo」の広告などは、「Volvoができる、社会を良くするための道具CM」ということだろう。
確かに、自動車メーカーの「Volvo」が、蛍光スプレーを開発する、というのは見当違いのように思える。
その見当違いと思われる商品を何故「Volvo」が開発したのか?ということを、このCMはわかりやすく説明をしている。
もちろん、自動車メーカーとして「事故を起こし難い自動車の開発」などは、していく必要はあると思うが、運転者から見ても認識しやすい蛍光スプレーというのも、ドライバーにとっては安心できる物だと思う。
もう一つ紹介されている「ウィスパー」のCMは、「女性の心理」に焦点を当てたCMだと思う。
「女の子らしく(または「女性らしく」)」という、女性が思い込んでしまっているイメージに対して「もっと自分らしく、女性であることを肯定すること」を訴えているCMだ。
女性であればわかると思うのだが、「ウィスパー」というのは、生理用品の商品名だ。そして、多くの女性にとって生理期間というのは、様々な意味で気分的な落ち込みだけではなく、自分が女性であることに対して、ネガティブな気分になる期間でもある。それが毎月やってくるのだ。女性にとって生理期間というのは、必要以上に自分が女性である、ということを認識させられ、社会的制約を感じる期間なだけで、決して楽しい期間でもなければ、うれしい期間でもない。それは女性の社会進出が強まるにつれ、そのような気持になる女性は、多くなっているのではないだろうか?
だからこそ、「女性であることを、肯定的にとらえませんか?自由に走り、遊んでいたころの女の子であった頃の自分のように。(そのお手伝いを「ウィスパー」はします)」と訴えているCMだ。
一方日本のCMとして紹介される「NTTドコモ」。
確かに、細かな部分にこだわり、面白く作られているCMだと思う。
その面白さの中に、伝えたいコト(「NTTドコモはどこよりも高速通信」というコト)もしっかり盛り込まれている。
CMとしては、面白く伝えたいコトも伝わっているのに、「Volvo」や「ウィスパー」のような、印象に残るものが少ない。
それは「自分のこと」として、考えるようなCMになっていないからだと思う。
そう考えると、日本の企業の多くは「経済活動」には熱心でも、「社会活動」にはあまり興味がないのかな?という気がしてくる。
そのような企業ばかりではないはずなのだが、テレビCMに限って言うなら日本の企業は社会と企業という視点で、生活者に訴えるコトを避けているような気がする。
「企業は社会に害を与えてはならない」といったのは、ドラッカーだった。
今は「企業が社会に貢献できること」をしなくてはならない時代、というコトを「カンヌライオン」は、言っているように思う。