日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「人」を思うデザインは、美しい

2015-09-26 22:52:54 | アラカルト

先日、元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんが、乳がんに罹患しているコトをブログで公表し、現在入院をされている。
手術は無事成功し、順調に回復されているようだが、これから先いろいろなコトが待っている。
その一つが、下着の問題だ。
拙ブログに来られる方の多くが、男性のようなので女性の下着といっても、ピンと来ないと思う。
「乳がん」の手術をした後というのは、手術痕の保護、その後の放射線治療と手術をしていない側の乳房のコトを考えたブラジャーが、必要になる。「医療用ブラジャー」と呼ばれるものだ。

ただ「医療用ブラジャー」というのは、お世辞にも「おしゃれ」とは言い難い。
「乳房喪失」という、強い身体的喪失感で打ちひしがれている時、「いかにも医療用」というブラジャーをする、というのは「あぁぁぁ、私は乳がん患者なのだ。綺麗なレースが付いたステキなブラとは縁がない身になったのだ」と、改めて感じる瞬間でもある。
そんな患者の気持ちを、英国のファッションデザイナー、ステラ・マッカートニーさんが「おしゃれをして!」と、「医療用ブラジャー」を発表していると、朝日新聞の「ファッション」記事に掲載されていた。

朝日新聞:バリアフリーを美しく 下着や義足の開発にデザイナー

ステラ・マッカートニーと名前を聞いて、オヤ?!と思われた方もいらっしゃると思う。
ポール・マッカートニーさんのお嬢さんで、母親であるリンダ・マッカートニーさんは乳がんで亡くなられている。
がん患者遺族だからこそ、「ステキなブラジャーを身に着けてほしい」という気持ちが、デザインに表れているような気がする。

他にも紹介されている「スポーツ用義足」を見ると、「義足」そのもののデザインが、シャープで躍動感があるように感じる。違う言い方をするなら「義足」がアスリートのような印象すら受ける。
もし、このような発想で、日々使う義足がデザインされたら、義足を使っている人達の気持ちも変わるのではないか?という気がしてくる。
もっと「街中へ出ていきたい!」という、気持ちになるのでは?

その「もっと街中へ出ていきたい!」という気持ちにさせるデザインが、ヤマハ発動機の「電動車いす」だと思う。
最近では、「電動車いす」を使って買い物をしたりする人の姿を、当たり前のように見るようになった。
以前のような違和感を、健常者も車いす利用者も持つコトが無くなりつつある、と感じている。
しかし、あの「無骨」で「重々しい」車いすというのは、おしゃれではない(と思っている)。
利用者視点という点では、あのようなデザインでなくては、難しいのかもしれない・・・と思いつつも、クルマをはじめとする「モビリティー」のデザインが、どんどん変化しているのに、「車いす」というモビリティーは大きな変化をしてこなかったような気がする。

ステラ・マッカートニーの「医療用ブラジャー」にしても、「スポーツ用義足」やヤマハ発動機の「電動車いす」にしても、それらのモノを使う人に対しての「思い」や「愛情」のようなモノがあり、「バリアフリー」という言葉のバリアを軽く飛び越えてしまうような美しさがある。
もしかしたら、デザインを美しくするのは「人を思う気持ち」かもしれない・・・と、感じさせるデザインだと思う。