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社会の動きを感じ取れない経団連?

2015-09-10 22:09:17 | ビジネス

新聞各社のWEBサイトを見ていたら、びっくりするような記事があった。
朝日新聞:武器輸出「国家戦略として推進すべき」経団連が提言

確かに、安倍政権になってから「武器輸出三原則撤廃」という動きはあった。
2013年7月23日付け
共同通信:安倍政権、武器輸出に新指針検討 禁輸三原則「撤廃
その後も、安倍政権は徐々に武器輸出への道筋のようなコトをしてきたのだが、経済界がある程度ブレーキ役になってくれている、という期待をしていた。
しかし、どうやらそうではなかったようだ。

経団連側としては、「アベノミクス」で潤ったお返しとして、このような提言を出してきたのかもしれない。
しかし、本当に経済人としてこの判断はどうなの?!という気がしている。
というのも経済の安定のためにまず必要なコトは、社会が安定をしているというコトだ。
「社会が安定している」ということを言い換えると、「平和である」というコトになる。
日本が平和であっても、諸外国が戦争や紛争をしていると、それだけで様々なビジネスチャンスは、失われているのだ。
そのような当たり前のコトを知っていながら、なぜ日本の経済人が積極的に戦争とかかわろうとするのだろう?

第二次世界大戦後、一番多く戦争をした国は米国だ。
そして米国の主な輸出産業の一つが、武器輸出である、ということは多くの人が知っているところだ。
確かに、兵器産業が社会にイノベーションを起こす、というコトはある。
今や当たり前になった「インターネット」は、もともと米国に点在する基地の情報を繋げるネットワークとして誕生した。
そのような例は、いくつもある。

もっと身近なところでは、「形状記憶」という素材だろう。
「形状記憶」という特性を持った金属の利用アイディアを、米国だけではなく日本などの同盟国の企業にもアイディアを募集したところ、米国では兵器のスプリングとしてのアイディア、日本ではワコールの「形状記憶ブラ」のアイディアが出た。
しかし、社会的なイノベーションとなったのは、どちらのアイディアだったのだろう。
おそらく「形状記憶ブラ」だったのではないだろうか?
なぜなら、「形状記憶ブラ」から派生し「形状記憶繊維」が誕生し、今では「ノーアイロン・ノープレス」のシャツやズボンが売られ、その恩恵を受けている人が日本だけではなく、世界中にいる。

日本の産業界(=経済界)が果たすべき役割というのは、この「形状記憶ブラ」のような使い方で、社会にイノベーションを起こすコトなのでは?
にも拘わらず、なぜ社会を不幸に陥れる産業を「国家戦略として推進すべし」という提言をするのだろう?
おりしも、世間では「安保法案反対!」の声が高まっている。
今このような社会状況の中で、このようなコトを提言するという、経団連のセンスもわからない。

経団連の歴代会長の中でも、社会に一番影響力があったといわれる故土光敏夫さんが、このような提言を経団連がした、と知ったら何と思われるだろう。
経団連のお偉い方々は、今一度土光さんの名言や生き方を、学んでほしいと思う。
そして、この夏公開された昭和天皇の「玉音放送」に込められた陛下のお言葉を、今一度読み直してほしいと思う。