日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

電通の焦り?過大請求の背景にあるコト

2016-09-23 19:16:19 | ビジネス

新聞各社が、「電通」の過大請求を報じている。
日経新聞:電通、2億円過大請求、ネット広告に冷や水も

この記事を読んだ時、最初に思い浮かんだ言葉が「焦り」だった。
ご存じの通り、電通をはじめとする大手広告代理店の重要クライアントは、いわゆる大手企業だ。
その大手企業のテレビCMなどを、クライアントが希望する時間帯や番組(=視聴者層)に合わせて、CMを流す時間を用意し、その時間枠を企業に販売する、というのがこれまでのCMの取引の大きな流れだった。

その内情(というほどではないが)をコミックにしたものが、ビックコミックスピリッツに掲載されている「気まぐれコンセプト」だ。
噂では「電通」ではなく、「博報堂」をモデルにしている、と言われているが、大手広告代理店の仕事としては、「電通」でも「博報堂」でも変わりはないと考えたほうがよいだろう。

日本のテレビCMの多くがテレビ番組と共存するようなカタチでつくられてきたため、提供されるテレビ番組そのものの魅力が無ければ、そのテレビCMは見られないということになる。
だからこそ、広告代理店はマーケティングに力を入れ、生活者をカテゴリーわけし、そのカテゴリーに合わせたイメージのテレビCMを制作してきた。
マーケティングで言われる「F1(=20代~30代前半の女性)、M1(=20代~30代前半の男性)」など、世代の志向に合わせたテレビCMを制作し、その層にあったテレビ番組でCMを流す・・・というのが、これまでの広告代理店の「広告」という仕事だった。
CM制作そのものにも、人気タレントさんや俳優さんを起用し、相当額の費用をかけるのが当たり前だった。
何故なら、世代志向に合わせた「(商品)イメージ」を伝えるのが、日本のテレビCMの基本(というべきか?)だったからだ。

しかし、ネットが一般化してくると、そのような世代層による生活志向が見えにくくなってくる。
インターネット広告をYahoo!などのバナー広告として見たとき、「邪魔!」と思っても「面白い」と感じる生活者は、どのくらいいるのだろう?
別に人気タレントさんや俳優さんが起用されていなくても、「面白い!」と感じる広告であれば、バナーをクリックするだろうし、逆に「面白くない(興味が無い)」と思えば「✖」をクリックして画面を消してしまうだろう。
それだけではなく、YouTuberと呼ばれる人たちの登場は、「映像制作に膨大な費用は必要ない」ということを、示してしまった。
大手広告代理店に頼まなくても、WEB会社がネット広告をつくることができるようになったのだ。
言い換えれば、これまでのテレビCMのような広告づくりが通用しない、というのがネット広告なのだ。

そして、これまで「電通」が得意としてきたテレビ広告の売り上げは、右肩下がりの状態になりつつある。
代わりに伸びてきているのが、ネット広告だ。
だからこそ、「電通」もネット広告に力を入れていたのだと思うのだが、どこか「焦り」のようなモノがあり今回のような不祥事を起こしてしまったのでは?という、気がしている。