日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

現場の混乱状態がわかる、広告の制作過程を広告にしてしまう日清カップヌードル

2017-10-17 23:42:36 | CMウォッチ

Huffpostに、分かるな~という記事が掲載されている。
Huffpost:無茶ぶりする偉い人、対応する現場・・・カップヌードルのTwitterが〝あるある”すぎる

電通の新入社員さんの自殺などで、広告の現場が華やかでカッコ良いものではない、ということが理解されつつある。
それどころか、クライアントの無茶ぶり、就業時間無視の訂正、変更指示など、ブラックな一面が世間で認識されるようになってきたように思う。

そのような社会状況の中で、日清のカップヌードルのTwitterによる、広告はクスっと笑ってしまう要素がありながらも、リアリティーを感じる。
特に、その指示内容はマジですか?という変更希望だ。
あくまでも想像だが、「ニューヨークのセントラルパークのような背景の中、(若い)女性が美味しそうにカップヌードルの新製品を食べている」というのが、広告のビジュアル表現の指示だったのだろう。
それが、上がりの広告写真を見るたびに、おかしな指示へと変化していく。
もちろん、ユーモアたっぷりにデフォルメをしているので、随分過剰な表現となってはいるが、同様の「え”!マジですか?」という、クライアントからの指示は、広告制作に携わる方であれば多少なりとも経験があるだろう。

しかも、そのような「無茶ぶり」の指示を出すクライアントは、往々にして最初は丸投げ状態で「まぁ、そんな感じで適当にやってよ」などと、言っているケースがあるように思う(あくまでも、私の経験値だが)。
社内においては、そのような「とんでも無茶ぶり」指示を出す上司を説得するのも、クライアント側の担当者として必要なことなのだが・・・相手は「気分」で言っていることが多く、しかも「センスが良い」と思っている為、説得も一筋縄ではいかない。

このTwitterを単に面白おかしく見せさせる、という日清のカップヌードルの広告は、実はもう一つ大切なことを伝えているような気がする。
Twitterを見ているすべての人に対してではなく、広告制作に携わる人たちだけに対する問いかけだ。
「あなたは、広告をどう考えているのか?」ということだ。
商品広告であれば、当然その商品のブランドイメージを、受け手となる生活者に伝える必要がある。
ブランドイメージは、企業側にとっては「目に見えない資産」であり、広告はその「資産を育てるツール」でもある。
「気分で無茶ぶりを平気でする」ということは、「ブランド」という「資産」に対して(余り)重要ではない、ということを言っているようなものでもあるのだ。
結果、この広告のように「セントラルパーク」のイメージは消え去り、若い女性のさわやかな表情は、中途半端なマンガチックへと変化し、一体何が言いたいのか分からない広告になってしまうのだ。

上述した通り、日清のカップヌードル側はこのTwitter上の広告制作を見せることで、受け手となるTwitterユーザーに注目をしてもらうだけではなく、「楽しさ(カップヌードルを食べて、楽しい気分になってほしい)」ということを伝えたかったのだと思う。
「ブランド力」があり、既に市場で認知されている商品だからこそできる手法であって、間違っても同様の手法を他社がまねをしても、失笑を買うだけという理解はする必要がある。