日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

グッドデザイン賞を受賞した、小湊鐡道が教えてくれること

2017-10-18 21:07:51 | ビジネス

先日、「グッドデザイン賞」の一つ「ロングライフデザイン」について、エントリをした。
長い間私たちの生活の中に溶け込み、使われ続けているデザインは、シンプルで控えめだ。
しかし、そのデザインを見るだけで、商品が特定されるだけではなくある種の懐かしさや安心感というモノを与える。
長い間親しまれてきたデザインというものは、デザインという範疇を超え企業にとっての重要な資産となっている、ということを示したような気がした。

そして、今日千葉の小湊鉄道がグッドデザイン賞を受賞した、というニュースがあった。
小湊鐡道が「2017年グッドデザイン賞」を受賞
鐡道の車両デザインが受賞の対象ではない。
鐡道とその沿線の里山が、対象となっているのだ。
この受賞で、考えたことがある。
それは、今盛んに地方で行われている「まちおこし」の企画だ。

ここ10年以上「まちおこし」として使われるのは「芸術祭」だろう。
これは新潟県の妻有地区で始まった「越後妻有 大地の芸術祭」が注目された。
それに続いたのは(?)は、瀬戸内海に浮かぶ島を船で結んで廻る「瀬戸内国際芸術祭」だろう。
「瀬戸内国際芸術祭」の会場の一つは、産廃の島と呼ばれた豊島で、今では産廃の島ではなく芸術の島という、イメージが定着しつつある。
このような過疎化が進む地域での芸術祭の成功が、「まちおこし」の方法として注目され今では、都市規模に関係なく、全国各地で「芸術祭」が行われるようになってきたように感じている。

確かに、このような芸術祭は開催期間中は、多くの人を集めることができる。
越後妻有の場合、若い芸術家たちが転居をしてきた、という効果もあったと聞いている。
ただ、地域によってはこのような「芸術祭」のような企画が、できない地域も多いのではないだろうか?
というのも、このような「芸術祭」には優れたプロデューサーやキュレーターが必要で、その人材は限られているからだ。
それだけではなく、全国各地でこのような芸術祭が行われるようになったことで、「目新しさ」というものも無くなりつつある。

それに対して、今回グッドデザイン賞を受賞した小湊鐡道と里山有志で構成された「まちおこし」は、芸術祭のような「特別なもの」に飛びついてはいない。
むしろ、元々地域にあった資産となるモノを見つけ出し、手入れをし直し、昔の日本の里山の原風景を復活させたのだ。
その里山の美しさに、芸術祭が加わったという経緯がある。

過疎が進む各地では、盛んに「まちおこし」を行っている。
「若者・よそ者・バカ者」が、まちおこしには適任といわれ、実際「まちおこし隊」として都市部の若者を準職員扱いとして、採用する自治体があるが、成功しているとは言い難い部分もあると聞く。
小湊鐡道と里山有志の場合は、そのような「まちおこし」の適任者ではなく、地元の人たち(まさに「有志」)が集まって、「まちを手入れする」ことから始めている。
ここに、これまでとは違う「まちおこし」のヒントがあるのではないだろうか?