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「GDP」という物差しでは、国の豊かさを測ることができない

2020-01-23 16:00:35 | ビジネス

Yahoo!のトピックスに、なかなか興味深い記事があった。
元の記事は、クーリエジャポンに掲載されたものだ。
Yahoo!:ノーベル賞経済学者が説く「GDPの最大化は、先進国が考えた的外れなゴール」

2019年のノーベル経済学賞を受賞したのは、55歳以上の米国・白人男性ではなく、フランス人の学者エステル・デュフェロさんと夫でインド出身のMITの教授・アビジット・バナジー、そしてハーバード大学のマイケル・クレーマー教授の3人共同受賞だった。
数年前までノーベル賞の経済学部門は「シカゴ学派」が有利と言われていたことを考えると、大きな変化と言っても良いだろう。
今回の受賞対象となった研究は、「世界の貧困軽減に向けたフィールド実験」だった。
これまでの「経済理論」のような内容ではなく、「フィールド実験」を対象としたのも、異例の受賞ともいえるかもしれない。
ただこれまでのノーベル賞は「貧困軽減」に関して興味を持っていた、ということは言えるだろう。
2017年にはバングラデシュで「少額融資」によって経済の自立を促すグラミン銀行の創立者ムハマド・ユヌス氏が、平和賞を受賞しているからだ。

今このような「貧困軽減」に注目して、経済を動かしていこうという機運が世界中で高まりつつある、と言っても過言ではないかもしれない。
それはこれまでのように、経済大国の企業が経済が豊ではない国に行って、現地法人を立ち上げ雇用をする、というのではなく、現地の人たちが自分たちの力で自立する経済発展の仕方だと言えるかもしれない。
それは同時に、今問題となっている「気候変動」などの環境問題と一緒に考え、解決の道を探ることでしか、解決できないことのような気がする。
何故なら、現在の経済大国では「気候変動対策と経済成長」というビジネスモデルを持っていないだけではなく、現在の経済優先のビジネスモデルから脱却する為には、相当な抵抗勢力があり決して簡単なことではないからだ。

とすれば、旧来のビジネスモデルを基にした「国の生産力=GDP」を「経済の物差し」とするには、これから先世界的に太刀打ちできない諸問題がおざなりになっていく、ということが明白だからだ。
何より、経済大国と呼ばれる国に目を向けると、「GDP」が世界で1位と言われる米国では「経済格差」が広がり続けている、という指摘もある。
トランプ氏の主だった支持者は、ご存じの通り「忘れ去られた人」と言われる、経済的落ち込みが全米でも大きな地域の人たちだ。彼らの不満である雇用や安定した収入が得られない環境ではあるが、米国としての「GDP」は世界1位だ。
既に「GDP」という物差しで、その国の生活者の豊かさを測ることができない、というのが経済大国であるはずの米国ですら起きている、というのが現状だろう。

経済大国で起きている「経済の格差」による社会的問題は、「GDP」とは全く関連性が無いということが分かる。
高度成長期のように「GDP」という物差しが、国民の豊かさの指標となった時代は既に終わっていて、その物差しで貧困国の経済発展を考えようとしたとき、そのビジネスモデルが陳腐化してしまっているのでは?と、考える必要があるのではないだろうか?