日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「幸福度」という物差し

2020-01-24 21:14:36 | ビジネス

Huffpostを見ていたら、昨日の「GDP」とは違う、「(働く人の)幸福度」についての記事があった。
Huffpost:働く人の幸福度の高め方とは。「世界のベスト・ワーク・プレイス2019」で明らかに

国や地域によって「働く人の幸福と感じるポイント」は、随分違うというのは当然だろう。
政治的に安定をしていない国や地域であれば、「安定的に仕事ができる。安定的な収入が得られる」ということが、幸福度の重要なポイントとなるだろう。
それが北欧のように、社会保障がしっかりとしている国であれば、「働きがいや自己実現」という、収入以外のことが幸福度のポイントとなるのは、当然と言えば当然だろう。

この「幸福度」の調査を見て、気づくことはないだろうか?
ビジネスだけではなく心理学などでも使われることがある「マズローの欲求階層」だ。
Wikipedia:自己実現理論

三角形の階層の下になればなるほど、生理的欲求であったり安全への欲求になり、これらの欲求は「人が人らしく生きていくための基本的な欲求」と言われている。
政治的・社会的不安定な国や地域の人たちは、この「人が人らしく生きていく為の基本的欲求」が、満たされることで「幸福を感じる」ということになる。
それが北欧のような社会保障が整い老後などの安心がある国や地域になれば「働きがい」といった「自己実現の欲求」が、「幸福を感じる」ポイントということになる、ということが良く分かる。

では日本の場合はどうなのだろう?
この記事で「え!」と思うのは、日本の労働時間が12時間となっている点だ。
今どき12時間労働を強いている企業など、建前としてはないはずだ。
大手と呼ばれる企業の多くは、「36協定」と呼ばれる時間外労働や休日労働などの規制がかかっているはずだからだ。
厚労省:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針(PDFファイル)

ご存じの通り、1日の労働時間は8時間、週40時間と定められたうえでの「36協定」ということになっている。
とすれば、12時間労働というのは、「36協定」違反ということになる。
だが、おそらく12時間労働というのは、勤務時間の現実なのだと思う。
それに加え、有給休暇の取得率も低い。

そのような労働環境の中で、日本人の感じる「働く人の幸福感」というのは、どこに見出しているのだろうか?
「やりがい」だろうか?それとも「自己実現」だろうか?
毎年暮れに発表される「ブラック企業大賞」に選出される企業を見て感じることは、「人らしさ」を求めにくいのが今の日本の企業での働き方なのでは?という気がする。
「企業の為に働く」ことが、労働者に求められていることであり、それが企業人として当然のことである、と言う刷り込みが高度成長期から続いているのかもしれない。

しかし今のように、多様な価値観の社会の中ではこのような「企業の為に働く=幸福なこと」では無くなりつつある。
実際、ダイバーシティーが進んでいる(=多様な価値観を持った人たちが集まっている)企業ほど、収益性が高く、社会からの信頼度も高い、というデータがある。
日本の働く人の幸福度を上げるためには、企業も働く側も大きな意識変革が必要なのかもしれない。