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グラミー賞は社会を映したのか?

2020-01-28 20:06:51 | トレンド

昨夜、米最高の音楽賞と言われる「グラミー賞」の授賞式があった。
わずか18歳のビリー・アイリッシュが、主要4部門を獲得し、話題になっている。
billboard Japan:第62回グラミー賞 ビリー・アイリッシュ主要4部門独占、計5つの賞に輝く快挙

久しく洋楽を聞いていなかったところもあり、受賞曲「Bad Guy」を聞いたことが無かった。
MVを見てみると、「これが受賞曲なのか・・・???」と思うほど、単調なリズムにかぶさるような呟きにも似た歌。何より、不機嫌そうな表情のMVで、驚いた。
欅坂を脱退した平手さんよりも、表情の不機嫌度は高いのでは?と、感じるほど表情そのものが無く、MVとしてもザワザワとした居心地の悪さを感じてしまった(おそらく、私がそれなりの年だからだろう)。
他にも候補となったLizzoの「Truth Hurts」のMVを見ても、これまでのような「楽曲」というよりもラップに近いような印象を持ったのだった。
そしてシチュエーションは結婚式なのに、このMVもどこか居心地の悪さのようなものを、感じてしまったのだ。

ただ、この「居心地の悪さ」のようなものが、今の米国なのかもしれない?と、感じる部分でもあった。
「歌は世につれ、世は歌につれ」と言う言葉があるように、その時々の時代感を言うものをヒット曲が表しているからだ。
今回受賞した「Bad Guy」は、日本語にすれば「悪い男」となる。
とはいうものの、楽曲とMVがリンクした表現となっているわけではないし、むしろ「Bad Guy」という言葉は、今の米国の閉塞感を持っている若い世代たちの心情的な「ジレンマ」を表現しているようにも見える。
また、LizzoのMVなどを見ると分かるのだが、MVの制作においても「キレイ」な表現を求められる時代ではなく、今の社会の様々な人たちを登場させる、ということが多くの人の気持ちをとらえるのだろうか?という、印象もある。
Lizzo自身、プラスサイズと呼ばれるような体形であり、そのコトに対して自信を持っているように見受けられるからだ。
彼女の場合、黒人+プラスサイズということを考えれば、華やかな米国の音楽業界においては「異端的存在」と30年くらい前なら言われただろう。
30年くらい前ならハンディであることが、今ではハンディではなくなってきている、ということを今回のグラミー賞は表したようにも思えるのだ。
ビリー・アイリッシュのファッションなどを見ても、「女性らしいファッション」ではなく、オーバーサイズの服を好んで着ることで、「性的なイメージを消す」ことに成功しているようにも思えるし、それが一つの彼女の主張となっているようにも感じるのだ。

もちろん、カントリー音楽の大御所となったタニア・タッカーがノミネートされていることも考えると、ノミネートされた楽曲やミュージシャンは、微妙なバランスで取れている。
ただ、18歳という若いビリー・アイリッシュがグラミー賞という米国における権威ある音楽賞を総なめにした、という事実は、アメリカという国が変わろうとしている姿のようにも見えるのだ。
それはおそらくトランプさんが推し進めるような、保守的なものではないのでは?という、気がしている。