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「コロナ禍」の最中にオープンするリゾートホテル

2021-06-23 13:26:10 | ビジネス

今チョッと気になっている、ホテルがある。
隠岐の島に新しくできる「Entô(エントウ)」という名前のホテルだ。
元々、隠岐の島にはホテルが1つしかなく、その1つしなかったホテルがリニューアルしてオープンする、ということのようだ。
この「Entô」というホテルには、枕詞の様な「ジオ×ホテル」という言葉が付いている。
隠岐の島は、ユネスコの「世界ジオパーク」に選ばれたことで、その豊かな自然を観光資源として、観光客誘致のためにそれまであったホテルをリニューアルした、ということなのだ。

一般的なホテルのHPは、ホテルの外観やホテル内の庭園などが登場するが、公式HPにアクセスすると、荒々しくも極彩色のような岩肌の写真だ。
この極彩色のような岩肌の写真がスライドしていきながら、隠岐の島の自然を紹介している。
事実隠岐の島の自然は、山陰という地域の中にありながら独特のものを持っている。
それは、離島ということも関係しているのかもしれない。
この「Entô」にとって一番大切でアピールしたいのは、隠岐の島の豊かな自然ということだと分かる。
そのため、「1泊客」ではなく、「数日の宿泊」をおそらく前提としているのでは?、という気がしている。

ここ10年くらい「リゾートホテル」の代名詞のように言われていたのが「星野リゾート」だと思う。
しかし、この「Entô」に関しては、株式会社海士と海士町が共同でプランをつくっている。
設計などに関しても「海士町の魅力であるジオパークが楽しめる」ことなどを優先して、隠岐の島の持っている「地域資産」をフル活用できるようになっている。
それを象徴するために打ち出したキャッチコピーが、「ないものはない」だ。
海士町プレスリリース:「ないものはない」という新しい贅沢を提案するジオパーク×ホテル「Entô」

このキャッチコピーだが、受け止め方によっては「すべてのものが揃っている」とも取れるし、「本当に何もない」と開き直ったようにも受け止められる。
おそらく両方の意味を持っているのでは?と、考えている。
それは「豊かな自然と、その自然に育まれた山海の幸すべてが、揃っている」という意味と「自然以外には何もない」という意味だ。

このキャッチコピーからもわかるように、この「Entô」が提供するのは「自然を楽しむ」という、今では贅沢だが「自然と遊ぶ」という能動的なリゾートホテルを目指している、ということでもある。
何でも用意がしてあり、様々なホテルライフが楽しめる提案がされている、というリゾートホテルとは一線を画すことをコンセプトにしているのだ。

切っ掛けは「ユネスコジオパーク」の登録だったとは思うのだが、このような考えでホテルがつくれたのは、島根県立隠岐島前高校の特色である「地域・教育魅力化プラットフォーム」という発想と「島留学」と呼ばれる県外からの生徒を積極的に受け入れる、という経験があったからだろう。
一見高校の運営ビジョンとホテルとは結びつかないように思えるのだが、隠岐の島という離島で地域コミュニティーがしっかりしている地域だからこそ、高校での「地域・教育魅力化プラットフォーム」の具現化として「Entô」があるのでは?という気がしている。

島のことは島に住んでいる人たちが、よく知っている。
だからホテルの中だけで過ごすのではなく、隠岐の島全体を一つの「リゾート施設」だと考えれば、このような取り組みがあっても良いのでは?という気がしている。