日々是マーケティング

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「高度成長期の当たり前」を見直す時期が来ている

2021-06-18 15:35:45 | ビジネス

朝日新聞のWebサイトを見ていたら、「いまだに昭和の感覚なのか?」と、感じた記事があった。
朝日新聞:「新幹線はあって当たり前」 促進団体が高校生に講演

実家がある鳥取県に帰省した時にも、「山陰新幹線の要望」と言った趣旨の話題を聞く時がある。
「新幹線開通」によって、人の動きが活発になり「人・モノ・カネ」が動く、という発想だ。
確かに「新型コロナ」が感染拡大する前までは、「人・モノ・カネ」が動くことで、地域活性化ということに期待ができた。
しかし、「新型コロナ」の感染拡大によって、「人は動かず・モノ・カネは動く」という状況が生まれた。
それを可能にしたのは、ご存じのインターネットを介した「通販=売り場」と、「在宅ワーク・リモートワーク=働き方」という変化があったからだ。
おそらく、100年前の「スペイン風邪」の世界的大流行の時には、「人・モノ・カネ」が停滞をしたはずだ。
「『スペイン風邪』の世界的大流行によって、第一次世界大戦が終わった」と言われるのは、「人・モノ・カネ」が調達できなかったからだろう、と想像することはできる。
それが今回の「新型コロナウイルス」では、人の移動は制限されたが「モノ」も「カネ」も動く事ができた、という点は大きな違いでもある。

そして「人が動かない」ことによって、大打撃を受けた業種の一つが「観光業や鉄道や航空会社」だった。
特に、航空会社が受けた影響は、日本に限らず諸外国でも同様だった。
日本国内について言えば、JR東海が民営化になって、初めて赤字を出した。
理由については改めて説明するまでもなく、「東海道新幹線」の利用者が激減したためだ。
むしろ、JR東海は「東海道新幹線」頼みで収益を上げていた、ということが改めて分かった、というほどの赤字だった。
逆に、元々通勤利用などが主だった路線に関しては、落ち込みはあったものの昨年の「緊急事態宣言」解除後は、「在宅ワーク・リモートワーク」だった利用客そのものが戻り、同じように赤字であってもその落ち込み方は、違っていた。

そこで改めて考える必要があるのでは?というのが「新幹線」に対する価値が、「新型コロナ前・後」とでは違うのではないか?ということなのだ。
「新幹線」がある事で「人・モノ・カネ」が動いていたのは「昭和から平成」までであり、これからは「人が動かなくても」収益に大きな影響を与えないようなビジネス発想が、必要となってきている、ということでもあるのだ。
そのように考えると「建設費+維持費」と「人が動かない時代の建設後の利益」のバランスをどのように考える必要があるのか?ということになる。

あくまでも個人的な考えだが、四国の場合、岡山までは山陽新幹線が通っており、四国そのものへのアクセスが悪い訳ではない。
問題となるのは「四国内の移動」ということだろう。
とすれば、膨大な建設コストがかかる新幹線ではなく、在来線の活用に目を向ける方が、メリットが高いような気がするのだ。
一つは「貨物輸送+トラック輸送」による物流のスピードアップ化。
もう一つは「観光列車」の運行だ。
事実JR西日本は、豪華観光列車「瑞風」を走らせているが、その一方で「銀河」という観光列車も走らせている。
観光列車の運行という点では、「新型コロナ」の感染拡大前から積極的なJR九州などの様に「時間の短縮」ではなく「時間をかけて車窓を楽しむ」という提案がされ始めている。

そして「新幹線が通れば、地域経済の活性化につながる」という考えは、高度成長期には通用しても今は通用しない、という現実だ。
「東海道新幹線」の沿線地域は元々、日本の産業のベルト地帯だった。
そのため、沿線地域そのものに経済効果があったように見えたのだが、その後開通した新幹線の駅の内、在来線の駅から離れたところに新しい新幹線の駅ができたため、地域の活性化に結びつかないどころか、在来線駅も新幹線駅も人が立ち寄らなくなったという地域は、いくつもある。
「新幹線が通れば、地域活性化につながる」というのは、「高度成長期」の幻想でしかなく、それどころか地方自治体に対する負担が大きい、ということにもなりかねないのだ。

「新幹線」のような、広範囲で莫大な費用と維持費を必要とするインフラそのものの在り方を、考え直す時期が来ているのではないだろうか?