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ファッション専門誌が、「脱炭素」や「エネルギー問題」を語る時代

2021-06-25 19:46:13 | ビジネス

拙ブログに来てくださる方なら、ご存じかもしれない「WWDJapan」というファッション専門誌。
一般向けの雑誌ではないので、余り目にすることが無い雑誌の一つかもしれない。
そのWWDJapanのweekly版の見出しが、チョッと変わっていた。
WWDJapan:経営者の皆さん、”脱炭素”を語れますか?電力と水とファッションビジネス

ファッションビジネスそのものは、とても華やかな印象を持っている方は多いと思う。
その華やかで電力とか水などとは縁の無さそうな、ファッションビジネスがなぜ?という、引っ掛かりを持たれる方もいらっしゃるのでは?と、考えている。

WWDJapanが、このような特集を組む背景には、「サスティナビリティ」という問題がある。
「サスティナビリティ=持続可能な取り組み」という点において、ファッションの世界は「アパレルロス(洋服・衣料ロス)」という問題を抱えている。
2018年にはバーバリーなどの有名ブランドが、販売価格とすればトータルで億を超える服を廃棄処分にしている、と問題になった。
バーバリー側の考えには「ブランドタグが付いている商品が、2次、3次流通に乗るとブランドイメージが低下し、ブランド価値が下がる、という懸念があった」と言われている。
Fashion Network:「バーバリー」売れ残り焼却処分問題、ファッション業界全体にも派生か

この問題が取り上げられるようになってから、ファッション業界は「サスティナビリティ」という言葉を、盛んに使うようになった。

ファッション製品をつくるためには、生地の調達に始まり、縫製、流通などを経て私たちの手元に届く、ということになる。
今では、工業製品のような流れの中で、ファッションがつくられている、という考え方もできる。
工業製品の製造過程で問題になっている、環境問題とのかかわりは、ファッション業界であっても同様のことになりつつあるのだ。
化学繊維製品を大量の水を使って洗う、そのために必要な電力消費など、これまで「問題ではない」とされてきた、もしくは「見て見ぬふりをしてきた」問題が、SDGsなどの取り組みの必要性によって、見逃す事ができなくなりつつある、ということなのだ。

ファッション製品は、工業製品と違い「再生品」として、市場に出回る事がほとんどない。
強いて上げると「古着市場」や「メルカリ」などのC2Cビジネスが中心であり、その市場はまだまだ小さい。
それだけではなく、生地の調達については「新疆ウイグル自治区」での、中国政府の圧政。
子供たちを就学させずに、綿花の収穫に携わらせている、縫製についても女性を低賃金で重労働をさせている、などの問題もクローズアップされてきた。
特に、ここ20年ほどで人気になったファストファッションなどは、扱う商品サイクルが短いのに大量生産され、その価格を抑えるために、途上国の女性たちの労働力を頼っていた、という背景がある。
「安いのには訳がある」ということなのだ。

SDGsという視点で考えた時、ファッション業界が抱える問題は、多岐にわたっている。
エネルギーの問題、水質汚染、学校で学ぶ機会を奪われる子供たち、低賃金で過重労働を強いられる女性…など人権や貧困という問題の要因ともなっている、と言っても過言ではないかもしれない。

「アパレルロス」という点でも、焼却処分される量の衣料品を、貧困国や日本の様に「隠れ貧困層(ひとり親家庭で、十分な食事や教育が受けられないとされる子供たち。日本では7人に1人の子どもがこの貧困層に当たると言われている)」に「フードバンク」のようなシステムを使うことで、問題が解消される可能性もある。
何より、衣料品には基本「消費期限」があるわけではない。
「消費期限が無い」衣料品の活用は、エネルギー問題を僅かでも解消する可能性を含んでいるようにも、考えられるのではないだろうか?