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「ロック音楽」は、経済と関係があるのか?

2021-06-08 19:31:20 | ビジネス

経済誌のDIAMOND-onlineに、面白い記事があった。
プリンストン大学の教授であった、故アラン・B・クルーガーの「経済の本質はロック音楽が教えてくれる」という内容だ。
DIAMOND-online:オバマ絶賛!!「経済の本質はロック音楽が教えてくれる」プリンストン大学教授スピーチ

言わば書籍の広告の為の記事、ということになるのだが、タイトルに「ロック音楽と経済」という、ギャップのある言葉が並ぶと、やはり気になってしまう。
これまで、様々な人達が「経済について」ということを、それぞれの視点で考え、数多くの本が書かれてきた。
そのどれもが「経済の本質」の一部を指摘しているのでは?と、思っている。
ただ、お堅い語り口ではなく「ロック音楽」という、いわば大衆音楽を「経済」という視点で見ると、どうなのか?というテーマは、なかなか興味深いと感じた、ということなのだ。

書籍そのものをまだ読んではいないのだが、クルーガーと同世代の私にとって「ロック」という音楽は、子どもの頃から慣れ親しんできた。
そして、ロックという音楽が社会に与えてきた影響というのも、当時は分からなくても大人になり様々なコトを学ぶ過程で、その関連性なども分かるようになってきた。
それは「ロック」という音楽だけに限らず、場合によってはスポーツ、特にサッカーなどが当てはまるのでは?と、感じることも多々あった。

その理由は、「ロック」という音楽にしても「サッカー」というスポーツにしても、「多くの人が熱狂する力を持っている」という共通点がある。
それは1950年代にエルビス・プレスリーが登場した時から、変わってはいないように思う。
もちろん「ロック」という音楽そのものも、時代によりどんどん変化をし続けている。
ベトナム戦争の頃は「反戦」という言葉と共に、「ロック」という音楽はあった。
それが1970年代後半、経済的な落ち込みが続くイギリスから登場したのが「パンク・ロック」だった。
「パンク・ロック」の芽となるモノは、その前からあったはずだが、爆発的に受け入れられたのは1970年代後半、ということになるだろう。
「パンク・ロック」に関していうなら、熱狂的に支持をしたのがイギリスの労働者階級の若者であった、という視点を持てば、クルーガーが研究対象としていた「労働経済学」とも結びつくだろう。

ただ、残念なことにこのような経済と音楽の結びつきが論じられるのは、日本ではないから、という点は大きいような気がしている。
何故なら、日本におけるJ-Popと経済という結びつきは、あまり感じられないからだ。
昨今指摘されている「音楽フェスと経済」という視点はあるとは思うのだが、日本の場合J-Popという大衆音楽が、ファッションや行動心理学にまで影響を及ぼしている、という感覚が無いからだ。
これは、私個人の感覚なので断言できるものではないのだが、上述したようにJ-Popがファッションや若者の社会行動に翁影響を与えた、という歴史が日本にあったのか?という点では、疑問を感じるからなのだ。

それは社会的背景が大きいのだと思う。
米国の中西部ではいまだに「ロック」よりも、「カントリーミュージック」を聴く人達が多く、その「カントリーミュージック」を聴く人たちの政治的思考は、比較的保守的である、と言われている。
それに対して、東海岸や西海岸の様に若者文化の発信地となる地域では「ロック」が支持されるだけではなく、様々なカテゴリーの音楽が支持されている。
その多様性が、その地域で生活している人達の多様性に繋がっている、という視点を持てば、なんとなくだが納得できるものがあるはずだ。
そのような社会背景が無い日本では「ロック」という音楽が「経済の本質」と言い切れるのか?という点は、疑問だがこれまで見過ごされがちであった「若者の行動心理にロックという音楽が、少なからず影響を与えている」という視点は、面白いと思うのだ。