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女性マーケターから見た日々の出来事

科学の進歩についていけていない私たち

2021-06-27 21:23:54 | アラカルト

朝日新聞の朝刊に、これから先若い人たちは「大変だな~」と、感じる記事があった。
朝日新聞:着床前診断、対象拡大へ 成人後に発症する遺伝病も(有料会員記事)

掲載されている記事を、全文読めないのはとても残念だし、個人的には有料会員だけを対象とせず、広く多くの人たちに読んでもらいたい、と考えている。
それほど、様々な問題をはらんでいることがらだからだ。

「着床前診断」ではないが、テレビドラマ「コウノドリ2」で「出生前診断」を受けた2組の夫婦の話があった。
大ヒットしたドラマなので、ご覧になられた方も多かったのでは?と思う。
この時2組の夫婦が受けた「出生前診断」で判明するのは、「染色体異常の有無」だ。
そして「染色体異常」が見つかり、一組の夫婦は子供をあきらめ、もう一組の夫婦も子供を諦めようとするのだが、最後の最後で「やはり生みたい」と、決心をされ出産をする、という話だった。
この時の「染色体異常」により生まれてくる赤ちゃんというのが、「ダウン症」の子どもだ。

この「出生前診断」を受け、「染色体異常」が見つかった場合、お子さんを諦める夫婦はとても多い、という統計がある。
日経新聞:新出生前診断、3万人超す 染色体異常の9割中絶

現実問題として「ダウン症」を含む「染色体異常」で生まれたお子さんを育てる事が難しいと判断し、中絶を選ばれる方が多いということだ。

そして今回の「着床前診断」というのは、それよりも前の段階で「ゲノム(=遺伝子情報)」によって、将来的な病気の有無まで判断できる、という内容のものだ。
確かに、成人後の病気リスクなどが分かる、ということは、メリットが高いような気がする。
問題なのは、私たち生活者が「ゲノムとは何か?」という理解が、十分にされているのか?という点だ。

「ヒトゲノム」がすべて解読できたのは、2003年4月だ。
それ以前の高校の生物などの授業では「ゲノム」について、全く教えられていないと思う。
今でも、医科学系の大学に進学した学生であれば、「ゲノム」について学ぶ機会はあるとは思うが、それ以外の学生が学ぶ機会があるとは思えない。
まして、そのようなコトを学ぶ機会を得られていない生活者のほうが、遥かに多い。

このような社会状況の中で「着床前診断」が、一般化すると様々な社会的問題が起きてくる、という指摘がある。
その一つが「社会的差別」だ。
生命保険の契約時に、ゲノムデータの提出を要求された場合、引き受け拒否あるいは高額な保険料となる可能性がある。
生命保険の加入はあくまでも個人の判断によるものなので、「差別」とまでは言えないかもしれないが、就職などで希望する職に就けなかったり、学校での差別が起きるのでは?という指摘が、随分前からされている。

もちろん、将来的に罹患する病気リスクが分かれば、リスク回避のために健康に気を付けるなどのメリットもある。
何故なら「正しい情報」を得られ・学ぶ機会と、「早期治療」の機会の差があるからだ。
しかしそれができるのは、経済的に恵まれた人達に限って言える、と指摘する医療者も少なくない。
これらの「社会的差別」は、「社会的倫理観」によるところが大きいため、「教育・理解・倫理」という点を一緒に知り・考えることが重要になってくる。
果たして今、そのような状況にあるのだろうか?

科学が進歩することで、長寿社会となることは良い事だと思う。
そのためには、「教育・理解・倫理」等の点で、共通の知識と認識何よりも「人としての倫理観」が求められる。
経済的豊かさの違いによって「命の選別」がされるようなリスクが、あってはならないと思う。

 


科学の進歩についていけていない私たち

2021-06-27 21:23:54 | アラカルト

朝日新聞の朝刊に、これから先若い人たちは「大変だな~」と、感じる記事があった。
朝日新聞:着床前診断、対象拡大へ 成人後に発症する遺伝病も(有料会員記事)

掲載されている記事を、全文読めないのはとても残念だし、個人的には有料会員だけを対象とせず、広く多くの人たちに読んでもらいたい、と考えている。
それほど、様々な問題をはらんでいることがらだからだ。

「着床前診断」ではないが、テレビドラマ「コウノドリ2」で「出生前診断」を受けた2組の夫婦の話があった。
大ヒットしたドラマなので、ご覧になられた方も多かったのでは?と思う。
この時2組の夫婦が受けた「出生前診断」で判明するのは、「染色体異常の有無」だ。
そして「染色体異常」が見つかり、一組の夫婦は子供をあきらめ、もう一組の夫婦も子供を諦めようとするのだが、最後の最後で「やはり生みたい」と、決心をされ出産をする、という話だった。
この時の「染色体異常」により生まれてくる赤ちゃんというのが、「ダウン症」の子どもだ。

この「出生前診断」を受け、「染色体異常」が見つかった場合、お子さんを諦める夫婦はとても多い、という統計がある。
日経新聞:新出生前診断、3万人超す 染色体異常の9割中絶

現実問題として「ダウン症」を含む「染色体異常」で生まれたお子さんを育てる事が難しいと判断し、中絶を選ばれる方が多いということだ。

そして今回の「着床前診断」というのは、それよりも前の段階で「ゲノム(=遺伝子情報)」によって、将来的な病気の有無まで判断できる、という内容のものだ。
確かに、成人後の病気リスクなどが分かる、ということは、メリットが高いような気がする。
問題なのは、私たち生活者が「ゲノムとは何か?」という理解が、十分にされているのか?という点だ。

「ヒトゲノム」がすべて解読できたのは、2003年4月だ。
それ以前の高校の生物などの授業では「ゲノム」について、全く教えられていないと思う。
今でも、医科学系の大学に進学した学生であれば、「ゲノム」について学ぶ機会はあるとは思うが、それ以外の学生が学ぶ機会があるとは思えない。
まして、そのようなコトを学ぶ機会を得られていない生活者のほうが、遥かに多い。

このような社会状況の中で「着床前診断」が、一般化すると様々な社会的問題が起きてくる、という指摘がある。
その一つが「社会的差別」だ。
生命保険の契約時に、ゲノムデータの提出を要求された場合、引き受け拒否あるいは高額な保険料となる可能性がある。
生命保険の加入はあくまでも個人の判断によるものなので、「差別」とまでは言えないかもしれないが、就職などで希望する職に就けなかったり、学校での差別が起きるのでは?という指摘が、随分前からされている。

もちろん、将来的に罹患する病気リスクが分かれば、リスク回避のために健康に気を付けるなどのメリットもある。
何故なら「正しい情報」を得られ・学ぶ機会と、「早期治療」の機会の差があるからだ。
しかしそれができるのは、経済的に恵まれた人達に限って言える、と指摘する医療者も少なくない。
これらの「社会的差別」は、「社会的倫理観」によるところが大きいため、「教育・理解・倫理」という点を一緒に知り・考えることが重要になってくる。
果たして今、そのような状況にあるのだろうか?

科学が進歩することで、長寿社会となることは良い事だと思う。
そのためには、「教育・理解・倫理」等の点で、共通の知識と認識何よりも「人としての倫理観」が求められる。
経済的豊かさの違いによって「命の選別」がされるようなリスクが、あってはならないと思う。