北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北大路機関2025:気づけば新年-遅きに失しましたが改めて新年のご挨拶を

2025-01-04 07:00:38 | 北大路機関特別企画
■北大路機関2025
 体調が回復しましたので。

 遅きに失しましたが、改めて新年のご挨拶を。実は昨年の十二月は史上稀に見る、安請け合いした仕事と断れない仕事と長年のご縁故に受けた仕事が重なりまして、やりがいはあって愉しいのだが、仕事場から出ることが出来たのは19日に仕事の出張という、しかし出ることが出来たので外食できたという気分転換でした。

 多忙というのはこういうことをいうのだと0700時まで仕事をして仮眠して起きてという、0700時なんて普通だと言われましたが1900時ではなく0700時で徹夜明けということです、そんな生活を三週間、早ければ0400時には寝れていたのですが、夕食が0200時とか滅茶苦茶な状況となり、唯一の気晴らしが仕事場に持ち込んだプロジェクターで。

 デスクからは見えない位置にてBGM代わりに映画を愉しみ、コーヒーメーカーの前で一休みする瞬間だけ映像を見たという状況、皇帝のいない八月とか激動の昭和史沖縄決戦とかシンドラーのリストなどをみながら、ああ自分は恵まれているなあと自己満足しお仕事を続けていました。ご承知の通りWeblog運営がぎりぎりの状況でしたが。

 そして仕事納めは2024年が終わる十数分前となりましたが、その直後に動悸が激しく発熱があり倒れまして、夢の寝正月、という親戚参りもなにもできず、そういやクリスマスってどうなったんだっけか、と思う状況でした。年賀状も漸く起きれるようになったところで今度は自動車のセルモーターがイカれて身動きが大変になりました。

 面白そうな一年が始まりました次第です。倒れたもののまあ達成感はありまして、こういうことってあるんだなあと、異世界に飛ばされぬよう気をつけたいということを抱負としまして、新年の挨拶とさせて頂きます。本年もWeblog北大路機関をどうかよろしくおねがいいたします。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
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新しい"海洋国家日本の構想"を考える(2)核なき抑止力-日本の覚悟~新年防衛論集2025~

2025-01-03 20:23:21 | 北大路機関特別企画
■核なき抑止力-日本の覚悟
 核兵器は日本にとり現実の脅威です。

 日本の安全保障を考える場合、直視しなければならないのは核の脅威に対してどのように向き合うか、ということです。ウクライナでは核兵器が使われていない実情に鑑みて、核兵器の脅威は無視できる、こう考えるのは現実的ではありません、その理由として、ウクライナで核兵器が使われた場合はNATOが直接介入する、というNATO理事会の一致が2022年にあり、使えない状況にあるのです。

 難しいのは日本における核兵器の運用は、ウクライナにおける核兵器の有用性、戦術核兵器により戦況を好転かさせるという全面戦争における戦域優位獲得のための核兵器、という位置づけではなく、日本の場合は指揮中枢破壊や産業基盤破壊など、いわば、日本本土へ地上部隊を侵攻させ戦況を優位とさせるための核兵器ではなく、地上戦を度外視した核兵器の使用そのものが目的となっている。

 核兵器が使われた場合に米軍が介入する、という言質があっても、京浜地区や京阪神地区が核攻撃を受けた後では、米軍の介入は意味がありません、すると、核兵器を保有しないという前提のもとでの抑止力構築というものが重要になります。その一つの選択肢が、ミサイル防衛能力整備でした。これは計画当初、もう22年前か、不可能であると識者の一部さえ嘲笑したものでしたが。

 ミサイル防衛はある程度、具現化した、2024年にはイランの中距離弾道弾を宇宙空間において迎撃成功した事例がありますので、いままでのクウェジェリン環礁からの迎撃試験よりも実戦、実戦に近いというのではなくイスラエル本土攻撃に向かうミサイルの撃墜という実戦の戦果をたたき出したわけです。すると、迎撃ミサイルの数さえ揃えば、核攻撃を無力化出来うる、とうう可能性を示した。

 ただ、問題はその巨額のミサイル防衛に関する費用を捻出できる見通しがなくなり、一応海上自衛隊はイージス艦の数的増強を行う方針ではありますが、とてもではないが足りない状況にある。政府が進める反撃能力整備というものは、迎撃一辺倒だけでは日本のミサイル生産能力からして早々に在庫が払底することを自覚したもので有り、この現実に向き合った結果が反撃能力、と。

 核兵器の脅威に対して通常兵器で対応できるのか。この問題に一つの解決策を示したのが、昨年韓国が国軍の日において発表した新型ミサイル"玄武5"です。弾頭重量が6t程度と通常弾頭のミサイルとしては破格に大きく、バンカーバスター弾頭を備えるため、地下指揮中枢を破壊できる、ということ。宇宙空間から落下し高速度を発揮するミサイル、地下100mでも安全とは言いがたい。

 日本の周辺国で核兵器を保有する諸国は、権威主義国家である。これは結果論なのですが通常兵器による抑止力が機能するのかと問われるならば、権威主義国家は国民すべてを目標とせず、指導者に対する抑止力がその最大限の意味を持つため、広範囲を核の焔で巻き添えにする必要が無い、ということです。故に韓国のミサイル開発は核抑止に対抗する通常兵器の限界の強さを見せた。

 日本の防衛政策は、核攻撃を受けてから措置が為された後では意味が無いという大前提のもとで、通常兵器による独自の対核恫喝への抑止力というものを真剣に見てゆく必要があるでしょう。一方、防衛政策を左右するものは国民の世論であるため、日本は核の脅威にさらされているという現実を共有することが、抑止への方策を前進させるまず最初の難関なのかもしれませんが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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新しい"海洋国家日本の構想"を考える(1)間に合った決断-反撃能力整備~新年防衛論集2025~

2025-01-02 20:05:00 | 北大路機関特別企画
■新年防衛論集2025
 海洋国家日本の構想刊行60周年という事で本年の新年防衛論集を掲載してゆきましょう。

 ロシア軍による日本本土原子力施設攻撃計画、こうしたものが存在したというイギリスメディア報道が今年に入り早速為されまして、日本の防衛力というものをどの段階まで考えるか、という命題を突きつけられた印象です。反撃能力、自衛隊の新しい段階の防衛力整備は、場合によっては、若干遅かったものの、間に合った部分があったのかもしれません。

 原子力施設攻撃、首都圏に近い東海村の原子力施設が標的となっていたといい、これは2014年時点の、つまりいまのロシアウクライナ戦争開戦前の時点で計画され、この実行のために爆撃機などを用いた自衛隊の即応体制の検証まで実施していた、とのこと。こうした計画というものが存在することは予見できていましても、報道されると改めて衝撃におもう。

 間に合った、というのは自衛隊の反撃能力整備が進めば、ラズボイニク湾の陸上原子力施設を破壊してウラジオストク軍港を使用不能に追いやることが可能ですし、射程の長い反撃能力は水上戦闘艦に搭載し大西洋まで進出した上でロシア心臓部を直接攻撃出来る能力、を示すことにより相手の攻撃を抑止させることができるわけで、この点の意味は大きい。

 カリーニン原子力発電所、東海第二原発が攻撃された場合には自衛隊は必ずカリーニン原発を攻撃し、モスクワを東京と同じ状態に追い込む、かりにこうした覚悟を政治が示すならば、少なくとも攻撃目標から原子力施設を外させることは出来るでしょう。厳しい話ではありますが、現在の安全保障情勢はこうした選択肢を求められる段階まできている。

 反撃能力整備、射程を聞いた際にその射程が目指すものは何であるかを考えたものですが、射程から四川省まで届くということが判明しますと、四川省南部の核ミサイル施設をその射程に収めていることから、これは大陸中国が政権交代などにより過激化した場合に最後の覚悟を行い、日本本土への核攻撃を決意した場合への阻止の手段なのだろうと直感しました。

 四川省、続いて日本が必要と考えるならば、もう少し踏み込んだ射程を付与させることも出来るかもしれない、いわば、岸田ドクトリンというものは必要な防衛力を必要な水準で対応させるという段階へ、踏み込んだ、ようやく日本国家は脅威を直視し、直視した脅威を評定し、必要な防衛力整備を具現化する段階まで、リアリズムの段階に到達したのだ、と。

 反撃能力整備について、実のところ岸田ドクトリンには北大路機関は批判的でした、それは明らかな専守防衛政策からの転換を、現行憲法はそのままとしても、一内閣の方針転換として行い得るのか、という危惧でしたが、結局とのこと、法整備を待てない故に現行法の最大限の解釈を行わざるを得ないという、いままでのモラトリアムが一気に具現化した、とも。

 憲法改正などは冷戦時代の内に覚悟を決めておくべきであったのかもしれないが、逆に解釈の幅を残すことで冗長性ある制度運用基盤を構築し、現行憲法のままでも安全保障法整備、いや、小泉内閣時代の有事法制整備も起点であったというべきか、橋本内閣時代の日米新ガイドラインまで含めて考えるべきか、冗長性ある法制度の延長線上に今があるともいえるか。

 ともあれ、反撃能力整備は、日本を攻撃した場合のアメリカ軍の抑止力、という従来型の抑止構造が成り立たない、1980年代に既に提唱されていた"多極化時代"の具現化を前に、専守防衛というものごとのあり方も変容せざるを得ないという厳しい現実を反映したものといえるのかもしれません。しかし同時にこれは、間に合った、という視点でも考えるべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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謹賀新年二〇二五 新しい一年もどうぞよろしくお願い致します

2025-01-01 20:25:46 | 北大路機関特別企画


謹賀新年二〇二五 新しい一年もどうぞよろしくお願い致します

北大路機関
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Weblog北大路機関:二〇二四年大晦日-本年も一年間お世話になりました

2024-12-31 20:24:21 | 北大路機関特別企画


二〇二四年大晦日-本年も一年間お世話になりました、来年もどうぞよろしく!

北大路機関
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北大路機関『自衛隊最新装備二〇二四』F-35B戦闘機運用改修完了ヘリコプター搭載護衛艦かが,護衛艦やはぎ・あがの

2024-12-30 20:10:57 | 北大路機関特別企画
自衛隊最新装備二〇二四
 今年もあとわずかとなりましたので毎年恒例のWeblog北大路機関撮影の自衛隊最新装備紹介です。

 自衛隊最新装備2024、今年は色々とありました関係で一番行事の多い時機に身動きがとれない、ということがありまして、しかし前半の早い時期にヘリコプター搭載護衛艦かが、F-35B運用対応型甲板改修後の様子を撮影することが出来ました、三月の練習艦隊出航にあわせて呉において撮影したものです。

 かが、F-35B戦闘機運用改修を終えた後、サンディエゴ沖において試験を実施、これをどうにか撮影できないか、と相談されまして、そんな難しいこと言われても本省に掛け合うしか、と曖昧な返事をしたのですが、なんとなく、海上自衛隊が公表した映像には、あのひとが艦上にいけていたようで、幸い。

 やはぎ、あがの。新型護衛艦が揃って舞鶴基地へ配備されましたのは朗報でした。もがみ型護衛艦は一番艦もがみ、二番艦くまの進水式がCOVID-19新型コロナウィルス感染症のもっとも厳しい時代でしたが、これが明けた頃には続々と就役していまして、12隻を建造した後に拡大改良型を更に12隻建造するという。

 もがみ型大量配備は、同時に先進国と呼ばれた多くの国々が造船を含む製造業を手放していて、どんかんなわたしは20年以上前に、何故だろう骨幹産業なのに、と訝っていましたが、当時の論文で言うところのプロパテント政策、脱製造業のこころみが行われた結果の、経済構造に移行したという彼らなりの発展、と。

 あがの、やはぎ、短期間で続々と舞鶴に到着し、舞鶴も近未来の世界のようになっていますが、G7諸国では最大の造船業維持国になっている我が国、将来的に自由主義のステイクホルダー諸国からもとめられる造船能力による貢献、という構図があり得るのかな、とは順調につづく艦艇建造を傍目にみているゆえ。

 FFM拡大改良型はFFGという、FFGといえばオリバーハザードペリー級のようになる、とも考えてしまうのですが、もがみ型の武装では対応できないほど我が国周辺醸成が緊迫度を増している、ということは、ちょっとさびしいようななんというべきでしょうか。こうしたなかでも、もがみ型建造は続いているのです。

 ラファール戦闘機来日、自衛隊最新装備からは外れてしまいますが、2023年に撮影できなかったラファール戦闘機が再度来日してくれまして、ちょっと撮影位置がちがったなあ、とは反省するのですが、証拠写真的ではあってもラファールを撮影することが出来ました、これこそフランスが誇ると言いますか、育て上げられたもの。

 ラファール、現在太平洋方面に向けてフランス海軍ちからの象徴というべき原子力空母シャルルドゴールが訓練へ展開しています。欧州のわがくに周辺への部隊展開の背景には、同時に日本へ欧州情勢へ関心を持ってほしい、という姿勢の裏返しでも有り、基地が賑やかになるのは好いことですが、その裏側に現実が。

 カブール来日、イタリア海軍空母カブールの来日も、上記の通り、新しい安全保障環境の反映というべきものなのですが、来年には再度イギリス海軍が空母クイーンエリザベス級を日本へ派遣するといいます。カブールは護衛艦いずも型に先んじてF-35B戦闘機搭載改修を完了した、一歩先輩と言うべき航空母艦ですが。

 F-35B戦闘機とともにハリアー攻撃機まで満載し、飛行甲板に指し示して来日してくれたわけです、しかも空母クイーンエリザベスとちがい、海上自衛隊側の桟橋に停泊してくれました。こうした相互の防衛協力が、そのまま抑止力、というかたちで自由と人権を維持し、戦争を回避する機能へ繋がってくれれば、と思うのです。

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十二月八日:真珠湾攻撃ハワイ海戦記念日-ニッポンはあの戦争を過去のものと克服できているのか

2024-12-08 20:00:03 | 北大路機関特別企画
■本日は十二月八日
 本日は十二月八日、ハワイ海戦記念日で真珠湾攻撃の日です。あの1941年12月8日の歴史だ。

 日本海軍空母機動部隊はハワイのアメリカ海軍真珠湾軍港を奇襲、所在する戦艦の大半を撃沈もしくは大破に追い込みました。その僅か前にはマレー半島への上陸を開始、それは同時にシンガポールと当時アメリカ極東軍の拠点であったフィリピンへの攻撃も開始され、その瞬間、欧州において勃発していた大戦は地球全土を覆う第二次世界大戦となりました。

 真珠湾攻撃、ここで学ぶべき点は、日本の戦後平和における総決算が未だ為されていないのではないか、ということです。もちろんアメリカ海軍が第1戦艦戦隊などをサンディエゴ軍港から真珠湾軍港へ前進させたことは、西太平洋における対日抑止力強化という視座はありましたが、同時にこれは当時のルーズベルト大統領の意思によるものでした。

 サンディエゴとことなり、ハワイは太平洋の中央部にあることから奇襲を受ける懸念があったのですが、抑止力を強化した、逆に日本側からは恫喝であるとして対米強硬論が蒸し返す結果となっています。ただ、それならば真珠湾への前進がなければ、日米戦はおきなかったのか、ということまでは視座を広げられない方がいるようでして。

 日米交渉は、ある段階から既に空母による奇襲という措置が決定されており、事実上引き返せない中での、もちろん制度上は外務省など外交当事者には伏せられており、当時の日本の政軍関係を考えるならば不自然では無いといいうるのかもしれませんけれども相手からした場合は欺瞞であった、信用できない政治制度をとっていたとうつる。

 ここで学ぶべきは、外交によりすべてを解決できるという考え方そのものを日本で持ち続けることが逆に先の開戦に至る制度を理解していないというもので、もちろん日本以外すべての国は善であるという穿った見方、ロシアや北朝鮮やさきほどまでのシリアなどを含めて考えるような極端な見方をしないならば、合理的では無いということです。

 総決算がまだではないか、と危惧する前述の論的背景には、戦後の日本は、一応1925年の普通選挙制度施行以降に続いて女性参政権という、実は日本の女性参政権実現は世界的に見ると意外と早い、その変革は実現しています。しかしそれが、投票には行く、以上の政治参加をおこなわず、また政治というものを一種日常から切り離している点が。

 安全保障と防衛についても、結論や思考過程というよりも関心を持たなければならないものの、その社会生活においてこうしたものにさくことの出来る余裕、社会的な寛容度を低くしている実情があるのではないか。それが結果的に、考えないことが反対なのだ、という、なにか、先の大戦の原因、自由からの逃避と重なる部分があるよう思う。

 現実主義と理想主義の結節点というものをもう少し考えるべきではないか、こう考えるのは結局平和という総論の元で各論が異なるのが我が国の安全保障にかんする問題であり、これは憲法と政府、つまり統治行為論での自衛隊法との関係のような、一種矛盾を合理的なもののように理解しなければならない、憲法上の問題があるということです。

 歴史と向き合う、現実主義も理想主義も双方に万能では無い仕組みを有していると、率直に見ていて感じるのです。こうしたなかにおいて、思い切って考えを共有できないかもがいてみる、無理なような代替案を実現する方策を考えてみる、こうした必要性を、考えてしまうのが十二月八日であったりするのです。

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次期大統領にドラルドトランプ氏-アメリカ大統領選挙二〇二四,ハリス副大統領vsトランプ前大統領

2024-11-06 20:24:30 | 北大路機関特別企画
■トランプ次期大統領
 アメリカABCテレビは先程次期大統領としてドナルドトランプ氏の当選確実を報じました。

 アメリカ大統領選挙2024は、ハリス副大統領とトランプ前大統領という初の女性大統領誕生か返り咲き政権復帰かという過去に無い大統領選となりました。再選に敗北した元大統領の再選はハーディング大統領以来といわれています。保護主義的な政策とアメリカ第一主義を掲げている政策を進めた故に不確定要素が多いトランプ氏ではありますが。

 保護主義的な政策、というものですが忘れてはならないのは我が国もTPP環太平洋包括協力協定に対して非常な懸念と反対があり、またその枠組み形成過程に参加することで最適化することが出来ました。他方で、行き過ぎたグローバリゼーション、少なくとも1990年代にこの言葉が生まれた頃の上限を超えたグローバリゼーションの進展について。

 ハリス政権では、アメリカ国民のグローバリゼーションの行き過ぎによる国内産業の空洞化や、アメリカのポテンシャル低下を、更にこれを加速する可能性がある環境対策、地球環境を有権者の経済よりも優先する施策にたいし、支持を掬うことが出来なかったことが一つあげられるように思います。つまりグリーンニューディールの失敗、という。

 焦燥感、これは岩盤支持層よりも有権者の選択肢が流動的な激戦区、という、つまりほぼほぼ共和党か民主党かが明確に支持層がしめされている州ではなく、選挙ごとにどちらの候補者に支持があつまるかが分かれている激戦区の州に、ラストベルト、といわれる20世紀中に最盛期を迎えその後は過疎化が進む地域の支持者投票行動に影響した、と。

 経済全般を見れば、特にITサービスにおいてアメリカの地位は圧倒的です、が、それは都市部、IT大手が集中しているのはサンフランシスコなど一部に集中しており、この恩恵は地方都市に及んでいないとともに、自由主義経済を標榜するアメリカでは再分配制度が伝統的に支持されておらず、この怨嗟の声があることも投票行動に影響した。

 ラストベルト、日本に当てはめれば1950年代に強い競争力を持っていた繊維産業を基盤産業としていた都市の現状、もしくは鉱山が閉山してしまった地方都市の現状をみると、理解できるのかもしれません。ただ、生産施設が残る地域には非関税障壁でも関税障壁でも、政府の保護があれば再稼働できる、こうした可能性がある地域に人は住んでいる。

 変革を求める国民性、トランプ政権時代はもちろん、チェンジ、と叫んだことで成立したオバマ政権を見ればわかるように、アメリカでは保守的なものよりは思い切って変革、その結果がどうなる科への不確定要素まで容認した上で変革を求めるとともに、自由、それは公的保険や年金も自由の阻害と受け取る、自由を第一とする国民性があります。

 自由と変革、結果的にこれは環境政策も影響するものですし、自由を求めるのはアメリカの場合、存在しない圧政よりも現実のインフレなどの成約要素からの自由を求める声が影響した、とも考えられるのかもしれません。何をやるかわからない不確定要素よりも、今までに無いことを挑戦する、開拓精神、というものへの支持ということなのか。

 世界の安全保障への影響はどうか。日本の場合は、この視点を考えたいのですが、第一次トランプ政権にいたる2016年大統領選挙で、トランプ氏は候補者として、”日本の核武装”というものを挙げていました、要するに中国や北朝鮮の攻撃はアメリカに頼らず日本自身が自衛すべきで、そのために必要ならば核武装も容認できる、というもの。

 核武装は現実として為されていません、保守的な安倍政権時代でしたが、当時の安倍総理は大統領就任前にトランプタワーへ赴き、このための調整がかなり大変だったと謂うことですけれども、実情を説明するとともに、例えば”中国の原潜が狙っているのは日本の潜水艦では無くハワイ以東のアメリカ原潜である”など一つ一つ説明しています。

 F-35戦闘機開発中止論やジェラルドFフォード級空母の中止論、あとはNATO殻の脱退なども掲げていましたが、これも一つ一つ説明することで、最適な結果、当初は空軍にF/A-18を採用させF-35を断念するという持論だったようですが、最適な結果へ修正されています。これはトランプ氏がビジネス界出身であることと無関係ではないのでしょう。

 ビジネスマン出身であるため、合理的に利益があるならば、説明することで回避できます。なによりも最適解については補佐官が理解しているものの大統領との立場上その最適解を選択できないところがあり、ここを外交的に首脳会談などを通じて説明することが出来れば、ビジネスマンは柔軟に対応し、各論ではなく総論で結果をだすものだから。

 ウクライナ情勢はどう影響するか。戦々恐々としているという報道などもあるようですが、まず、大変ではあってもゼレンスキー大統領は大統領選を行うべきでしょう、それは不正選挙を回避し、またロシア占領地での物理的な選挙のむずかしさはありますが、それこそEUの選挙監視団などを全面的に引き入れて任期切れの現状を解消すべきです。

 ゼレンスキー大統領は困難な状況でも選挙を行うことで正統性を確保することでしか、まず、ウクライナの総意を代表としている正統性を確保できないのかもしれません。その上で、結局のところ北朝鮮人民軍まで戦線に参戦している状況は、アメリカの安全保障にも、北朝鮮の核が東海岸まで射程に含めている関係上直接影響する点を強調すべきだ。

 欧州全体の安全保障にロシアウクライナ戦争は直結している、具体的にはウクライナが失陥することとなれば、その次は間違いなくカリーニングラードを巡るポーランドやバルト三国との戦争に展開します、それはアメリカにとって競争相手ではなく市場としての欧州を喪失することに直結するとともに、欧州という緩衝地帯がなくなるということ。

 西半球は難攻不落、という概念はルーズベルト政権までのモンロードクトリンを支えたアメリカの理念ですが、この理念の前提さえもロシアウクライナ戦争は失わせる、次の戦争の懸念が生じている、ゼレンスキー大統領は戦っているのはウクライナではなく自由主義なのだ、という点を強調することで、相互利益の面から戦争継続ができる。

 ウクライナを見捨てるのではないかという懸念があるようですが、例えば今回の北朝鮮人民軍参戦を一線と捉えて、アメリカ以外にも多くの国が負担しているものの最大のウクライナ支援国はアメリカであり、この上で、例えばマクロン大統領が今年夏から主張しているような、ウクライナへのNATO地上部隊派遣を真剣に検討すべきと考えます。

 NATO地上部隊を後方支援や特殊部隊と防空部隊派遣などで限定的にでも実施することで、アメリカに対して負担は全欧で担っている、という部分を強調するとともに、トランプ氏が忌避している十年単位での戦争の長期化ではなく、もちろん拡大の懸念、世界の終焉さえ懸念に含まれますが、決定的な打撃を与えて敵を後退させる覚悟が必要とおもう。

 バイデン大統領が2022年に、軍事力の抑止力を軽視していた、ロシアがウクライナに侵攻した場合は経済制裁は行うがアメリカ軍の介入は無い、と発言、これはロシアのプーチン大統領に対して経済制裁を我慢するならばウクライナを獲れる、と誤認させ開戦そのものを回避できなかったという現実を無視するべきではありません。

 台湾海峡については。中国の海洋進出を放置し続けたのはオバマ政権時代までで、結局安全保障上は台湾海峡有事というものを中国の海洋進出放置により危険な段階まで高めたのはオバマ政権時代までであり、トランプ政権以降は中国への厳しい施策に転換、これはバイデン政権、民主党政権となった今日でも継続されている点は重要でしょう。

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79年目の終戦記念日-昭和20年は平和元年,平和は手段か目的か-抑止力と予防外交と軍事合理性と平和主義両立

2024-08-16 20:01:31 | 北大路機関特別企画
■祈るだけの平和の先
 平和は79年続いているのですが平和を周辺国の平和ではない手段に悪用させる事が当てはいいのかとも思う。

 平和を成果として享受するには、相応の防衛力や世界との関係を維持する必要があるのですが、先ずその必要性を、認識が共有できないところから、日本の平和主義、戦後79年の間、平和というよりも、平和を叫ぶ間だけは戦争の事を考えずに済むという免罪符のような状況のまま、気づけば日本周辺情勢が緊迫度を増している状況に陥っているよう。

 結果論としてなのですが、防衛、つまり実力で日本本土が戦争に巻き込まれない枠組みを構築する際に大きな問題が生じているのは、手段としての平和主義なのか、結果としての平和主義なのか、わたしの場合は当然のように後者であるべきとかんがえるのですけれども、この部分で先ず国内に議論の乖離と支持の分断が生じている構図です。

 NATO,日本で手段としての平和主義に重きを生む方から見ますと、ヨーロッパは全体的に好戦的な国家、と映るのかもしれません。ただ、実際の例えば冷戦後ソ連から独立を果たして更に努力の末NATOに加盟したバルト三国のエストニアやラトビアとリトアニアなどは、自国にNATO戦闘群が駐屯し、しかし必死で戦争回避を試みています。

 NATO戦闘群の駐屯とともに、NATO加盟には国家制度改革とNATO水準の制度民主化や装備体系と英語教育体系の普及などが求められ、ソ連の一部として併合されていた国々には変革は簡単ではありませんが、限られた国力も自国だけではロシアが再度ソ連再建を、今ウクライナにしているような、強攻策をとった場合、守り得ない自覚がある。

 沖縄では、MV-22オスプレイが吊り下げ空輸の訓練をしていたケシカラン、というような、揚げ足取り的な話題で幾つもヘイトスピーチのような内容や陰謀論さえ絡んで広められている事とは対照的であり、これこそ、手段としての平和主義、結果が平和でなくとも致し方ないという論調と、欧州の、結果として平和が保たれねば意味がない認識との違い。

 手段としての平和主義は否定されるべきか、こう問われますと何とも難しい気持ちになるのです、イスラエルの事例がある。イスラエルでは現在挙国一致内閣に参加している超正統派を筆頭としたユダヤ教政党は、自らが祈りにより超自然的な力が働きイスラエルを外敵から守っていると主張し、徴兵制を拒否、イスラエル国防省と対立していて。

 イスラエルといえば国民皆兵主義という印象があるのですが、超正統派はじめ宗教者は対象外で、もっとも人口比率が年々、避妊の禁止などにより出生率が高いこともあるのですが高まっていて、この方々も徴兵してくれないと不平等だという世論の分断はあるようですが、祈ることで軍事を用いずとも超自然的な神力で国家を護るという発想が。

 神風が吹くぞ、ではないのですが、これは手段としての平和の祈りの力を理解するというよりも、あのイスラエルでさえそうした発想が多数派にはならなくとも国内の少なくない割合を占めているということで、最後の戦争が1973年の第四次中東戦争、いや南レバノン戦争にいまのガザ戦争と繰り返しているイスラエルでさえ、そうした認識があり。

 日本の祈るような平和主義についても、私たちが願っているから平和なのです、という認識の層が存在する事を頭から否定しても意味はありません。ただ、日本の場合は、憲法上、精度として手段としての平和主義が明記されており、国土が灰燼に帰した場合でも、国民は耐え忍ぶことで平和を、結果ではなく手段としての平和を維持するという内容で。

 防衛政策は、2022年国家防衛戦略に基づく反撃能力整備が政治により明記されたのですが、いったい、有事の際に日本国家はどのような軍事行動、防衛作戦を行いうるかが、現在のところ憲法という制度では不明確であり、反撃能力行使も含めて、軍事機構としての自衛隊がどの程度、同盟国や同志国と軍事合理性に徹した行動が行えるかが不明確です。

 ウクライナのクルスク州逆攻撃、昨今ロシアウクライナ戦争は東部四州占領地を広げるロシアが現状での停戦を主張している状況を逆手に、クルスク州とベルゴロド州へ逆攻撃を加え、戦争が新局面を迎えていますが、軍事合理性として、専守防衛を、相手国領土の割譲は求めないが軍事攻撃は必要な範囲で行う、こうした実例を見せつけられている。

 軍事合理性、もちろん、平和は重要ですが求めるべきは手段としての平和を用いて灰燼に帰す国土よりも、結果としての平和を求め、あらゆる手段の努力を行い、仮に戦争となった場合でも早期の収束へ全力を投じ結果としての平和を社会から個人までは教授できる枠組みです。その為にすべきことを話し合える、そんな社会が理想なのですが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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79年目の終戦記念日-昭和20年は平和元年,1945年8月15日ポツダム宣言受諾を宣言し第二次世界大戦は終戦を迎えた

2024-08-15 20:00:28 | 北大路機関特別企画
■平和79年
 平和は幾度か懸念に曝されつつも少なくとも日本では制度として平和が今も続いているのです。それはあたかも平和79年というもう一つの元号のように。

 本日は8月15日、1945年、日本がポツダム宣言受諾を表明した日です。終戦から79年、79年といいますともう、記憶よりも記録の世界となっていまして、あの戦争で実際に戦闘を経験された方は幾人お元気なのでしょう。終戦、しかしその終戦は今のところ日本にとり最後に経験した戦争となり、第二次世界大戦は日本での戦争の代名詞となった。

 平和を考える日、終戦記念日はこう位置づけられているのですけれども、平和を考える以前の問題として平和ではない状態というものを社会の通念として、共通認識として、共有知として、既に共有できていないのではないか、という実情が、これは同時に次の戦争をどう回避するか、という視点を民主主義国家として持ち得なくなっているのでは。

 戦闘機搭乗員だった方に朝の情報番組にてアイドル上がりのコメンテーターの方が、アメリカ人を殺した感想はどうですか、と、彼としては率直な発想であったのかもしれないしこれが79年の空白ともいえるのだけれども、しかし単純に見ればひどく礼を欠いて残酷な質問をTVの公共電波に載せてしまったのが、あれは何年前の事でしたか。

 日本とアメリカが戦争としたってほんとうですか、という大学生の素朴な疑問が大学で憲法や安全保障や政治学などを教える講師の方や教授の方を困惑させたのは1990年代という。これは昔話で、2000年代に入ると、でどっちが勝ったんですか、と大学生の問いがさらに困惑させたという話がありましたが、これにはいろいろ続きがあります。

 日本がヴェトナム戦争に参戦していないってほんとうですか、という問いは2010年代のもので大学講師の友人が最新版だ、と教えてくれました。なんでも歴史として日本国内でヴェトナム反戦運動があったという事を知り、ヴェトナム反戦運動なのだから自衛隊もヴェトナムに派遣されていたのだろうというイラク派遣を経た2010年代らしさ。

 太平洋戦争で亡くなった日本の方の人数はと問われ、五万人くらいかな、というのが2020年代の最新版で、広島や長崎と沖縄だけでも報道で大真中人数が出されているように記憶するのですが、350万という数字は想像してくれないのだという。いやはや、戦争は過去の話になったという事なのですけれども、こうした方々が平和を後に語るのか。

 戦争を回避するには、少なくとも日本は専守防衛を掲げているのであり、日本から侵略する事の蓋然性は低いものの、戦争、国際浮上の複数の国家間での武力紛争は、少なくとも一方の国家だけが戦争を拒否する姿勢を如何に堅持していても、もう一方が望むならば成立してしまうため、防衛、抑止力、予防外交、外交、すべての選択肢で回避に臨む。

 憲法9条を文字通り受け止めるならば、日本は、防衛、抑止力、予防外交を選択肢から捨てて外交だけで臨むというようなものであり、武力行使の国際法上の定義には経済力による圧力も含められ、武力攻撃と武力行使を区別しているのですから、憲法を守るならば、戦争回避のためには妥協と懇願以外は恭順と亡国くらいしか選択肢が無いのです。

 平和、それならば意図せぬ隷属や経済的苦役などを、妥協の結果として国家が選択肢を失い国民に平和以外の権利をすべて、例えば財産権や環境権、基本的人権や生存権を秤にかけてまで、失いつつ平和です、と強弁する事が出来るのかといえば、それは9条以外の憲法に反するところとなります。これが所謂、構造的暴力、という問題ですね。

 2022年のロシアウクライナ戦争、この3年間この問題でもちきりですが、2014年に非暴力に徹した事でロシアに武力併合されたドンバス地域やクリミア半島の人々は、戦争を回避できたと胸を張れるのかといいますと、毎日のように占領するロシア軍がこれらの地域を拠点にウクライナを攻撃し、ウクライナ軍もあらゆる手段で反撃、着弾する。

 クリミア半島とドンバス地域では、それでは平和運動によりロシア軍基地化を拒否すべきであった、と主張する方もいるのかもしれませんが、それは1945年前半に東京でこれを行う以上に難しく、結果的にそういった方々は、居なかったことに出来る、法体系を持っている国では運動が成り立ちません。国家と私人の関係の構造的な限界といえて。

 最近ドンバスではクルスクへ向かう青年団がロシア政府により組織されているという。そう、併合されてしまいますと、そもそも併合する側が戦争という選択肢を持っているままに自国を併合するのですから、仮に日本で手段として平和を堅持していても、併合されるような状況となれば、その国のために戦争参加、戦闘参加を強要されるわけです。

 結果としての平和が享受できなければ、こういうことに陥り、しかもその状況では私人では拒否できず、かといって棄民として国外に出るだけの準備を行おうにも、語学はもちろん社会保障を含めて今の日本以上の環境を自ら確保して国籍を得られる方がいるのか、という疑問もあり、日本の旅券に守られている事を実感しているのか、という事にも。

 しかし、79年間という、いわば真剣に戦争を考えることをできない期間というものはこうした認識で、そもそも常識の基盤が異なる、共有できていない認識の大きさを実感できない。平和は重要であるが必要なのは結果としての平和であり、手段としての平和、というものを選択してしまうと、自らは平和を享受できない可能性があるということ。

 平和構築には、しかし何が必要なのか、という認識は、日本は民主主義国家であるのですけれども、政治参加の時間は社会生活の中でもねん出が難しい社会構造となっているように思えまして、もちろん、頑張っている方は多少はいるよう認識はするのですが、政治参加により防衛力のあり方を踏まえ情報を集め議論することに費やす方は少数派で。

 手段としての平和を使う、ということは一見安価に思えるでしょう、軍事に反対して使わなければ、まあ、災害の時も自助努力で頑張るとして、外国で戦争に巻き込まれた際にもあきらめてもらうとして、ミサイルについてはニュースを観なければ核弾頭は核爆発が感じられるまではどうという事もなく、感じた後は何も感じることもありません、が。

 平和を手段として使う事は、何も考えなければ上記の通り過ごせることなのかもしれませんが、長期的に見れば、そもそもシーレーンを含めたエネルギーやサプライチェーンの維持が難しくなり製造業が成り立たなくなりますし、医療初め、いや肥料供給の途絶から近代農業も難しく、山奥で自給自足生活しか営めない、ほかに選択肢が無くなります。

 平和ならばそれもいい、と思われるかもしれませんが、問題を難しくするのは日本が大陸外延部弧状列島という地政学上の要衝にある為で、ここに軍事的空白が生じますと周辺国にはどこかが確保しなければ地域安定が取れなくなります、すると、外国軍隊の進駐が始まる。これを回避するには、空白や不均衡を生まない努力が必要となるのです。

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