◆火山泥流災害発生までにロボット・無人機投入を
御嶽山火山災害は、火山灰堆積地域は数日内の降雨でラハールの恐れが出ている中、行方不明者捜索と心肺停止孤立者搬送が急務となっています。
本日はCH-47JA輸送ヘリコプターにより800名を山頂付近に展開させる計画でしたが、御嶽山山頂付近での捜索活動、火山性微動の振幅数の急激な増大により噴火の懸念がある事と山頂付近の有毒ガス濃度により火山活動活発化により終日中止となりました、今週末にも御嶽山周辺は降雨が予想され、雨が降ればラハール、火山性泥流が起きますので、分かってはいるものの時間が無い。
御嶽山山頂付近での自衛隊や警察と消防の捜索活動が亜硫酸ガスと硫化水素により停滞していますが、どうにかならないのか、この点について。亜硫酸ガスと硫化水素はガスマスクで防げるのではないか、という視点がありますが、ガスマスクでは現在の御嶽山山頂付近を捜索する事は出来ません、何故か、それは火山灰があるためです。
ガスマスクはフィルターにより空気を濾過して有毒物質を呼吸器に取り入れないための装備ですが、このフィルターに火山灰がつあり目詰まりして酸素も窒素も二酸化炭素も封じてしまうのです。即ち目詰まりして何も通さない、ですからガスマスクでは窒息してしまいますので、空気ボンベを背負って作業することとなります。
自衛隊には空気マスク、として化学科部隊に高濃度ガス汚染地域や低酸素地域での行動に用い、火災現場などの消火活動用にも用いる装備がありますが、これを携行しなければ対応できません。しかし、重量は14.7kgあり継続使用時間は30分、山間部で携行するにはかなりの重量です。
こんな重いものでもヘリコプターで山頂に大量搬送することは可能でしょうが、3000m級の高山部で14.7kgを背負って30分の時間制限の中で作業することは出来ません。山頂付近での捜索活動、有毒ガスが充満する環境下においてじりじりと時間だけが経過する中焦燥感が募るところですが、ロボットの投入は真剣に検討されるべきでしょう。
現状で求められるのは福島第一原発事故に投入された米軍用ロボットの派遣です。自衛隊へ緊急供与されているほか、東京電力にも供与されており、今回の災害派遣で89式装甲戦闘車が出動していますが、この89式装甲戦闘車の原隊である普通科教導連隊が駐屯する滝ヶ原駐屯地、道路を挟み向かい側の米海兵隊キャンプ富士にも野戦用ロボットが装備されています。
野戦用ロボット、そして小型無人機、小型無人機であれば自衛隊にも装備されているものが少なからずあり、中には火山灰の中でもある程度ならば飛行可能なものもあります。現状の御嶽山山頂のように人間が入れない状況だからこそ、投入を真剣に検討すべきで、こうした判断は第一線部隊では行えない装備品もありますので、上級司令部や本省の決断が待たれるところ。
野戦用ロボット、アメリカ側に供与を打診してみる選択肢は防衛省で検討されるべきでは、と。東日本大震災福島第一原発事故ではウォリアーとバックボットというロボットが供与されており、ウォリアーは最大800mの距離での遠隔操作が可能な装備で、爆弾処理等の任務に対応するべく90kgまでの物量の輸送や回収が可能、というもの。
ウォリアーの搬送能力について、具体的には米軍は負傷兵などの収容を想定しているとのことですから、行方不明者の捜索を救難を、硫化水素や亜硫酸ガスの濃度が低いところから遠隔操作し対応することが出来るでしょう。捜索は火山活動が沈静化するまで待ちたいところですが、火山灰が堆積すれば降雨時、ラハール、つまり火山性泥流を発生させる可能性が非常に高い。
ラハールで流失してしまえば捜索の難易度が非常に難しくなってしまうため、余り悠長に構えられないと同時に、ラハールが多発すると気象条件によっては捜索隊が立ち入るにもさらに制限が掛かる事を意味します。そこで、バックボットやウォリアーのようなロボットを投入する方法を真剣に検討されるべきです。むしろ、東日本大震災以降に何故全国へ配備されなかったのか、予算上の問題があっても責任が問われると思うところですが。
パックボットは小型ロボットで文字通り背負って輸送でき人力可搬性を有しており爆発物の確認と処理に加え斥候等の任務を有しています。800mの遠隔操作距離の関係上、山頂付近には接近出来ないため、空中からの遠隔操作が必要ですが、共にアタッシュケース大の操作装置から運用可能で、パックボットについては非常に軽量且つ安価で一基当たりは01式軽対戦車誘導弾本体よりも安価です。
この際、米軍に一部を緊急供与を求めると共に、全国の部隊本部や各普通科中隊の本部などに3基程度取得する調達計画を立てておく、今後の災害派遣はもちろん、市街地戦闘など自衛隊の任務にも寄与するでしょう。なによりも災害派遣に威力を発揮するのですが、本来は市街地戦闘用の装備なのですから。
加えて、火山灰のなかで航空機エンジンに影響を与える火山性エアゾル微粒子は、電池式無人機には影響が非常に少なく、一部普通科連隊に装備されている携帯型飛行体を用いて遠隔地からの捜索を行う検討は為されてしかるべきです。少々山間部では風速が心配ですが、実運用と山間部での実用性に問題があるならば改良せねばなりません。
携帯型飛行体は手投げ式発進を行うもので全幅60cmと質量400gという非常に小型、電動プロペラ推進を採用しGPSを利用し位置を把握するため発進から着陸まで全自動自律飛行が可能で、搭載カメラにより毎秒3枚で画像を撮影し伝送出来ます。軽量過ぎるため気流が大きな山間部では運用が難しいですが、行方不明者捜索には寄与することは間違いありません。
山頂付近の行方不明者と山荘内に取り残された心肺停止孤立者、気象庁によれば週末には台風18号が本土へ接近する可能性が示唆されているため、早急な対応が必要となります、そういうのも火山災害は火山灰が堆積した時点で降雨が生じればラハール災害という次の段階へ展開する為、選択肢を迷わず選定し実行するべきでしょう。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)