北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【6】軍事力最大の任務は戦争を抑止することだ-ホワイトフリート世界一周

2023-08-31 20:00:28 | 北大路機関特別企画
■反撃能力への転換示せ
 反撃能力という2022年の新しい専守防衛からの脱却政策を元にこの”88艦隊の日”を論じてきましたが、重要なのは"日本の防衛政策がこれまでとは完全に転換した"という事を示し周辺国や友好国に理解してもらうことです。行使させて分らせる事が先であっては絶対にならない。

 ホワイトフリート世界一周、新しい88艦隊と反撃能力という視点で重要なのは、反撃するという姿勢を示す一方でその能力が中途半端なものであれば抑止力として機能せず、逆に予防的な攻撃を受ける可能性があるということで、反撃能力の整備は世界に専守防衛であることを示しつつ、しかし国土を戦場にしないこと誇示せねばならない。

 新しい88艦隊は、21世紀のホワイトフリート世界一周を行わなければなりません。ホワイトフリート世界一周とは1907年にアメリカのセオドアルーズベルト大統領が、新しく建造した戦艦16隻を中心とした大西洋艦隊を太平洋に回航する際、大西洋からインド洋を経て日本を親善訪問しつつ世界を一周しサンディエゴにむかったものです。

 ルーズベルト大統領は、日露戦争に勝利した日本への牽制を含め、戦艦16隻という巨大な戦力を中心に艦隊を編成し、20の寄港地での親善訪問を行いつつ世界を一周、ただ目的が建前であっても親善訪問であったため、東郷平八郎大将を中心に大規模な接遇艦隊を派遣し、日米間の海軍軍人との間で大きな交流を実現しました。

 東郷平八郎大将が歓迎会においてアメリカの若い海軍士官たちのテーブルを回り、その中には若き日のレイモンドスプルーアンスやウィリアムハルゼー、のちの提督たちと語り合いイギリス仕込みのジョークで笑わせたという一幕は、のちの太平洋戦争中はともかくとして戦後の日米関係へのおおきな基盤を構築したといわれています。

 新しい88艦隊、ホワイトフリートの16隻を考えれば2個護衛隊群16隻という規模が妥当でしょうか、ヘリコプター搭載護衛艦4隻を含む規模となります。引きこもりは卒業して世界に打って出る、これは1992年カンボジアPKOの頃から日本は続けているのですが今一つ浸透していません、実際世界ではある程度教養がなければ自衛隊を知らない。

 ヘリコプター搭載護衛艦4隻と、1万t規模のイージス艦4隻とともに、6000t規模の汎用護衛艦8隻で世界一周、汎用護衛艦の一部は練習艦隊の練習艦を充てて遠洋航海と両立させるなど艦隊運用を考えなければならないでしょうが、こうした規模の艦隊が地中海やイギリス、南米やアフリカとアメリカ東海岸を訪問することができたならば。

 パナマ運河を航行できない可能性、これは近年の記録的渇水により一日あたりの船舶航行量が30隻に制限されているという事情があるため、航路を考える必要があるでしょうし、なによりそれだけの規模の艦隊を、プレゼンスオペレーションに用いることは年次検査をかなり前の段階から調整しなければなりませんが、意味はかなり大きい。

 トランプ大統領が護衛艦かが表敬訪問を行うまではアメリカ本土ではある程度のよう教養人でなければ海上自衛隊の存在を知らず、逆に日本にまともな防衛力があることを知らず日本の防衛をアメリカ軍が担っていると誤解する方が相当数いた、少なくとも大統領選においてはこうした認識を持つ人が多くいました、そこから脱却を目指す。

 専守防衛は堅持するが必要があれば世界中どこにでも展開できる、こう誇示することが重要です。併せて、各国の航空母艦と共同訓練を行い、例えば地中海でNATO海軍の、ロシアウクライナ戦争前におこなったような4隻の空母部隊と共同訓練を行うとか、大西洋でクイーンエリザベス級2隻と並んでみる、こうした写真を世界に配信する。

 危機を示すクライシスの語原は切れている、という意味です。軍事力による抑止力で平和は生まれないという反論はあるでしょうが、いったん切れてしまえば元に戻すのに大量の犠牲を強いることは現実なのですし、安定を欠けば切れるまでそれほど時間はありません、ホワイトフリートを日本が再現することで、切れさせない覚悟を示す。

 反撃能力整備という2022年国家防衛戦略の画定と二年目が見えてきたロシアウクライナ戦争を前に、今年の88艦隊の日特集はかなりラジカルな内容となってしまいました。反撃能力を踏み込むならばせめて憲法改正を優先すべきとも思うのですが現実はそうでなく、世論もこれを容認している状況、そこでホワイトフリートを示しました。

 中国空母ともインド空母ともイタリア空母ともエジプト強襲揚陸艦とも、もちろんアメリカやフランスとイギリスの空母とも、そのころには情勢が落ち着けばロシアの空母とも、親善訪問と共同訓練を重ねることで、重ねて信頼醸成につなぐことができれば、戦争の懸念を十年単位で延ばし、別の道を探れるかもしれません。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋という概念を日本は安倍政権時代に世界へ呼びかけ、結果、アメリカ太平洋軍がインド太平洋軍に再編され、様々な国際公序のモデルへと展開しています。今回提示したポテンシャルというものは、そもそもこのFOIPを提唱した日本も、こうした理念を共有するステイクホルダーとなる地位を見越した提示というものです。

 平和主義の理念に立てば、非常に残念な話ではありますが、日本一国で中国ロシアの軍事圧力に対し平和を維持する事はできません、もちろん沖縄決戦や北海道防衛戦という限られた視点からは対抗し得るのかもしれませんが、日本は世界との貿易により国家を維持しており、それは過去の大戦への反省という視点からももっと広く認識されるべきと思う。

 沖縄決戦で日本の第32軍が仮にアメリカ軍を撃退していたとしてもフィリピン失陥によりシーレーンが途絶していた事実は変らず、結果的に連合国軍は別の策源地を確保して日本本土進攻、オリンピック作戦を実施していたでしょうし、本土防衛の時間を稼ぐとしてもシーレーンを絶たれた状態では大破した戦艦や建造中の空母を稼働可能とはできません。

 シーレーンを維持し、国家としての国民の生活を維持できてこそ初めて日本国家は成り立つものであり、この為には、自由で開かれたインド太平洋という理念、海洋自由原則という国際公序のステイクホルダーとして、それこそ普通の国として営みを続ける他ないのですね。もちろん、日本経済が高度経済成長を続けていたならば、別の道はあったでしょう。

 平和を札束で叩いて買っていた状態、日本がアジア最大の経済大国で在り続けたならば、アジア40億の人々から札束で叩いて平和を買っていたならば可能であったのでしょうが、中国の経済成長はじめ、円安といいますか、札束だけで平和を買い取る事が出来なくなったのが、残念ながら現実です。すると日本は世界の一員となるほか道が無いのではないか。

 抑止力というものはこういうもので、不幸にして開戦したあとでどれだけ兵器の威力を競っても意味はありません、しかし、こういうことが可能なのだ、と示すことで戦争を回避できるならば、軍事費は負担ですが戦争よりは僥倖でしょう。軍事力最大の任務は戦争を抑止することだ、これは高名な軍事評論家故江畑謙介先生の言葉です。この一点をまとめとして、新しい88艦隊と反撃能力整備特集は八月三十一日の今回でひとまず最終回とします。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ウクライナ軍2023年冬季のインフラ攻撃に備え石炭備蓄とザポリージャ州での戦闘について

2023-08-31 07:00:28 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 歩兵が小銃で戦車が戦車砲で撃ち合うだけが戦争ではないという事を痛感させられる視点です。

 ウクライナは来たる2023年冬季に備え石炭備蓄などを進めている、イギリス国防省ウクライナ戦況報告17日付発表においてその概況が示されました。冬季の備え、2022年冬季にはロシア軍はウクライナの電力インフラなどを自爆型無人機により攻撃、飢餓作戦ならぬ凍死作戦を展開しましたが、ウクライナは気候変動による温暖化に助けられました。

 石炭などの備蓄、2023年のウクライナは鉱工業要員を重点的に補填して石炭採掘を維持しており、石炭火力発電は勿論のこと石炭ストーブによる採暖などを準備しているとのことで、石炭ストーブであれば構造も簡単であり少なくとも投資は免れることが可能、またこのほか、石炭が枯渇した場合に備えて天然ガスの備蓄も進めているとしています。

 ウクライナは重ねて電力網維持への熟練労働力確保も重視しており、再度厳寒期に電力インフラなどが攻撃された場合に備えています。今年の冬が厳冬となるのか暖冬となるのかは長期予報では確度が低い状況ですが、ロシア軍は現在、自爆型無人機の国産化を進めており、エネルギー供給に対する冬の攻撃は相当規模になると警戒しなければなりません。
■クリシチフカ近郊
 南部戦線のザポリージャ州での戦闘について。これも空軍力が有ればと考えるとともにもう一つ我が国の場合は近接航空支援と航空阻止訓練の優先度の低さがなにかウクライナの苦戦から学ぶべき点を考えさせられる。

 ウクライナは東部戦線クリシチフカ近郊で若干の前進に成功した、ISWアメリカ戦争研究所の8月17日付戦況報告において分析結果が示されました。クリシチフカはバフムト南西7㎞に位置し、この地域での攻撃成功はウクライナ側が発表した動画によりファクトチェックができたとのこと。他方、ドネツクでの反攻作戦は前身に至らなかったという。

 ノヴォポクロフカへ、南部戦線ではザポリージャ州西部においてウクライナ軍は若干の前進に成功しており、オリヒフ南東16㎞のノヴォポクロフカで占領地を一部奪還した事がウクライナ側が14日に発表した動画から確認されました。他方、ロシア軍はクピャンスク近郊のヴィルシャナにおいて全身を主張していますが、映像などでは確認できません。

 ザポリージャ州での戦闘について、ロシア軍の現状として交代部隊を置かず第一線部隊を疲弊させているため、ローテーションにより休養と補給を重ねているウクライナ軍に対してロシア軍部隊の能力の劣化があり、仮にウクライナ軍が第一線を突破した場合、ロシア軍は第二線への後退を行うにも予備部隊の枯渇から大きな懸念を抱えているとのこと。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】名古屋城(愛知県名古屋市),名古屋空襲の文化財被害-寺社仏閣悉く焼き尽くした戦災概要

2023-08-30 20:23:45 | 旅行記
■第13方面軍司令部
 軍事施設よりは軍需工場となにより住宅街の民家や文化財が破壊されている印象がある。

 名古屋城、空襲により徹底的に破壊されたという歴史がありますが、名古屋空襲を調べてみますとそもそも、被害は名古屋城だけではなかった、いや、戦災復興で名所旧跡復興を名古屋城以外後回しとしたために、やたら機能的だけという街となった事を知り驚く。

 名古屋は軍都であり空襲の標的となった、という視座は名古屋空襲による軍事施設被害状況を見ますと全く当てはまらない事がわかります。空襲で破壊された軍事施設は、陸軍航空本部名古屋監督班事務所と東海軍管区司令部別館一棟第二庁舎となっている。

 第13方面軍司令部が名古屋に置かれていまして隷下には第54軍と方面群直轄の第73師団、第153師団、第229師団、高射第2師団が隷下に。それなりの規模の方面軍であったのですが、空襲の主目標は野戦部隊ではなく市街地と軍需工場に向けられました。

 第54軍などはその隷下部隊を見ますと、第143師団と編成中の第224師団及び編成中の第355師団、独立混成第97旅団と独立混成第119旅団と独立混成第120旅団そして第3砲兵司令部、それなりの規模があったのですが、軍が爆撃されなかったのは上記の通り。

 寺社仏閣という視点で見ますと、名古屋の寺社仏閣は、名古屋の方に申し訳ないのですが見るものが少ないといいますか、無い。のだけれども、これは戦災により焼かれてその後に宅地開発で寺社仏閣を破却してしまったという戦後の都市計画の結果でもあるという。

 B-29戦略爆撃機により名古屋が受けた空襲は数回に分け、全体で延べ2579機、もちろんこのほかに空母艦載機やB-25などの爆撃は含まない。あのドゥーリットル日本初空襲では名古屋赤十字病院がB-25に攻撃されていますが、これを含まず2579機という。

 萬松寺、空襲の被害を受けた寺院には先ずこの織田家ゆかりの寺院があります、2017年に本堂が再建されたのですが、どうみてもマンションにしか見えない事でマンショウ寺をもじってマンション寺といっていましたが、これは戦後都市計画の犠牲という歴史が。

 織田信秀という織田信長の実父葬儀が開かれ有名な位牌に信長が抹香を叩きつけた逸話はこの萬松寺でして、実は今よりもはるかに広い寺院でしたが空襲で全焼し不動堂と稲荷堂だけを再建して本堂はビルに甘んじるほかなかったという寂しい歴史があります。

 長福寺。もう一つ、ここは歴史ある寺院らしいという事でしかも大須電気街からほど近い立地もあっては如何に歩み伸ばしたのですが、あまりに小さく驚いたのです。廃仏毀釈の影響か真言宗寺院故に禅宗の流れで縮小したのかと思いましたが、ここも戦災だった。

 七寺塔頭という長福寺の寺域は旧国宝として指定された本堂も中世造営という三重塔なども七堂伽藍を全て焼失しており、しかも戦後復興により住宅地や商用地へ区画整理で寺域を取られてしまい、戦前は現在の大須観音よりも遥かに広かった寺域が今に至る。

 熱田神宮は本殿含め国宝鎮皇門も国宝海上門も春敲門をも焼き払い今に至るも再建されていない、名古屋東照宮は権現造の社殿と楼門及び唐門と渡殿を焼失、誓願寺は源頼朝の生誕地の寺という歴史があるも本堂を焼失し、高速道路効果近くに小さな庵を残すのみ。

 戦後は、苦しいという以前に喰っていくだけで精一杯という中での苦肉の復興計画がこうした現状となっている。名所旧跡なき名古屋の街は、こう考えますと、空襲の被害というもの、実は2020年代の現代でも如実に突き付けられていることを痛感するのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】名古屋城(愛知県名古屋市),八月は終戦記念日の季節-太平洋戦争は国宝天守閣と名古屋大空襲

2023-08-30 20:00:38 | 旅行記
■戦争・空襲と文化財
 名古屋もこの夏は危険な程に熱いのだけれども一つ久々に壮大な城郭を探訪して参りました。

 名古屋城。昔は城郭といえば天守閣、というものを、二条城どうなるんだといわれますといつか天守台に再建を、とまで考えていたほどですが、全国色々廻りますと街並みに溶け込んだ城郭や石垣を中心に大切にされている城址公園というものを漸く理解できた。

 日本第三の大都市である名古屋市、その象徴は名古屋城で東海道新幹線や東海道本線と名鉄本線の名古屋駅は、名古屋城から少し離れたところに整備されているゆえにやや遠くに望見する程度なのですが、再建された天守閣は凛として美しく円形にも良く映える。

 伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ、尾張名古屋は城でもつ。名古屋城はこのように言われていたものでして実際戦前には大阪城と熊本城とともにあわせて日本三名城といわれていたのだとか。個人的には姫路城と広島城と岡山城も素晴らしいと思うのだけれども。

 徳川家康が天下普請によって築城した城郭は、もともと今川義元築城の城である那古野城の縄張りを抜本的に拡張して造営されており、天下泰平の時代に在って本丸御殿は二条城の二の丸御殿と並ぶ武家風書院造の双璧を為すほどの豪華美麗を誇った、といわれる。

 名古屋大空襲、この豪華美麗を誇ったといわれるとの過去形の表現は、1945年5月14日の名古屋大空襲で大部分を焼失したという寂しい歴史によるもので、このとき名古屋を襲った爆撃機はB-29爆撃機440機、戦略爆撃機440機とは今考えると途方もない。

 B-29のこの日の爆撃は、主として名古屋駅周辺に集中し死者338名と負傷者783名、もちろんこんな爆撃の死者が21世紀の今日世界のどこかで生じれば全世界のトップニュースを数週間占め、国連安保理が開かれ人権団体が挙って現地調査を行うのでしょうが。

 城郭と名古屋駅に集中したこの日の爆撃は、しかし住居地域を狙うその後の絨毯爆撃にくらべれば死者数は抑えられていたという。実際、6月9日の熱田空襲は死者2068名、いや近郊都市を加えた第二次世界大戦全体での名古屋都市圏の被害はこれよりも遥かに。

 名古屋城名古屋城、と城郭だけを今まで見ていたのですが、この名古屋城が破壊されたのは空襲であるという知識はありました、ただ、その空襲はどんなひがいであったのだろうという素朴な疑問を敢えて名古屋城の再訪とともに調べてみますと、改めて考えさせる。

 北大路機関創設当時、わたしの大学には多数の資料があり、その中には連合国の戦略爆撃調査団による空襲関連の一次資料複写分が多数ありまして、いや学生時代に途方もない時間を活用できるというのは物事を学び、考える習慣づけの基礎固めには大切で。

 戦略爆撃調査団の資料を見ますと、この都市あの都市の破壊状況や被害状況をかなりしっかりと見ることができまして、凄い資料を図書室は集めたものだ、と地下の書庫、閉じ込めかけられたことも何度かあるけれども、その資料の厚さを感心させられたものです。

 名古屋城を破壊した空襲、これは驚くべきことに名古屋の今の印象というものまで影響してしまっているという事で、考えると今でこそ本丸御殿が再建された名古屋城だけれども、その前は焼け残った櫓と、あとは再建天守閣だけの城郭であった。後はお堀か。

 寺社仏閣巡りという視点から名古屋を散策しますと、大須観音はありますし熱田神宮も、まだ行ったことはないのですが東別院、けれどもそれ以外の大きな寺社仏閣というとあまり思い浮かばないという実情、調べるとそこが実は空襲の影響であったのですね。

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ウクライナ情勢-ロシア航空宇宙軍への重圧と混乱,クピャンスク・スヴァトフ・クレミンナ間の概況

2023-08-30 07:00:00 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 この状況でウクライナ軍がF-16を運用し始めて仮にアメリカが退役させるE-3でも供与したらどうなるのでしょう。

 ロシア航空宇宙軍は相次ぐモスクワへの無人機攻撃をゆるしたで重圧と混乱に曝されている、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月20日付分析においてその現状が分析されています。ロシア航空宇宙軍は現在大きな混乱にある状況です、それは6月のワグネル武装蜂起を受け、これに関係したとされる将官への粛正が進められており、航空宇宙軍は影響が。

 セルゲイスロヴィキン上級大将は、ロシア航空宇宙軍司令官に最近まで任命されていましたが、更迭されるまでの二か月半、その消息が不明となっていました。解任されることなく消息不明という状況で、航空宇宙軍指揮は参謀長のヴィクトルアフザロフ大将が代行をつとめていました。8月23日にスロヴィキン更迭がロシア国営メディアで報じられる。

 航空宇宙軍司令官はヴィクトルアフザロフ大将がそのまま指揮を命じられたとCNN2023年8月23日2013時報道がありましたが、上級大将昇格の報道は無く、事実上代行のままとなっています。一方でウクライナ軍は電子妨害を受けにくい対空ミサイル改造の弾道ミサイルをロシア攻撃に使用しており、航空宇宙軍は防空の重責を求められ続けています。
■東部戦線の概況
 偽後退により敵を主陣地へ引きこむのは沖縄戦で賀谷支隊が敵を嘉数に誘引した戦闘を思い出す、がウクライナ軍はそんな轍を踏まない。

 クピャンスク・スヴァトフ・クレミンナ間でロシア軍が兵力を移動させている、ISWアメリカ戦争研究所はウクライナ東部軍集団のイリヤイェヴラシュ報道官の発表を分析しました。報道官はロシア軍がクピャンスク方面からノヴォイェホリフカ方面に兵力を移動させていると発言、いったん後退しウクライナ軍を主陣地に誘引する動きがみられる。

 クピャンスクとライマン方面へロシア軍の焦点が移りつつある、こちらはウクライナ地上軍司令官オレクサンドルシルスキー大将の談話をISWアメリカ戦争研究所が分析したものです。他方で東部戦線全般で見た場合はロシア軍は北部においてウクライナ軍の誘因に務めているのみであり、中央部においては逆に顕著な動きがみられないとしています。

 東部戦線南部ではウクライナ軍がヴェルボヴェ周辺地域において着実に前進を続けており、オリヒフの南18km地域において成果を収めた、これらはウクライナ軍公開画像により判明しているほか、ロシア軍情報筋においても同様の情報が見られます。東部戦線南部の着実な進捗を北部でのロシア軍陽動がけん制しようとしている状況といえるでしょう。

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【防衛情報】MGCS主力戦車システムドイツフランス両国国防相会談とラインメタル社KF-51パンター戦車

2023-08-29 20:01:41 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 ヨーロッパの未来を担う次世代戦車開発は戦車開発の名門ラインメタル社とフランスドイツ共同開発戦車の二系統となっています。

 ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発へ両国国防相が会談しました。7月10日、ボリスピストリウス独国防相とセバスティアンレコルヌ仏国防相はベルリンで会談、2022年の計画発案以降具体的な動きが無かったMGCS主力戦車システムについての今後の展開を議題としました。ピストリウス独国防相はドイツ主導案を強く推したとのこと。

 MGCS主力戦車システムは画期的な130mm戦車砲と無人機などを備えた無人砲塔など新機軸を採用し、既に独仏合弁会社としてKNDS社をネクスター社とクライスマッファイヴェクマン社の出資により創設していますが、レオパルド2を製造したラインメタル社を参加させないなど、画期的というよりもリスクを感じさせる要素が既に露呈している。

 レオパルド2は1970年代末の設計であり、フランスのルクレルク戦車も1990年代の設計、改良は重ねているとはいえ2035年から2040年にかけ後継戦車が必要とされていますが、2035年までの完成を見込むならば幾つかの試行錯誤を行う余裕があるというのはベルリンでの会談での成果で、先ず車体と砲塔を両国が分け競合試作する検討も為されました。
■MGCS戦車共同開発
 MGCS戦車共同開発について。

 ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発に関する7月10日の独仏国防大臣会談を受け、両国の国防省は9月22日に両国陸軍参謀長による検討会合を開催することで妥結しました。主力戦車は単に打撃力と機動力に防御力が優れているだけでは完成するものではなく、どういった陸軍ドクトリンに基づいて運用するかを設計に反映させねばなりません。

 MGCS戦車共同開発、2018年にユーロサトリ国際兵器見本市における独仏主力戦車開発計画が発表された際には、レオパルド2戦車の車体にルクレルク戦車の砲塔が乗せられたものが展示されていました。レオパルドは優れた戦車ではあるものの砲塔の基本配置が1980年代の発想であり近代化に限界が。対してルクレルクは足回りの設計が弱点だ。

 ルクレルクの優れた砲塔とレオパルド2の信頼性のある車体は、結果的に両国合弁会社のKNDS社が設計するよりも早く、レオパルド2を製造したラインメタル社がKF-51パンターとしてその発想を応用した新戦車を独自開発しており、他方でMGCSはコンセプト放置で、新技術だけを積んだ状況、参謀総長会合ではその差異を埋めることを目指す。
■独仏戦車哲学
 戦車哲学についての相違点がフランスとドイツで共同開発に何らかの影響を及ぼす可能性があります。

 MGCS戦車共同開発計画について、ドイツのピストリウス国防大臣は、車体部分と砲塔部分をドイツ案とフランス案が双方で独自開発し、優れた案を採用するか、双方が妥結に至らなかった場合には別々の戦車として完成させる、共同開発という開発費の節約という利点をほぼ解消した共同生産の可能性を探るにとどめる試案を示唆したようです。

 ユーロパンツァー計画とMBT-70計画、ドイツの防衛産業としては過去の苦い経験があるのかもしれません。それは1950年代にフランスとドイツが、1960年代にドイツとアメリカが戦車の共同開発計画を立ち上げ、コンセプトでは非常に先進的なものと技術を掲げたものの、要求仕様などで両国が合致せず、開発費を空費させ結局中止となっている。

 MBT-70計画などは砲塔に重装甲カプセルを配置し車体を無人化させることで車高を抑え、大口径砲を搭載する試作車が開発されましたがミサイルガンランチャーか滑腔砲を採用するかなどで意見が合致せず、エンジン方式や副武装で対立し結局レオパルド2とエイブラムスを独自開発することとなった歴史があり、その再来を警戒しているのでしょう。
■KF-51パンター
 KF-51パンターは微妙な雲行きのドイツフランス共同開発よりも主力戦車の王道を心得ているようにみえます。

 ウクライナへ建設を進めているドイツのラインメタル社工場ではKF-51パンター戦車の生産が現実味を帯びてきたもよう。ラインメタル社のパッペルガー最高経営責任者は、今後12週間以内にウクライナへ工場を開設する方針である、7月11日付のCNN報道で明らかになりました。その新工場はウクライナ西部に建設されるとのことでした。

 KF-51パンター戦車をウクライナで生産する、ラインメタル社は2023年に入りウクライナ国内紙などの取材に対して、ウクライナ国内に2億ユーロを投じて年間400両の戦車を生産する体制を確立したいと応じており、戦車の車種は明らかにされていませんが、レオパルド2が生産終了していることを考えればKF-51パンター戦車が当て嵌まります。

 ラインメタル社によれば、ウクライナ西部の工場では先ずフクス装輪装甲車を生産する方針で、これは大型の六輪装甲車、製造はそれほど複雑ではありません。この建設にはウクライナの国営防衛企業ウクルオボロンプロム社が提携先になるとの事で、先ず短期間で完成する装備品を現地生産し、その後複雑な装備生産を行うという事なのでしょう。

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【G3X撮影速報】イージス艦こんごう大阪港一般公開,摩耶山を遠望するオールドレディ(2023-08-27)

2023-08-29 07:00:19 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■大阪港こんごう一般公開
 こんごう、竣工30周年という事でオールドレディというべき歴史を誇りますがこの程、金剛山の御膝元で摩耶山を望む大阪港へ入港しました。

 イージス艦こんごう、大阪港において一般公開されました。大阪港駅から600mの岸壁で一般公開されるということで、てっきり護衛艦かが一般公開の際にものすごい行列ができたという天保山岸壁かと思いましたら、実施は中央岸壁という、周りに店が少ない。

 夏空と護衛艦、実は日曜日の一般公開は前述土曜日の一般公開が相当混雑していたというお話を頂きましたので早めに行き、確かに並んでいたのですが、しかしそれは開門直後の待機列が滞留していただけという、少し後に行けば混雑は回避できたものでした。

 こんごう、見ておこう、こう決意しましたのは1993年竣工のイージス艦こんごう、もちろんまだまだ先がある護衛艦なのですけれど、護衛艦の寿命を考えるとそろそろ後継艦を計画しなければならないという、つまり撮影できるときに撮影しておきたいという。

 しまかぜ、はたかぜ型護衛艦はデジタルターターシステムとガスタービン推進にデータリンク能力重視など先進的なミサイル護衛艦として設計され、もう少し多数が量産される計画ではありましたが、イージス艦の導入によりその整備数は2隻にとどまりました。

 ハリアーかイージスシステムか、1980年代初頭の海上自衛隊ではこうした議論があり、超音速爆撃機バックファイアによる日本のシーレーンへの攻撃を阻止するには、護衛艦搭載のハリアーで迎撃するかイージス艦が撃墜するかが真剣に議論されていたのです。

 しらね型ヘリコプター搭載護衛艦、いまでは思い出の護衛艦ですがこの艦名はもともと護衛艦きりしま、となる予定が政治的な横やりを受け変更された経緯があり、きりしま、となっていれば二番艦くらま、とはならず二番艦こんごう、となっていたのかもしれない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】T-7Aレッドホークが更なる遅延とHARDROC高速空中指向性エネルギー兵器,E-767早期警戒管制機のMCU改修

2023-08-28 20:02:50 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連の話題を集めましたが先ずは量産機が初飛行したもののその先は順風満帆ではないというアメリカの高等練習機の話題からです。

 アメリカ空軍の次期練習機T-7Aレッドホークが更なる遅延の危機にさらされています、5月18日のGAOアメリカ会計検査院報告書によれば、機体安全性の問題と試験飛行の遅延が深刻であり、この問題は現在運用中のT-38練習機の既に初飛行が1959年と運用開始70年が見え始めている状況から更に運用の酷使と危険な老朽化の放置にも繋がります。

 GAOアメリカ会計検査院報告書ではT-7A練習機を製造開発しているボーイングとアメリカ空軍の間でのT-7A練習機を巡る緊張関係が存在しているとしており、また空軍とボーイングの緊張関係が、問題解決への前進を阻むとともに両者の関係を希薄化させているとしています。その緊張の背景にはボーイングの10億ドルを超える損失がある模様です。

 T-7A練習機は、この報告書以前の時点で脱出用射出座席の設計に不具合はあり、清算決定が2025年に遅延しています。元々デジタル設計により極めて短期間に設計成功したというT-7Aは、2017年のロールアウトから既に6年を経ており、現時点で初度運用能力獲得は早くとも2027年としていますが、報告書はこの期限さえ楽観的だと批判しています。
■JAS-39戦闘機操縦訓練
 トランシェ1ならばユーロファイターが供与されても最早驚きません。

 スウェーデン政府はJAS-39戦闘機を用いたウクライナ空軍戦闘機訓練の検討を発表しました、この検討は6月1日のヨンソン国防相発言によるもので、検討に先んじてSVTスウェーデン公共放送においてウクライナ空軍操縦士のJAS-39戦闘機操縦訓練に関する報道が為されていました、ただ、ヨンソン国防相は現段階でJAS-39は供与しないとしている。

 JAS-39戦闘機はスウェーデンのサーブ社が開発した戦闘機で、近年こそNATO加盟交渉を開始しましたが、一貫した重武装中立政策を執ってきたスウェーデンでは、有事の際に2機3機と分散運用と野外整備を念頭として設計した特色があり、ウクライナ政府が繰り返しスウェーデン政府へJAS-39の技術情報提供を要請した、とも報じられています。
■AARGM-ERミサイル
 防空制圧の話題を。

 オランダ空軍はF-35戦闘機用ミサイルとしてAARGM-ERミサイルを選定しました。AARGM-ERとは高度対レーダー誘導ミサイル射程延伸型の略称でAGM-88-HARM対レーダーミサイルの改良型、防空レーダーや野外レーダー、地対空ミサイルなどのレーダー照射を逆探知しレーダー装置そのものを破壊、防空制圧任務を行う為のミサイルです。

 AARGM-ERミサイルはノースロップグラマンが開発を担当しており、EA-18G電子攻撃機などに搭載されています。F-35戦闘機はステルス性が高いこともあり、防空制圧任務には通常のJDAMなど誘導爆弾を用いることも可能ですが、今回決定のAARGM-ERミサイルは射程が長く積極的な防空制圧任務へF-35を投入することが可能となるでしょう。
■HARDROC
 空対空ミサイルからステルス化で見えなくするのではなくトロフィーアクティヴ防護装置が戦車を守るように戦闘機や輸送機も積極的にミサイルを迎撃する時代が来るのでしょうか。

 アメリカ空軍はHARDROC高速空中指向性エネルギー兵器の360度評価試験を実施しました。これは2022年8月より継続的に実施されてきた試験で、ビジネスジェット機を転用した技術実証機へ低出力レーザー発射装置を側面部分に搭載、飛行中におけるビームディレクタの飛行特性の影響やセンサーとの適合性などが試験されてきたものです。

 HARDROC高速空中指向性エネルギー兵器はステルス機以外の航空機が空対空ミサイルによる攻撃を受けた際の生存性を確保するゲームチェンジャー的な装備であり、空対空ミサイルそのもの若しくはレーダーセンサーなどをレーザーにより破壊する新世代の装備で、F-15E戦闘爆撃機などの戦闘機が将来戦場において必須となる能力を期しています。
■E-767のMCU改修
 E-7Aなど世界は早期警戒管制機の小型化を模索しているようですが長射程空対空ミサイルに狙われる代位線は兎も角大都市など後方地域を自爆用無人機から守る為には長時間滞空できる機体とE-2Dのような小型機とを使い分ける必要があるようおもう。

 航空自衛隊はE-767早期警戒管制機のMCU改修を完了しました、MCUとはミッションコンピューティングアップグレードの略称で、改修は10年前の2013年に決定していて、この改修にはAN/UPX-40 -ESM電子測定支援システム、AN/APX-119 IFF- NGIFF次世代型敵味方識別装置、KIV-77 暗号電子計算機などの追加搭載が含まれています。

 E-767早期警戒管制機のMCU改修はアメリカ空軍が進めるE-3早期警戒管制機の能力向上に相当し、4機のE-767改修費用は9億5000万ドルに上ります。他方で、E-3早期警戒機の原型機であるボーイング707と比較しE-767の原型機であるボーイング767は機内容積が二倍となり空間的余裕がある一方、能力向上は別の配線設計が必要となる。

 E-3早期警戒管制機とともにインド太平洋地域では重要な作戦能力と位置付けている同盟国日本のE-767ですが、一方でアメリカはE-3の後継に小型のE-7A早期警戒機を、NATOもE-3の後継にグローバルアイ早期警戒機と小型機を指向しており、この背景には早期警戒機を狙う対レーダーミサイルの著しい射程延伸という脅威増大があるようです。
■NGAD第六世代戦闘機
 メーカー任せは良くないということね。

 アメリカ空軍はNGAD第六世代戦闘機についてF-35以上の技術パテント確保を目指す方針とのこと。これはアメリカ空軍のフランクケンドール長官による5月22日の発言によるもので、その背景にはロッキードマーティンを中心に開発したF-35戦闘機の技術情報の多くが同社の手中にあり、予備部品や維持費など多くが同社の主管にはいるため。

 技術パテント情報について、具体的には戦闘機の設計に関する情報を国防総省が管理し製造メーカーに下請けさせる方式を想定していて、これにより現在問題となっている予備部品確保の過剰確保や過小確保による稼働率への悪影響、不透明な維持費などの問題があり、NGADでは国防総省が情報の当事者となり完全な効率化を目指しているとのこと。
■CMMA次期哨戒機
 CMMA次期哨戒機はP-8のような総合哨戒機よりも使い勝手がよさそうだと思ってしまいます。

 カナダ空軍CMMA次期哨戒機についてボンバルディア社とジェネラルダイナミクス社が協力の方針を示しました。CMMAは洋上哨戒と対潜哨戒を担う航空機で、CP-140オライオン哨戒機の後継とともにCH-148コヨーテ対潜ヘリコプターの部分的な補完を担う機種を目指します。この為の母機としてボンバルディア社製民間機が充てられるという。

 ボンバルディアグローバル6500型リージョナルジェット、現在の計画ではこの機種を基にISRセンサーと対潜センサー、及び主翼にハープーン対艦ミサイル4発などの運用能力を付与させるという。グローバル6500は旅客機型では旅客定員16名、航続距離は12223㎞、ロールスロイスPearl-15エンジンの採用により最高速力はマッハ0.9に達します。
■Su-34M の納入
 半導体の経済制裁が密輸により開戦前の水準迄戻っているともいう。

 ロシア空軍はUAC統一航空産業社からSu-34M戦闘爆撃機を新規受領しました。Su-34Mは並列複座型のカモノハシのような形状をした戦闘機であり、1990年にソ連空軍が原型機を初飛行させソ連崩壊後も開発を継続、改良型となるSu-34M が2014年にロシア空軍向けの戦闘機として完成した、今回の納入は2021年契約分であるとのこと。

 Su-34M の納入は6月1日までに完了したとのこと。ロシア空軍ではロシアウクライナ戦争におけるロシア空軍の地上目標攻撃能力の低さという問題に直面し、しかし一方でウクライナ侵攻に伴う日欧米豪など各国からの経済制裁により電子部品輸入が中断しているという状況下にあり、今回の納入はこうした状況でも生産継続を示したかたちです。
■M-346FA軽戦闘機
 練習機だと思っていましたM-346の軽戦闘機への発展という話題を。

 ナイジェリア空軍はレオナルドM-346FA軽戦闘機の導入を正式決定しました。導入数は24機で空軍が運用する旧式のアルファジェット軽攻撃機を更新する計画という。またアルファジェットが高等練習機を原型とする軽攻撃機であるようにM-346FAもその原型は高等練習機、超音速機ではないものの幅広く採用されているイタリアの練習機です。

 M-346FAはもともとロシアとイタリアの共同開発機でロシア製のものはヤコブレフYak-130として知られ、本来M-346は練習機専用型、軽攻撃機型はYak-130という区分が為されていましたが、2000年に共同開発計画は解消、ただM-346の練習機専用機は販路を拡大したものの軽戦闘機型の販売は振るわず、軽戦闘機型が完成したのも2017年でした。

 M-346FAはハードポイント7カ所に3tまでの兵装を搭載可能、グリフォンM346レーダーを搭載し空対空戦闘能力を有しています。ナイジェリア空軍はこれと並行して中国からJF-17戦闘機の導入が決定、こちらは超音速飛行能力と視程外空対空ミサイルや空対艦ミサイルなどの運用能力を有しており、M-346にはその要員養成能力も期待されています。
■ポーランド空軍FA-50
 FA-50軽戦闘機の話題を書くたびに一度くらい日韓共同訓練で小松基地あたりに来てくれないかなあと思う。

 ポーランド空軍が導入を予定するFA-50軽戦闘機初号機がロールアウト式を迎えました。ソウル近郊のKAI韓国航空宇宙産業社において、6月7日、記念すべきロールアウト式となりました。ポーランド空軍は48機のFA-50軽戦闘機を導入する計画で、初期型が年内に12機が納入、こちらはサイドワインダーミサイルなどを運用する軽戦闘機です。

 FA-50軽戦闘機の後期型はAMRAAM空対空ミサイル運用能力を獲得し視程外交戦能力を有しています。式典に参加したポーランドのマリウスブワシュチャク副首相兼国防相は、ポーランドにおけるソ連製MiG-29戦闘機の運用終了を宣言し、今後はF-16戦闘機とFA-50軽戦闘機、将来的には交渉中であるF-35戦闘機の運用を開始すると発表しました。
■8500万ドル相当のF-35部品
 8500万ドル相当のF-35部品というともうF-35が更に一機かえてしまいそうだ。

 アメリカ政府GAO会計検査院によればロッキードマーティン社は過去5年間で8500万ドル相当のF-35部品を紛失した可能性があります。ロッキードマーティン社はF-35戦闘機の予備部品を予備部品プールに備蓄していますが、同社には予備部品の備蓄状況を追跡するプログラムが組まれていないため、その行方を把握していない可能性を指摘した。

 8500万ドルの予備部品は個数にして100万個、一つ当たりの部品費用は高くはありませんが、総数の金額となにより行方不明となっている部品数があまりにも膨大であり、管理プログラムなしで追跡不能となっている現状では、世界中の倉庫に備蓄される100万個一つ一つを手作業で確認する非現実的な手段しか発見できず、事実上喪失した状況なのです。


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ウクライナ情勢-ウクライナ空軍へオランダとデンマークF-16戦闘機供与,南部戦線での戦闘が激化

2023-08-28 07:00:59 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ情勢についてです。

 南部戦線での戦闘が激化している、ISWアメリカ戦争研究所が8月18日の戦況報告として発表しました。戦線全般の状況では、東部戦線において大きな動きはありません、クピャンスク-スヴァトフとクレミンナ間においてロシア軍が攻撃を加えていますが前進できていないという。そしてバフムト近郊ではウクライナ軍が反撃するも前進はない。

 南部戦線はT0518号線沿いにウクライナ軍が前進しているといい、T0518号線はノヴォシルカとスタロムリニフカを結ぶ道路、ドネツクとザポリージャ州境付近での全般的な反転攻勢となるかが注目されます。この延長線上として、ロボティネ周辺での戦闘も激化しており、ウクライナ軍はロボティネ北部陣地を固守、南部での戦闘を展開中とのこと。
■F-16戦闘機供与決定
 時間はかかりましたし反転攻勢にF-16が間に合わなかった事で航空優勢なき反撃となっていましたが。

 ウクライナ空軍へオランダとデンマークがF-16戦闘機を供与する決定が為された、ウクライナ大統領府8月20日付発表をNHKが8月21日0748時に報道しました。この決定はゼレンスキー大統領がオランダを訪問した際のルッテ首相との首脳会談において示され、オランダはその供与数を示していませんが、ウクライナは42機だとしています。

 ゼレンスキー大統領は同時期にデンマークを訪問しフレデリクセン首相との首脳会談を行い、デンマークのエレマンイエンセン国防相がデンマークのウクライナへのF-16戦闘機供与決定を発表しています。デンマークからの供与数はウクライナ大統領府によれば19機であるとしており、実際のこの機数であるかは不明ですが数個飛行隊分となります。
■ケルチ海峡大橋チョンハル橋
 南部戦線の状況を左右するのがロシア軍補給路の概況です。

 ロシア軍クリミア半島補給状況についてISWアメリカ戦争研究所が8月18日の戦況報告として発表しました。ウクライナ軍当局者からの情報を引用するかたちで、ケルチ海峡大橋とチョンハル橋などの状況を分析、ケルチ海峡大橋はストームシャドウミサイルなどの攻撃を受けていますが崩落には至っておらず一部を除き使用可能であるとのこと。

 ケルチ海峡大橋は破損部分での輸送力が滞留しないよう暫時交通遮断を行っているとしています。チョンハル橋はロシア側は修理完了を発表していますがウクライナ軍当局者の発表では一部に浮橋で代替経路を構成している可能性があり、重量のある車両通行の制限を意味しています。またチョンハル橋が結ぶ先のヘニチェスク橋も同様だとしています。

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【日曜特集】小牧基地オープンベース2019【10】懐かしの戦術偵察機RF-4は百里へ帰る(2019-11-09)

2023-08-27 20:00:41 | 航空自衛隊 装備名鑑
■迫力の帰投フライト
 小牧基地航空祭この年度の外来機で一番の注目は退役を控えたRF-4なのですが帰投前に派手なローパスを繰り返してくれました。

 RF-4戦術偵察機、時代遅れの偵察装置を搭載していたといわれるものですが、しかし災害派遣では日本全体がお世話になりました。このRF-4もCOVID-19新型コロナウィルス感染症の最中に退役、疾病ではなく耐用年数の関係でしたが、過去の装備です。

 HIAC-1-LROOP長距離側方写真機という特殊な超望遠レンズ搭載カメラを機首部分に備えていまして、これは気象条件さえよければ160㎞先を撮影できるという写真機です。100㎞以上先のものが見えるのか、といわれますと、そこが航空機の利点というべきか。

 旅客機で移動していますと、それこそ気象条件に左右されるものですが肉眼でも50㎞先はかなり鮮明に見えます、HIAC-1-LROOPについては、かなり重量がありますがもともとF-4戦闘機は戦闘爆撃機として運用されたほど搭載能力が大きく、問題にはならない。

 前方フレームカメラ、低高度パノラミックカメラ、高高度パノラミックカメラ、前方フレームカメラにHIAC-1-LROOPが搭載されていますが、更に飛行場や港湾施設などの点目標を撮影する以外に全般の情報を撮影するために広角カメラも搭載されているのです。

 RF-4が、ではなぜ時代遅れになったのかといいますと、このカメラはフィルム式で、家庭用ネガフィルムとは比較にならないほど大型のフィルムを内蔵しています。しかし、RQ-4のような現用偵察機はそのままデジタル画像を常時持続的に伝送することが可能に。

 3.11東日本大震災の災害派遣においてもまさにそうでしたが、RF-4戦術偵察機が配備されている茨城県の百里基地を離陸したRF-4は被災地上空から詳細な写真を撮影し、飛んで百里基地に帰る、航空機ですから飛んで帰るというのは比喩でも何でもありません。

 津波被害に見舞われた現地の詳細な写真を政府中央対策本部は一秒でも早く欲しいのですが、フィルムをそのまま東京に伝送する、前にまず百里基地で現像しなければなりません。専門現像部隊は偵察航空隊本部に置かれている、先ずこの時間がフィルムは惜しい。

 政府中央対策本部は首相官邸に置かれていますので、現像された写真はヘリコプターよりも航空機で運んだ方が早いのですが、F-4EJ改の爆撃照準器を使って首相官邸中庭に正確に投下、なんてことはできませんからT-4練習機で先ず首都圏の入間基地へと運ぶ。

 総理大臣が待ち焦がれている写真は入間基地から航空自衛隊ヘリコプターに載せ替えられ、そのまま渋滞を飛び越して官邸に運ばれるという。さすが自衛隊迅速だ、と思われる方は1990年代の方、変な話、伝送できないというのはどうしても時間が隔靴掻痒という。

 電送できないのか、と問われますとスキャンして電送することは、多少漏洩の懸念があっても被災地情報なのですから不可能ではありません、しかし、広角レンズにより撮影した画像は、写真に現像して引き延ばすと、基地を撮影した場合は地上の個人が判別できる。

 高精度の写真ゆえなのですが、広角レンズで数km四方を撮影して個人が判別できる精度なのですから、非常にデータ量が重くなる、スマートフォンで撮影して電送することも可能ですが、それでは高精度画像の意味がなくなってしまうのです。そしてその高精度は。

 橋梁の損傷度合は何tまでの車両が通行可能か、土砂崩れは10㎞中何カ所あり一番交通量を多く通せる道路はどこか、孤立地域で空輸が必要な地域を10カ所選定する場合はどの孤立地域が最も迅速に救命できるか、原発の損傷度は、など分かるのは高精度写真ゆえ。

 RQ-4無人偵察機、防衛省は2010年頃に高高度滞空型無人機として、国産機とアメリカ製RQ-4を比較検討していました。実際には2000年頃にアメリカが100㎞以遠からRQ-4により護衛艦むらさめ空撮を行い、非常に高精細な画像を防衛庁関係者に見せたことが。

 防衛庁の時代ですか2000年ですと。つまり防衛庁の時代にこうした情報に接しまして検討は進めた、無人偵察機そのものは冷戦時代に陸上自衛隊が第101無人偵察機隊を北海道に配置し、とても観測ヘリコプターでは行えない有事の際のソ連軍偵察を検討していた。

 グローバルホーク、ただ、この費用は機体そのものよりも地上管制設備が高すぎた。しかし、必要性を認識していたならば日本の経済力では調達できないものではないかった、それが実現しなかったのは、防衛予算を抑制する行政改革時代、ミサイル防衛の時代ゆえ。

 来年度予算概算要求では航空機等維持部品調達費が一挙に2兆円要求され、現状の稼働率不足にようやく終止符を打つという。弾薬調達費も9000億円ていど要求するといい、これまでどんなに無理を重ねていたのかを如実に示すような予算要求となるという報道が。

 200億円をとうじてちょうたつしたとしても、予備部品の予算を削って飛行できない状態としてしまっては何ともなりません、ただ、予算不足と、予算を抑制するよう政治に求めているのは世論であり選挙の結果ですので、この状況を容認せざるを得なかった構図です。

 RQ-4については、今年度偵察航空隊がようやく発足する、導入に関心を抱いてから実現するまでは20年以上を要した訳ですが、結局、無理をして予算を削った場合は、抜いてはいけない部分を抜いてしまい全体を瓦解させてしまう、という悪い見本のようになった。

 RF-4からRQ-4へ、本来ならば機種転換のように入れ替えるべきであったのでしょうが、2020年から2023年まで、偵察機が無ければ状況を確認できないような広域災害が起こらなかったのは僥倖だったというべきか、いやあの災害時に在れば、と思うのか。

 偵察機について、一方でもう一つ不安、今だからこその不安な要素としてなのですが、RQ-4で撮影した画像は、被災地自治体などで共有できるものなのでしょうか。簡単に思われるかもしれませんが、偵察能力は特定防衛秘密に含まれ得る、簡単には公開できない。

 新潟中越地震、2004年10月23日に発生しました地震に際して、この問題が表面化しました。山間部で大規模な山岳崩壊が生じ、河川などをせき止め複数の土砂ダムが発生、新潟県や山古志村と三条市などの自治体は土砂ダム決壊による下流への鉄砲水を警戒した。

 UH-60JA多用途ヘリコプターのFLIR画像により、陸上自衛隊は土砂ダムの情報を常に監視していましたが、これは下流で災害派遣に当たる隊員の安全確保用に、決壊の危険の可否のみが伝えられたのみで写真は新潟県庁にも被災地自治体にも提供されていません。

 土砂ダムの画像があるならば欲しかった、と新潟県災害対策本部は写真の存在さえ知らされず不満を述べることとなりましたが、陸上自衛隊はFLIRの性能そのものが防衛秘密にあたり、有事の際の偵察能力を暴露する懸念があるため、提供や開示は出来なかった、と。

 FMS有償軍事供与によりアメリカから導入した装備は特に、昨年の観艦式におけるF-35戦闘機のように、動画をリアルタイムで提供する際にも制約が生じることがあります。この点は純粋なアメリカ製のRQ-4、RF-4のように写真を出せるのかな、不安でもあります。

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