■日本海狙う新型弾道弾と潜水艦
北朝鮮がムスダン弾道ミサイルの実験を繰り返していますが、このまま放置すれば日本海沿岸部への重大な脅威へ至るかもしれません、何故ならばそのミサイルの特性と運用がこれまでのミサイルとは異なるものである為です。
日本海の対岸で何が起こっているのか。北朝鮮が先月に続き、今朝、ムスダン弾道ミサイル実験を実施ししました。ムスダン弾道ミサイルは先月にも三度に渡り実施されていまして、三度とも失敗しましたが、今朝の実験も失敗した模様です。0520時頃、日本海沿岸の元山付近から日本海に向け発射しましたが、直後に海上へ落下した、と韓国軍が発表しました。ムスダンは旧ソ連製潜水艦発射弾道弾を原型として北朝鮮が開発した移動発射式弾道ミサイルで射程は4000kmから6000km程度、西太平洋地域の米軍施設や中国と日本の全域を射程に収める新型ミサイルです。
新型ミサイル、ムスダンは繰り返し失敗していますが、単純に失敗を嘲笑する事は断じてできません、その逆です。これは、潜水艦発射弾道弾という特殊性が影響しているもので、既に完成した、日本全土を射程とするノドンミサイル、アメリカの一部を射程とするテポドン、アメリカ西海岸から東海岸を狙うテポドン2、が既に完成しており、これらは地上から発射を念頭とする設計となっています。ミサイル基地は人工衛星により常続的に監視され有事の際には日米により即座に攻撃される可能性がある為、ノドンはトンネル式地下格納庫を基点とする移動発射装置により運用しています。しかし、陸上に配備する限り移動式発射装置であっても、例えば同様の運用方式を採った湾岸戦争におけるイラク軍のスカッドミサイルの様に、長期的に居k残る事は出来ません。
潜水艦発射弾道弾として開発が進められるムスダンですが、潜水艦イ搭載すれば海中に隠れる事が出来る。北朝鮮は併せてソ連崩壊後、解体用スクラップとして10隻以上、一説には13隻を取得した通常動力推進型弾道ミサイル潜水艦ゴルフ級を参考として国産の新型弾道ミサイル潜水艦を建造中であることが衛星写真などの解析から判明しており、この弾道ミサイル潜水艦用に潜水艦発射弾道弾の開発が必須となることから、今回のムスダン実験失敗を受けても、成功するまで、その実験は継続される事でしょう。
このムスダンですが、日本海沿岸の我が国防衛へも間接的な影響を及ぼす可能性があります。それは、ムスダンを搭載する弾道ミサイル潜水艦が日本海に配備される可能性が、アメリカ軍の西太平洋地域における基地を攻撃する観点から非常に高く、この潜水艦を防衛するために機雷原を日本海の北朝鮮沿岸に沿って構築し、アメリカの攻撃型原潜等からの攻撃を回避する安全圏を構成することが考えられる為です。北朝鮮は対潜航空機を一機も保有せず、フリゲイトも旧式で新型を今建造中という沿岸海軍ですが、機雷を活用する事は可能です。また、北朝鮮海軍に大きな装備と戦術面で影響を与えたソ連海軍も機雷戦を重視してきました。
膨大な機雷が潜水艦の安全海域を構築するために使用される危険、機雷は浮流機雷となり、日本海における我が国シーレーンへ漂流する可能性は捨てきれません。この為、掃海任務の必要性が高くなることが予想できますが、それ以上に、北朝鮮が日本海へ太平洋方面の海上自衛隊部隊やアメリカ海軍部隊の北朝鮮潜水艦掃討への展開を阻止べく、日本海と外洋を繋ぐ海峡を機雷攻撃する可能性が生じる、という事です。潜水艦や自動車運搬船などを改造した特設機雷敷設船、自動車運搬船改造機雷敷設船は過去にリビアがスエズ運河への機雷敷設テロを実施した際に採用しましたが、こうした投射手段を用いて、対馬海峡や津軽海峡等に隠密裏に機雷を敷設する可能性が高く、朝鮮半島有事の際に日本が巻き込まれる危険が高まるということです。
機雷と北朝鮮ですが、朝鮮戦争において多用したほか、その機雷は実際に浮流機雷となり日本沿岸へ漂着した歴史があります。そして更に北朝鮮海軍の海上での同行は活性化の兆候があります。事実、韓国海軍は27日、北朝鮮海軍艦艇の領海侵犯に対し退去を促す警告射撃を実施しましたが、これに対し北朝鮮は“無慈悲な報復”を予告しました。事態が発生したのは黄海上で、朝鮮戦争期韓国支持の離島が北朝鮮軍の攻撃を軍民一致の抗戦により撃退に成功し、38度線よりも北方の島々も韓国側へ残る事が出来ました、が、このため北朝鮮本土から隣接した海域の島嶼部であることから繰り返し軍事挑発を受け、韓国軍は精鋭海兵旅団や陸軍砲兵部隊などを離島へ配備し着上陸に備えています。
今回事案が発生した海域には、過去に哨戒艇同士の戦闘が何度も発生しています、1999年の黄海海戦では複数の哨戒艇と警備艇が数百mの距離で機関砲と小銃の銃撃戦を展開し韓国海軍が北朝鮮警備艇を撃沈しています、2002年には76mm戦車砲を搭載した北朝鮮コルベットが韓国哨戒艇を突如襲撃し撃沈する戦闘が発生、2009年にも戦闘が展開されました、北朝鮮は挑発に対し当該地域以外の場所での報復を示唆しており、これを口実にソウル北方の軍事境界線付近での挑発行動激化なども懸念されるでしょう。
ムスダン開発は、北朝鮮のミサイル開発が陸上を主体とした運用体系に加えて、海中へのミサイルを退避させる手段を模索している事に他なりません。そしてその能力を最大限発揮するには、我が国の重要海域を封鎖する必要が出てきますし、その能力は北朝鮮でも限定的ではありますが保持しています。我が国では海上自衛隊が舞鶴基地に舞鶴地方隊を置き、更に第3護衛隊群主力が舞鶴を母港としています、日本海は我が国の広大な海岸線に湛える重要な海洋であり、安全保障上の重要海域でもあります、今後、ムスダン開発は北朝鮮が次のミサイル戦略に着手した重要な危機であり、直接のミサイル脅威と機雷や海軍増強という脅威の増大へ、どのように向かい合うのか、冷静に注視しなければなりません。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
北朝鮮がムスダン弾道ミサイルの実験を繰り返していますが、このまま放置すれば日本海沿岸部への重大な脅威へ至るかもしれません、何故ならばそのミサイルの特性と運用がこれまでのミサイルとは異なるものである為です。
日本海の対岸で何が起こっているのか。北朝鮮が先月に続き、今朝、ムスダン弾道ミサイル実験を実施ししました。ムスダン弾道ミサイルは先月にも三度に渡り実施されていまして、三度とも失敗しましたが、今朝の実験も失敗した模様です。0520時頃、日本海沿岸の元山付近から日本海に向け発射しましたが、直後に海上へ落下した、と韓国軍が発表しました。ムスダンは旧ソ連製潜水艦発射弾道弾を原型として北朝鮮が開発した移動発射式弾道ミサイルで射程は4000kmから6000km程度、西太平洋地域の米軍施設や中国と日本の全域を射程に収める新型ミサイルです。
新型ミサイル、ムスダンは繰り返し失敗していますが、単純に失敗を嘲笑する事は断じてできません、その逆です。これは、潜水艦発射弾道弾という特殊性が影響しているもので、既に完成した、日本全土を射程とするノドンミサイル、アメリカの一部を射程とするテポドン、アメリカ西海岸から東海岸を狙うテポドン2、が既に完成しており、これらは地上から発射を念頭とする設計となっています。ミサイル基地は人工衛星により常続的に監視され有事の際には日米により即座に攻撃される可能性がある為、ノドンはトンネル式地下格納庫を基点とする移動発射装置により運用しています。しかし、陸上に配備する限り移動式発射装置であっても、例えば同様の運用方式を採った湾岸戦争におけるイラク軍のスカッドミサイルの様に、長期的に居k残る事は出来ません。
潜水艦発射弾道弾として開発が進められるムスダンですが、潜水艦イ搭載すれば海中に隠れる事が出来る。北朝鮮は併せてソ連崩壊後、解体用スクラップとして10隻以上、一説には13隻を取得した通常動力推進型弾道ミサイル潜水艦ゴルフ級を参考として国産の新型弾道ミサイル潜水艦を建造中であることが衛星写真などの解析から判明しており、この弾道ミサイル潜水艦用に潜水艦発射弾道弾の開発が必須となることから、今回のムスダン実験失敗を受けても、成功するまで、その実験は継続される事でしょう。
このムスダンですが、日本海沿岸の我が国防衛へも間接的な影響を及ぼす可能性があります。それは、ムスダンを搭載する弾道ミサイル潜水艦が日本海に配備される可能性が、アメリカ軍の西太平洋地域における基地を攻撃する観点から非常に高く、この潜水艦を防衛するために機雷原を日本海の北朝鮮沿岸に沿って構築し、アメリカの攻撃型原潜等からの攻撃を回避する安全圏を構成することが考えられる為です。北朝鮮は対潜航空機を一機も保有せず、フリゲイトも旧式で新型を今建造中という沿岸海軍ですが、機雷を活用する事は可能です。また、北朝鮮海軍に大きな装備と戦術面で影響を与えたソ連海軍も機雷戦を重視してきました。
膨大な機雷が潜水艦の安全海域を構築するために使用される危険、機雷は浮流機雷となり、日本海における我が国シーレーンへ漂流する可能性は捨てきれません。この為、掃海任務の必要性が高くなることが予想できますが、それ以上に、北朝鮮が日本海へ太平洋方面の海上自衛隊部隊やアメリカ海軍部隊の北朝鮮潜水艦掃討への展開を阻止べく、日本海と外洋を繋ぐ海峡を機雷攻撃する可能性が生じる、という事です。潜水艦や自動車運搬船などを改造した特設機雷敷設船、自動車運搬船改造機雷敷設船は過去にリビアがスエズ運河への機雷敷設テロを実施した際に採用しましたが、こうした投射手段を用いて、対馬海峡や津軽海峡等に隠密裏に機雷を敷設する可能性が高く、朝鮮半島有事の際に日本が巻き込まれる危険が高まるということです。
機雷と北朝鮮ですが、朝鮮戦争において多用したほか、その機雷は実際に浮流機雷となり日本沿岸へ漂着した歴史があります。そして更に北朝鮮海軍の海上での同行は活性化の兆候があります。事実、韓国海軍は27日、北朝鮮海軍艦艇の領海侵犯に対し退去を促す警告射撃を実施しましたが、これに対し北朝鮮は“無慈悲な報復”を予告しました。事態が発生したのは黄海上で、朝鮮戦争期韓国支持の離島が北朝鮮軍の攻撃を軍民一致の抗戦により撃退に成功し、38度線よりも北方の島々も韓国側へ残る事が出来ました、が、このため北朝鮮本土から隣接した海域の島嶼部であることから繰り返し軍事挑発を受け、韓国軍は精鋭海兵旅団や陸軍砲兵部隊などを離島へ配備し着上陸に備えています。
今回事案が発生した海域には、過去に哨戒艇同士の戦闘が何度も発生しています、1999年の黄海海戦では複数の哨戒艇と警備艇が数百mの距離で機関砲と小銃の銃撃戦を展開し韓国海軍が北朝鮮警備艇を撃沈しています、2002年には76mm戦車砲を搭載した北朝鮮コルベットが韓国哨戒艇を突如襲撃し撃沈する戦闘が発生、2009年にも戦闘が展開されました、北朝鮮は挑発に対し当該地域以外の場所での報復を示唆しており、これを口実にソウル北方の軍事境界線付近での挑発行動激化なども懸念されるでしょう。
ムスダン開発は、北朝鮮のミサイル開発が陸上を主体とした運用体系に加えて、海中へのミサイルを退避させる手段を模索している事に他なりません。そしてその能力を最大限発揮するには、我が国の重要海域を封鎖する必要が出てきますし、その能力は北朝鮮でも限定的ではありますが保持しています。我が国では海上自衛隊が舞鶴基地に舞鶴地方隊を置き、更に第3護衛隊群主力が舞鶴を母港としています、日本海は我が国の広大な海岸線に湛える重要な海洋であり、安全保障上の重要海域でもあります、今後、ムスダン開発は北朝鮮が次のミサイル戦略に着手した重要な危機であり、直接のミサイル脅威と機雷や海軍増強という脅威の増大へ、どのように向かい合うのか、冷静に注視しなければなりません。
北大路機関:はるな くらま
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