北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑨ 機甲部隊の対戦車戦闘

2013-05-31 23:14:53 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆戦車の天敵は、戦車そのもの

 特科部隊の攻撃準備射撃や攪乱射撃の支援下で我が機甲部隊は前進を開始します。

Fimg_6345 74式戦車、射撃位置へ。EOS-7Dの最大連写速度にて74式戦車を捉える、発砲焔は空包でもくっきりと映り込み、実弾では撮影不能である戦車前方に回り込んでの撮影が可能となりますので、その迫力こと訓練展示模擬戦の醍醐味であり、主役だ、と主張しても異論は殆ど出ないでしょう。

Fimg_6347 一閃!、刹那、衝撃。身をもって感じる、戦車砲の威力は音ではなく衝撃で到達します。この迫力の瞬間をカメラが切り取るには、とにかくシャッターを押し続ける胆力が必要で、シャッターが下がった瞬間瞬間に発砲焔が見えなければ、それはカメラが記録している、ということ。

Fimg_6348 衝撃、来た!。地面が戦車砲空包射撃の衝撃波で表面に砂塵がが盛り上がっているのがご確認いただけるでしょうか。戦車砲の発砲焔は空包ながら、より薬量の多い榴弾砲がその砲声の大半を天へ抜けさせるのと対照的に地面を這いよるため、より強力な印象と引っ叩く様な瞬間と寸秒音が聞こえなくなる錯覚に陥る迫力です。

Fimg_6354 やはり戦車の脅威は戦車でなければ対応できません。戦車砲は直接照準で防御された車内から正確に火力投射が可能、戦闘ヘリコプターの衝撃力は大きいですが滞空時間は限られています。対戦車ミサイルには様々な運用制限があります。即ち、我が方に戦車があれば相手は相応の対抗手段を要する、という重要な要素がある。

Fimg_6684 敵は、撃破されました。近年、冷戦後の国際平和維持活動増大を受けての戦車から装甲戦闘車への転換が、平和維持活動よりも正規戦の可能性が再興する中、進んでおり、戦車を置きかえる主役にふさわしい防御力や戦闘能力を付与する結果、その取得費用は戦車に近い高騰するものとなてしまいました。

Fimg_6400 そして欧州で余剰となった第三世代戦車が広く世界の中古兵器市場へ供給され、機甲脅威は分散しつつ着実に紛争地帯への普及が続いています。この事実に目を向けるならば、装甲車は戦車の補完に他ならず、主力は戦車でも歩兵でもなく、その協同に他ならない、という実情に目を向ける必要があるやもしれません。

Fimg_6377 我が機甲部隊の攻撃により敵戦車部隊が沈黙、特科部隊の支援と共に攻撃前進へ転換、敵陣地への航空攻撃を行うべくAH-1S対戦車ヘリコプターも上空からの支援に加わりました。高い生存性と打撃力を併せ持つ対戦車ヘリコプターは緊急時の瞬発的な大打撃力を以て比類ない打撃が可能です。

Fimg_6424_1 普通科部隊の前進への障害となる火力拠点を戦車が正確な射撃支援により直接照準で無力化します。現在陸上自衛隊では各部隊の情報共有と一元化を進めており、既に第2師団や第6師団では、普通科部隊が発見しつつも独自火力では対応できない目標情報を同時に戦車と共有化し、即座に火力支援する試みが進んでいます。

Fimg_6359 AH-1Sと装甲車部隊の連携、空地一体の立体戦闘、陸上自衛隊は早い時期からこの重要性に着目し、運用研究と戦術研究を積み重ねてきました。不意遭遇を適宜航空打撃が排除しつつ、地上部隊の前進を支援する。滞空時間に限界があり、連携が遅れれば全て破綻しかねないのですが、米軍をはじめ、実運用で実績が構築されており、訓練と研究の重要性を示すもの、と言えるやもしれません。

Fimg_6390 96式装輪装甲車の前進、12.7mm重機関銃の空包を盛んに発砲しつつ進んできます。装甲車は乗員と乗車要員を砲弾片や携帯火器の攻撃から防護し、戦車等に随伴し高い進出能力を維持するための必要不可欠な装備ですが、陸上自衛隊では装甲車の運用地形よりもヘリコプターの空中機動が防衛上有利であると考え、冷遇されてきました。

Fimg_6447_1 この96式装輪装甲車は、第4戦車大隊のもの。本来普通科部隊へ広く配備する目的で装備されているものですが、冷戦時代よりその立地上機械化部隊を重視した北部方面隊は全ての普通科連隊に最低一個中隊の装甲化中隊を置いているものの、本土師団では緊急展開部隊である中央即応連隊を除けば、戦車大隊などの本部車両に装備されているのみで、普及はしていない。

Fimg_6282 普通科部隊の前進を特科部隊が支援射撃により火力支援を行います。連続射撃能力が高いFH-70は、短時間で効力射を繰り返し、実運用では効力射の度に迅速に陣地転換を行い、反撃へ備えます。特科部隊は、全陸上自衛隊で最初に情報共有が進められた機構です。

Fimg_6417_1 情報共有の先駆者、これは長射程を活かす間接照準射撃を行うため直接視界戦闘が行えず、加えて対砲兵戦などは対砲レーダ装置や標定装置との連携こそが生存さえも左右されるわけですので、ある意味当然と言え、誤解を恐れず表現するならば情報共有や共同交戦能力とは、特科部隊の手法を全部隊へ普及させるもの、と言えるでしょう。

Fimg_6429_1 戦車とともに軽装甲機動車が前進します。軽装甲機動車は一個小銃班を分散乗車させることで火力の制圧地域を増大させる観点から導入されたもので、その分取得費用が低く抑えられていることから、導入開始より十年少々ながら1500両以上が導入され、陸上自衛隊の象徴的な車両となりつつある。

Fimg_6450_1 こうして普通科部隊の攻撃前進が開始されました。敵の反撃は特科火砲と戦車砲にヘリコプターにより制圧され、散発的なものとなってゆきます。続いて地上戦闘の決着をつけるべく普通科部隊の降車戦闘へ展開してゆくこととなりますが、その様子は次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (15)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十五年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.06.01・02)

2013-05-30 23:50:21 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 日本列島は早くも梅雨入りしてしまいました、紫陽花が花開く今日この頃、北大路機関自衛隊行事詳報は完結編とそれに近いものがもう一つ、次の詳報掲載準備を行っているところ。

Img_3061 その梅雨を吹き飛ばすかのように第七師団創設58周年記念行事が北海道の東千歳駐屯地にて執り行われます。我が国唯一の機甲師団は、広大な北海道の駐屯地を舞台に三個戦車連隊を以て迫力の行事を繰り広げます。部隊整列、観閲行進、訓練展示、北海道はやはり桁が違う。

Img_2713 東千歳駐屯地へは千歳駅からのバスや南千歳駅からのタクシー利用等の方法がありますが、駐屯地正門から式典会場までがかなり遠いのでご注意ください。なお、東千歳駐屯地祭へは、近年、成田や関空からの早朝便を利用し、なんと首都圏や京阪神からの日帰りも可能なのだとか、凄い時代ですね。

Img_0226 第9師団創設記念行事青森駐屯地祭も見どころで、東北北部と青函地区を防衛警備管区とする第9師団創設51周年記念行事が土曜日と日曜日に青森市を舞台に繰り広げられます。土曜日と日曜日というのは、土曜日に青森市新町通にて市街パレードを挙行、日曜日に駐屯地祭を行う、ということ。

Gimg_8533 青函地区を防衛警備管区とする第9師団は冷戦時代、北海道の師団に準じた重装備を保有し、装備定数なども重厚な師団としての位置を担い、本土戦車大隊一個戦車中隊の北部方面隊抽出、所謂戦車北転事業の本土唯一の例外師団となりましたし、本土師団近代化の切り札と呼ばれたFH-70榴弾砲も第9特科連隊より装備を開始しています。

Img_60371 第1施設団創設59周年記念行事、古河駐屯地祭。茨城県古河市にて東部方面隊直轄の施設部隊による記念行事が行われます。先週は宇治の大久保にて第4施設団創設記念行事が行われましたが、施設部隊の大規模部隊は他の舞台とは異なる装備と雰囲気に溢れ、中々興味深いものでした。

Mimg_7066 マリンフェスタIN大湊、海上自衛隊関連では大湊基地で行われるマリンフェスタが最大の行事といえるでしょう。大湊地方隊隷下の施設や大湊航空基地の一般公開が行われ、体験航海も行われます。場所は青森県むつ市、少々交通は不便ですがその分、横須賀のように混雑しないためゆっくり見られるようです。

Iimg_3488 横須賀YYのりものフェスタ、横須賀基地周辺と横須賀駅周辺にて、JRの特急車両一般公開から海上自衛隊の一般公開まで、のりものフェスタとして広く開放される行事です。横須賀基地近くに或る横須賀駅、その隣の広場や横須賀駅ホームなどに特急電車が一般公開され、広い趣味の方の興味へ応える行事、といえるでしょう。

Nimg_9389 ブルーインパルスについて、ブルーインパルスが福島市において飛行展示を実施します、福島駅から阿武隈川方面へ向かって国道四号線沿いが会場、お時間と場所にご注意ください。1日と2日に行われる東北六魂祭にて、1日1400時から1425時にかけて、飛行展示が行われます。相馬市相馬民謡と田村市鬼五郎太鼓の間に飛行が行われる、とのこと。

Gimg_3686 防府北基地航空祭、T-7練習機九機編隊飛行や隣接する陸上自衛隊駐屯地第13飛行隊の航空機との編隊飛行や機動飛行が行われ、芦屋基地からのT-4練習機四機編隊飛行やF-2支援戦闘機機動飛行等が行われます。T-7練習機九機編隊飛行は午前と午後に行われ、万一見逃してももう一度チャンスがある。

Img_4537 防府南基地開庁記念行事、こちらは航空教育隊司令部が置かれている基地で第1教育群が置かれている、航空自衛隊新隊員教育と空曹教育の一大拠点、記念式典と上空の航過飛行展示が行われます。週末は防府で二つの航空自衛隊行事を満喫されてはどうでしょうか、なお土曜日にこちら教育隊の一般公開、日曜日に飛行場の航空祭、お間違えの無いように。

Img_1506 レーダーサイトの行事が二つあります。土曜日に見島分屯基地開庁記念行事、日曜日に御前崎分屯基地開庁記念行事です。見島分屯基地は山口県萩市の離島で、第17警戒隊のレーダーサイト、萩商港から高速船で渡り、そこから3kmぐらい離れている、ちょっと足を運びにくいところ。

Img_6855 御前崎分屯基地は第22警戒隊の展開するレーダーサイトで、公共交通機関の場合、JR菊川駅が最寄り駅となるのですが、そこからバスで移動する場合、あなり時間を要するとのこと、駐車場が分屯基地周辺に用意されていますので、いろいろご検討の上で足をお運びください。分屯基地開庁記念行事ですが、レーダーサイトの一般公開ではレーダーアンテナや管制施設などはなかなか見ることが出来ないものの、分屯基地内での装備品展示が行われるほか、外来機の航過飛行での飛行展示が行われます。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソマリア沖アデン湾海賊対処任務第14次派遣水上部隊すずなみ、きりさめ帰国へ

2013-05-29 23:03:56 | 防衛・安全保障

◆現在、第15次派遣水上部隊が護衛任務中

 ソマリア沖アデン湾へ海賊対処任務へ派遣されていた護衛艦二隻が来週と再来週にそれぞれ母港へ帰港します。

Img_4825 今回帰港するのは第14次派遣部隊として第三護衛隊群第三護衛隊より編成され、派遣された護衛艦すずなみ、きりさめ、の二隻です。第14次派遣隊は、4月7日と4月9日にそれぞれ日本を出港した護衛艦あけぼの、はまぎり、より編成される第6護衛隊隷下の第15次派遣隊へ任務を引き継ぎ、帰国へ向かっていたもの。

Img_3828 帰国予定は、防衛省の発表によるところではまず6月7日に護衛艦きりさめ、が母港佐世保基地へ入港、続いて6月10日に護衛艦すずなみ、が母港大湊基地へ帰港、第3護衛隊が実施した今回のソマリア沖海賊対処任務を完了させます。

Img_3872 海上自衛隊の海賊対処任務はアデン湾を航行する船舶に対し船団護衛方式を採る事で海賊の接近を抑止する、地道ですが手堅い方策を執っています。これにより、勿論に席の護衛艦ですべての船団を護衛することは出来ませんが、護衛対象の船団への被害発生を確実に防いでで今に至ります。

Himg_07860 南西諸島方面での中国海軍の活発な動きに合わせ警戒態勢を強化しつつ、北朝鮮のミサイル脅威にも注視しながら、自衛隊は海賊対処任務を継続しており、来週と再来週の帰国までは交代として回航中の二隻と任務中の二隻を含め、四隻が任務に就いていることから、海上自衛隊の負担は決して軽くはありません。

Img_7633 他方、護送船団方式では海賊を根絶できず、各国海軍が行う方式、海賊掃討方式として哨戒任務にあたり、海賊を捜索しつつ発見した海賊を順次捕縛もしくは無力化する方式の方が長期的に海賊被害の根絶には寄与するのではないか、という指摘は識者や海事専門家の一部より為されました。

Gimg_8761 この課題に対して、我が国では海賊対処の護衛任務を海上自衛隊水上部隊、哨戒任務を海上自衛隊航空部隊が行いつつ、外務省と国土交通省が協力し、ソマリア周辺国への海上保安庁をモデルとした海洋法執行機関の養成支援や巡視艇の供与を行っており、着実に組織要請は進んでいます。

Img_9233 哨戒と掃討は短期的胃効果を上げるでしょうが各国海軍艦艇が帰国すれば再発します、しかし、アデン湾の恩恵を受ける周辺国が摘発へ対応する能力を得れば、長期的に海賊を取り締まることが出来るわけですから、掃討による根絶ではなく、抑止による撲滅へ、日本らしく、時間はかかりますが確実な方策を以て、取り組んでいるといえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弾道ミサイル防衛、奇襲対処主眼に都心部へペトリオットPAC-3ミサイル常設配備を検討

2013-05-28 23:15:17 | 防衛・安全保障

◆突発的脅威へ即応体制を高める

 時事通信によれば政府は、新防衛大綱へ都心部への弾道ミサイル防衛部隊常駐の盛り込みを検討しているとのこと。

Mdimg_0052 現行では北朝鮮などの弾道ミサイル脅威が増大する際に、その都度首都圏を担う入間基地第1高射群よりペトリオットミサイルPAC-3迎撃ミサイル部隊を新宿御苑や市ヶ谷基地へ展開させ、迎撃態勢を整えていましたが、これを首都中心部へ常駐させ、即応体制を維持することが狙い。

Mdimg_8270 これまでは、北朝鮮によるミサイル実験の兆候を感知した場合や、実験宣言を行った際に展開していたため、我が国を射程に収める弾道弾には移動発射装置式のノドンミサイルが奇襲的に運用した場合、展開が間に合わないことが指摘されており、これに応えるもの。

Mdimg_1646 これは年末に制定される防衛大綱への反映を念頭に検討している内容とされていますが、ミサイル破壊措置命令の度に出動する状況に対し、実現した場合には北朝鮮やその周辺国が有する弾道ミサイル脅威に際し、我が国の政治的主権が恫喝の影響を回避することが出来る重要な要素となるでしょう。

Mdimg_7108 なお、現時点ではこれは首都圏の市ヶ谷基地へ第1高射群より四個配置されている高射隊から射撃小隊をローテーションにより都心部の射撃陣地へ展開させるのか、高射隊を一個増勢して市ヶ谷基地内へ高射隊を置く態勢とするのかは示されていません。

Mdimg_9649_1 第1高射群は習志野分屯基地の第1高射隊、武山分屯基地の第2高射隊、霞ケ浦分屯基地の第3高射隊、入間基地の第4高射隊より編成されており、元々は射程15kmのPAC-3を以ての弾道ミサイル防衛任務ではなく射程100kmのPAC-2を以て対航空機迎撃に当たる任務にあり、この為東西南北へ高射隊が配置されていますので、安易に抽出することが出来ません。こうした事情を考えると、手放しに評価できないともいえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (19)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第4施設団創設52周年・大久保駐屯地祭(2013.05.26) PowerShotG-12撮影速報

2013-05-27 23:41:42 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆中部方面隊直轄施設部隊の記念行事

 日曜日、宇治市の大久保駐屯地祭へ行ってまいりました、EOS-7Dの写真は未整理で、G-12の写真にて速報を紹介します。

Oimg_5495 大久保駐屯地の第4施設団は第6施設群、第7施設群、第304施設隊、第305施設隊、第102施設器材隊、第307ダンプ中隊を以て中部方面隊直轄施設部隊の任務に当たっており、宇治川以南の京都府と陸上自衛隊駐屯地が置かれていない奈良県の災害派遣を担当しているのも第4施設団です。

Oimg_5502 第4施設団長小野塚貴之陸将補へ敬礼する副団長兼ねて観閲部隊指揮官の池原伸浩1佐、乗車しているのは82式指揮通信車で、今回の行事に合わせ福知山駐屯地の第7普通科連隊より参加した車両、施設団はその任務の特性上から指揮通信車を装備していない。

Oimg_5519 第6施設群長大足卓也1佐、6施群は愛知県豊川駐屯地に駐屯し、群本部と本部管理中隊、築城を担当する第369施設中隊、障害構築を担当する第370施設中隊、機動支援を担当する第371施設中隊、交通維持を担当する第372施設中隊より成り、第369施設中隊は岐阜分屯地へ、第372施設中隊は鯖江駐屯地へ駐屯、これはかつての地区施設隊の名残だ。

Oimg_5523 第370施設中隊、行進しているのは道路障害作業車で、六種類のアタッチメントを用い道路上に障害を構築し敵部隊の前進を阻害する車両、クレーンなどの汎用車両として災害派遣にも活躍し、車体部分は旧称73式大型トラック、所謂3t半を用いており、よくみるとキャビン部分に防弾装甲とフロントガラス部分に防弾ガラスが装着しているのが見える。

O0img_5536 第7施設群より群長重村和幸1佐以下の観閲行進、7施群はここ大久保駐屯地に駐屯する部隊で、隷下に築城及び障害を担当する第379施設中隊と第380施設中隊、機動支援を担当する第381施設中隊と交通維持を担当する第382施設中隊、それに第304水際障害中隊が置かれている。

O0img_5544 第379施設中隊、ちなみに第7施設群は、第382施設中隊が富山駐屯地に、第304水際障害中隊が和歌山駐屯地に駐屯している。福井県に第6施設群隷下の施設中隊があり、富山県に第7施設群隷下の施設中隊がある、ということになり、少々覚えにくい。

Oimg_5559 第380施設中隊、築城と障害を担当する中隊で、施設科部隊は防御陣地やその陣地を守る地雷原を構築し、反撃に転じた際に敵地雷原や陣地防御のための障害を除去する必要がある。このほか、交通維持や機動支援は、補給路を航空攻撃や砲撃から機能維持し作戦遂行能力を支え、地形障害を突破し味方部隊の機動を支えるもの。

Oimg_5574 92式地雷原処理車、戦車用通路を地雷原に一挙に啓く爆薬を投射するもので、大型爆薬をロケットにより多数一直線等間隔に配置、爆破し周辺の地雷を誘爆させ処理するもの。もともと師団施設大隊に装備され、第一線の戦闘工兵任務に用いられたが、集中運用へ方面施設部隊へ集中配備された。

Oimg_5580 第304施設中隊の観閲行進、出雲駐屯地に駐屯している施設隊で、日本海に面するこの駐屯地には第13偵察隊を中心とする部隊が駐屯しています、もともと第13対戦車中隊が配置されていたのですが旅団改編で廃止され、偵察隊と施設隊だけの駐屯地に、長大な海岸線を有する山陰地方だけに施設隊も重要な防衛力として配置されていることは確か。

Oimg_5584 75式装甲ドーザ、第381施設中隊のもの。装甲ドーザも戦闘工兵用車両で第一線師団に配備されていたのですが、後継装備の不足から集中運用で方面隊へ召し上げられた装備です。後ろに見えるのは自走式破砕機、こうした装備は補給路維持を行う方面施設ならでは。

Oimg_5598 第305施設隊、こちらも独立施設隊という印象の強い部隊で、岡山県岡山市の三軒屋駐屯している部隊、同駐屯地は関西補給処の弾薬支処として有名。もともとは第2混成団の支援に当たる善通寺駐屯地の施設隊でしたが2008年に善通寺駐屯地から瀬戸内海を渡り三軒屋駐屯地に移駐しました。

Oimg_5609 第102施設器材隊の観閲行進、渡河器材、架線に応急架橋を行う装備を運用しており、測量データをもとに架橋開始より数時間程度、百数十分で架橋を完了させることが出来ます。部隊には迅速に架橋を行う92式浮橋と安定しており多数の車両通行を同時に担う重パネル橋を装備しています。

Oimg_5621 92式浮橋、左側に或る浮橋関節を河川上に展開させ、これを連結し端を完成させます、ただそのままでは下流に流されてしまうため、右側の動力ボートにより押しながら車両通行を維持する、というもの。90式戦車など自衛隊が装備する全ての戦闘車両を渡河させることが可能で、浮橋関節のみを艀のように分けて用いることも可能です。

O0img_5631 自走式破砕機、こちらも第102施設器材隊の装備で、岩石などを細かく砕き、道路用に用いるもの。補給路が破壊された場合、速やかに修復しなければなりませんので、手近な採石場や岩石をそのまま破砕して用います、穴があけば埋めればいいというのは埋めるものがすぐ入手できる平時の発想、有事の際には全て自前で対応せねばなりません。

Oimg_5646 第307ダンプ中隊、30両以上のダンプを集中運用し、道路維持などの支援に当たります。ダンプは師団施設大隊にも装備されているのですが、自衛隊としては多数のダンプを揃えているも、民間の建設会社よりは保有数は桁が幾つか少ないのも実情、災害派遣の能力を過大評価する動きはありますが、自衛隊は戦闘任務に当たる部隊が自己完結能力を以て災害時に対応している、という認識をこうした行事の際にも思い出しておくべきでしょう。

O0img_5664 第3施設大隊の観閲行進、千僧駐屯地の第3師団隷下に或る戦闘工兵部隊ですもともと方面施設が建設工兵、第一線で任務に当たる師団施設が戦闘工兵と言われていましたが、今日では曖昧な区分となっています、この施設大隊も大久保駐屯地に駐屯、まさに中部方面隊施設部隊の中枢といえる所以でしょう。

Oimg_5671 第3施設大隊の編成は本部と三個施設中隊を以て編成、施設部隊は攻撃前進の支援などの任務で戦車部隊や普通科部隊よりも前に出て障害処理や渡河任務にあたるわけで、そのためにはもう少し装甲車両が必要なのですが、施設作業車など高度な装備がありつつ予算上数が揃わないのが泣き所です。

Oimg_5673 81式自走架橋柱、油圧駆動式の橋脚を備えた橋桁を連接させ渡河するもの、後継装備として川床地形や流速に影響を受け無い様橋脚を省いた07式機動支援橋の装備が一部部隊より開始されていますが、本装備は小分けで使えるため使い勝手の良さはある、とのこと。

Oimg_5680 トラッククレーン、重器材の設置と展開には必要な装備です。ただ、やはり戦闘工兵なのですから、96式装輪装甲車に排土板と油圧ショベルアタッチメントを装備した施設装甲車や10式戦車の車体を流用した装甲ドーザと地雷原処理装置を加えたものを本部管理中隊でもいいので装備してほしいところ。

Oimg_5717 豊川駐屯地の第49普通科連隊。同連隊は第10師団隷下の部隊ですが記念式典にも一個中隊が参加していましたので、移駐しているのでしょう。同連隊は即応予備自衛官主体の連隊で年度末に第10師団より中部方面混成団へ管理替えとなります。これで中部方面混成団も第14旅団並に二個連隊を有することに。

Oimg_5726 伊丹駐屯地より参加した第3偵察隊の87式偵察警戒車、俊足を活かして高速展開し、機関砲と暗視装置を以て偵察任務に当たる車両です。ここまで大久保駐屯地と第4施設団隷下部隊の行進でしたが、ここからは大久保駐屯地所在部隊以外の陸上自衛隊の装備紹介的な意味での観閲行進、となってゆきます。

Oimg_5738 96式装輪装甲車、今津駐屯地の第3戦車大隊より参加した車両、戦車大隊本部の車両で、大隊本部要員や戦車支援に当たる。式典の他訓練展示模擬戦にも重要な車両として参加します。また、後ろには第7普通科連隊より参加した120mm重迫撃砲RTと牽引車両が見える。

Oimg_5752 第3特殊武器防護隊の化学防護車、この時点でヘリコプターの観閲飛行も近づいてきましたが、二台カメラ同時操作で角度的に厳しいものがあったのでG-12での撮影は断念して、EOS-7Dでの撮影に集中、飛行は二機編隊でAH-1S対戦車ヘリコプターとUH-1J多用途ヘリコプターという編隊でした。

Oimg_5763 豊川駐屯地より第10特科連隊のFH-70榴弾砲、ちなみに、伊丹駐屯地祭のように正面からの角度を狙っての撮影位置確保でしたが、観閲行進の規模と式典会場の広さを考えると、もう少し前進した位置を確保したほうが良かったか、大久保駐屯地は元陸軍飛行場、かなり広い。

Oimg_5772 観閲行進の最後を飾る第3戦車大隊の74式戦車、やはり戦車の迫力は大きいが、この前進を支えるのが施設部隊の装備、こうして観閲行進は完了し、続いて訓練展示へ展開です。訓練展示は別の場所から撮影しましたが、そちらはG-12と二台撮影することは出来ず、EOS-7Dのみとなりました、その様子は別の機会に紹介しましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歴史地震再来と日本安全保障戦略① 国家戦略と切り離せぬ巨大災害への備え

2013-05-26 23:27:55 | 防災・災害派遣

◆それは日本列島に生きる上で必要な選択

 防災・災害派遣関連での新しい特集連続記事を本日より掲載開始とします、今回から歴史地震の再来を扱う。

Qimg_9416 歴史地震、これは現代の観測器材による観測体制が確立する以前に発生した過去の巨大地震です。日本書紀を通じて日本史上初めて記録に残った684年の白鳳地震、三陸地方に最大級の津波を齎せた869年の貞観地震、内陸直下地震ながら連動し本州全域に被害を及ぼした1586年の天正地震など。

Qimg_3434 貞観地震など、観測体制が整って以来最大の津波を観測した明治三陸地震を越える津波が発生した痕跡が残りつつ、その発生リスクは一種SF的な心象を以て考えられ、事実三陸地方の防災対策は明治三陸地震を想定した水準で十分な対策が構築されていたことは多くの方にご存知のことと思います。

Qimg_9228 そして、3.11東日本大震災の発生と共に、その津波が明治三陸地震を越える規模で太平洋岸を押し流し、結果、その津波に匹敵する規模の過去の事例として、千年ぶりの巨大地震、というかたちで報じられることとなり、貞観地震の存在が千年に一度の規模の災害、という表現と共に、改めて認識されることとなりました。

Qimg_0805 今回から開始する特集では、必ずしも歴史地震の再来を念頭とした防災対策の重要性を提唱するわけではありません。無論、歴史地震に代表される規模を想定する防災体制を構築出来たなからあらゆる災害から国土を守れるのですが、その前に実行を経て財政破たんに至ります。これは大事なことです。

Qimg_2161 歴史地震、何故対抗できないか実例を出します。地震ではありませんが、例えば日本最大の火山である阿蘇山、その過去最大の噴火を例に考えますと、9万年前のAso-4と呼ばれる巨大噴火の火砕流到達範囲で、熊本県全域・大分県全域・長崎県離島除く全域・福岡県離島除く全域・鹿児島県北部中部・山口県南部および中部全域、となりこの域内は高熱の火山堆積物と火砕サージで全滅、とてもではありませんが避難体制を確立できません。

Qimg_7185 それではサイエンスホラー小説よろしく被害の大きさを想定し、真夏の夜を涼しく過ごすことが目的か、と問われればもちろん、そこまで不毛なことを考えるのではなく、災害のリスクを最大値で想定することは果たして妥当なのか、また、災害への想定と安全保障上のとり得る選択肢の均衡点はどういったところにあるのかを考えることが重要と考えるもの。

Qimg_1666 その実例として、原子力発電と地震想定の問題に原子力発電再稼働の問題を加えて考える、また、大規模地震の発生が我が国の防衛上の問題へ影響を及ぼす可能性について、また、安全保障体系への防災政策の影響などについても、考えてゆきたいと考えているところ。

Qimg_1875 防災に関する特集では南海トラフ地震に備える、として、実際には防災予算により防衛力強化を含めた、大規模災害への対応能力の向上を目指した特集となっていますが、今回はもう少し大きな視点から防災と防衛の関係、防災と国家の戦略について、考えてゆきたい。

Qimg_1188 これは、言い換えれば東日本大震災の復興が、特に同程度の地震が再来する念頭での復興計画を構築しているため遅々として進まない現状への疑問符を含めて考えるものであり、福島第一原発事故と敦賀原発二号炉廃炉政策についても、無論後者については現行法上仕方ないところなのですが、その妥当性についても考えてゆくつもり。

Qimg_5952 また、エネルギー政策が震災後の原子力発電停止が継続するという前提であれば、我が国は様々な面で外に出てゆかなければならない必要性が出てくるわけであり、これは他の問題領域にリンケージしてゆきます、即ち一つの解決策がスピルオーバーする可能性がある、ということ。

Qimg_9110 併せて、南海トラフ地震特集ではそれに想定する能力を整備することで自衛隊の様々な問題にも臨むことが出来るものでしたが、南海トラフ地震が歴史地震の観点から最大の想定を行っていた事を十分認識せず、想定被害の大きさから視野狭窄に陥っていた、という反省も含め、今回の掲載に反映してゆきます。日本列島にいる上で、災害を全て回避することは出来ず、取捨選択が必要、こういうもの。

Qimg_3312 特集は内容が内容だけに自衛隊関連のものだけとなるものではありません、防災政策ですので政治も当然からみ、国家間関係なども当然加わってゆきます。現時点では短期掲載となりますが、議論によっては長期掲載となるかもしれません、よろしくお付き合いください。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

尖閣諸島防衛への一視点⑱ 長距離迅速展開実現する可動翼機新時代の黎明とUH-X選定

2013-05-25 23:51:48 | 防衛・安全保障

◆可動翼機技術革新、理想はMV-22,現実はAW-609

 技術革新、それは如何に最新技術であろうと一世代前へ、大切に培われた既存技術が一挙に陳腐化する、ということ。

Img_2103 実は可動翼機、ティルトローター機を当方はこう訳しているのですが、別名パワーリフト機とも呼ばれる航空機、この時代へ従来のヘリコプターを置き換える技術革新と可動翼機の時代は近づいているのではないか、UH-Xの選定を考える際、時折どうしてもそんなことを考えます。

Pimg_0909 現在、防衛省では旧式化が進むUH-1H/J多用途ヘリコプターの後継機選定を新たに模索していますが、併せて与党自民党では防衛省への提言として島嶼部防衛を念頭に米海兵隊が運用するMV-22可動翼機の導入を挙げ、陸上自衛隊の緊急展開能力の向上を求めています。

Pimg_8000 可動翼機、従来の回転翼航空機と比較して、回転翼を前方へ可動させる複雑な機構により大きな速度を発揮、この恩恵である速度を受けての空気抵抗の縮小により長大な行動半径を獲得した新しい航空機体系は、長大な南西諸島を防衛する我が国にとって、革新的な防衛力強化を実現するものと言えるでしょう。

Pimg_7586 強化と言いますと具体的には、迅速に長距離を展開できる訳ですので、奇襲を事前に察知できない状況で攻撃を受けた場合でも、即座に部隊を展開させ、敵空挺堡や海岸橋頭堡のい拡大を阻止することが出来ます。また、こうした能力を持つことが抑止力となり、武力紛争を抑止する事に繋がることも忘れてはなりません。

Pimg_1377 この新しい可動翼機、技術開発時代には固定翼機黎明期同じく事故が続いていますが、制式化に当たりその危険は払拭され、例えば沖縄の海兵航空部隊では従来の回転翼航空機であったCH-46が、再来月には完全にMV-22に機種転換を完了しようとしているのが、ある意味目の前得見れば非常な驚きでした。

Pimg_8883 しかし、MV-22は高い、高価だ、高根の花だ。陸上自衛隊がMV-22を、何らかの後継機として導入する場合、一機当たりの取得費用が開発国である米軍で6000万ドルに達し、これはF-35A戦闘機と同等の費用であることから、我が国への納入費用は100億円を超えることが予想され、これを飛行隊規模で保有することは少々現実離れ、と言わざるを得ません。

Pimg_3163 その一方、可動翼機への潮流は併せて陸軍用のV-280計画や、既に民間用に試験が進むAW-609などが開発され、特にV-280は陸軍のUH-60の後継機を目指しているため、実現すれば陸軍は安価なUH-72と、空中機動強襲のV-280と分化されるとともに可動翼機が珍しくなくなり、量産と普及というその時代は徐々に近づいているもよう。

Pimg_1155 純粋な軍事面からは、年間の陸上自衛隊航空機取得費用を200億円程度上積みしてMV-22飛行隊を中央即応集団と西部方面航空隊に配置できたならば、南西諸島の緊張に際し迅速に急行出来る事から非常に有意義なのですが、多用途ヘリコプターと戦闘ヘリコプターの調達予算だけで既に100億円以上不足している実情に打つ手なしの実情では現実的と言えません。 

Pimg_8205_1 ただ、従来のヘリコプターからの転換の時機は、運用面で求められる性能を有しており、加えて技術面でもそう遠くない時期に見え始めていることが確かなわけですから、時機を迎えて黒船到来と騒ぐ事の無い様、その準備と研究は充分に行う必要性はあると考えます。

Pimg_9519 従来機が技術革新で依拠に陳腐化、その回避手段として考えられるのは二通り考えられ、第一にUH-Xに暫定ヘリコプターとともに安価な可動翼機を一部導入する選択肢、第二に少数の現用可動翼機を導入し運用研究を行いつつUH-Xに通常のヘリコプターを導入する選択肢、第三にUH-Xは予定通り選定しつつ可動翼機は資料研究と日米訓練での情報収集のみ行うという選択肢、というところか。

Pimg_7531 暫定ヘリコプターは、例えば旧式化が進むOH-6D観測ヘリコプターと併せて検討し、特に米海兵隊が陸上自衛隊のOH-6が行う火砲の着弾観測任務をUH-1Y多用途ヘリコプターに対応させている現状、併せてNHK報道ヘリが福島第一原発事故空中放水中継を30km以上の距離から実現した点に鑑み、機種を統合することが考えられるでしょう。

Pimg_8292_1 AW-609可動翼機、暫定ヘリコプターと連携する可動翼機で、個人的に考える自衛隊向きの可動翼機は2003年に初飛行を果たした民間用のAW-609です。j巡航速度500km/hで航続距離は1500km、MV-22のように重貨物や車両は搭載できず、乗員2名に加え9名の人員が輸送できるのみで、MV-22の輸送人員24名と比べればかなり小さい輸送能力ですが、AW-609の取得費用はMV-22の六分の一、EC-225やUH-60と比べても安く、これならば、なんとか。

Pimg_6519_2 MV-22と比較して六分の一の取得費用であるAW-609であれば、MV-22二機分の取得費用でなんとか一個飛行隊を編成できますので、一個飛行隊所要の予算では六個飛行隊、つまり全国の五個方面航空隊に可動翼機飛行隊を新編しつつ、中央即応集団にも一個飛行隊を配置できるということに。小規模の部隊であってもその能力は運用次第で大きくなる、という事は前回と前々回の本特集で紹介しました。

Pimg_6958 ただ、AW-609は民間用、アメリカ沿岸警備隊など法執行機関でも採用される航空機ですが、これを多数配備することにリスクを考えるのならば、将来到来するだろう可動翼機時代に備えてAW-609かMV-22を少数調達に留め、UH-Xは真っ当な機体を調達する、という選択肢も当然考えられます。

Pimg_8382 まあ、暫定機であれ、なんであれ、あまり真っ当ではない航空機は採用する余裕がありませんが、技術革新というものは確実に到来します。こうしたなかで、もちろんAW-609をいきなり次の中期防衛力整備計画で調達することは手続き上出来ませんが、先日お伝えした通り、UH-X選定は国産開発が不正競争により停滞している現状となっていますので、この時間を逆手にとるかたちで、再度検討しては、と考えるところ。

Pimg_1040 可動翼機の導入が南西諸島防衛に寄与する大きさは物凄いものがありますが、あまり高価な機体を導入すれば防衛調達の均衡が破綻する危険があり、併せて高速度の可動翼機を如何に護衛し、航空支援を行うか、など問題も多くあります。それならば、前述したV-280かその同等機の量産まで研究のみを行う、という選択肢もあるのですが、何かしら手を打たねばならない事も忘れてはなりません、技術革新ののちには世界に技術が普及するため、我が国周辺国もその技術に接近することを意味するのですから。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 技術革新と我が国防衛の連接

2013-05-24 23:43:56 | 国際・政治

◆国際共同開発に参加しないことで生じるもの

 防衛産業特集で前回、国際共同開発を行った技術が脅威対象国へ第三国を通じ供与される可能性を示唆しました。

Simg_47310 さて、我が国は専守防衛を国是としており、国土戦とシーレーン防衛を想定していることから、想定される脅威や想定される戦域地形などが明確となっています。そして、防衛装備品開発において、これを念頭に置いたものとなっている点は本特集においても、繰り返し説明してまいりました。

Img_0457 こうしたうえで、既存の装備体系の概念において、必要であれば突出した特定分野の性能を盛り込むもの、必要なものとして必要な能力を最重要視した汎用装備を併せて開発しており、例えば対潜戦闘を最重要視した護衛艦や広域救難を目的とした飛行艇に対艦攻撃を重視した戦闘機は前者に含まれる。

Img_2145 対して後者では、射程が大きく同時多数に対応できる誘導弾や多数を長距離多数を出来る輸送機に攻走守を充実させた戦車や対空対潜対水上に秀でた水上戦闘艦や静かに長距離を進出できる潜水艦などが含まれるところ。しかし、この二類型だけを希求していた場合でも忘れがちとなる一点があります、それは技術革新、というもの。

Simg_0313 先々月、米軍は次期汎用空中機動装備として、UH-60多用途ヘリコプターの後継を目指し、その候補としてUH-60と同程度の取得費用で配備可能な可動翼機V-280計画がベル社より提示されました。自衛隊へMV-22の導入案が与党自民党より模索される中、その取得費用の大きさが懸念される一方、米軍は汎用ヘリコプターをMV-22のような可動翼機ですべて置き換える構想を出した、ということ。

Simg_2939 技術革新は様々な分野で当然あるもので、水上戦闘艦においてもステルス性の概念を一新したズムウォルト級駆逐艦を米海軍が開発、建造費用が一隻3000億円に達し量産には至りませんでしたが、方向性を示したわけです。我が国も同時期に護衛艦あきづき型を計画した際に、様々な艦型を検討しましたが、一朝一夕に為し得る技術は不安定であり、実用化は断念されています。

Simg_2487 F-35戦闘機も、レーダー反射面積がF-15E戦闘機の200分の1という小ささと共に、機動性を有し、情報優位を戦闘優位への手段ではなく、戦略的に応用する技術を反映、映像情報やステルス性にレーダ装置やエンジン技術など、既存の技術の延長上にはあるのですが、システム化の深度が、技術革新というに十分なものとなっています。

Simg_9696 どう戦い、どう戦域優位を獲得するか、その概念のもとでは自衛隊は非常に優れたものを開発していますが、その運用は技術革新を自ら生むに十分なものかと問われれば限定的であり、既存の装備体系の延長線上にあるものを最高度の水準で完成するにいたっているものが大半といえるやもしれません。

Simg_5720 もっとも、我が国産装備最大の特色は、地皺が多い狭隘国土の運用に合致した小型化を実現する技術が非常に難しく、その部分が国産技術最大の強みでもあるのですが。他方、先ほどの二類型の装備における前者は、技術革新の一類型に他ならないものですが、先ほど示したV-280のような装備は中々独自に開発できるものでもありません。

Simg_3146 まず、我が国の場合、防衛費に上限があり、その中でも研究開発費にさらに厳しい限界があり、実用化できるのか出来ないのかを見切らずに遮二無二すべての分野の技術開発を行う余裕はないことが背景にあります。だからこそ、技術開発と運用研究にて、国際協力は必要となる、ということ。

Simg_1472 また、研究開発の背景でも、全く運用していない装備体系を一から創造するには実験環境に限界があり、特に端的にその部分が表れている分野に無人機が挙げられます。航空法の縛りが厳しすぎ、運用の受け皿となる部隊も不明確であることから、如何ともしがたかったところ。

Simg_9983 ここ十年間での無人機の技術革新は目覚ましく、我が国は次期哨戒機に現用P-3C哨戒機の能力と運用想定延長線上の高性能を見込んだP-1哨戒機を開発しましたが、米海軍は対潜哨戒機として性能は劣りつつ、無人機管制を念頭とした戦域優勢を目指したP-8哨戒機を開発、現状の対潜哨戒ではP-1が圧倒的に優位ですが、無人機の対潜哨戒能力向上を今後注視せねばならないでしょう。

Simg_1984 他方、技術革新を目指したものですが、そのまま転倒もしくは大きく遅延している技術が少なくありません。従来の戦闘機の航空打撃力と航空優勢確保という概念を越える新戦闘機F-35の状況と、今航空自衛隊がF-4を如何に部隊規模として維持するのか苦心している現状に鑑みれば、気づく部分があるやもしれません。

Simg_2379 ただ、安易に海外の主流へ追随することには、冒頭に記したように我が国は専守防衛であり、国土戦を想定していることから、この地形と条件に合致した装備でなければならない、という厳しい条件があります。国際共同開発は我が国の意図しない範囲で計画が中止となる可能性もあり、これは一つの非常に大きなリスクというもの。

Img_6352 それならば、完成品を調達する、という視点から考えることも一つの方向性と言えるのかもしれませんが、求める装備品が常に最新の状況で取得できるとはいいきれないということ、忘れてはなりません。例えば、イージス艦などは相当な開発段階からの技術研究と日米関係の良好さを以て、つまり苦労と調整を重ね早期の保有が実現しました。

Simg_8255 研究開発費に限界があり、国産技術開発にも限界がある。すると、次善の策には国際共同訓練への高い頻度の参加を通じ、各国の将来部隊運用を共有し、これに依拠した装備品の仕様や運用環境などを考える、という姿勢が求められるところなのでしょう。ともあれ、技術革新と我が国防衛の連接を如何に維持するか、その方策は考えられなければなりません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十五年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.05.25・26)

2013-05-23 23:14:34 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 はじめに。最近、本文を明らかに読まずコメント欄にて本文と関係ない主義主張を押し付ける方がいます、主義主張は自由ですが、本文と離れる場合、それは荒らしとなります。

Fimg_5960 最近は国産ヘリ開発の不正競争事案に関する記事にて、本文と無関係な国産強調に関する書き込みが為されました。ここは匿名掲示板でも閲覧者の備忘録でもありません、自衛隊関連行事紹介の前にWeblog北大路機関からのお願いです。良い閲覧環境へご協力ください。さて、今週末の自衛隊関連行事ですが、文字通り盛りだくさんという一言に尽きるもの。

Mimg_2104 師団行事として第4師団創設59周年記念福岡駐屯地祭、九州北部及び対馬地区の防衛警備を担う師団の創設記念行事が行われます。また、旅団行事では道都札幌より道南地区の防衛警備に当たる第11旅団の、第11旅団創設5周年真駒内駐屯地祭が行われます。

Gimg_2259 団行事ではこのほか、神奈川県横須賀市にて東部方面混成団創設2周年武山駐屯地祭が行われ、こちらは隷下に第1機甲教育隊や第31普通科連隊と第48普通科連隊を有する大部隊として知られます。また、京都府宇治市にて第4施設団創設52周年大久保駐屯地祭が行われ、施設器材を中心に貴重な展示が行われるもの。

Bimg_5926 高射特科部隊行事では03式中距離地対空誘導弾を運用する第8高射特科群の駐屯する兵庫県小野市の青野原駐屯地祭、戦車部隊行事では北海道河東郡の90式戦車を運用する第5旅団隷下の第5戦車隊が駐屯する鹿追駐屯地祭が行われます。双方とも、近傍JR駅からのシャトルバスが少々不便、とのこと。

Gimg_4731 陸上自衛隊航空部隊行事では栃木県宇都宮市の北宇都宮駐屯地にて、北宇都宮駐屯地創設40周年記念行事が行われます。以上の行事は土曜日に行われるものと日曜日に行われるものがあり、この日程はシャトルバス情報と併せ必ず本文末尾に添付するHPリンク先にてご確認ください。

Mimg_6969_1 西日本哨戒ヘリコプター部隊の総元締め第22航空群の大村航空基地にて大村航空基地開庁56周年記念行事が行われます。精鋭SH-060J/K哨戒ヘリコプターを以て南西諸島を含めた我が国周辺の潜水艦脅威に鋭い目を光らせている部隊、ある意味今週末注目の行事と言えるでしょう。

Img_6430p 海上自衛隊関連行事では艦艇広報in和歌山が和歌山港にて実施され、訓練支援艦くろべ、が一般公開されます。また首都圏でもマリンフェスタin FUNABASIが行われ、護衛艦やまゆき、が一般公開を行うほか、毎年恒例となりつつあるようですが、土曜日に声優の尾崎真実さんと日曜日に声優の清水愛さんが一日艦長として出席されます。

Oimg_9462 一般公開は玉島ハーバーフェスティバルにて護衛艦せとゆき一般公開が行われます。四国の香川県坂出港にて掃海殉職者追悼関連行事にて艦艇一般公開が実施され、掃海母艦うらが、掃海艇まきしま、いずしま、あいしま、が一般公開を予定です。島根県河下港では多用途支援艦ひうち一般公開が予定されています。

Img_9017 九州では、艦艇広報in唐津港へ、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、が入港し一般公開を行います。水俣恋龍祭へ掃海艇うくしま、多用途支援艦あまくさ、が体験航海と一般公開。福岡では門司みなと祭りへ練習艦しまゆき一般公開、博多港では、護衛艦あきづき一般公開がそれぞれ、おこなわれる。

Cimg_2055 航空自衛隊では奈良基地にて航空自衛隊幹部候補生学校開庁記念行事が行われます。周辺環境への留意から飛行展示の高度が高いことで有名な行事ですが、京都と並ぶ古都奈良にて明日の防空への担いへ向けて頑張る候補生の凛々しさは五月の疲れた心身を見るのみにて再起させてくれるもの。

Gimg_1448 航空祭では静岡県にて第11飛行教育団のT-7部隊が展開する静浜基地にて静浜基地航空祭2013が行われます。毎年千僧駐屯地祭と被ることで京阪神地区では有名ですが、今年は被っていません。また、ブルーインパルスが飛行展示を予定しています。

Nimg_9597 静浜航空祭へのブルーインパルス参加は五年ぶりとのことで、見応えのある航空祭が期待される一方、基地内に駐車場はありません。藤枝駅と西焼津駅から有料シャトルバスが運行されるとのことで、自動車にて足を運ばれる方はこの二駅周辺の有料駐車場か、少し離れた駅の駐車場を利用するのがいいでしょう。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

UH-X開発企業選定不正競争事案に関する事案調査再発防止検討委員会開催

2013-05-22 20:22:19 | 国際・政治

◆本省第一省議室にて実施

 防衛省によれば、本日1600時より陸上自衛隊新多用途ヘリコプター開発事業の企業選定に関わる事案調査再発防止検討委員会が防衛省本省にて開かれた、とのこと。

Img_9552 この事案は、現在運用しているUH-1H/J多用途ヘリコプターの後継機選定に際し、要求仕様書作成に外部企業の両力を得たことが問題となり、今回の委員会召集は次期多用途ヘリコプター開発が停止となっているものに関わるもので、事案の背景と要因を検討研究し再発防止を図るもの。

Mimg_0092 防衛省発表では、出席者として左藤防衛大臣政務官を委員長とし、防衛人時間、大臣官房長、人事教育局長、経理装備局長、技術監、吉田総合取得改革監査担当審議官、陸海空幕僚長、技術研究本部長、装備施設本部長、防衛監察監が防衛省より出席します。なお、統幕長は現在、南スーダン及びウガンダ共和国とジブチ共和国へ出張中であり、18日出発で、25日に帰国の予定であり、今回の委員会へは出席していません。

Gimg_8591 また、外部からの有識者として高絵k財団法人日本人事試験研究センター代表理事の大村厚至氏、ものつくり大学名誉教授で東京工業大学名誉教授の神本武征氏、株式会社TBSテレビシニアコメンテーター川戸恵子氏、東海大学法科大学院教授で弁護士の渡邉一弘氏が出席される、とのこと。

Fimg_6061 今回の事案は、自由競争を重視しすぎた余り、仕様書への応札資格をこの発想に依拠したものに改めたことで生じたもので、実際に仕様書は満たしている防衛装備品が納入されたものの、実運用に耐えられない装備品が納入され、問題となった実情が反映されていると考えられ、より確かな仕様書を求めた結果、開発候補企業の一つから支援を受ける事となり生じたもので、非常に複雑です。

Img_3683 ただ、防衛産業全体の公正さを求めつつ、どの分野の問題が今回事案に影響を及ぼしたかを精査し、再発防止措置の在り方を検討しなければならないことには変わりありません。UH-1H\Jは旧式化が進んでいますが、本機の問題以外にも根底要因を省く検討を行わなければ他の装備品の開発選定についても影響が生じることは確かで、この点、必要な措置が必要でしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする