■■■防衛フォーラム■■■
今回は戦車の話題です。ロシアウクライナ戦争とともに戦車の重要性が再認識され欧州では特に大車輪で戦車の近代化が進められている。
イタリア軍が検討するレオパルド2A7/8戦車導入交渉が山場を迎えつつあります、実現した場合、最大60億ユーロ規模の調達は稼働率低迷に悩むイタリアのアリエテ戦車に代えて稼働率が保証された第三世代戦車を導入することとなり、またドイツは過大となっている戦闘ヘリコプター問題をバーターにより解決する道筋が見えたこととなります。
レオパルド2取得はG2G政府間交渉で既に進展しており、具体的な調達数は示されていませんが、“相当数”という規模で検討されているとし、またライセンス生産の形でレオパルド2の既存車体についてA7もしくはアクティヴ防護装置を搭載したA8相当への改良、または車体そのもののライセンス生産まで踏み込んだ交渉が行われているもよう。
H-145M軽ヘリコプターを対戦車ヘリコプターへ改修し既存のPAH-2ティーガー戦闘ヘリコプターの代替に充てるドイツ軍の検討についても、今回のイタリアのドイツへの支出へのバーターとしてイタリアのA-129マングスタ戦闘ヘリコプター後継機にあたるAW-249マングスタ2の導入を行う可能性があり、両国の難題を一気に解決し得るのです。
■メルカヴァ輸出へ
1980年代以降独特の人命重視の設計と敢えて複合装甲を採用しない設計のメルカヴァが。
イスラエル国防省は中古のメルカヴァ主力戦車について欧州一国を含む二か国へ輸出を調整しています、メルカヴァはアメリカの軍事援助資金により開発費の一部が補填されており、中古車両であっても輸出にはアメリカ国防総省とアメリカ国務省の承認が必要ですが、実現した場合はメルカヴァシリーズにあって初の海外輸出事例となるでしょう。
メルカヴァmk3とメルカヴァmk2、今回輸出対象となるのは新型のメルカヴァmk4をイスラエル国防軍が充足し且つ改良型のメルカヴァmk5の目処がついたことによる老朽車両の用途廃止が背景にあります。メルカヴァ戦車は車体前部に機関部を配置し、あらゆる空間を中空装甲として用い、mk4まで敢えて複合装甲を採用せず高い生存性を確保した。
海外供与されるメルカヴァには搭載されない装備としてトロフィーアクティヴ防護システムや車長用ヘルメット型情報表示装置、データリンクシステムなどイスラエル国防軍が減容しようしている最新機材が挙げられ、またMk3BAZのようなBAZ火器管制装置も供与されない可能性があり、純粋に提供可能であるシステムのみを供与する方針です。
■韓国将来戦車構想
韓国の将来戦車計画が明らかになりましたが我が国の10式戦車に続く戦車はどうなるのでしょうか。
将来戦車構想としてK-2戦車を置き換える次期戦車の構想を韓国のロテム社が発表しました。新型戦車はK-1A1のような軽量ではなくK-2戦車の流れをくむ重量級戦車として構想され、無人砲塔を採用し操縦区画をすべて車内の装甲カプセルに収容させる設計を採用、車高をK-2戦車よりも大幅に抑え、防御力を高めたまま重量を55tに収める。
将来戦車の主砲は130㎜砲を構想しており、ドイツのラインメタル社が構想するKF-51パンター戦車計画における130㎜戦車砲という新しい戦車の流れに対応するほか、K-2戦車輸出型で提案されているアクティヴ防護装置による対戦車ミサイル対策や砲塔後部への無人機搭載を念頭とし、また海外市場への売り込みも視野に2030年完成を目指す。
ヒュンダイロテム社の新戦車構想は一部でK-3戦車という名称で報道するマスコミ事例もあります。一方この新戦車については韓国とともに現在K-2戦車を輸入しライセンス生産の準備を進めるポーランドが関心を寄せており、共同開発が模索される可能性があります。なおK-2戦車は第5生産ロットでは改良型となる構想で、その発展型が新戦車です。
■ルーマニアM-1A2戦車
東欧諸国は近年エイブラムス戦車の方をドイツのレオパルド戦車よりも関心を寄せているように思えるのです。
ルーマニア政府はアメリカからM-1A2エイブラムス戦車取得に向けた交渉を慎重に推進中です。ルーマニア国防省はアメリカから中古のM-1A2エイブラムス戦車54両の取得を希望していて、これは新造のエイブラムスを取得することは難しいものの、中古でも関連資材を含めたM-1A2戦車54両の取得費用は10憶ユーロ相当と見積もられています。
TR-85戦車とT-55戦車、ルーマニア軍の戦車保有数は300両を超えていますが、問題はその中身でソ連製の第一世代戦車であるT-55が数の上では主力、国産のTR-85戦車も冷戦時代にT-55戦車をルーマニアが独自に自国仕様としたもので、何れも最低限の改良は行われていますが、第三世代戦車には到底太刀打ちできない旧式戦車だけとなっています。
エイブラムス戦車取得については、ルーマニア議会下院国家安全保障委員会が審議中であり、特にTR-85の老朽化が進んでいることから何れ大隊装備が必要であると考えられており、この計画が安全保障委員会において了承される可能性は十分あるようです。他方で、既にルーマニアはGDPの2.5%を国防費に投じており、支出の限界が懸念されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は戦車の話題です。ロシアウクライナ戦争とともに戦車の重要性が再認識され欧州では特に大車輪で戦車の近代化が進められている。
イタリア軍が検討するレオパルド2A7/8戦車導入交渉が山場を迎えつつあります、実現した場合、最大60億ユーロ規模の調達は稼働率低迷に悩むイタリアのアリエテ戦車に代えて稼働率が保証された第三世代戦車を導入することとなり、またドイツは過大となっている戦闘ヘリコプター問題をバーターにより解決する道筋が見えたこととなります。
レオパルド2取得はG2G政府間交渉で既に進展しており、具体的な調達数は示されていませんが、“相当数”という規模で検討されているとし、またライセンス生産の形でレオパルド2の既存車体についてA7もしくはアクティヴ防護装置を搭載したA8相当への改良、または車体そのもののライセンス生産まで踏み込んだ交渉が行われているもよう。
H-145M軽ヘリコプターを対戦車ヘリコプターへ改修し既存のPAH-2ティーガー戦闘ヘリコプターの代替に充てるドイツ軍の検討についても、今回のイタリアのドイツへの支出へのバーターとしてイタリアのA-129マングスタ戦闘ヘリコプター後継機にあたるAW-249マングスタ2の導入を行う可能性があり、両国の難題を一気に解決し得るのです。
■メルカヴァ輸出へ
1980年代以降独特の人命重視の設計と敢えて複合装甲を採用しない設計のメルカヴァが。
イスラエル国防省は中古のメルカヴァ主力戦車について欧州一国を含む二か国へ輸出を調整しています、メルカヴァはアメリカの軍事援助資金により開発費の一部が補填されており、中古車両であっても輸出にはアメリカ国防総省とアメリカ国務省の承認が必要ですが、実現した場合はメルカヴァシリーズにあって初の海外輸出事例となるでしょう。
メルカヴァmk3とメルカヴァmk2、今回輸出対象となるのは新型のメルカヴァmk4をイスラエル国防軍が充足し且つ改良型のメルカヴァmk5の目処がついたことによる老朽車両の用途廃止が背景にあります。メルカヴァ戦車は車体前部に機関部を配置し、あらゆる空間を中空装甲として用い、mk4まで敢えて複合装甲を採用せず高い生存性を確保した。
海外供与されるメルカヴァには搭載されない装備としてトロフィーアクティヴ防護システムや車長用ヘルメット型情報表示装置、データリンクシステムなどイスラエル国防軍が減容しようしている最新機材が挙げられ、またMk3BAZのようなBAZ火器管制装置も供与されない可能性があり、純粋に提供可能であるシステムのみを供与する方針です。
■韓国将来戦車構想
韓国の将来戦車計画が明らかになりましたが我が国の10式戦車に続く戦車はどうなるのでしょうか。
将来戦車構想としてK-2戦車を置き換える次期戦車の構想を韓国のロテム社が発表しました。新型戦車はK-1A1のような軽量ではなくK-2戦車の流れをくむ重量級戦車として構想され、無人砲塔を採用し操縦区画をすべて車内の装甲カプセルに収容させる設計を採用、車高をK-2戦車よりも大幅に抑え、防御力を高めたまま重量を55tに収める。
将来戦車の主砲は130㎜砲を構想しており、ドイツのラインメタル社が構想するKF-51パンター戦車計画における130㎜戦車砲という新しい戦車の流れに対応するほか、K-2戦車輸出型で提案されているアクティヴ防護装置による対戦車ミサイル対策や砲塔後部への無人機搭載を念頭とし、また海外市場への売り込みも視野に2030年完成を目指す。
ヒュンダイロテム社の新戦車構想は一部でK-3戦車という名称で報道するマスコミ事例もあります。一方この新戦車については韓国とともに現在K-2戦車を輸入しライセンス生産の準備を進めるポーランドが関心を寄せており、共同開発が模索される可能性があります。なおK-2戦車は第5生産ロットでは改良型となる構想で、その発展型が新戦車です。
■ルーマニアM-1A2戦車
東欧諸国は近年エイブラムス戦車の方をドイツのレオパルド戦車よりも関心を寄せているように思えるのです。
ルーマニア政府はアメリカからM-1A2エイブラムス戦車取得に向けた交渉を慎重に推進中です。ルーマニア国防省はアメリカから中古のM-1A2エイブラムス戦車54両の取得を希望していて、これは新造のエイブラムスを取得することは難しいものの、中古でも関連資材を含めたM-1A2戦車54両の取得費用は10憶ユーロ相当と見積もられています。
TR-85戦車とT-55戦車、ルーマニア軍の戦車保有数は300両を超えていますが、問題はその中身でソ連製の第一世代戦車であるT-55が数の上では主力、国産のTR-85戦車も冷戦時代にT-55戦車をルーマニアが独自に自国仕様としたもので、何れも最低限の改良は行われていますが、第三世代戦車には到底太刀打ちできない旧式戦車だけとなっています。
エイブラムス戦車取得については、ルーマニア議会下院国家安全保障委員会が審議中であり、特にTR-85の老朽化が進んでいることから何れ大隊装備が必要であると考えられており、この計画が安全保障委員会において了承される可能性は十分あるようです。他方で、既にルーマニアはGDPの2.5%を国防費に投じており、支出の限界が懸念されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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