北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日仏共同訓練&日独西共同訓練,航空自衛隊は欧州各国戦闘機部隊との日本での訓練を実施

2024-07-03 07:05:53 | 防衛・安全保障
■千歳基地と百里基地
 オーストラリア空軍とイタリア空軍が相次ぎ小松基地に飛来してからまもなく一年ですが欧州各国との訓練は次の段階へ。

 航空自衛隊は欧州各国戦闘機部隊との日本での訓練を実施します。これはドイツ、フランス、スペインの空軍機がインド太平洋地域へ展開することを受けての欧州各国との防衛協力強化の一環として行われます。特に今回の防衛協力は、史上初めてスペイン空軍が日本へ戦闘機を展開させるという点で、欧州との防衛協力強化の象徴的一歩です。

 ラファール戦闘機とユーロファイター戦闘機が日本へ展開する事となり、ラファール戦闘機は昨年以来、ユーロファイター戦闘機は一昨年のドイツ空軍機訪日以来となります。このほか、現在日本へ親善訪問を行うべくイタリア海軍の空母カブールが日本に向け航行中であり、昨年のF-35A戦闘機来日に続いて今夏にはF-35Bが来日するわけです。■

 ドイツ空軍とスペイン空軍の訪日について。両国空軍は北海道の航空自衛隊千歳基地へ展開予定であり、両国航空機は7月18日から21日にかけ予定されています。千歳基地に展開するのはユーロファイター戦闘機12機、エアバスA-400M輸送機5機、A-330MRTT空中給油輸送機4機、A-321輸送機1機、一部は26日まで共同訓練を行います。

 ユーロファイター戦闘機12機のうちドイツ空軍機は8機とスペイン空軍機は4機、エアバスA-400M輸送機5機のうちドイツ空軍機は3機とスペイン空軍機は2機、A-330MRTT空中給油輸送機4機は全てドイツ空軍のきたいとなっています。人員はドイツ空軍180名とスペイン空軍150名の330名、航空自衛隊と日独西共同訓練を実施予定です。■

 フランス空軍戦闘機部隊の訪日は7月19日から20日まで、茨城県の航空自衛隊百里基地へ展開予定です。この際、日仏共同訓練を実施予定となっていまして、訓練空域として百里基地と基地周辺空域が設定されているとのこと。なお、昨年の日仏共同訓練は宮崎県の航空自衛隊新田原基地において実施されていました。

 ラファール戦闘機4機、エアバスA-330MRTT空中給油輸送機3機、エアバスA-400M輸送機3機と人員260名が参加します。時期的には千歳基地に独西戦闘機部隊が展開している時期と重なり、エアバスA-400M輸送機だけで8機、ラファールとユーロファイターなど戦闘機16機と、実に戦闘飛行隊に匹敵する規模が展開することとなります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】オーストラリア海軍ハンター級フリゲイトと3隻分建造削減し11隻新フリゲイト増強

2024-07-02 20:23:39 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム


 オーストラリア海軍が導入するハンター級フリゲイトについて、そのブリッジシステムおよび航行システムをアンシュッツ社が担当することとなっており、今回その概要部分が発表されることとなりました。アンシュッツはレイセオンオーストラリア社とともに完成させたブリッジシステムをBAEオーストラリアへ納入するみこみ。

 WINBSとしてハンター級に搭載されるブリッジシステムは複数のシステムとアプリケーションを包括表示することで艦橋での作業を高度に自動化しかつ乗員の適切な判断を支援するとのこと。このWINBSはハンター級の原型の姉妹艦となるイギリス31型フリゲイトや、ドイツ海軍の125型フリゲイトにも採用された実績があります。

 ハンター級フリゲイトは2028年より導入されるオーストラリア海軍の将来水上戦闘艦で満載排水量は8800tと大型、Mk41VLSを32セル搭載し各種任務に対応できるほか、180名の乗員で運用可能とのこと。ただ、当初ハンター級は9隻が建造される計画ですたが周辺情勢の変化から6隻のみの建造とし、より中型の艦艇を11隻導入する。■

 オーストラリア海軍が導入する新型水上戦闘艦選定へ日本政府が護衛艦提案を支援する、読売新聞が5月7日に報道したところによると複数の政府関係者の話として、オーストラリア海軍が11隻を導入する新型艦選定に韓国とスペインおよびドイツが提案を行う中、日本からも護衛艦もがみ型の拡大改良型を提案することとなったもよう。

 もがみ型護衛艦はFFM多機能護衛艦として開発されたもので、しかし海上自衛隊は将来の九州南西諸島での厳しい状況での運用を視野に艦隊防空ミサイルを搭載したFFGミサイル護衛艦として拡大改良型を建造する方針です。同時に高度な省力化をすすめており、既存の護衛艦の半分以下の70名の定員で運用できるてんも強みとされている。

 ハンター級としてイギリス26型フリゲイト独自仕様型を9隻導入し、アンザック級フリゲイト8隻の後継とする計画でしたが、安全保障環境の変化により数が必要となり、ハンター級を6隻に削減し、その3隻分のリソースにより11隻のフリゲイトを新しく増強するという野心的な計画には、もがみ型の省力設計は強みなのかもしれません。■

 オーストラリア海軍が導入する次期水上戦闘艦へ韓国現代重工がアメリカ企業と提携を発表しました。現代重工は韓国国内での水上戦闘艦建造実績をいかし、タイ海軍やフィリピン海軍への水上戦闘艦販売実績を伸ばしています。今回提携することとなったのはジェネラルエレクトリックエアロスペース社とL3ハリス社との提携という。

 オーストラリア海軍は当初は将来の地球規模での海軍運用を想定し8000tクラスの大型水上戦闘艦を導入する構想でしたが、中国海軍のオーストラリア周辺への進出などの安全保障環境変化を受け、中型艦艇を導入することで水上戦闘艦部隊を倍増させる国防計画を発表、このために新しい水上戦闘艦の増強を計画しています。

 韓国では別の動きとしてハンファオーシャンがオーストラリアの造船大手で高速フェリー建造において実績のあるオースタル社を買収する動きがでており、これが実現した場合には企業連合の形で現代重工がオースタル社の造船施設において水上戦闘艦を建造するという選択肢が生まれ、一つの有利なてんといえるのかもしれません。■

 オーストラリア海軍は次期フリゲイトの建造を急ぎたい方針ですが、各国造船企業への情報提供依頼と共にオーストラリア海軍自身がその必要な性能を把握していない事が混乱を生みそうです。オーストラリア国防省は、日本と韓国にドイツとスペインへ情報提供依頼書を送っていますが、数週間という短期間での返答を急いでいます。

 日本の護衛艦もがみ型拡大改良型については満載排水量で6000tを超える大型艦でありながら艦隊防空能力を持つと共に何より100名以下の人員で運用できる省力化が利点といえる。韓国のインチョン級フリゲイト輸出仕様は乾舷の低さから外洋航行能力が限定されてしまいますが特筆すべきはタイやフィリピンでも調達できる建造費の圧倒的安さが。

 スペインはホバート級イージス艦建造で建造に居心が知れている強みがあり、ドイツはアデレード級フリゲイトというこれから置換えるフリゲイトのMEKO型フリゲイト最新型という今使っているフリゲイトの使い勝手をそのまま利用できるという利点があります。オーストラリアは産業誘致か省力化か安さか使い勝手か、何を重視するのかが重要です。

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ウクライナ情勢-北朝鮮人民軍工兵旅団ドネツク州派遣準備と韓国報道,チャシブヤールとアウディイフカ周辺概況

2024-07-02 07:00:44 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 これ下手すると北朝鮮軍に戦死者が出る様な状況も想定できますし次の大戦への大きな一歩となるのかもしれません。

 北朝鮮人民軍は工兵旅団をドネツク州へ派遣する準備を進めている、ISWアメリカ戦争研究所6月26日付戦況報告において驚くべき発表を行いました、情報源は6月21日付の韓国政府当局者発言を引用して報じた韓国報道機関のTV朝鮮による報道で、早ければ7月中に大規模な工兵部隊を派遣し、インフラ再建支援を行う可能性がある、と。

 朝鮮人民軍工兵部隊は10個旅団を現役部隊として維持しており、目的はロシア軍協力を行う事での外貨獲得にあると推測しているとのこと。仮に3個乃至4個工兵旅団を一年間ドンバス地域に派遣した場合、1億1500万ドルの外貨を得られるとのこと、ただ、ロシアがどのようにして経済制裁下でドルを準備するかについては不透明ではありますが。

 北朝鮮はCOVID-19新型コロナウィルス感染症世界的流行禍前には多数の労働者をロシア国内に派遣し外貨を稼いでいましたが、現在はその再開がいつとなるかが関心事となっていました、しかしその外貨獲得に人民軍ウクライナ派遣という選択肢が実際に行われるならば、ロシアウクライナ戦争が第三次世界大戦へ進み始める懸念もあるのです。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 突出部というのは非常に危うい事なのですけれどもロシア軍がこの状況を活かせていないというのは、やはりロシア軍は作戦をたてる能力と遂行させる能力がもうないのでしょうか。

 ロシア軍はチャシブヤールとアウディイフカ周辺での攻撃を維持している、これはISWアメリカ戦争研究所が6月27日に発表したウクライナ戦況報告によるもので、チャシブヤールとアウディイフカ周辺ではウクライナ軍がロシア軍に対して危険な突出部を形成しており、このままでは両翼包囲される懸念が生じていました、ただ前身は漸進だ。

 チャシブヤールとアウディイフカでの攻撃は突出部に対する攻撃となっていますが、漸進的な攻撃に留まっていることから、この地域においてロシア軍が一気に戦果を拡張できる突破口を開ける見通しはない、とISWは分析しています。一方、ロシア軍はチャシブヤール周辺での漸進と同時に幾つかの戦域において攻撃を進めているとISWは指摘し。

 ゾロチフ市北西部、コスチャンティニフカの南を攻撃、チャシブヤールでの攻撃は第1自動車化狙撃連隊、ドネツク人民共和国第1軍団ロシア第132自動車化狙撃旅団、ロシア領土防衛隊第1436連隊、この三つの部隊が中心であるものの、定数を割り込んだ状況で戦闘を続けており、増援が無ければこれ以上の前進は厳しいとISWは分析しています。

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【防衛情報】イギリス空軍オーストラリア空軍F-35運用連携強化とスウェーデン次期戦闘機白紙撤回

2024-07-01 20:23:31 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連の話題を重点的に集めました。

 イギリス空軍とオーストラリア空軍はF-35運用で連携強化します。ミッションデータパートナーシップ協定としてイギリス空軍とオーストラリア空軍は、フロリダ州エグリン空軍基地において、ともにイギリス空軍第80飛行隊とオーストラリア空軍第80飛行隊の再活性化式典を実施しました、両国は今後ACURLという機構を通じ情報連携する。

 ACURL共同軍事データセンターはF-35戦闘機が運用と同時に飛行情報等を集約するMDFSミッションデータファイルセットのデータ情報を共有し、整備情報や作戦運用に関する情報共有を行う。計画ではカナダ空軍が2026年にF-35の導入を開始するため、第80飛行隊を新設したうえでミッションデータパートナーシップ協定を結ぶ予定です。
■スナイパーポッド
 自衛隊もF-2に搭載しています。

 アメリカのロッキードマーティン社はイギリスでスナイパーポッドの製造を強化します。AN/AAQ-33スナイパー先進照準ポッドは現在、イギリスベッドフォードシャー州のロッキードマーティンアンプトヒル工場に新しい生産施設を構築中です。特にアンプトヒル工場では電子装備品関連の配線製造を担当しているとのこと。

 AN/AAQ-33スナイパー先進照準ポッドは航空自衛隊のF-2戦闘機にも搭載されるもので、アメリカ空軍ではF-16,F-15,B-1,海兵隊のAV-8などに搭載されているほかトーネード攻撃機などにも搭載、従来広く採用されたLANTIRNポッドの五倍の制度で目標を識別し追尾したうえでGPS座標情報などを精査し、精密攻撃を支援するものです。
■クロアチアラファール
 はたからみていると無料中古機譲渡の話からあれよあれよというまに流されているなあと見えているものでしたけれども。

 クロアチア空軍は待望のラファール戦闘機受領を開始しました、4月25日、クロアチア空軍はフランスからのラファール戦闘機到着をヴェリカゴリチア空軍基地において歓迎式にて迎え、老朽化とともに性能の陳腐化が進み過ぎていたMiG-21戦闘機の後継機を入手しました。到着したのは導入する12機の内の6機、単座型4機と複座型2機です。

 ラファール戦闘機はクロアチア空軍第91航空団第191戦闘飛行隊へ配備されることとなります。クロアチアはいままでMiG-21戦闘機を装備、超音速飛行は可能ですが中距離空対空ミサイルの運用能力はなく現代の航空戦では生存さえ難しいのが実情です。しかし2009年にNATO加盟を果たしたクロアチアは欧州各国との防衛協力を許可しました。

MiG-21戦闘機の後継はこうした中、F-16V戦闘機やJAS-39戦闘機等を模索した中予算面の折り合いがつかずイスラエルF-16C中古機などを検討した結果、2020年にラファールF3Rの中古機を導入が決定、2025年中に残る6機が引き渡される予定となっています。この歓迎式典にはクロアチア議会のゴルダンヤンドロコヴィ議長も出席しました。
■グリペン後継
 スウェーデンの防衛政策大転換が。

 スウェーデン空軍はJAS-39戦闘機後継機計画を白紙撤回するもようです。JAS-39戦闘機は重武装中立政策を進めるスウェーデンが独自の防空戦力を構築するべく短距離離着陸性能や単機単位での分散運表を念頭とした補給体系に適合する、しかし制空戦闘から対艦対地戦闘に偵察任務にも対応し、厳しい電子戦環境での運用能力を持つ戦闘機です。

 JAS-39戦闘機国産能力は、同時に重武装中立政策を堅持するスウェーデンだからこそ、周辺国の安全保障環境から独立して戦闘機を国産席る能力を堅持していましたが、同時にJAS-39戦闘機は第4.5世代戦闘機であるものの、現在の第五世代戦闘機や続いて開発される第六世代戦闘機については開発費が大幅に高騰する問題がスウェーデンの悩み。

 NATO加盟がスウェーデンの戦闘機国産計画に影響を及ぼすもようで、これは2022年の時点で欧州にはGCAP戦闘機計画として日本とイギリスにイタリアが参加する戦闘機計画とドイツとフランスのFCAS次世代戦闘機計画があり、こちらとの連携を模索していました。今回、NATO加盟を機に独自の次期戦闘機計画を見直すこととしたもよう。
■MH-139価格高騰
 UH-2をすすめたくなる気もしますがUH-1Jの後継にUH-139というのが在っても良かったのかと思ったりします。

 アメリカ空軍のMH-139A調達数削減がコスト超過を発生させました、MH-139Aグレイウルフヘリコプターはアメリカ空軍が戦略空軍の大陸間弾道ミサイル基地警備などに空軍特殊部隊の緊急輸送用に調達している多用途ヘリコプターですが、アメリカ空軍はすべての航空機に関する調達計画を見直し、その一環としてMH-139Aも削減されている。

 MH-139AはUH-1N多用途ヘリコプターの後継機として80機が調達される計画でしたが、予算不足から2026会計年度以降の調達計画を見直し、42機で調達を終了するとともに状態の良いUH-1Nの一部をワシントン州のフェアチャイルド基地やニューメキシコ州のカートランド基地、フロリダ州のデュークフィールド基地で運用継続する計画という。

 80機から42機への調達縮小により、現在の費用見積もりよりも少なくとも25%から50%程度MH-139Aの調達費用が増大すると判明しており、これが重大な契約違反であるとアメリカ議会上院などで指摘されています。ただ、空軍は価格高騰は技術的問題ではなく議会がMH-139Aの調達数を元に戻せば解決するという反論を行っています。
■三菱でF-16整備
 日本飛行機での整備支援を拡大してゆくということなのか。

 アメリカ空軍は在日米軍戦闘機の定期整備を三菱重工に委託する方向で調整に入りました。これは日経新聞が5月14日に報道したもので、航空自衛隊戦闘機の整備実績がある三菱重工とIHIなどとのあいだで日本政府が仲介となる形でアメリカ空軍戦闘機定期整備に関する打診を行っているとのこと。空軍は三沢と嘉手納に戦闘機を置く。

 アメリカ軍の航空機ではすでにF/A-18やF-35戦闘機が神奈川県の厚木基地にりんせつした日本飛行機の施設において定期整備を行っていますが、今回名前が挙がった三菱重工の施設は愛知県の小牧基地に隣接しており、自衛隊のF-15やF-2.F-35を整備していて、今後愛知県でのアメリカ軍戦闘機の定期整備が開始される可能性がでてきました。
■F-22退役に反対
 今年久々に横田で公開されたF-22はかなり傷んでいたという。

 アメリカ議会下院一部にF-22退役反対の動きがあるとのこと。具体的にはアメリカ国防総省は空軍の20億ドル節約計画の一環として2025会計年度に250機の戦闘機を退役させるとしており、この退役させる戦闘機の中にF-22戦闘機ブロック20の比較的新しい機体が32機含まれています。下院ではこの穴埋めの方が費用面で問題だ、と。

 F-22戦闘機32機を退役するなどして20億ドルを節約した場合でも空軍にF-22を32機補うだけのF-35などを取得する費用の方が大きいという批判であり、また下院では空軍がF-15EX戦闘爆撃機調達計画を削減したことにも反対があり、更に1年間ボーイング社での製造を延長し当初計画通りのイーグルⅡを導入すべきと主張しています。
■ボラメから長射程AAM
 5世代でも6世代でもなく4.9世代ということですが日本がFSX計画独自案の際に到達できなかった水準に韓国が30年遅れとはいえ夢を実現させたところは凄いとおもう。

 韓国が開発するKF-21戦闘機が初の長距離空対空ミサイル試験に成功しました。KF-21戦闘機はボラメ戦闘機として韓国政府とインドネシア政府およびKAI韓国航空産業が出資し独自開発する戦闘機で、敢えて第五世代戦闘機をねらわないがある程度のステルス製を有し第4.5世代戦闘機を越える第4.9世代戦闘機として開発がすすむ。

 ミーティア空対空ミサイルが今回の試験において発射されたとのこと。ミーティアミサイルはイギリスドイツフランスのMBDA社により開発された空対空ミサイルでもともとはユーロファイター戦闘機やラファール戦闘機に搭載を想定したもの、射程が200kmと長い。韓国空軍は2032年までにボラメ戦闘機120機を配備し旧式機を置き換える。
■F-15EXサプライチェーン
 イーグル2は開発されたのが遅すぎたともいえる。

 アメリカ空軍が導入を進めるF-15EXについてサプライチェーンの問題が発生しているとのこと。具体的にはF-15EX戦闘爆撃機を製造するボーイング社に部品を供給しているGKNエアロスペース社がアメリカでの複合素材製部品製造終了を計画しているため。ボーイング社は2001年以降複合素材部品の供給を同社に依存しています。

 GKNグループはイギリスのゲストキーンアンドネトルホールズ、もともとGKNエアロスペースはボルボエアロとしてスウェーデンのボルボ社系列となっていましたが2012年にGKNグループに吸収合併されたという歴史があります。同社はミズーリ州ヘーゼルウッドに自社工場をおいていますが、その工場が2025年に閉鎖される見込み。

 ボーイング社ではアメリカ空軍向けのF-15EXにくわえて海軍と海兵隊が運用するF/A-18E/F戦闘攻撃機を製造しており、こちらもGKNエアロスペースの複合素材部品が使用、アメリカ政府は戦闘機の主要部品をアメリカ国内で製造する約款のもと戦闘機製造を発注しているため、代わりとなる業者をボーイングは探さなければなりません。
■F/A-50単座型
 日本のF-1支援戦闘機と同じ流れ。

 韓国政府はF/A-50軽戦闘機の単座型開発を推進します。これはMOTIE韓国通商産業エネルギー省が発表したもので、もともとT-50超音速練習機として開発されているF/A-50軽戦闘機は複座型のみとなっていますが、戦闘機としての運用に特化した単座型を開発することにより世界の戦闘機市場において有利に運用できると考えたもの。

 F/A-50軽戦闘機単座型の開発について、韓国政府はKAI韓国航空産業と共同で494億ウォン、米貨換算で3640万ドルを投入し、またGCAS自動地表衝突防止システムの追加などもこの改良型開発費用に含めるとのこと。また単座型とすることで後部コックピット周辺を燃料タンクに転用できることとなり最大30%の戦闘行動半径拡大を見込む。

 戦闘機市場においてF/A-50は有用な選択肢となりつつあり、この背景には初期型のブロック10こそ簡易のエルタEL/M-2032レーダーを搭載していましたがブロック20よりレイセオン社製AESAレーダーを搭載し、AMRAAM空対空ミサイルなどの運用能力を持ち、しかし取得費用はF-16Vの半額、スウェーデンのJAS-39よりも35%安価となっている。

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ウクライナ情勢-アメリカ軍事支援再開概況とロシア全土の軍管区統合軍司令部編成廃止を検討

2024-07-01 07:01:07 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 七月となりましたが昨年のようなウクライナ軍反転攻勢の目処は無くF-16戦闘機到着を前に幾つかの動き。その概況を見ていますと日本の全廃した203mmや廃棄が進むMLRSについてやはり考えてしまう。

 ウクライナ最前線へアメリカ軍事支援再開の恩恵が届きつつあるもよう。6月24日付ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告によれば、ウクライナの国防副大臣を務めるハブリリュク中将の発言として、アメリカ軍事支援が徐々に到着していることでロシア軍の砲兵優位は七分の一から五分の一程度までウクライナ軍状況が改善している、と。

 今年三月の死活的な状況ではロシア軍砲兵火力はウクライナ軍の十倍となっていましたので、現在はウクライナの五倍程度までウクライナ軍砲兵が回復している事とはなりますが、依然として厳しい状況であることは変わりなく、ウクライナ軍事情報総局のブダノフ中将の発言として、前線の状況が好転するのは7月中旬から下旬と分析しているもよう。

 ウクライナ軍はハリコフ北東のヴォフチャンスク周辺において反撃に成功、対してロシア軍はしヴェルスクやトレツク近郊で前進、まさに一進一退という。こうしたなか、ゼレンスキー大統領は統合軍司令官のソドル中将を退任させ、ヘルソン西岸攻勢で勲功を挙げたウクライナ南部軍副司令官のフナトフ准将を後任に任命しました。■

 ロシア国防省はロシア全土の軍管区における統合軍司令部編成を廃止する検討をすすめています、これは6月24日付ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告に示されたもので、2006年以来の地域司令部再編となるものです。軍間戦略連合という、ロシア軍は各軍管区に空軍や海軍部隊を陸軍とともに統合運用を行う編成を採っています。

 西部軍管区を解体しモスクワ軍管区とレニングラード軍管区に置き換える改編は既に進められていますが、例えばカスピ海小艦隊を軍管区司令部隷下からロシア海軍直轄の小艦隊に再編するなど、統合軍司令部の幕僚陣を解体し、また空軍部隊と防空軍部隊を済めて航空宇宙軍隷下に再編するなど、一見して保守的な回帰の様な再編となるもよう。

 統合軍編成に進めるのではなく解く改編の意図は不明で、地域防空に空軍と軍管区司令部の調整が必要となります。ISWはここまで踏み込んではいませんが、可能性として統合軍司令部を解くことで、統合軍司令部の幕僚陣をウクライナは健軍の司令部機構に編入し、情報分析や作戦立案能力の強化を図るか、損害を補填する可能性があります。

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