北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑫ 物糧傘による緊急物資パラシュート投下の可否

2012-07-31 23:41:11 | 防災・災害派遣

◆現状では落下傘不足と梱包要員不足

 南海トラフ地震への想定ですが、想定津波被害範囲は関東沿岸から九州沿岸へ広がり、最大規模の発生では恐らく空前の被害となります。

Eimg_1181 今回で十二回を数える“巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える”特集ですが、共通する課題は想定を超える津波被害に際して、如何に想定の幅を広げることで減災に繋げるか、ということですが、財政に限界があり、防衛という主任務と両立させる観点から可能なことと不可能なことがあるというもので進めてきました。

Eimg_2455 前回は臨時飛行場、例えば八雲分屯基地を例として提示し、平時には滑走路保守のみを行い有事の際には補助基地とする方式を例に出しました。他にも、硫黄島航空基地や南鳥島航空基地が挙げられるかもしれません。災害時には高速道路隣接のサービスエリアへ平時から大型駐車場を整備すれば、有事の際に短距離離着陸性能が優れたC-1やC-130H,最新のC-2により輸送が可能となるでしょう。

Eimg_5039 しかしながら、最悪の場合を想定しての死者数は40万という大規模災害であるため、命を繋ぐ空輸は歴史上、ベルリン封鎖に伴う大空輸、ヴィットルズ作戦に匹敵する緊急空輸となると考えます。ヘリコプター、輸送機、果ては捜索救難機から連絡偵察機も加わることになるのでしょうか。同時に空輸は落下傘によっても行われる、という視点は必要ではないでしょうか。

Eimg_7245 応急飛行場の必要性は確かですが、南海トラフ地震とその他の地域の地震へ間に合うのか、直下型地震のように被災地が狭くしかし集中する場合と異なり、海溝型地震は広域化する被害への対処が必要となるわけで、加えて沿岸の都市部が津波により機能不随に陥れば津波を避ける高台の避難所へ送る物資は空輸のほかなくなります。

Eimg_1074 ここで提案するのが物糧傘を用いて救援物資をパラシュートで投下する方法です。パラシュートを用いた補給は、ヘリコプターによる輸送と異なり、一度に大量の物資を投下することが出来る点にあり、着陸させての人力搬送よりも短時間で実施できることは、一機当たりの輸送支援回数を強化することにも繋がります。

Eimg_2358 補給方法としては高台の一定以上の規模の避難所について、落下傘投下を行うに適した場所を予め防災訓練などを通じて自治体と調整、習志野第一空挺団を木更津駐屯地もしくは下総航空基地にて輸送機へ展開、特殊作戦群要員か降下誘導員を降下させ、情報収集とともに改めて数時間後に展開する輸送機を誘導、補給します。最初の72時間において、道路インフラが復旧するまでの期間に用いた場合の効果は大きい。

Eimg_7736 落下傘による物資搬送は、例えば航空救難事案に際してU-125捜索救難機からの運用が航空祭などで展示されています。ただ、航空遭難は戦闘機の場合で1名か2名程度、対して大規模災害ではこれが数千名と大きくなるため輸送機を用いる、というもの。もちろん、結成などの医療品搬送であればU-125を使ってもいいですし、陸上自衛隊のLR-2も使う場合においては用いられて然るべき。

Eimg_8106 現状ではこの方式を行う上で大きく二点の問題があります。第一に物糧傘が被災者避難所あたり千数百、全体では数万を想定しなければならず、投下した落下傘は陸上部隊が展開できるまでにインフラが回復しなければ回収できません、勿論破損することもあるでしょう、それだけの落下傘の備蓄が無い、という根幹にかかわる問題が避けて通れません。

Eimg_9578 第二の問題として、誰が梱包するのか、というものがあります。落下傘は、特に輸送機から投下する場合、パレットに載せ専門の要員が梱包しなければなりません。この梱包を行う要員が十分確保できるのか、というところにあります。そして、航空機へ搭載する地上支援車両も現状では一定数確保されていますが輸送規模に対して十分なのか、という問題も「忘れてはならないもの。

Eimg_0873 この視点の根底は、地上への空輸支援という方式へ我が国自衛隊がどのような姿勢から展開してきたのか、という部分にも影響します。具体的には航空自衛隊の輸送機は空挺部隊の輸送などは任務としているのですが第一の任務は有事の際に拠点基地への物資の集中であり、基地滑走路を維持して任務に当たるという観点に当たるもので、基地の無い地域への輸送支援はあまり考えていないのではないか、というものがあります。

Eimg_4895 梱包を含め地上要員については予備自衛官を充当する、という方しいが採れないのが難点です。空輸支援は地震発災直後から支援体制が整うまでの短期間に行う必要がある、緊急性の高い救命任務であり、予備自衛官の招集を待って限られた現役要員が任務に当たる、という構図はそもそも成り立たないということ。

Eimg_5580 落下傘、と言えば空挺部隊ですが、物糧傘による投下支援は地上部隊の行動に大きな栄養を与えます。例えば第四次中東戦争ではイスラエル空軍は機械化され非常に前進速度の大きい機甲師団へ弾薬の補給支援を行っていますし、フォークランド紛争ではミサイル対策のチャフが大量に必要となり補給艦では間に合わず、英本土から海軍機動部隊へパラシュート補給した例がありました。

Eimg_3036 この点で冒頭に示した想定、というところに繋がるのですが、自衛隊は動的防衛力の整備を念頭に改編を行うという政治を含めた潮流があります。この観点から、例えば野戦部隊への物糧投下支援や島嶼部防衛に際しての空中からの補給という視点は考えられるべきなのですが、言い換えれば震災への支援にも供する、という視点から輸送機定数と輸送機支援要員の強化、という部分は考えられてもよいように思うもの。

Eimg_1192 幸い、南海トラフ地震において想定される津波被害へ、輸送機が展開する小牧基地と入間基地は海岸線から20km以上離れていますし、美保基地は美保湾から1kmの距離にありますが日本海側、輸送機部隊が津波被害を受ける可能性は低いです。この点を踏まえ、輸送機を最大限活用するにはどうするべきか、視点は、特に予算を左右する政治の視点からその主導権を願いたいところです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロンドン五輪中の紛争抑止?嘉手納F-22展開と原子力空母ジョージワシントン横須賀帰港

2012-07-30 23:18:41 | 国際・政治

◆前回の北京五輪ではグルジアがロシア軍を攻撃

 ロンドン五輪、女王陛下の降下に始まり(違)、柔道判定方式の複雑さとサッカー連勝と我が国代表選手団が奮闘が伝えられるところですが、安全保障では安穏と中継に釘づけとはなれないもよう。

Pimg_3243 開会式と同じころ嘉手納にF-22が展開、原子力空母ジョージワシントンは8月4日までリムパック2012が実施される中横須賀へ帰港しました。オリンピックと戦争、関係無いように思われるやもしれませんがオリンピックを筆頭とした国際スポーツ大会下では世界の耳目がスポーツに集中するため、軍事的侵攻を行う場合に世論を逸らす格好の時期ともなっています。また、ワールドカップ等が行われる際には戦争も一時休戦となった、という話題が提示されることもあるのですが、休戦までの戦果拡大と期間中の戦力蓄積は無視してはなりません。

Pimg_1959 そこで、ですが勿論すべてではないにしろ、この時期にF-22が嘉手納に展開、MV-22は岩国へ到着、原子力空母ジョージワシントンは横須賀に戻っています。考え過ぎと言われるかもしれませんが、2008年の北京五輪では、開会式が行われるまさにその時、グルジア軍が南オセチア自治州に駐留するロシア軍を奇襲攻撃し、プーチン首相は北京の開会式開場にて戦争を仕掛けられたことを知りました。ロシア軍は二個師団を以て反撃に転じ、アメリカの仲介を元に停戦に至りましたが、今も緊張が続くところ。

Pimg_8905 特に警戒を要するのは南シナ海や台湾近海における突発的緊張で、この緊張は適切な抑止力により防ぐことが出来ます。F-22戦闘機8機が嘉手納基地へ前方展開したことで、ステルス機の存在は制空戦闘に革命的な不確定要素を供するものですから約50機のF-15CとE-3早期警戒管制機を有する嘉手納の第18航空団の能力は大きく嵩上げされることとなりますし、ジョージワシントン横須賀帰港により第五空母航空団の厚木航空基地への配置の抑止力は大きく、岩国航空基地へ展開しているMV-22の潜在的抑止力も少なくない。

Pimg_7147 特に原子力空母ジョージワシントンの横須賀既往が比較的早いのはある種意外でした。現在ハワイ沖において環太平洋合同演習リムパック2012が実施中で、海上自衛隊からは護衛艦しらね、みょうこう、等が参加していますが、リムパックは8月3日まで実施、ジョージワシントンはリムパック期間中に戻ってきた、ということなのです。参考までに海上自衛隊の派遣部隊は早引きなどはせず、護衛艦部隊の帰国は8月19日なのですから、ジョージワシントンの早退はある種意味があるといえるでしょう。

Pimg_2841 特に過去一か月間を俯瞰すればCCTVによる中国新中古空母公試映像の公開や国際領有権紛争地南沙諸島における中国の三沙市成立、中比間の海軍艦艇対峙と中国コルベットのフィリピン沖での座礁など、注意を要する事案は連続していまして、次の一手が安定と秩序を根底から覆す痛打とならないよう、この地域の安定が世界の利益に寄与することがアメリカの国益と繋がる、という国是の下で責任ある行動を取っている、といえるやもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Weblog北大路機関本日創設七周年!2005年7月29日の第一号記事から2526記事を掲載

2012-07-29 23:50:01 | 北大路機関特別企画

◆阪急十三駅での発足から本日で七年です

 本日を以てWeblog北大路機関は創設七周年を迎えました。解析開始時からの通算アクセス数:4979609(2350時時点)、本当にありがとうございます。

Kuramaimg_3724 掲載された記事数は2526、頂いたコメントとお返事は合わせ8316、七年というのは短いようで長いものであり、撮影する写真の記録を俯瞰すれば既に現役を退いた装備から当時概念図しかなかった装備まで多々あります。創設当時は海上自衛隊に護衛艦はるな、が現役で、ひゅうが型は計画段階、航空自衛隊の次期戦闘機は計画段階でF-2の生産が継続され、陸上自衛隊は軽装甲機動車の生産が軌道に乗りつつ装備品転換を行う時期にありました。

Kuramaimg_7899 東日本大震災や原子力事故などはまだなく、中国軍の脅威は台湾の軍事力を越えるに至っておらず、まだまだ平和な国際情勢下といえたやもしれません。これからも最大限継続してゆくWeblog北大路機関、南西諸島有事や南海トラフ地震などを想定した特集記事を掲載していますが、想定外というものは今後も多く表れるはずで、この点はどうしても不安というもの。

Kuramaimg_0059 こうしたなか、七年を迎えた、という北大路機関には当然七年前がありました。毎年この時期に記載するのですが、Weblog北大路機関は阪急十三駅にて、神戸中華街での学内行事完了打ち上げにて紹興酒を五本六本と空け、文字通り酩酊状態の中、言い換えれば酔った勢いで始まったのが今に至るわけでして、先ほども阪急十三駅へ立ち寄り、ふと思い出しましたところ。

Kuramaimg_0700 上記の通り、勢いから始まったものですから、あの日節度ある飲み方をして、空いている阪急特急に座ろう、と考えることがなければ、立ち上げられることはなかったのでしょう。他方で、本日も阪急京トレインとして6300系が運行されていましたが、当時乗った電車と同系型が一人体と言われながら本日も快速特急に運行されていることは嬉しい限り。

Kuramaimg_7564 さて、何故忙しい日々においても記事が継続できるのか、と問われることが多々あるのですけれども、これは実はわかりません、習慣化したからでしょうか。酔った勢いで始まったものですし、毎日掲載という自己約款を崩すまいという、いわば自暴自棄ともとれる執念に起因するものでして、自分でも不思議というところです。

Kuramaimg_6211 同時に誤字脱字の多さは自分でも後に携帯電話のWeb機能にて読み返し赤面してしまう次第でして、更新頻度を週一回二回程度に落とせばどうになかるのか、と悩むことも多いです。誤字、これは本当にどうにかしたいのですが、毎日記事作成に用いることが出来る時間は夕食後から零時を過ぎるまでの時間内で所用をすませた後のわずかな時間というのがどうにもならないもの。

Kuramaimg_3350 ここで、記事内容を確定し、裏付け情報を確認し、資料を準備し、本文を作成。続いて過去に撮影した写真の中から適合する、関連性のある写真を選定し、掲載用に加工するうえできじとするわけでして、これは記事を削減する以外の妙法をご存知の方がいればお教えただ機体と繰り返しお願いしています。

Kuramaimg_7032 Weblog北大路機関ですが、色々なものを掲載しました。AH-64D明野到着を比較的早い時期に紹介しましたし、護衛艦みねゆき哨戒ヘリコプター運用再開を始め、個人Weblogで可能な範囲内にて出来る限りの防衛関係の速報を掲載してきましたし、可能な範囲内での自衛隊紹介を通じた防衛への理解を、という方針を継続してきました。誤字脱字に劣らず当方の誤解に依拠する記事も多いのですが、併せてコメント欄にて訂正などお教えいただき、補完というかたちで記事の完成度を高めていただいていることは感謝という一言につきます。

Kuramaimg_7421_1 こうしたなかで、昨今は、というよりもかなり長い期間において撮影した写真を記事として紹介することが飽和状態となっているもので、どうしても行事写真は膨大な文章と共に紹介する己ですから現在の第11旅団特集や護衛艦くらま就役三十周年記念記事は掲載に数か月を要してしまいます。このあたり、かなり前から記載しているのですが、どうにか写真を最小限で紹介できるホームページとして“防衛フォーラム”というモノを考えているのですけれども時間が捻出できず今に至る。

Kuramaimg_7469 しかしながら、特集記事ということで8~10日に一回程度十数枚から二十数枚の写真と共に定期的に紹介する方式を採用し、防衛関連・防災関連・自衛隊行事×2、という方式にて少しながらも掲載できていますので、この方式を継続してゆこうと思います。何分、当方もいろいろと物事を調べてはいるのですが、誤解も多く訂正コメントには助けられているのですけれども、この基盤となるべき溶融できる編制や任務、今後の在り方を討議できる場所を提示できた、ということは、このWeblog北大路機関七年のかけがえのない財産と言えるでしょう。

Kuramaimg_1367 他方で、第二北大路機関の位置づけとともに、創設当初に掲載されていた祭事特集や旅行特集を筆頭に肩の力を抜いて閲覧できる記事が非常に薄くなっていることも事実で、新しい掲載というものも今後考えているところです。いろいろと書き連ねましたが、一日当たりのアクセス数平均は大凡3400、多くの方の閲覧と応援によりここまで来ることが出来ました。今後ともWeblog北大路機関をよろしくお願いいたします。

北大路機関

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑤ 戦闘支援部隊観閲行進

2012-07-28 19:39:01 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
◆第11旅団偵察・高射特科・施設・通信部隊
第11旅団観閲行進はまだまだ続きます、今回は偵察部隊、高射特科部隊、施設部隊、通信部隊、戦闘支援部隊の観閲行進を紹介しましょう。 
Mimg_1600 第11偵察隊は旅団の任務遂行に必要な偵察及び警戒を実施する部隊です。82式指揮通信車、軽装甲機動車、87式偵察警戒車、偵察用オートバイを運用する部隊です。部隊創設は陸上自衛隊13個師団体制が画定した1962年に遡り当時の人員定数は103名、第5偵察隊と第7偵察隊の人員を以て発足しています。2008年の部隊改編で師団旅団化とともに偵察隊は一個偵察小隊の増勢を受けました。
Mimg_1612_2 偵察隊の編成は偵察隊本部、四個偵察小隊、電子偵察小隊を以て編成されています。偵察、とは敵を探すこと、と解釈されているようですが、敵の有無を図ることは我が国では斥候と称しており、偵察とは敵の戦力規模を積極的に把握する目的を有するもので、この為に偵察隊は一定の戦闘能力を有しています。本来は戦車と装甲戦闘車による混成中隊規模のものが望ましのですが、これは第7偵察隊くらい。
Mimg_1618 偵察小隊は、かつてはオートバイとジープだけ、という陣容から始まっていますが今日では87式偵察警戒車、軽装甲機動車、偵察オートバイにより編成されているもので、特に偵察オートバイが斥候に当たる任務を実施し、この把握した目標に対し装甲車が戦闘を仕掛け、抵抗の規模から敵対勢力の規模を推察するという方式が採られている。
Mimg_1626 観閲行進には出てこないのですが、電子偵察小隊は戦場監視を目的として1975年より編制されています。P-11レーダ装置3基を以て3個レーダ班を編成し、併せて野戦情報探知装置1号装備の1個センサー班を以て電子偵察小隊を編成します。P-11などは87式偵察警戒車など車両にも搭載できるとのこと。
Mimg_1630 87式偵察警戒車は第11師団時代の1991年に装備が開始されたもので、全備重量15tの装輪装甲車です。搭載する機関砲はエリコン25mm機関砲でAPDS-T弾を使用した場合距離2000mの傾斜30°防弾鋼板25mmを貫徹するといわれます。偵察警戒車なのですが難点は偵察装置の貧弱さで、砲手用微光増倍暗視装置が装備されるほかは車長用四倍等倍切り替え潜望鏡のみ。一応熱線暗視装置JGVS-V7をハッチへ取り付けることも出来るのですが。
Mimg_1631 第11偵察隊の部隊マークが見えます。偵察警戒車には二名の斥候員が乗車しており、降車し情報収集を行うことも可能です。しかし、積極的な偵察、即ち自動車化歩兵中隊程度であれば圧倒できる程度の能力を持たせるには、現在開発中の105mm砲搭載の機動戦闘車について、弾薬を減らし光学及び電子情報収集機材を搭載する偵察用伸縮式マストを砲塔後部に置く偵察戦闘車を装備しては、と。
Mimg_1642 第11高射特科中隊。中隊本部、情報小隊、近SAM小隊、短SAM小隊を以て高射特科中隊を編成しています。一個中隊ではあるのですが、防空監視用レーダーを運用していますので、旅団全般防空、特に携帯SAMを運用する自隊防空を行う部隊へ師団対空戦闘システムDADSを用いて航空攻撃情報を発するという意味で重要な位置づけにあります。
Mimg_1650 情報小隊の79式対空レーダ装置P-9、低高度目標への探知を行い、概ね100km程度の距離を探知できるとのことです。このほか対空レーダ装置P-14が装備されています。P-9は新型のP-18へ置き換えられる計画でしたが、全部隊への配置を終了しないうちに業務用PC私物品からウィニーによる情報漏えい事案が発生し、官品PC圧倒的不足を背景としていたことから解決策にPC一斉購入を行った結果、P-18の取得費用が削られた、といわれています。何かを採れば何かが削られる。
Mimg_1654 93式短距離地対空誘導弾通称近SAM、CSAMとも呼ばれます。35mm連装機関砲L-90の後継装備として導入されたもので、射程5kmの91式携帯式地対空誘導弾を運用、データリンクにより対空戦闘情報に応じて戦闘態勢を取り、複合式照準装置によりかなり精密な照準が可能であることから、一定の離隔距離とともに展開すれば高い野戦防空能力が発揮可能です。
Mimg_1659 CSAM、将来的には一部が機関砲に置き換えられることとなるようです。40mmか50mmの大口径機関砲により代替される計画で、これは一部の高射特科部隊に置かれるのか、全般配備されるのか未定ですが、将来装輪装甲車体系の車両として装備され、スウェーデンの3P弾など近接信管によりかなり高い対空戦闘能力を有し、絶対に欺瞞行動に関係なく直進し連続射撃を行うため、まだまだ機関砲の時代は終わっていません。
Mimg_1656 81式短距離誘導弾、通称短SAMと呼ばれSSAMとも呼ばれています。1960年代から東芝が苦心の末開発したもので、我が国初の国産野戦防空ミサイルシステム、アクティブフェーズドアレイレーダーをレーダーに採用、発射装置二両と射撃指揮装置一基を以て構成され、レーダーの索敵範囲は約50km、複数目標の同時追尾と射撃対処が可能な、今日でも十分通用する装備です。
Mimg_1661 SSAMは、射程8kmの地対空ミサイルですが、赤外線画像誘導方式の原型に加え新しくSSAM-Cと呼ばれるレーダー誘導型が開発されています。全国に順次配備開始されているのですが、ミサイルのシーカー部分がアクティヴレーダー誘導方式となっており、射程も15kmに延伸されています。発射装置には複合照準装置が増備されているのも特色で、性能上まだまだ第一線の装備と言えるもの。
Mimg_1660 このSSAMですが、後継装備として11式短距離地対空誘導弾が制式化されています。まだまだ装備実験が行われる装備で、来年あたり高射教導隊が高射学校で展示するのでしょう、発射装置への装填がSSAMでは半自動方式でミサイルコンテナを発射装置に人力搬送しなければなりませんでしたが11式ではコンテナをクレーンで装填する方式となり、自動化がすすめられたほか巡航ミサイル対処能力を有するに至りました。
Mimg_1671 第11施設中隊。本部班、補給班、三個施設小隊、交通小隊、渡河小隊を以て編成されています。元々は1962年に創設された定員377名の施設大隊でしたが、第11師団の第11旅団への縮小改編により施設中隊へと縮小されています。92式地雷原処理車や75式装甲ドーザなどをかつて装備していたのですが、全国の師団旅団施設部隊はこれら第一線で用いる装備を方面隊へ回してしまって、これはどうにかならないものでしょうか。
Mimg_1674 10式戦車の車体を利用した施設戦闘車、というものが必要なのでは、と関挙げます。特に海外派遣では施設部隊は正面に立つことが多いのですが滑降の目標になり、油圧ショベルと地雷除去用のプラウを装備し、サスペンションなどは簡略化したもの、必要でしょう。そして戦車の通路を啓開する92しい地雷原処理車も。D-7ドーザのような防弾車体を用いた50tクラスのドーザも、兎に角最前線の本当に先頭にて障害を除去するのだから必要ということは間違いない。
Mimg_1678 施設中隊は様々な車両をもって、障害構築、障害処理、陣地構築、交通維持、戦闘渡河、施設建築といった任務に当たります。70式地雷原爆破装置、大型ドーザ、中型ドーザ、掩体掘削機、油圧ショベル、バケットローダ、トラッククレーン、グレーダ、ダンプ車、83式地雷敷設装置、道路障害作業車、装備するものはこういったところ。
Mimg_1680 81式自走架柱橋、橋梁長10mの6両を以て1セットを構成し、橋梁幅員3750mmで、90式戦車以外の全ての装備を渡河させることが可能、橋梁設置は二時間程度で60mの橋梁を構築する能力がありますが、架柱橋であるので河床泥土の状態などで設置できない場合があると共に流速にも左右されるため、測量は事前に一昼夜をかけて行うとのこと。
Mimg_1681 道路障害作業車。日本は専守防衛を国是としているため、国土を瞬時に要塞化するための装備、というものが必要です。道路障害作業車はこの為の装備でクレーン、アースオーガー、コンクリートカッター、チェーンソー、ブレーカ、タンパー、これら道具をアタッチメントに装着することで電柱やガードレール、舗装道路に法面やブロックなどを障害物に置き換えることが出来障害除去などにも使用可能です。様々な装備の中で観閲行進にd他のは以上、96式装輪装甲車に地雷原処理装置を搭載したものは、のちの訓練展示に出されましたが、ね。
Mimg_1684 第11通信中隊。通信中隊の編成というのはなかなか分かりにくいものがありますが、旅団長と連隊長等との間の通信確保を任務とする、このように紹介されていました。通信大隊であれば、大隊本部と第一中隊と第二中隊という編成で、第一中隊が主合通小隊、前方合通小隊、後方合通小隊という編成で、第二中隊は三個支援合通小隊を基幹としていました。
Mimg_1690 通信中隊は師団通信システムDICSを構成します。システムは音声通信と移動間通信に加えデータ通信を行い、電子戦においても通信の維持を実現します。通信統制装置を基幹に交換装置系、伝送装置系、端末装置系連接装置系を以て構成されています。旅団なのに師団とはこれいかに、と思われるかもしれませんが、新野外通信システムが後継として開発中なので、名称はどうにかなるのでしょう。
Mimg_1694 通信中隊、恐らく第一中隊の主合通小隊、前方合通小隊、後方合通小隊を維持して第二中隊の任務を各普通科連隊の通信小隊に移管した、ということになるのでしょうか。野外用の移動加入基地局JTTC-T1に電子交換装置二号JMTC-T5やJMTC-T120により基地局を構成し、無線搬送装置JMRC-C50やJMRC-C-60が通信搬送体制を構築、通信基盤を構築する。もちろん、通信確保の観点から電子戦も通信中隊の任務に含まれています。このほか、広報用写真や記録映像の撮影も通信部隊の任務、忙しい。
Mimg_1693 衛星単一通信可搬局装置JMRC-C4、移動加入基地局JTTC-T1、電子交換装置二号JMTC-T5やJMTC-T120、無線搬送装置JMRC-C50やJMRC-C-60は中型トラックや高機動車に搭載されるシェルターにパッケージ化されており、アンテナを以て運用します。このように装備品を列挙してきたのですが、・・・、列挙されているのは名前ばかりで、中々外見からは装備品の制式名称がわかりにくい、というのは通信装備の一つの特色と言えるかもしれません。
Mimg_1696
とにかく現代戦は位置が把握されれば火力が指向され無力化されますので機動が基本、通信は最後まで通信を維持し、最初に通信を開通させなければならない、休めない部隊といわれているもよう。さて、以上で第11旅団の偵察部隊、高射特科部隊、施設部隊、通信部隊の観閲行進は完了です、が、まだまだ観閲行進は続きます。次回をお楽しみに。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十四年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.07.28・29)

2012-07-27 23:14:22 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 暑い、兎に角熱い。うなさん、鰻がここ数年間で値段高騰、信じられんことですが北大路ビブレ改装前と言いますか2005年くらいまでは夕方に輸入一尾398円に三割引きシールが貼っていたのですが、ね。

Gimg_6814 暑さの中、特に地面の熱さで靴が溶けてしまいそうなところですが、鳥取港にヘリコプター搭載護衛艦くらま入港、一般公開があります。護衛艦くらま28日と29日0900~1100,1300~1600の予定で鳥取港一号岸壁。写真は清水港での写真で電燈艦飾は行われていませんでしたが、写真としますと常夜灯でもこれほど美しい。

Gimg_3729 護衛艦いせ鹿児島港谷山一区八号岸壁寄港、一般公開は28日1300~1630、29日130~1630の予定でペトリオットミサイル一般公開や陸上自衛隊車両一般公開のほか27日には電燈艦飾も実施予定です。今週末はヘリコプター搭載護衛艦が熱い。飛行甲板も熱いので注意しなければなりませんが。

Gimg_1458 サマーフェスタですが、海上自衛隊では小月航空基地と舞鶴基地において明日実施されます。日曜日ではなく明日土曜日に実施されるようで、このあたりしっかりとご確認ください。小月航空基地は海上自衛隊の航空要員養成を粉う練習機部隊の基地であり、T-5練習機が置かれている基地となっています。

Gimg_4339 舞鶴サマーフェスタ。舞鶴基地からはヘリコプター搭載護衛艦しらね、イージス艦みょうこう、がハワイへリムパック環太平洋合同演習に展開していますので、どういった展示が行われるのでしょうか、SH-60の飛行展示は行われないとのことで、航空基地一般公開と桟橋一般公開、艦艇一般公開、というところでしょうか、曳船か交通船体験乗船は行われるやも。

Gimg_8184 丘珠駐屯地では第26回丘珠高空ページェントが実施予定、北海道航空協会が行う行事で陸上自衛隊の北部方面航空隊がUH-1等の編隊飛行を行うほか、三沢基地からF-16戦闘機が機動飛行を実施予定、厳密には自衛隊行事ではありませんが、民間の航空行事としては我が国最大規模と言えるでしょう。

Gimg_5390 網走港イージス艦あしがら艦艇広報28日、29日。艦艇一般公開このほかの予定。秋田港イージス艦きりしま、護衛艦さざなみ7月28日・29日2隻同時艦艇広報7月28日9:00~11:00一般公開14:00~16:00乗艦開始12:25乗艦締切13:10体験航海、7月29日9:00~11:00一般公開、13:00~15:30一般公開。

Img_6660
 海上自衛隊護衛艦たかなみ、久慈港諏訪下埠頭7月28日~29日入港歓迎行事、一般公開、体験航海、電灯艦飾など予定。艦艇一般公開護衛艦いそゆき和歌山港西浜第5岸壁7月28日13:00~16:307月29日9:00~16:30陸上自衛隊車両展示小学生以下対象写生大会が予定されているようです。

Gimg_8848 高知宿毛湾港池島岸壁28日1300~1630、29日130~1630一般公開と事前応募制体験航海が29日0930~1100の予定、護衛艦はるゆき。予定されているのは調べた範囲内ではこういったところ。体験航海は基本が事前応募制となっています。このほか、お気づきの行事等ありましたらお教えいただけると幸い。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヘリコプター護衛艦くらま就役30周年記念一般公開④ 海上からの護衛艦くらま夕暮れの情景

2012-07-26 22:33:39 | 海上自衛隊 催事

◆くらま、海上から見上げてみよう!
 ヘリコプター護衛艦くらま撮影、いろいろ考えましたが、やはり護衛艦は海からの威容が一番に違いない、この日の最後は海上からの撮影です。
Kimg_7864 夕暮れ迫る佐世保基地、夏場なので日の入りは遅いのですが、日没の時間を過ぎてしまうと自衛艦旗が収められてゆくので、その前に撮影したいところです、そして暗くなるとしっかりと取ることはできませんからね。手前に停泊しているのは、ひうち型多用途支援艦あまくさ、佐世保地方隊の直轄艦となっています。
Kimg_7883 護衛艦ゆうだち、護衛艦くらま。しらね型護衛艦が就役した当時は基準排水量5200t、満載排水量7200tの大型艦ということで、最初の乗員は他艦の乗員から羨ましがられたそうです。同じころに量産が開始された護衛艦はつゆき型で満載排水量は4000tでしたのですが、むらさめ型は6200t、今日、汎用護衛艦は大きくなりました。
Kimg_7896 くらま、第2護衛隊群旗艦として長く務め今でも第2護衛隊群と佐世保の顔となるのですが、ゆうだち、の方が大きく見えるかもしれません。これは推進方式の設計への影響があります。くらま、のような蒸気タービン艦にたいし、吸気排気に多くの区画を要して上部構造物が大型化するガスタービン艦は、より大きく見えるというわけ。
Kimg_7922 この一枚を撮りたかった、これが海上自衛隊だ!、という一枚です。良いではないですか、デスクトップPCの壁紙にしています。夕暮れの護衛艦くらま、5インチ単装砲が51番砲と52番砲、中央の上部構造物とスマートなマック、巨大な航空機格納庫と長大な飛行甲板、良い構図、良い時間帯、いい情景そのもの。
Kimg_7962 世界の艦船誌の艦艇図を思わせる模範的な真横からの護衛艦くらま。背景には佐世保の市街地がよく見えます。山に沿って基地と共に良港は市街地へと発達しました、基地の街佐世保、散策してみますと一杯やるときの風景も、暑さ凌ぎの方式も、街の雰囲気は当然ではあるのですけれども京都とは全然違う。
Kimg_7970 佐世保基地立神桟橋の護衛艦ありあけ、きりさめ、ミサイル護衛艦こんごう、補給艦はまな。このあたりの構図は、逆光になってしまっています。もう少し違う時間帯ならば、もっと違った情景が撮影することも出来たのではありましょう、しかし、今回の撮影はヘリコプター搭載護衛艦くらま、贅沢は言えません。
Kimg_7985 立神桟橋の全景、その向こうの夕暮れの佐世保市街地住宅街。坂道が多い街ということで、神戸や長崎をコンパクトとしたような印象、ですね。少々山手は自動車以外の交通が不便ではあるのですが、基地の街、ということで海上自衛官OBの方も少なくない方が、佐世保をついの棲家として選ばれる方も多いとのこと。
Kimg_7996 海上を地方隊桟橋方面へ、教育隊のあるあたりですか、ね。舞鶴教育隊や呉教育隊は違い地価、市街地から徒歩圏内にあり、横須賀は陸海空自衛隊の敷地共有ということもあり交通は便利なのですが、佐世保教育隊は少々市街地から遠い印象でした。写真では水中処分母船とミサイル艇が停泊しているのが見えますね。
Kimg_8013 佐世保基地へ、今年完成し周辺の一般住民に公開された米海軍のLCAC格納庫がみえます。LCAC,佐世保は前回の俯瞰風景で見ることが出来たように強襲揚陸艦やドック型揚陸艦の母港ですので、揚陸用のエアクッション揚陸艇も配備されています。整備は航空機並の性能に見合う整備が必要となり、こうした整備施設が建設されているわけです。
Kimg_8066 カッターが見えますので教育隊はここでしょうか。舞鶴基地なんかは周辺を散策しますと時々カッターを漕いでいるカッター訓練を見ることが出来るのですが、佐世保でもそうした情景を見ることが出来るのでしょうね。湾内は非常に広い印象があるのですが、どのあたりまでカッターでゆくのでしょうか。
Kimg_8093 佐世保港へ戻ってきました。くらま、もう夕暮れから日没後ですね。艦首旗と自衛艦旗は降ろす準備が為され、要員が待機しています。よくよくみてみますと、艦尾の自衛艦旗下にも要員が集まっています。喇叭演奏と共に明日の日の出まで格納されるということ。こうしたところで、この日の撮影を完了しました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハイチPKO(MINUSTAH) 震災復興に目処、来年1月任務完了撤収へ森本大臣が命令

2012-07-25 23:11:17 | 国際・政治

◆政府決定、ハイチ震災発災三年を一区切り

 森本防衛大臣は7月17日、防衛省における防衛会議において自衛隊ハイチPKO任務について来年一月を以て終了する政府決定を通達しました。

Oimg_6019 自衛隊ハイチPKOは2010年1月12日に発災したハイチ大地震への人道支援任務として開始されたもので、当初は半年程度の任務が想定されていましたが、時の民主党政権は任務期間を順次延長し、東日本大震災に際しても交代部隊派遣など派遣体制を維持、発災から三年を以て任務完了となります。

Img_60_06 配置地震はマグニチュード7.0の直下型地震で、首都ポルドープランス近郊で発生したことから国連統計にて世界で最貧国の一つに数えられる同国の耐震強度の低い建物が軒並み破壊され、2011年1月までに確認された死者は31万、大統領府も倒壊し、大きな被害が出たわけです。

Img_1961 ハイチは元々産業が脆弱であり、独力では復興は難しく、震災当初のCNN報道では大統領府倒壊で大統領が今晩寝る場所が決まっていないというほど、国家破綻の危機に瀕していたため、もともとPKO要員が出されていたほどですが国連はハイチ安定化ミッションとしてPKO部隊派遣を決定、此処に自衛隊も派遣された、ということ。

Pimg_6440 自衛隊のハイチPKOは中央即応連隊の隊員を第一陣として派遣基盤を構築したのちに施設部隊を中心に派遣され、地震大国日本ならではの現地での社会インフラ復興から医療支援、防疫から日本ならではの支援として耐震強度診断要員の派遣と耐震強度点検など多岐に上っています。そして施設器材はハイチ政府へ譲渡されるとのことでした。

Img_7290 ただ、発災当初は民主党鳩山政権が友愛ボートとして自衛隊の輸送艦を多国間支援任務に充当する政策を提示していた時期ながら、なかなか派遣を明示せず、理由として友愛ボートとしてパシフィックパートナーシップへ輸送艦を派遣する計画があったため、という、実任務での救難救援よりも演習を優先する姿勢にかなり疑問を抱きました。

Img_2358 特に自衛隊は専守防衛を念頭に海外派遣任務を例外的な任務として扱う運用基盤に依拠した編成となっていますので、長期間の派遣任務よりは迅速に派遣し、生存者救出などを重要視するべき、と考えていただけに、当時の政権は危機管理能力として大丈夫なのか、そう考えさせられたわけです。一年二か月後に一つの結果が出たのですが。

Simg_2836 自衛隊の派遣規模は施設中隊と施設器材中隊を基幹として350名、軽装甲機動車20両を含む150両の車両を派遣、交代要員の選定と選定された要員の訓練を含めれば、派遣要員だけではなく専従となる隊員はかなりの数となった訳で、東日本大震災災害派遣と重なった点からも苦労はあったでしょう。

Gimg_2243 今回の任務完了は、今年1月20日に一年間の延長を決定したのち、これが再延長されなかったことを意味します。他方で、東日本大震災災害派遣も発災から半年でほぼ終了していることを考えれば、ハイチ地震から三年間という期間は非常に長い時間を要した、という印象です。

Img_1737 ともあれ、自衛隊は限られた人員と展開能力との狭間で、想像を絶する震災被害を前に求められた成果を出しました。派遣隊員の経験はなにかしら東日本大震災災害派遣への波及効果もあったのでしょう、任務完了まで出口戦略が確定したのですから、期間中事故の無いよう、自衛隊の任務完遂を祈念します。そして次に我が国を襲う震災への準備の一要素となることを祈念しましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MV-22岩国到着!米海兵隊新型ティルトローター機配備の背景と今後を考える

2012-07-24 23:52:13 | 先端軍事テクノロジー

◆旧式化CH-46を置き換える待望の新型機

 昨日7月23日、米本土から岩国航空基地へ海兵隊新ティルトローター機MV-22が12機、海路により到着しました。

Iimg_1655 海兵隊は旧式化したCH-46中型ヘリコプターを新型のMV-22により2014年までに置き換える方針で、ティルトローター機という構造から空気抵抗が小さくなり速度は二倍で航続距離は四倍になるというもの。岩国航空基地第一海兵航空団隷下の普天間基地へ現在の24機配備されているCH-46はまず半分を昨日到着のMV-22により置き換え、最終的に24機のMV-22を普天間へ前方展開させることとなります。CH-46は1958年に初飛行し、海兵隊が1961年に強襲揚陸艦用輸送ヘリコプターとして採用、我が国でも陸上自衛隊が輸送ヘリコプター、海上自衛隊は掃海ヘリコプター、航空自衛隊が救難ヘリコプターとして採用しています。

Iimg_2029_2 CH-46は運用開始から多くの年数を経ており、ヴェトナム戦争や湾岸戦争をはじめ多くの実戦に投入されたことで問題点が過去の事故と喪失を経て洗い出された結果、非常に事故発生率を低く収めているのですが、同時に非常に古い機体であるので老朽化が事故発生率に反映される前に置き換えねばなりません。CH-46は古いので代替されなければならない、という指摘に対して米陸軍や陸上自衛隊が多用するCH-47は初飛行が1961年であるのに、まだまだ使われているではないか、という指摘があるかもしれませんが、CH-47はボーイング社や川崎重工において生産が継続されています。しかしCH-46の場合では米海兵隊向けの機体製造は1987年に終了しており一番新しい機体でも25年を経ており、補強により飛行している状態、生産継続のCH-47とは根本的に条件が異なる点を忘れてはなりません。

Vimg_9939 何故MV-22が日本に配備されるのか、海兵隊は空地一体の運用による緊急展開を重視しているため、砲兵や戦車を最小限としてAH-1Wや後継のAH-1Z攻撃ヘリコプター、AV-8B攻撃機やF/A-18C戦闘攻撃機を保有、重輸送ヘリコプターに兵員55名や装甲車に火砲を空輸可能なCH-53D/E,兵員輸送に25名の輸送を可能として車両輸送も可能なCH-46,多用途ヘリコプターとしてUH-1Yを運用するのですが、このなかで中型輸送ヘリコプターを代替するために必然として後継機に選定されているMV-22が配備されるということ。

Iimg_1166 実のところ事故発生率は数字の上では高くないのですが、事故率が高い、と一般に言われているV-22ですが、これは試作作業中に事故が発生したためであり、制式化が成ったのは問題点を全て是正できたため。この評判は運用と共に解決することでしょう。事故率は例えばジェット旅客機にも当てはまる事です。世界初のジェット旅客機デハビラントDH-106コメットは高高度飛行による乱気流回避の安全性や定時発着能力で航空移動の普及に大きな一歩を刻みましたが初飛行二年後に次々と三機が空中爆発する連続事故に見舞われました。当時は原因不明で、危険な航空機と広く認識され、一時は検証により初めて金属疲労による変形という問題が発見、是正されたことによりジェット旅客機は現在、国際空輸の完全な主力となっています。ジェット機は危険という意識は払拭され、皆さんの中でも空港にダグラスDC-6とボーイング737が並んでいた場合、体験飛行以外では後者を選ぶのではないでしょうか。

Iimg_4712 MV-22ですが準同型機CV-22についてはエンジン出力が不十分ではないのかという指摘が米空軍OBにより為されているのですけれども、少なくとも垂直離陸が出来る時点で出力重量比は1.0を超えています。元々推力不足で1.0であれば、滑走路を使い揚力を稼がねば離陸できないはずで、高山部着陸など特殊な事情が含まれないのか、本当なのか情報を待ちたいところ。CH-46の米国での生産が終了したのちにも、日本では川崎重工がライセンス生産を続けていたため、スウェーデン軍やサウジアラビア国境警備隊用に輸出が続けられています。仮にCH-46を川崎重工に日本政府が要請し生産を再開させ、日本が取得し米軍へ貸与する方式で、とすれば生産ライン再生に百数十億円と一機当たり数十億円を要することになるのですが、予算に糸目をつけないならば安全性が確認されるまでの間、日本が応急機を供給という手段、民主党が政権交代した当時に既にMV-22の沖縄配備は決定していたのですし、採ろうと思えばとれたのかもしれません。

Vimg_7999 繰り返しますが、MV-22の事故発生率は高くはありません。今年二機が事故で失われている点が強調されるのですが、これを言いますと海上自衛隊のSH-60も一機が強風で横転、もう一機が低空飛行中に練習艦へ衝突する事故が発生しています。確かに試作作業中には事故が発生しました。実のところ90年代後半には、CH-46退役時期に間に合うかという議論があったことも事実で、海上自衛隊がMCH-101として採用したAW-101やS-92といった30~35名輸送用ヘリコプターを中継ぎに採用する模索も行われてはいたのですが、問題が解消されたことから海兵隊に採用されたわけです。

Img_6245 一部には軍用なので許容できる安全性、言い換えれば一定の危険性を無視して採用しているのだろう、という憶測に基づく反対もありますが、絶対落ちない航空機は計画で終わった飛行実績のない機体だけです。機体要因の事故皆無として自衛隊でその信頼性に根強い支持のあるUH-1は戦闘喪失含め千機以上が落ちていますし、あの四発機であるボーイング747でも日航機御巣鷹山事故を含め少なくない数が落ちていますし、世界一のベストセラーと呼ばれるボーイング737も同級機種では一番落ちています、一番飛んでいるのですから。名古屋空港中華航空機事故で有名なエアバスA-320も傑作機に数えられますが、就航三か月後にデモフライト機が航空ショーで乗客を乗せ墜落しています。

Iimg_1367 それにしても不思議なのは反対の理由です。もともとMV-22反対の主流は事故率ではなく騒音の大きさでした。CH-46の四倍ものエンジン出力があるので騒音も大きいだろうと反対されていたのですが、航空自衛隊のT-3練習機とT-7練習機の新旧騒音比較、P-3C哨戒機とジェット機となったP-1哨戒機の騒音比較では新型の方が静かですし、もう少しわかりやすく事例を出せば新旧四半世紀の自動車で比較するとわかりやすいのですが馬力あたりの騒音は段違いです。もともと航空機のエンジン音は対空戦闘部隊へ発見される大きな要素となりますのでエンジン音を低減する技術は音響ステルスとして重視されているのです。実測値がデジベル変換でCH-46よりもかなり小さく抑えられ、数分の一とも言われます。最近は、航続距離が多きので沖縄から周辺国への脅威となる、という論調が出始めていまして、欠陥機と批判する一方で高性能機として周辺国への脅威というのは矛盾した論理ですが、反対する理由を探しているようにも。

Iimg_9780 さて、この機体ですが、自衛隊に配備される可能性を考えてみましょう。取得費用はかなり大きいのですが、自衛隊として装備されていれば心強い機体なのです。南西諸島防衛に必要、という視点以外にも那覇駐屯地の第15旅団へ配備された場合、重要な役割を担うこととなります。写真は那覇航空祭の陸上自衛隊UH-60JAですが、第15旅団にはこのほかCH-47JAが配備され、共に取得費用35~50億円の高価な高性能機、速度と航続距離はヘリコプターとして最優秀の部類に入ります。第15旅団にこの機体が装備されているのは、南西諸島における急患輸送を行っているためです。島嶼部は救急車で那覇の拠点病院に重篤患者を運ぶことが出来ません。このため災害派遣として陸上自衛隊のヘリコプターが出動しているのですが、2010年までに急患輸送実績7758回、搬送人員8113名を数えています。

Vimg_8422 MV-22は海兵隊納入価格が6000万ドル、陸上自衛隊が導入すれば確実に一機100億円を超え、海上自衛隊のUS-2救難飛行艇に匹敵するところ。初度調達部品や整備教育費で数百億円は必要になるでしょうが、速度と航続距離が大きくともCH-47の半分以下の人員しか運べず調達費は二倍以上、必要ですが手が届かないところ。救難機としてだけをみれば、洋上遭難ではUS-2のように着水できませんのでホバーリング時間による行動半径低下を考えた場合救難機にはUS-2には及びませんが、陸上自衛隊の患者搬送、いつか装備としてほしいところ。

Vimg_8539 仮に、ですがV-22は開発当時にレーダーを搭載し軽空母用早期警戒機とする案が出され、ボーイングによれば空対艦ミサイルを搭載する艦載攻撃機案も出されています。米軍はそうした場合にはAV-8なりF/A-18なりを展開させればよく、海外需要を当て込んでのことでしょうが、あのF-35と並ぶ高価な機体、採用の道筋は立てられていません。しかし、海上自衛隊が、特に対潜戦闘を重要視する中で、外洋作戦における広域哨戒用にSV-22として哨戒機型を装備する可能性は、ない。・・・、と言い切りたいところですが好景気で防衛費に余裕があれば検討位されることはあるかもしれません。いや、同じ取得費用ならばF-35Bを優先度の上とするでしょうか。やはり陸上自衛隊か、もしかしたらば、LR-2の後継機に費用を上回る必要性を認識された場合には陸上自衛隊へ配備という道は出てくるかもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海上自衛隊地方隊への一考察⑧ 統合部隊指揮を担う地方隊の旗艦という必要性

2012-07-23 22:05:15 | 防衛・安全保障
◆完結編:有事における指揮機能維持
 今回が“海上自衛隊地方隊への一考察”の完結となります。さて、地方隊の基地機能維持の重要性は前回掲載しましたが、一時的に喪失した場合には整備すればいいのですが、指揮通信能力は一時的であれ停滞は許されません。
Timg_0236 有事における海上自衛隊の運用、これは東日本大震災が統合任務部隊という形で理解を容易とすることが出来ました。特に自衛隊は備えており、対応するべく機能させた、という意味も含めてです。東日本大震災において、被害は横須賀地方隊管区に集中、陸上の被害は東北方面隊管区に集中していました。このため陸海空災害派遣部隊の統合任務部隊司令部が東北方面総監部の仙台駐屯地に設置され、海上部隊に関しては運用特性の相違から横須賀地方総監部の横須賀基地に設置されました。
Timg_8085 海上保安庁は1995年の阪神大震災において海上保安本部が被災し救難任務における指揮を失った反省から新しく巡視船いず型を建造、災害対応型巡視船として整備しました。この巡視船いず、ですが、実は非常に震災対応と縁がある船名です。海上保安庁が9月1日防災の日へ本格的な巡視船の参加を行ったのは1973年ですが、当時の訓練において横浜第三管区海上保安本部が被災し機能停止したという想定の下、警備救難部長をS-58ヘリコプターにより当時の大型巡視船いず、に展開させ、指揮機能を継承するという訓練が行われました。同じころ、横須賀では新造護衛艦はるな、がヘリコプター発着訓練を開始したばかりのころの話です。洋上に指揮機能を移す、この発想は検討されるべきという一つの視点ではないでしょうか。
Timg_7415 南西諸島有事となれば西部方面総監部に統合任務部隊司令部が設置され、西部方面隊隷下の部隊を即応部隊として対応させ、そのうえで全国からの派遣部隊を引き受けることとなるのでしょう。佐世保地方隊と部隊輸送に対応する自衛艦隊隷下部隊、それに防空作戦に係る南西方面航空混成団と西部航空方面隊もその指揮下に入りますが、自衛艦隊とその隷下部隊は統合任務部隊海上任務部隊として統合任務部隊と密接に連携を取りつつ、佐世保地方総監の指揮下において運用されることとなります。
Timg_9032 しかし、ここで不安なのは、地方隊の指揮機能が弾道ミサイル攻撃により喪失することはないのか、佐世保基地の通信機能などが喪失する可能性は無いのか、ということです。もちろん、迅速に復旧するでしょうし、指揮機能は地下に置かれるということも脆弱性払拭には寄与するのでしょうが、通信施設は陸上に露出することとなり、この部分の脆弱性はどうしても残ってしまいます。 さすがに地方総監部がそのまま戦車部隊に占領される、ということは考えにくいのですけれども、攻撃には曝されることは間違いありません。なぜならば主力部隊の殲滅という決戦の概念に加え、今日では指揮系統の根幹を破壊することが、末端の第一線部隊の行動に大きな制約を加えることが出来る、この現代戦御新しい鉄則がるためです。
Timg_2566 航空自衛隊の南西方面航空混成団司令部は那覇基地の地下に立地しています。司令部施設に盛り土を行う、一つの山としてしまったもので、移動通信隊と共に航空攻撃を受けた場合にも指揮機能を維持することが可能です。移動通信隊は熊谷基地祭などで一般に展示されるようで、来年こそ足を運びたいところですが、航空自衛隊は移動通信隊や移動警戒装置に加え空中警戒管制機を保有し、基地機能が喪失するという念頭に置いて復旧と移動を重視しているのですが、海上自衛隊の場合は、移動通信隊に当たる装備などは大丈夫なのでしょうか。
Timg_4904 この点で直轄艦が配備されていれば、特に洋上に出てしまうならばゲリラコマンドーは接近できません。小型潜水艦ですが接近すれば脅威ですが接近は難しいです。直轄艦を旗艦として運用するのであれば、これが攻撃された場合にはどう対応するのか、という問題は残りますが、しかし洋上で行動する期間は陸上の動かない基地と比べ防護は難しいところです。もちろん、陸上基地であってもMD能力のあるイージス艦を常時護衛艦隊から派遣させ、防空に当たるのならば弾道ミサイル攻撃に際しても一定の対応が可能ですが、そんな余裕はありません。
Timg_9318 東日本大震災においては、自然災害は悪意はありません。即ち、災害が発生した場所に人々の営みがあったことに起因する被害ですので、災害は意図的に自衛隊の指揮系統を混乱させる目的はありませんでした。つまり津波が意図的に東北方面総監部の置かれた仙台駐屯地や横須賀地方総監部の置かれた横須賀基地を狙うことはありませんでした。しかし、直接武力侵攻は我が方の無力化を手段とする悪意の発動です、指揮系統の喪失を目的とした攻撃が行われるのですから、直接狙われる、ということになるのです。
Img_3393 指揮系統を維持する選択肢は二つあります。一つは基地機能を安全な地下や丘陵地帯を刳り貫いた地下設備に設置し航空攻撃への防護能力を高めると共に、海上幕僚監部直轄部隊として厚木基地に移動通信隊を配置し、有事に際しては機動運用を行うというものです。既に海上自衛隊には中央システム通信隊があり、その隷下に大湊システム通信隊、横須賀システム通信隊、舞鶴システム通信隊、呉システム通信隊、佐世保システム通信隊があります。ここに野外機能を行う移動通信隊を新設して地下司令部からの通信を維持するという方式が考えられるでしょう。
Timg_8708 もう一つは直轄艦です。これはヘリコプター搭載護衛艦のような通信能力に余裕のある大型艦を配置し、有事に際しては基地機能の維持を全力を以てあたるほか、横須賀地方隊に統合任務部隊が置かれる場合は相模湾に、佐世保地方隊に統合任務部隊が置かれる場合には天草灘に、舞鶴地方隊の場合は若狭湾に、呉地方隊では瀬戸内海島嶼部に、大湊地方隊は陸奥湾に展開し、指揮を執る、これならばコマンドーは接近できませんし、航空攻撃に際しては個艦防空能力を発揮できます。弾道ミサイルは電話帳に住所が記載されている基地と異なり移動する艦船ですので、飽和攻撃でも行わない限り、まず位置がつかめません。
Img_5953 この方式ですが、大規模災害の直撃に対しても有効です。首都直下地震に際して、横須賀基地の横須賀地方総監部は沿岸部、海の真横に庁舎がありますので被災する可能性があり、他方艦艇であれば海面上昇はゆっくり、地形障害により破壊力のある津波は到達できません。もっとも、米海軍が使用する横須賀鎮守府庁舎は高台にあり、こちらを返還してくれれば大丈夫なのですが。佐世保基地も、湾の奥深くにあり、津波の速度は大きくそがれているので破壊力は無いでしょうが、やはり臨海部にはあるわけで、海面が上昇し浸水の危険は免れません。
Img_8490 呉地方総監部は高台にあり、津波に対しては安全性が確保されているのですが安芸地震において鎮守府庁舎が崩壊した過去があり、安全とは言い切れないのです。舞鶴地方総監部は高台の安全な建物ですが、しかし、若狭湾沿岸の原子力発電所集中地域があり、万一の際には舞鶴基地の基地機能が放射能により維持に支障が出る可能性を忘れてはならず、原子力事案に際して基地機能の維持が困難となった場合には一時的に旗艦に指揮機能を移動させ、山陰沖か能登沖に移動し、住民救出支援を継続する必要があるでしょう。
Img_7715i 統合任務部隊海上部隊司令部を、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦に配置し、護衛隊群司令部と共に第一線に勇躍任務に当たる、という可能性は充分考えられるのですけれども、これでは第一線の指揮に集中できるものの統合部隊の全体を俯瞰しての指揮には十分対応できるとは限りません。自衛艦隊が統合任務部隊司令部となり、遙か外洋で任務を行う、というのでしたら、通信は横須賀からでも実施できるのですけれども、ね。この点を考えた場合、地下司令部と移動通信隊か、旗艦か、ということになるところ。
Timg_6279 那覇基地の南西方面航空混成団司令部地下化工事の費用と維持費を算出し、地方隊の地方総監部機能の地下化と移動通信隊の編成に当たる場合の建設費に調達費の合計額、従来型ヘリコプター搭載護衛艦に範を採った旗艦機能を有する直轄艦の建造費と維持費とを比較し、安価な、もしくは機能的な選択肢を総合評価方式により採用するのが望ましいのですが、検討の余地はあると考えます。もちろん、他の地方隊の直轄艦は有事においては稼働艦について統合任務部隊に編入するべく抽出され、ヘリコプターの母艦として船団護衛任務にあたるなどが考えられますし、予備の護衛艦として護衛艦隊の補完に充てることが出来ます。災害時には航空中枢艦として任務に充てることも出来ますし、格納庫を用いて病院船としての機能、甲板に車両を搭載し輸送艦としての機能も発揮できます。兎に角、有事の際は指揮中枢を無力化するという方策が現代戦の典型として用いられる以上、何らかの措置は立て、指揮系統は維持しなければなりません。
Img_2183 本記事を以て特集“海上自衛隊地方隊への一考察”を完結とします。今回まで、地方隊の部隊について、独自の打撃力を持ち自衛艦隊の展開への間隙を担う前方配置として能力を補完するミサイル艇の存在や基地機能維持と基地機能警備への能力について、核汚染やゲリラコマンドー対処に加え大規模災害を交え記載し、量産艦という概念を元に自衛艦隊より充当される必要な部隊を維持する手法を模索してきました。平時には自衛艦隊支援補給と教育に加え沿岸警備を担い、有事においては統合任務部隊を担うという地方隊ですが、この特集記事とともに様々な討議や理解の場ともなりました。次回からは新しい特集記事が始まります、お楽しみに。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

航空自衛隊白山分屯基地開庁40周年記念行事 PowerShotG-12撮影速報

2012-07-22 22:44:28 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆沖縄救援隊にも参加した第4高射群第14高射隊

 白山分屯基地へ行ってきました。創設40周年、五年ぶりの白山分屯基地です。

Himg_9286 祝辞を述べる公明党の坂口代議士、三重県の自衛隊関連行事へは精力的に足を運ばれています。白山分屯基地開庁までの流れを振り返り、今日の基地と任務について触れられていました。前回の35周年行事へ足を運んだ際は飛行展示もおこなえたのですが、ここまで濃霧が凄かった。

Himg_9289 白山分屯基地は第14高射隊が展開する分屯基地、ペトリオットミサイルのミサイルサイトであるのですが、上級部隊である第4高射群司令はじめ、多くの関係者が足を運ばれていました。一般開放行事へ航空自衛隊の指揮官が並ぶ様子が見れるのは航空自衛隊では稀有と言えるかもしれません。

Himg_9300 式典は、国旗掲揚、指揮官訓示、来賓祝辞、祝電披露が行われ、こののち、観閲行進などは行われず、本部庁舎からミサイル部隊格納庫へ移動し、装備品展示を見学することに。近くには第1警戒群の笠取山分屯基地がありますが、こちらも稀に凄い濃霧に覆われますが、本日の白山も凄いことに。

Himg_9299 第14高射隊警備小隊の軽装甲機動車。ペトリオットミサイルは射程100kmの地対空ミサイルです。強力で多目標に対処できるほか、射程を15kmとした弾道弾迎撃可能なPAC-3もあり、このシステムが展開した場合は敵対航空機の運用が大きく制約されるのですが、敵コマンドー部隊の襲撃に備えるべく地上の護りも欠かしていないというもの。

Himg_9302 第6基地防空隊の装備品展示。小松基地に展開する基地防空隊で、今回は日本海側からはるか太平洋に続く伊勢湾近くまでの展開です。手前は射程2000mの20mm機関砲VADS,奥は国産で同時多目標対処が可能な射程8kmの81式短距離地対空誘導弾、基地への空爆から滑走路と施設を防護します。

Himg_9305 白山中学校ブラスバンド部の音楽演奏。白山分屯基地祭は地元との交流行事という部分を前面に出していまして、式典の最中には太鼓演奏を、そしてブラスバンド演奏、続いて白山神楽保存会の演舞も行われ、かなり広さがある格納庫を活かして次々と展示されていました。

Himg_9314 警備展示。第14高射隊警備小隊による執銃展示と警備展示が行われました。霧に包まれた山間部での警備訓練展示、なかなか雰囲気がありますが、この第14高射隊は先の北朝鮮ミサイル事案へミサイル派遣命令を受け沖縄救援隊の一員として派遣された部隊、この部隊の展示の説得力は大きい。

Himg_9340 警備小隊が用いるのは64式小銃。航空自衛隊へはまだ89式小銃は配備されていません。ただ、基地防御に展開部隊警備という近接戦闘への需要を考えた場合、航空自衛隊向きの小銃は、海上自衛隊が一部採用しているHK-416あたりが妥当、なのでは、とおもいますね。

Himg_9354 軽装甲機動車とともに不審者排除訓練、不審者は新迷彩に64式小銃という出で立ちでした。軽装甲機動車はMINIMI機関銃座に64式小銃を配置していました。前進する警備小隊への盾として軽装甲機動車は活躍していましたが、濃霧の向こうにいるので、少々確認しにくいかもしれません。

Himg_9362 建物に突入する警備小隊。陸上自衛隊の訓練展示は億診ていますが航空自衛隊の近接戦闘展示は今回が初めて見ました、百里基地へ基地警備教導隊が発足し、警備能力強化へ着手した航空自衛隊では今後こうした展示が増えてゆくのでしょう。突入し、武装した暴漢を包囲、武装解除し連行してゆきました。

Himg_9403 ペトリオットミサイル発射器展開展示が続いて行われました。牽引車にて進出し、ミサイル発射器の発電機を稼働、同時に発射装置と指揮装置とを結ぶアンテナを起立させ、牽引車を分離、射撃準備態勢を完了、動作ごとに掛け声をかけ、安全に配慮しています。自衛隊は戦闘という究極の危険に臨むからこそ、管理できる危険は最大限管理する、現役隊員の言葉です。

Himg_9408 こうして一通りの展示が完了しました。駐車場へシャトルバスにて戻ったのですが、前回当方が足を運んだ35周年祭と比べると、来場者が多く、駐車場の規模も大きくなっている印象です。ミサイル部隊の展開訓練場と思わしき場所が駐車場に開放されており、こちらも興味深かったところです。最後になりましたが隊員の皆様、現地にてご一緒いただきました皆様、ありがとうございました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする