■鎮魂:3.11東日本大震災
南海トラフ巨大地震という巨大災害を考えた場合、自治体主体で国が参画する従来の枠組延長線上の防災対策では国の形を維持できないのではないか。
3.11東日本大震災、今年もあの災害の鎮魂の日がやってまいります。鎮魂に重ね、次の被災者を減じる努力もこの日求められる、と信じます。そこで神戸臨海部の神戸港とポートアイランドに内陸の伊丹空港に国家災害戦略防災基地群を建設できないか、在日米軍の横田基地と相模原総合補給処に横浜ノースドックから成る首都圏戦略備蓄拠点のような。
巨大災害との戦争準備、今回から数回に分けてこの視点について考えてみましょう。戦争、と言いますと語弊があるかもしれませんが、主軸とする視点は在日米軍が日本本土へ実施している兵站基盤を参考に仮設住宅や移動式病院と空中搬送基盤、交通インフラ即応復旧と末端への輸送基盤構築、人命を救助する枠組みを日本に構築できないか、という視点を。
在日米軍が首都圏に配置している戦略備蓄のような災害時への備蓄を予め自衛隊、自衛隊でなくとも空中輸送能力と海上輸送能力があれば総務省でも構わないのですが、実施しておくことで、例えば南海トラフ巨大地震が想定するような西日本九州四国地方全域が大被害を受ける状況に対し、少なくとも現場が命の取捨選択を突き付けられる事だけは、と。
トリアージへの消防吏員の心理的圧迫、正直なところ辛い、とは現場の消防吏員の声でした。政令指定都市で消防車の台数を超える火災発生が同時発生し、道路が通行不能となった場合は対応しきれない、救急搬送についても救急指令回線が輻輳により通信不能となるような状況では自前では対応できない、その状況で他市町村の応援が無い状況が震災です。
人命の取捨選択には抵抗があるがやむを得ない、とはトリアージに関する救急隊員と医療従事者の嘆息と共に示される視点で、非常時だとは一言で言い表す事が出来ない葛藤もあるようでして、そもそも日本医師会が1995年の阪神大震災ではトリアージを命の取捨選択として反対していた状況が、2011年東日本大震災後に転換させた点に諦観が表れています。
危機管理とは人命の取捨選択を行う事だとの誤解に繋がる心配をしてしまったのはこの点で、実のところ、取捨選択をするのではなく、せざるを得ない状況へ追い込まれてという選択肢の単一化がトリアージへの帰結です。そして大規模災害は平時防災救命救急インフラの規格外という規模で生じるものですので、大規模な防災支援基盤があれば回避可能だ。
宮城県沿岸部の津波被災地住宅等再建制限地域に耐津波防災倉庫群を建築し、仙台空港と松島基地に仙台港を結ぶ国家戦略防災基地、上掲の神戸と共に適当な立地が無ければ、兎に角大量の荷役を担う港湾施設と国際線大型貨物機や大量貨物物資を流通管理する施設が併設されているならば、東日本大震災被災地に防災備蓄協力を受けるという選択肢もある。
普天間飛行場返還後に那覇軍港施設返還も含め那覇空港と結び沖縄へ国家防災基地を、という選択肢もあり得ます。こういうのも、自治体の備蓄は政令指定都市であっても派出できる物資は非常食に限ればトラック数台分、30万規模の都市では市の備蓄が2tトラック規模である事が東日本大震災後に指摘され、国家戦略防災基地の必要性を痛感した為です。
戦争という単語に拒否反応を持たれる方は多いでしょう。しかし、南海トラフ巨大地震を念頭として政府が2012年に発表した防災対策が充分構築されていない状況下での最大規模での発生が想定する死者数は32万名という、東京大空襲や沖縄戦、広島原爆投下を遥かに上回る死者数が想定されており、軽視したならば日本国家の現憲政秩序崩壊もあり得ます。
災害派遣に防衛力、という視点に難色を示される方は多いでしょうが、災害に備え空港や道路網を復旧させる基盤はミサイル攻撃での基地機能喪失からの復旧に寄与しますし、なにより自衛隊は憲法上専守防衛という国土戦を想定している割には国内の兵站基盤は薄く、特に戦闘部隊に対し戦闘支援部隊の有事における増強計画もありません。此処に手を打つ。
1991年の湾岸戦争においてクウェート占領のイラク軍に対する国連からの必要な措置に関する授権決議を受けた多国籍軍、その主力を担うアメリカ軍はソ連軍に備える欧州派遣第7軍団を三か月間でサウジアラビアへ展開、空軍戦力や空母部隊を含め僅か数か月間で54万名もの兵力と車両15000両を展開、これがアメリカ軍にとって限界の戦略展開任務でした。
1992年のUNTAC国連カンボジア活動において国連からPKO部隊の派遣を求められた陸上自衛隊は半年間の準備を以て人員600名と車両100両を派遣します。海上自衛隊の大型輸送艦大半を派遣し、航空自衛隊も輸送力を最大限運用し北東アジアから東南アジアへ展開、桁は相当に違いますが、あの輸送が当時の陸上自衛隊にとって限界規模の輸送でした。
2011年の東日本大震災において自衛隊は10万の人員を被災地域へ三日間で集中させています。各国識者は自衛隊の即応性に驚いた、といいますか、自衛隊と云えば出動が遅いという根拠のない定説が迅速な立ち上がりにより払拭され、且つ警戒監視活動や対領空侵犯措置任務、平時任務との二方面作戦の実施も、国籍不明機対処等により証明されています。
総務省は、しかし限られた装備での対応に限界を超えていたという。防災ヘリコプター操縦士で陸上自衛隊を定年退官された方がいますが、陸上自衛隊であればヘリコプターを集結させる地域へ燃料と整備器材を集積するものの、都道府県毎に機種が異なり防災ヘリコプターを集められた空港では過度なヘリコプターを前に燃料不足が留意事項であった、と。
消防警察も東日本大震災に際しては、被災地の宿泊施設が壊滅している状況下で策源地、要するに補給と休息拠点を内陸部、地域によっては片道二時間以上、という遠隔地に設けざるを得ず、不眠不休にも限度がある事から早朝から夕刻までの捜索に際しても時間の多くを移動に費やされたという。あの制約が無ければ、更に救えた人命があった可能性も。
相模原総合補給廠に備蓄されているものには、移動式大規模病院施設と内陸燃料分配システムに架橋施設や重工兵器材、冷蔵医療品倉庫などが挙げられます。勿論現行の国内法では即座に活用できるものではありませんが、被災地の中央に発電機を備えた大規模な医療施設群を建築できますし、内陸の飛行場施設へ港湾から航空燃料を送る事も出来ましたね。
政府の努力怠慢を指摘している訳ではありません、東日本大震災前までは本州太平洋岸の全域と四国太平洋岸と全域、北海道に津波警報が発令され、九州沖縄にも津波注意報が発令、二万近くの人命が失われ更に数万の人命が危機に曝されるという状況を想定しての防災計画を立てる事は、努力事項ではあっても具体的な防災計画とは、なり得ませんでした。
阪神大震災、1995年の巨大災害から、その教訓を受けてという形ではありますが、防災基盤の構築は整備されているといえます。ただしその上で、南海トラフ巨大地震が突き付ける最大規模での発生の場合の死者数32万という激甚災害の規格を越える非常事態に対しては、従来の防災政策では対応できない水準との表現でも不充分な程の覚悟を求められます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南海トラフ巨大地震という巨大災害を考えた場合、自治体主体で国が参画する従来の枠組延長線上の防災対策では国の形を維持できないのではないか。
3.11東日本大震災、今年もあの災害の鎮魂の日がやってまいります。鎮魂に重ね、次の被災者を減じる努力もこの日求められる、と信じます。そこで神戸臨海部の神戸港とポートアイランドに内陸の伊丹空港に国家災害戦略防災基地群を建設できないか、在日米軍の横田基地と相模原総合補給処に横浜ノースドックから成る首都圏戦略備蓄拠点のような。
巨大災害との戦争準備、今回から数回に分けてこの視点について考えてみましょう。戦争、と言いますと語弊があるかもしれませんが、主軸とする視点は在日米軍が日本本土へ実施している兵站基盤を参考に仮設住宅や移動式病院と空中搬送基盤、交通インフラ即応復旧と末端への輸送基盤構築、人命を救助する枠組みを日本に構築できないか、という視点を。
在日米軍が首都圏に配置している戦略備蓄のような災害時への備蓄を予め自衛隊、自衛隊でなくとも空中輸送能力と海上輸送能力があれば総務省でも構わないのですが、実施しておくことで、例えば南海トラフ巨大地震が想定するような西日本九州四国地方全域が大被害を受ける状況に対し、少なくとも現場が命の取捨選択を突き付けられる事だけは、と。
トリアージへの消防吏員の心理的圧迫、正直なところ辛い、とは現場の消防吏員の声でした。政令指定都市で消防車の台数を超える火災発生が同時発生し、道路が通行不能となった場合は対応しきれない、救急搬送についても救急指令回線が輻輳により通信不能となるような状況では自前では対応できない、その状況で他市町村の応援が無い状況が震災です。
人命の取捨選択には抵抗があるがやむを得ない、とはトリアージに関する救急隊員と医療従事者の嘆息と共に示される視点で、非常時だとは一言で言い表す事が出来ない葛藤もあるようでして、そもそも日本医師会が1995年の阪神大震災ではトリアージを命の取捨選択として反対していた状況が、2011年東日本大震災後に転換させた点に諦観が表れています。
危機管理とは人命の取捨選択を行う事だとの誤解に繋がる心配をしてしまったのはこの点で、実のところ、取捨選択をするのではなく、せざるを得ない状況へ追い込まれてという選択肢の単一化がトリアージへの帰結です。そして大規模災害は平時防災救命救急インフラの規格外という規模で生じるものですので、大規模な防災支援基盤があれば回避可能だ。
宮城県沿岸部の津波被災地住宅等再建制限地域に耐津波防災倉庫群を建築し、仙台空港と松島基地に仙台港を結ぶ国家戦略防災基地、上掲の神戸と共に適当な立地が無ければ、兎に角大量の荷役を担う港湾施設と国際線大型貨物機や大量貨物物資を流通管理する施設が併設されているならば、東日本大震災被災地に防災備蓄協力を受けるという選択肢もある。
普天間飛行場返還後に那覇軍港施設返還も含め那覇空港と結び沖縄へ国家防災基地を、という選択肢もあり得ます。こういうのも、自治体の備蓄は政令指定都市であっても派出できる物資は非常食に限ればトラック数台分、30万規模の都市では市の備蓄が2tトラック規模である事が東日本大震災後に指摘され、国家戦略防災基地の必要性を痛感した為です。
戦争という単語に拒否反応を持たれる方は多いでしょう。しかし、南海トラフ巨大地震を念頭として政府が2012年に発表した防災対策が充分構築されていない状況下での最大規模での発生が想定する死者数は32万名という、東京大空襲や沖縄戦、広島原爆投下を遥かに上回る死者数が想定されており、軽視したならば日本国家の現憲政秩序崩壊もあり得ます。
災害派遣に防衛力、という視点に難色を示される方は多いでしょうが、災害に備え空港や道路網を復旧させる基盤はミサイル攻撃での基地機能喪失からの復旧に寄与しますし、なにより自衛隊は憲法上専守防衛という国土戦を想定している割には国内の兵站基盤は薄く、特に戦闘部隊に対し戦闘支援部隊の有事における増強計画もありません。此処に手を打つ。
1991年の湾岸戦争においてクウェート占領のイラク軍に対する国連からの必要な措置に関する授権決議を受けた多国籍軍、その主力を担うアメリカ軍はソ連軍に備える欧州派遣第7軍団を三か月間でサウジアラビアへ展開、空軍戦力や空母部隊を含め僅か数か月間で54万名もの兵力と車両15000両を展開、これがアメリカ軍にとって限界の戦略展開任務でした。
1992年のUNTAC国連カンボジア活動において国連からPKO部隊の派遣を求められた陸上自衛隊は半年間の準備を以て人員600名と車両100両を派遣します。海上自衛隊の大型輸送艦大半を派遣し、航空自衛隊も輸送力を最大限運用し北東アジアから東南アジアへ展開、桁は相当に違いますが、あの輸送が当時の陸上自衛隊にとって限界規模の輸送でした。
2011年の東日本大震災において自衛隊は10万の人員を被災地域へ三日間で集中させています。各国識者は自衛隊の即応性に驚いた、といいますか、自衛隊と云えば出動が遅いという根拠のない定説が迅速な立ち上がりにより払拭され、且つ警戒監視活動や対領空侵犯措置任務、平時任務との二方面作戦の実施も、国籍不明機対処等により証明されています。
総務省は、しかし限られた装備での対応に限界を超えていたという。防災ヘリコプター操縦士で陸上自衛隊を定年退官された方がいますが、陸上自衛隊であればヘリコプターを集結させる地域へ燃料と整備器材を集積するものの、都道府県毎に機種が異なり防災ヘリコプターを集められた空港では過度なヘリコプターを前に燃料不足が留意事項であった、と。
消防警察も東日本大震災に際しては、被災地の宿泊施設が壊滅している状況下で策源地、要するに補給と休息拠点を内陸部、地域によっては片道二時間以上、という遠隔地に設けざるを得ず、不眠不休にも限度がある事から早朝から夕刻までの捜索に際しても時間の多くを移動に費やされたという。あの制約が無ければ、更に救えた人命があった可能性も。
相模原総合補給廠に備蓄されているものには、移動式大規模病院施設と内陸燃料分配システムに架橋施設や重工兵器材、冷蔵医療品倉庫などが挙げられます。勿論現行の国内法では即座に活用できるものではありませんが、被災地の中央に発電機を備えた大規模な医療施設群を建築できますし、内陸の飛行場施設へ港湾から航空燃料を送る事も出来ましたね。
政府の努力怠慢を指摘している訳ではありません、東日本大震災前までは本州太平洋岸の全域と四国太平洋岸と全域、北海道に津波警報が発令され、九州沖縄にも津波注意報が発令、二万近くの人命が失われ更に数万の人命が危機に曝されるという状況を想定しての防災計画を立てる事は、努力事項ではあっても具体的な防災計画とは、なり得ませんでした。
阪神大震災、1995年の巨大災害から、その教訓を受けてという形ではありますが、防災基盤の構築は整備されているといえます。ただしその上で、南海トラフ巨大地震が突き付ける最大規模での発生の場合の死者数32万という激甚災害の規格を越える非常事態に対しては、従来の防災政策では対応できない水準との表現でも不充分な程の覚悟を求められます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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