北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

舞鶴地方隊舞鶴展示訓練2011詳報⑩ SH-60機動飛行を経て進路一路舞鶴基地へ

2013-04-30 23:03:23 | 海上自衛隊 催事

◆舞鶴展示訓練ヘリコプター機動飛行

 舞鶴展示訓練特集、いよいよ最後の展示、ヘリコプター機動飛行が開始されます。

Mimg_6968_1 SH-60K哨戒ヘリコプター、舞鶴航空基地第23航空隊の所属機で、この舞鶴航空基地が完成するまでは長崎県大村航空基地からヘリコプターが展開していました。この為、ヘリコプター搭載護衛艦はるな、は1998年まで佐世保基地が母港だったわけですが、舞鶴を母港とした際、大村は遠すぎました。

Mimg_6969_1 また舞鶴第3護衛隊群へヘリコプター運用能力を輸する護衛艦が増加するにつれて、日本海での訓練に際し、舞鶴からの護衛艦と大村からのヘリコプターとの合流が運用上大きな制約を受ける事となり、念願の航空基地が建設、完成するに至ったのですが、舞鶴航空基地完成時期は丁度北朝鮮武装工作船の脅威が顕著化した時期、日本海防衛の重要航空基地として任務を果たすに至る。

Mimg_6974_1 SH-60Kは従来型のSH-60Jの改良型で、機体こそ米海軍のSH-60Bと同じシコルスキー社製S-70系統ですが、搭載器材は国産です。その最大の違いは、米海軍が空母艦載機であるHSS-2系統のSH-3を除く艦載機をLAMPSとして巡洋艦に駆逐艦やフリゲイトのセンサーの一部を航空機に搭載している、という割り切った運用を念頭に設計されていましたが、日本は独立した対潜装備として設計したところ。

Mimg_6977_1 即ち日本の哨戒ヘリコプターは吊下式ソナー、所謂ディッピングソナーを搭載しています。ヘリコプターはホバーリングできますので、潜水艦の居そうなところを磁気探知装置MADやソノブイで発見すると、そこに任意の深度までソナーを直接降ろすことが出来ます、このソナーによる捜索能力が大きい。

Mimg_6979_1 こちらはSH-60Jです。日本と違い、アメリカのSH-60Bは対艦ミサイルの誘導や通信中継等の任務の一部に対潜戦闘を行っていたので、ソノブイとMADしか水中の潜水艦を探す能力が無かったのですが、海上自衛隊のSH-60J/Kは搭載しており、その分対潜重視だった、ということですが、アメリカでもソナーの重要性は認識していてSH-60Fから吊下ソナーを搭載しています。

Mimg_7189 低空の機動飛行ですが、それにしても気合が入っています。ただ、翌日の日曜日に行われた低空飛行はさらに低く飛び、高い練度の一端を見せつけました。低空飛行は危険だ、と勝手に叫ぶ方もいらっしゃいますが、低空飛行しなければ有事の際に危険、という事を忘れてはなりません。

Mimg_6980_1 低空飛行を完了し、舞鶴航空基地へ戻る編隊。SH-60Kは対艦ミサイルを搭載してのミサイル艇対処を行いますし、SH-60Jも機銃を搭載し武装工作船対処を行います、この為低空での飛行に慣熟していなければ有事の際に撃墜されるため、こうした訓練の必要性は逆に安全のためというもの。

Mimg_7193 輸送艦のと、揚陸扉を開いての航行展示です。既に本艦は現役を引退し、舞鶴基地掃海艇桟橋で最後の時を待っているのですが、がんばろう東北、の垂れ幕通り、東日本大震災災害派遣に出動しています。本型の除籍により、小型輸送艦は全廃となり、僅かに一号型輸送艇2隻が残るのみとなりました。

Mimg_7201 輸送艦のと、背景に離島。島嶼部防衛を象徴する一枚です。満載排水量710t、本当に小型の艦ですが、どんな多数の大型トラックを揃える運送会社もライトバンを持っているように、小回りの利く輸送艦は防衛でも災害派遣でも必要です。ここまで小型ですと自衛艦隊で直轄運用するよりは各地方隊に一個輸送隊3隻装備して、即応体制をとってもいいのでは、と。

Mimg_7203 この種の輸送艦でも、日本はとにかく離島が多いですので、大型輸送艦の手が回らない地域へ、フェリーの接岸できる港湾施設以外へ、少数でも重要な部隊を輸送できます。また、個人的にミサイル艇の重要性を当方が何度も説く背景の一つに、この手の輸送艦の護衛、艦砲による支援、というものも、実は含まれていたりする。

Mimg_7180 護衛艦ちくま、その進路上にブイが見えました、どうやら定置網などの漁具の表示らしい、写真の護衛艦左側、護衛艦から見れば右舷側にブイが見えています。これに引っ掛けると、最悪スクリューに絡まります。障害物を進路上に発見、しかしそこはさすが海上自衛隊、低速ですが発見と同時に回避行動へ移りました。

Mimg_7185 回避後、望遠レンズの圧縮効果はありますが、それにしても距離は20m、というところでしょうか。展示訓練の完了後、進路は一路舞鶴基地へ戻る最中ではありますが、海上自衛隊の操艦技術の一端をこんな形で示したことに。それにしても、舞鶴湾と宮津湾の湾口に、こんな部位が浮いているとは。

Mimg_7206 美しい日本海沿岸の風景、こうした入り組んだ海岸線が直線にして1000km以上、延々と続くのが舞鶴警備隊の警備管区です。そして人口希薄な峻険地形と共に重要港湾と原子力発電所が点在する日本海沿岸、その対岸に冷戦時代は強大なソ連海軍、今日では非正規戦部隊を基幹戦力とする北朝鮮が、我が国へその軍事力を向けている。

Mimg_7215 さてさて、一路舞鶴基地へ、と言いますが、低速で湾内を進む如何というのは意外と長いものです。乗艦している一行は、風景見物と艦内見学の絶好の時間なのですが、朝一で出港してから今に至るまで立ち続け撮影準備、の方が多く、それにしてももて余すほどに時間がものすごくながいというもの。

Mimg_7210 喇叭演奏展示、舞鶴基地までの時間を、イージス艦の大きな後部甲板を利用し乗員によるちょっとした訓練展示が行われました。このほか、サイドパイプの展示も。号令に用いられる装備ですが、実は当方も佐世保基地で買いました。練習したいのだけれども、流石に市内で練習すると迷惑で、基地の近くで練習すると本物と紛らわしく、せめてここで模範を学び、山中の散歩などでこそり練習しています、クマよけという大義名分で、ね。

Mimg_7220 喇叭の訓練展示と共に後方を見ますと、潜水艦うんりゅう、がやはり同じく舞鶴基地へ向けて航行してゆくところが見えました。風景と共にこうした艦艇の動きも気になるところですが、甲板上はさすがに疲れた多くの方々が見学者用毛布に包まりのんびりと過ごしています。そして、ちょうかい、は基地へ進んでゆく。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑦ 訓練展示状況開始!

2013-04-29 23:32:43 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆航空偵察と偵察隊の情報収集開始

 福岡駐屯地祭特集も第七回を迎え、前回までに観閲行進を特集、今回から訓練展示の紹介を始めましょう。

Fimg_6176 状況開始、情報収集へ偵察隊と飛行隊の前進が始まります。情報収集は何時の時代も空から、ではありますが勢いよくジャンプする第4偵察隊斥候小隊の偵察オートバイ、偵察隊は如何なる地形も踏破するべく非常に厳しい地形を訓練地として鍛錬を積み、徒歩でなければ突破できないような地形へも迅速に進出可能です。

Fimg_6166 第4飛行隊のOH-6D観測ヘリコプター、観測とは特科火砲が榴弾砲による長距離射撃を行う際に着弾地域を観測し、その精度を高めるべく修正する空中観測点を供する装備ですが、OH-6は観測員の機動のほかにも後部座席を用いて指揮官連絡や負傷者搬送任務に就くことが出来、簡便な装備は野戦運用に最適、情報収集にも重宝される。

Fimg_6179 偵察隊の斥候オートバイ、やはり人の五感は偵察に重要で、エンジン音や排気の匂いに微かな土煙と轍等の痕跡を以て情報収集を行うことは、今日、熱線暗視装置や戦場レーダ装置などの著しい発展を遂げる今日でも一定の意義があります。もっとも、技術発展は著しいため、折衷というものは必要なのでしょうが。

Fimg_6596 OH-6Dは上空から敵の兆候把握に努めます。近年は肉眼で発見できる範囲内に敵が浸透した場合、携帯地対空ミサイルや重機関銃により容易に撃墜されるため、数が必要な観測ヘリコプターにも遠距離から監視するFLIRなどの装備が搭載される趨勢があり、この種の装備の価格高騰を招いています。アメリカはRAH-66にARH-70と立て続けに計画が頓挫、自衛隊もOH-1の調達が中断、現状で自衛隊は低空飛行能力を磨き、技術で生存性を辛うじて補っているところ。

Fimg_6200 偵察でのオートバイも警戒に走り回る迫力は凄いのですが、オートバイに搭載できる装備は音声通信用無線機程度で、僅かに画像伝送能力が研究されているものの、大型の監視装置を搭載できないため、近年では装甲車に大型の観測器材を搭載するものや、装甲戦闘車や戦車が情報伝送能力を有するに至り、偵察任務を事実上兼ねている趨勢が訪れつつあります。

Fimg_6160 仮設敵部隊、敵装甲車が偵察隊の目の前に姿を現します、軽装甲車の車上から仮設敵は軽機関銃により我が偵察隊へ攻撃を開始してきます。偵察隊の偵察任務とは、敵の有無を計る斥候に対し、実際に敵と戦火を交え、その抵抗の度合いから敵戦力の規模を図ることに或る。

Fimg_6211 偵察隊員は、素早く車両ごと地面に伏せ、射撃姿勢に移行する。緊急時には車上から流鏑馬の如く射撃を行うことも可能だが、見た目の勇ましさと反面全身を敵に曝すため、伏せて車体を盾とし、抵抗が大きい場合には機動力を活かし俊敏に撤収を図り、次の偵察任務へ繋げる、これが斥候小隊の戦い。

Fimg_6223 敵装甲車の発見という一報に接し、偵察隊長は87式偵察警戒車による威力偵察を命じました。87式偵察警戒車は25mm機関砲と微光増倍方式暗視装置を搭載し、威力偵察と情報収集にあたります。必要に応じ地上レーダ装置を砲塔に搭載して電子情報偵察も可能とのこと。

Fimg_6588 仮設敵の軽装甲車が偵察警戒車との間で戦闘が繰り広げられる、が、流石に小銃弾を用いる軽機関銃を車体上から射撃する軽装甲車では、火器管制装置により正確な射撃を加える25mm機関砲、軽装甲車や低空のヘリコプターに対して大きな威力を発揮する中口径機関砲の威力を前に非常に不利だ。

Fimg_6213 オートバイ斥候の隊員は総員、伏せて小銃により適宜反撃の射撃を加えます。ちなみに、普通のバイクでは車体を傾けると燃料があふれる場合があるそうですが、偵察隊へ配備されている車両は傾けた場合でも燃料が溢れないよう、改修されたものを装備している、とのこと。

Fimg_6218 空中機動部隊前へ。我が部隊指揮官は、軽装甲車による攻撃や、その周辺からの射撃などの情報から、その周辺に敵が陣地占領を行っていると判断、更なる情報収集と共に攪乱戦闘を行うべくレンジャー隊員の投入を決意、12.7mm重機関銃を搭載した多用途ヘリコプターUH-1の支援下で空中機動を行う。

Fimg_6539_1 UH-1J多用途ヘリコプターは富士重工においてライセンス生産していたUH-1Hを元にエンジン出力の強化などの改良措置を加え導入したもので、師団飛行隊には4機程度が装備されています。11名の空中機動が可能で、弾薬輸送や空中消火に情報伝送や映像情報収集などなど、文字通り多用途に活躍する。

Fimg_6220 UH-1Jに搭載されている12.7mm重機関銃M-2,現在米軍ではM-2の派生型で発射速度を倍増させたM-3を装備しています、航空機上は安定しないため、命中させるにはそれだけ多くの弾薬を使う必要がある実情の反映で、発射速度が高くないM-2を用いる自衛隊は、射撃精度の向上とヘリコプターの低速飛行、それだけ訓練と危険を冒さねばなりません。

Fimg_6192 軽装甲車との射撃先頭に際し、偵察警戒車が牽制している中を、斥候のオートバイは迅速に離脱を図ります。オートバイを盾にしているとはいえ、オートバイは当然ながら防弾性が無く、盾と言っても遮蔽物程度でしかありませんので、適宜離脱する機動性と判断こそが重要、というわけ。

Fimg_6228 87式偵察警戒車は、導入当時、陸上自衛隊は普通科部隊の装甲化は夢のまた夢で自動車化を進めている最中にあり、そこにこれまでジープのような車両とオートバイのみであった偵察隊へ装甲車両が導入された意味は大きかったものの、近年ではより高い情報収集器材を搭載する車両か、戦闘能力の大きな装甲車両が望まれるようになってきました。

Fimg_6157 そういうのも、戦車などと遭遇した際に、近年のしぇん瀉法の精度は大きく向上し、火器管制装置の能力向上により遠距離から照準し射撃するため、対処できないためです。偵察警戒車との戦闘に際し、仮設敵は軽装甲車を一旦後方に下げ、戦車を前進させてきました。戦車は高い防御力と火力に機動力を併せ持つもの、戦車の前進を前に、偵察警戒車の対応では限界となります。機関砲で軽装甲車に優位に立った偵察隊ですが、戦車が出てくると分が悪いのは否めません。

Fimg_6237 偵察隊は実際の戦闘を交えてその抵抗からその規模を図ることですが、今回は師団行事の模擬戦なので抵抗がありました、偵察隊は独力で撃破できるのであればそのまま制圧して前進しますが、偵察隊では対応でき無い脅威に遭遇、いよいよ師団主力を以て制圧へかかることへ。

Fimg_6233 空中機動部隊と偵察部隊の連携、こうやって見てみますと、この福岡駐屯地が高層マンションのすぐ隣にある、という事が改めてわかる一コマで、こうした情景は全国の駐屯地で意外と多いのですが、沖縄の米軍施設が住宅街に隣接している、という報道に接するたびに、いや、普通ではないか、と思ったりもしたり。

Fimg_6623 戦車との戦闘が開始された中、陣地の存在が確認されたため、離れた場所へヘリボーンにてレンジャー隊員を展開させます。いや、凄く近いところに降りているではないか、と突っ込まれそうですが、実戦ではかなり離れた場所へ展開します。ここでそれやると、会場から見えないので此処へ。

Fimg_6629 レンジャー隊員は部隊戦闘に限らず、小部隊での遊撃戦闘と徒歩を含めた長距離機動と様々な技術を有する訓練課程を経て修了した隊員で、少人数であっても高い能力を発揮できます。隊員の素質は高いとの米軍の評判もありますので、前線航空統制訓練など更に新しい訓練を実施すれば、レンジャーの能力はより大きくなるでしょう。

Fimg_6253 UH-1はレンジャー隊員の投入が完了すると迅速に離脱します。レンジャー隊員はかなりの距離を重装備と共に踏破する訓練を受けていますので、敵の防空火力圏外であってもそこから降下し進出できますが、圏外とはいえ敵の存在が正確に把握できていない以上、長居は無用です。

Fimg_6260 偵察隊の情報収集と、広報に展開したレンジャーの情報により、敵部隊の規模は機甲部隊を中心とした大規模な侵攻と陣地構築が行われていると判明、我が部隊指揮官は即座に特科連隊よりFH-70榴弾砲を展開、155mm榴弾砲により長距離射撃を行い陣地の破壊と攪乱射撃、突撃破砕射撃の準備を命じました。

Fimg_6269 特科部隊は特科大隊長の命令一下、十分な離隔距離を以て射撃体制へ移行します。福岡駐屯地訓練展示模擬戦は、偵察隊の情報収集と航空偵察、レンジャーの空中機動と共に得られた情報から、いよいよ火力戦闘へ展開します。これらについては次回掲載、お楽しみに。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

邦人救出任務への自衛隊法改正案 陸上での車両による輸送が可能に

2013-04-28 22:58:46 | 国際・政治

◆現行法では戦闘地域の空港や港湾へ自力集合

 邦人救出へ自衛隊法改正案、19日の閣議決定において作成されました。現行法では紛争地に取り残された場合、戦闘地を抜けてでも空港か港湾まで到達しなければ日本へ帰れません、しかしこれからは自衛隊が迎えに来てくれる。

Rimg_4322 邦人救出、現在の自衛隊法における邦人救出任務では、輸送に用いることが出来るのは航空機か艦船、もっとも2002年までは自衛隊機のみしか使用できなかったのですが、艦船か航空機しか救出に用いることが出来なかったのが、今回の自衛隊法改正案で、車両、車両が使えるようになります。

Gimg_86371 車両が使える、この意義はどういうところにあるのかと言いますと、艦船は港湾施設、航空機は飛行場、つまり現行法では港湾か飛行場へ集合しなければなかったのです。しかし、港湾や飛行場までの地域は戦闘地域となっている場合、戦闘地域を抜けて無事に到着できる保証はありません。

Img_5854 現行法では、港湾と飛行場は陸上であっても、陸上自衛隊の誘導隊が安全管理に当たります。具体的には小銃や軽機関銃を携行し、保護下の人員や航空機や艦船などの自衛隊装備品に対して脅威が及ぶ状況に際しては、必要な措置を採ることが出来ました。しかし、飛行場か港湾までは自力で移動しなければならなかった。

Img_2376 法改正後は、集合地点として指定された施設まで、領事館や大使館、邦人企業施設に一部ホテル等が指定されることとなるのでしょうが、空港や港湾施設から集合施設まで必要であれば自衛隊が車両、もちろん装甲車もふくめてですが迎えに来てくれる、ということ。

Img_6612 それならば、空港や港湾が戦闘地域へ囲まれる以前に、空港や港湾のターミナルへ避難すればいいではないか、ともわれるかもしれませんが、そもそも、どの空港へ輸送機が展開するのか、どの港湾へ自衛艦が入港するのかは、平時から決まっているわけではありませんから、状況が悪化する以前に避難できない場合もある、これに対応するのが邦人救出任務です。

Img_1432 特に領事館と大使館は、平時には条約に守られていますが、こうした公館から空港や港湾へ距離がある場合がある。また、公館が無い地域にも日系企業は進出しています。こうした集合地域へは、護衛艦からヘリコプターで展開する以外は車両にて救出するしかなかったわけです。

Nimg_4726 今回の法改正は、今年1月16日に発生したアルジェリアガスプラント人質事件というテロを契機として、邦人を第三国に輸送する際、現行法がガスプラント人質の生存者さえも、政府専用機の待機する飛行場まで自力移動することを求められている、現状の歪んだ法体系への一つの回答として出されたもの。

Nimg_2369 特に我が国は福島第一原発事故を契機として原子力発電という選択肢を暫定的に放棄しているため、天然資源を確保しなければ、もともと十分な天然資源と耕作地をもたない我が国はたち行かなくなるため、この為に世界の多くの地域での資源確保というリスクを冒す必要があったわけです。こうした状況下においても自己責任を強いるのは、余りに無責任です。

Img_3907 こうした意味から、戦闘状態の地域も含め紛争地位を自力で抜けて空港か港まで集合、という現行の体制が改められることとなるのですが、一方で自衛隊としては、特に陸上自衛隊は、邦人輸送、場合によっては長距離となる戦闘地域を抜けての救出輸送体制を訓練し、装備を揃えてゆかなければならなくなる、このことを忘れてはなりません。

Img_8285a 即ち、救出される側としては戦闘に巻き込まれるリスクが低くなるのですが、救出する側としては、つまり自衛隊は新しい任務が増える、という事に他ならないのですから。この点を踏まえ、新しい任務に必要な部隊訓練と装備の在り方を、今後はさらに研究してゆく必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

尖閣諸島防衛への一視点⑯ 那覇第15旅団、離島防衛の中隊戦闘団と第1混成群再編案

2013-04-27 23:30:51 | 防衛・安全保障

◆離島防衛、情報・火力面で独立した中隊が必要

 今回は3月16日に紹介した那覇駐屯地第15旅団の増強案について、もう少し考えてゆきましょう。

Rimg_1251 第15旅団は沖縄県を防衛警備管区とする旅団で、第1混成団を拡大改編、沖縄という離島の特性から上級部隊である西部方面隊より独立した地域防空部隊として高射特科連隊と改良ホークを装備、離島災害派遣を主眼として航続距離のおきな多用途ヘリコプターと輸送ヘリコプターを装備していますが、今後は冷戦時代になかった規模での脅威に対応するべく増勢を考えてゆかねばならない時代を迎えてしまいました。

Img_0878 前回は対馬警備隊に範を採った警備隊を配置する方策を提示しましたが、警備隊が駐屯していない離島への侵攻の可能性も当然考える必要があり、全ての離島に沿岸監視隊を警備隊を配置することは人員規模等の面で難しく、どうしても数個警備隊と沿岸監視隊が上限となってしまうところ。

Img_3088 特に沿岸監視隊を置いたとしても沿岸監視隊が着上陸の危険性を報告した場合に、即座に増援部隊を展開させなければ沿岸監視隊の警備能力は自隊警備に限られてしまいますし、警備隊であっても基幹戦闘部隊は中隊規模、従って即座に隷下へ増援部隊を組み込まなければなりません。

Img_4266 そして離島防衛の特殊性、特に対馬のような大きな離島一つを防衛する場合と比較し、今回の尖閣諸島を含めた南西諸島全域を防衛警備する場合、相互連携を行うには陸上機動を行うことが出来ない、という大きな問題があり、師団や旅団について、上級部隊が支援を行うことが難しい、という点が最大の特色です。

Bimg_2564 例えば、特科連隊第五大隊の全般支援部隊や情報中隊、例えば高射特科部隊の情報小隊や第二中隊の短距離誘導弾、例えば師団や旅団の飛行隊、これらは戦闘任務を展開する連隊戦闘団に直接組み込まれるのではなく、師団が重要と考える局面に対し、連隊戦闘団を支援する目的で師団長が直接運用するもの。

Img_6556 例えで最も分かりやすいのは対空戦闘、対空レーダー装置と低空レーダー装置、共に師団や旅団の防空の目となり、師団の任務管区の対空脅威を警戒する装備ですが、費用も大きいため各高射特科大隊か旅団高射特科中隊へ各一基のみしか装備されていません。南西諸島へ、このままの態勢で野戦防空体制を構築した場合、沖縄本島か先島諸島か尖閣諸島何れか一か所しか対空警戒を行えません。

Img_1405 それならば、北海道から一個旅団引き抜いて先島諸島に配置するか、宮古島分屯基地を中心に先島諸島に新しく第16旅団を編成して高射特科中隊を置けばいいではないか、と思われるかもしれませんが、元々そんなに予算があるのならば苦労は無く、解決策とはなり得ません。

Img_3793 そこで必要なのは、中隊規模の戦闘部隊で自己完結能力をある程度図る、という事です。普通科中隊は小銃小隊に対戦車小隊と迫撃砲小隊があり、87式対戦車誘導弾や81mm迫撃砲を有していますし、通信班も中隊本部に盛り込まれていて、中隊本部には携帯地対空誘導弾も装備されているほど。

Bimg_5366 こうした中隊規模の部隊に対し、近年欧州やアメリカで開発され、道東の装備が技術研究本部でも研究されているとされる小型の多機能レーダ装置、可搬性があり対迫レーダ装置の機能と近距離での対空レーダ装置の機能を併せ持つ装備品がありますが、こちらを装備、旅団の支援をある程度独力で対処できるものとします。

Dimg_5141 また、対戦車小隊へ現在全国の対戦車小隊への配備が予定されている中距離多目的誘導弾、一両の発射装置で自己完結運用が可能なこの新装備の配備を急ぎ、特に着上陸阻止に際し重要な間接照準能力を強化するべく、誘導用レーザ照射装置を充分配備することで、着上陸に際し、迅速に沿岸撃破を図る能力を付与する。

Mimg_1693 加えて旅団の中枢から場合によっては数百kmの距離を置いて中台が独自での戦闘行動を展開するにあたっての要件である情報通信能力を維持するべく、可搬式の音声衛星通信能力のみの現状では不十分であり、データ通信による共同交戦能力のネットワークに中隊を置くに十分な衛星データ通信能力を有する通信班の配置も重要となるでしょう。

Img_9840 可能であれば射程が大きな重迫撃砲の小隊を配置することが望ましいのですが、81mm迫撃砲と二個小隊編成とすることは中隊の能力と重複してしまい、迫撃砲小隊を四個班編成から六個隊編成に拡充し、二門を遠距離火力として保有するか、81mm迫撃砲を60mm迫撃砲に置き換え、小隊本部の直掩火力とするか、何れにせよ考える必要はあります。

Img_1381 中隊本部、対戦車小隊、迫撃砲小隊、高射特科小隊、通信小隊、数個小銃小隊、中隊あたりの装備はかなり大きくなってしまいますが、重量面では空中機動、CH-47J/JAで輸送が可能なものでそろえたならば第15飛行隊に加え西部方面航空隊に木更津第一ヘリコプター団の支援を受ければ迅速に展開可能です。また、おおすみ型輸送艦一隻でも全戦闘部隊を完結して収容可能ですので、複数の輸送艦が必要な現状の連隊戦闘団よりも即応性が高くなります。

Img_0534 第15旅団には隷下部隊として第51普通科連隊が配置されているのですが、上記中隊戦闘団は連隊戦闘団編成とな馴染まない部分も多いため、第1混成団の第15旅団改編と共に名称が改められた第1混成群の呼称を第51普通科連隊とは別に配置し、四個乃至五個中隊戦闘団を混成群隷下に配置、運用することが考えられるでしょう。

Img_2035 第51普通科連隊は沖縄本島の防衛を重視すると共に旅団直轄部隊を中心に従来型の連隊戦闘団を組み機動運用を行うとし、逆に即応部隊として第1混成群を中隊戦闘団毎に順番で待機態勢を採らせる、という方式で即座の増援部隊には混成群があたる、という方式が理想でしょう。

Aimg_0792 無論、離島防衛には戦闘ヘリコプターによる打撃力が最も理想な選択肢の一つではありますが、ヘリコプターには滞空時間の制約があることからその火力投射に持続性が無く、併せて地域確保能力が全くないため、瞬発的な火力投射以外に能力が発揮できません。必要性はあるのですが万能ではない、ということ。

Gimg_6354 地域確保能力というこの点で、例えば空中機動旅団と呼ばれた第12旅団は直轄の対戦車中隊を維持しています。第15旅団も離島着上陸部隊の殲滅を目指すのであれば瞬発火力の投射が重要ですので戦闘ヘリコプターの能力をいかに投入するかが重要となるのですが、離島防衛として着上陸を阻止するのであれば、こちらの地域確保能力と持続能力も無視できない重要性を持つのです。

Mimg_1407 第15旅団を増強する必要はかなり大きいのですけれども、併せて単純に第51普通科連隊に続いて第52普通科連隊を創設するのではなく、中隊ごとに独立した運用が可能な職種混成部隊として第1混成群を、群という名称が問題ならば第15混成連隊、というようなものを編成する検討もあっていいのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑳ 敵対的買収への備え

2013-04-26 23:00:07 | 国際・政治

◆投資自由化要求と中国企業となったエンストロム

 企業とは不採算部門を維持する合理的理由が無い場合、株主や従業員への責任として切り捨てなければならないことがあります。

Mimg_1892 合理的理由には、企業の社会的責任という負担があり、特に防衛産業においては利益性が求められない場合があり、こうした不採算と紙一重の採算性に依拠した現状では、一種愛国心的な社会的責任を背景に国側がお願いするという形に近い歪な構造が出来上がっていたともいえます。そして例えば、MLRSの生産を経営再建に際し切り捨てた日産自動車のように致し方ない結果に至ることもありえるでしょう。

Img_0777 他方、近年では防衛産業に対し、一種の保護政策を採らなければ買収に曝される可能性や、技術流出へ繋がる可能性をいうものを認識しなければならない時代となっているように考えます。敵対的買収、この表現は場合によっては実態よりもやや過激な印象を持たれてしまうのですが、例えば買収に関して、2006年にアメリカで問題となった事例を一つ挙げます。

Cimg_7126 2006年、東芝はアメリカの老舗総合電機メーカー、ウェスティングハウスを買収しました。ウェスティングハウスは家電のほか鉄道車両に情報通信からマスコミに発電炉や防衛産業まで、かつては手がけた巨大企業でしたが、防衛産業部門は1996年の業界再編に際し、ノースロップグラマンへ売却していました。しかし、唯一同社は発電炉事業で原子炉を設計しており、これが過去に米海軍の原子力潜水艦に搭載されているものだった、ということ。

Fimg_5713 東芝は我が国では防衛省へミサイルを納入している防衛産業です。ただ、このことが大きな問題とならなかったのは、現在のアメリカ海軍が運用する原子炉はGE社製であり、東芝はウェスティングハウスを買収した際にも、同社の原子力事業は既にイギリス企業へ売却されており、加えて東芝の技術力としてはウェスティングハウスから得られる水準以上のものを有しており、問題は無い、という形で決着を見ました。杞憂だったわけですね。

Img_5610 ただ、我が国の防衛産業は、大手企業が本業としての重工業や自動車製造に製鉄業や造船業と電機製造の主分野とともに一分野として、誤解を恐れずに書くならば片手間に実施している分野があり、防衛需要が半分以上を占める防衛産業はどちらかと言えば中小企業くらいとなっています。

Aimg_4801 防衛需要への依存度の低さ、我が国最大の防衛産業である三菱重工を例に挙げますと、総売り上げは2兆5000億円に達しますが、防衛需要は2800億円程度で、確かに重要な分野ではありますが全体の一割強であり、他の分野の方が圧倒的に大きいことが分かります。そして逆に言うならば、集約せず分散されている防衛産業の分野があるため、我が国では所謂防衛需要に大半を依存する防衛産業は例外的であり、防衛産業も行っている企業が広く分布している、ということ。

Bimg_8774 この点、一つ象徴的な事例としてあげたいのが、陸上自衛隊へ練習ヘリコプターを納入しているエンストロム社が中国企業へ買収され、アメリカ企業から中国企業となり、今年一月から中国での生産を開始しました。今後納入される維持部品や追加機などエンストロム社から供給されるものは中国製となり、恐らく、陸上自衛隊が導入する最初の中国製航空機となるでしょう。

Img_7102 アメリカのヘリコプターメーカーはボーイング、シコルスキー、ベル、MDにロビンソンやカマンと多くの企業があり、この中でエンストロムは従業員数110名の小さな企業ではありますが、それでも陸上自衛隊へ練習機ではありますが約30機のヘリコプターを納入していた企業です。

Gimg_9821 もちろん、これはアメリカでも指摘されていることと重なるのですが部品単位では、中国製など我が国との安全保障上の関係に一考の余地を有する国の製品が採用されており、主契約企業は国内企業であったとしても、部品単位では異なる国の製品があることは確かです。ですので、過度に保護主義に走る方便として利用されることへの警戒も同時に必要なのですが、一方で出してはならない技術もある。

Img_60371 過度な保護主義を回避しつつ防衛産業の基幹部分を維持するにはどうするのか、一部識者には防衛省を中心として業界再編を図り、国主導の防衛需要に特化した防衛産業を集約し、保護するべきである、との論調も聞くことはあるのですが、防衛産業の保護に関する位置づけと、これまで特集した効率を越える過度な公正への追及や、防衛装備調達の長期計画など、現状のまま形式だけ整えるのは、逆に破たんを招いてしまいます。

Img_2711 しかし、自由貿易に任せ、市場原理に全てを委ねることはできません。例えば防衛装備品を開発するうえで得られた技術は、国費を投じて研究されたものが含まれていますし、これを喪失もしくは流出した際の我が国が蒙る損害というものが決して小さくは無いからです。そして従来の知的財産権の囲い込みに関する法体系では全てを防護しきれるものでも、在りません。

Aimg_9824 他方で、現状のまま推移したとしても、昨今の自由貿易への投資面での自由化を求める外圧は強まる一方であり、防衛産業の特殊性と防衛産業の我が国の分布等を踏まえ、如何に流出しないか、漏洩しないか、維持できるのか、という視点を明確に考えてゆかねばなりません。これも防衛の一形態、と考えるべきでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十五年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.04.27・28・29)

2013-04-25 23:36:09 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 いよいよゴールデンウィーク、新型インフルエンザにミサイルに靖国神社に関する韓国中国の内政干渉が続く中、皆様如何お過ごしでしょうか。

Img_1361p エアーメモリアルかのや、鹿屋航空基地祭が28日に行われます。第1航空群のP-3C哨戒機部隊や第72航空隊の救難ヘリコプター部隊、第211教育航空隊のTH-135練習ヘリコプターなどが配備され、写真は観艦式のものですが、P-3Cの編隊機動飛行が物凄い、という評判の航空基地祭です。

Aimg_2662 ほかにも今週末は様々な行事がありますが、順番に。土曜日には八戸駐屯地にて、八戸駐屯地創設57周年記念行事が行われます。第2対戦車ヘリコプター隊に第5高射特科群や第4地対艦ミサイル連隊、第9施設大隊等が駐屯する駐屯地で、AH-1S対戦車ヘリコプターを筆頭に様々な装備が見ることが出来るというもの。

Img_9725_1 下志津駐屯地祭、千葉県四街道市にあるこの駐屯地には高射学校が置かれており陸上自衛隊の高射特科装備の全てを見ることが出来ます。下志津駐屯地祭は祭日の月曜日に予定されており、03式中距離地対空誘導弾や87式自走高射機関砲などはもちろん、保存展示装備には75mm高射砲なども展示され、こちらもみどころ。

Gimg_0456 米軍関連では土曜日に厚木航空基地にて、日米親善桜祭りが行われます。本年は米緊急緊縮財政を背景に岩国航空基地フレンドシップデイが中止、横田基地日米友好祭も中止が内定しているなか、飛行展示こそ行われませんが、厚木航空基地の一般公開は貴重な米軍基地一般公開といえるやもしれません。

Gimg_8707 普通科部隊行事では、大阪府の信太山駐屯地祭、第37普通科連隊の駐屯地ですが、こちらが日曜日に行われます。第37普通科連隊は映画のガメラⅢにて奈良県内で巨大生物と普通科部隊が交戦する、その描写で正門前のロケなどが行われ、62式機関銃の慎重な連射や、脱落防止の描写などがリアルだ、と特撮ファンの間では有名です。

Fimg_5372 月曜日には長崎県の大村駐屯地において第16普通科連隊の記念行事が行われます。大村はこのほか秋に四部隊合同記念行事が行われますが、これは別の行事となります。佐世保基地まではJR大むら線で一本の好立地ですから、護衛艦を帰路に観に行ってみるのもいいかもしれません。

Gimg_2232 和歌山駐屯地祭、和歌山駐屯地という名前ですが和歌山駅ではなく御坊駅からバスで一時間近くという、少々不便なところに或る和歌山駐屯地には第304水際障害中隊が駐屯しており、94式水際地雷敷設装置が配備されています。訓練展示や観閲行進が行われ、94式の訓練展示などはなかなか見られません。

Aimg_9773 そして南九州では高遊原分屯基地開庁記念行事、熊本空港に或る駐屯地ですが、西部方面航空隊の駐屯する駐屯地にて日曜日に駐屯地記念行事が行われるそうです。鹿屋基地と同じ日、更に熊本と鹿児島は九州新幹線で繋がっています、地元の方はどちらか迷うところでしょう、ね。

Img_7448 海上自衛隊関連では月曜日に第56回呉港祭りが行われ、市街パレードと護衛艦せんだい体験航海が行われます。体験航海は抽選制ですでに終了していますが、市街パレードなどは海上自衛隊のパレードは戦闘服ではなく通常の制服で行われるので、一見の価値があるやもしれません。

Img_1301 海上自衛隊基地週末一般公開は、佐世保基地が土曜日と日曜日と月曜日に多用途支援艦あまくさ一般公開、舞鶴基地が土曜日日曜日月曜日と桟橋一般公開を予定、呉基地が28日に訓練支援艦くろべ一般公開と29日にヘリコプター搭載護衛艦いせ一般公開、大湊基地が土曜日日曜日月曜日と一般公開で護衛艦まきなみ公開予定、それぞれ以上の通りとなっていました。公開時間などは各地方隊HPにてご確認ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米主催 バーレーン第二回国際掃海訓練、海上自衛隊より6名派遣へ

2013-04-24 22:09:56 | 防衛・安全保障

◆掃海及び潜水技術向上と多国間交流

 海上幕僚監部によれば海上自衛隊は、5月にバーレーンにて行われる第二回国際掃海訓練へ隊員を派遣するとのこと。

Kuramaimg_8552 この国際掃海訓練は米海軍が主催するもので、原油シーレーンの重要な航路であるホルムズ海峡へのイラン軍による封鎖示唆等を受けて開始されたもの。特に我が国では原子力発電が東日本大震災福島第一原発事故に伴い停止していることから、化石燃料への依存度が増大しており、シーレーンの安全確保の重要性は言うまでもありません。

Mimg_6702 派遣される人員は6名で、掃海艇や航空機の派遣は行われないようです。訓練目的は、掃海及び潜水に関する技術の向上、そして、参加各国との信頼関係の増進で、実施海域はバーレーン及びその周辺海域、海上自衛隊はここでの掃海訓練と潜水訓練に参加すると発表されています。

Aimg_4332 元々この訓練はイギリスとアメリカがバーレーン沖において定期的に実施されていたもので、2011年9月に多国間訓練として海上自衛隊が招かれ、派遣されています。海上自衛隊は1991年の湾岸戦争終戦後におけるイラク敷設機雷掃海国際任務、ガルフドーン作戦へ掃海艇を派遣しましたが、この際、日本製の掃海器具が所要の性能を発揮できなかった、ということがありました。

Img_9246 国産装備の不備、海上自衛隊は第二次大戦中に敷設された大量の機雷処理の実績があったのですが、機雷は第二次大戦後年々進歩を続けており、最新型の機雷に対して、その対処をそもそも想定していなかった国産装備が対応できなかった、こういう構図となっていた、ということ。

Gimg_6772 このため海上自衛隊は急遽フランス製の掃海器具を緊急調達すると共に国産装備の緊急刷新を図り、これにより日本が次の想定脅威に曝されるまでに、幸いにしてこうしたことは生じませんでしたが、新しい時代の機雷に対し対応できる装備を整備するに至りました。そしてその後は、最大限最新装備への情報を収集する枠組みや予算体制が構築されたことは言うまでもありません。

Img_6148_1 また多国間訓練で形成される人的な交流の意義というものも有事や平時、分野の祭を含めても非常に大きく、海上自衛隊の派遣人員規模はそこまで大きくは無い今回の国際掃海訓練ですが、重要な訓練であり、第一回に続いて第二回も派遣している、訓練への派遣です。

北大路機関:はるな 

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新田原基地航空祭2011詳報⑬ 大空を舞台に南九州のブルーインパルス飛行展示

2013-04-23 23:25:54 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆新田原航空祭のフィナーレ飾る飛行展示

 新田原基地航空祭もいよいよ最後の飛行展示へ移ります。この詳報も第13回を数える事となりましたね。

Nimg_8985_1 航空祭の最後を飾るのはブルーインパルス、松島基地第4航空団の第11飛行隊であり、航空自衛隊の看板部隊であるブルーインパルスの飛行展示です。航空祭の日程は重なることがあり、航空祭によってはブルーインパルスの飛行展示が行われないこともあるのですが、この有無で来場者数が大きく変わるといわれています。

Nimg_8995_1 新田原基地航空祭、ブルーインパルスの飛行展示は、この終了と同時に一斉に全員が帰路に就くので帰りの交通手段によっては、飛行展示観覧を断念したほうが最寄駅までの所要時間が三時間ほど異なることもあるのですが、新田原航空祭展開の当方は交通手段が折畳自転車と自動車なので快くみれることに。

Nimg_9383 ブルーインパルスの離陸、スモークを曳き四機編隊で一斉離陸です。航空祭というと人が多すぎて、という印象があるのですが、入間や岐阜などを除いて多くの場合最前列付近だけで、離着陸さえ撮影しなければ少し引いた場所の方がいい写真が撮影できます、飛行展示は大空が舞台なのですからね。

Nimg_9389 四機編隊での離陸に続いて大きく編隊で旋回し、会場上空へ進入します。ブルーインパルスが使用する航空機は川崎重工を中心に国産開発したT-4練習機、200機以上が生産され、搭乗員養成や連絡任務などに活躍、戦闘機や支援戦闘機に偵察機のパイロットはT-4で養成されています。

Nimg_9394 ブルーインパルス、引いた場所から撮影し、超望遠レンズでその飛行の様子を大きく切り取って芸術的に仕上げるのも良いのですが、当方はブルーインパルスの写真ではなく新田原基地航空祭の写真として仕上げるために地上の展示航空機や観衆がいれるよう、広角ズームレンズを使用してみました。

Nimg_9400 六機で飛行展示を行うブルーインパルス、最初に離陸した四機が編隊旋回を行い編隊を次の飛行展示種目へ組み替える最中、残る二機が離陸し独自の飛行展示を実施、間断なく機動飛行を見せつけ、飛行展示が間延びしないように、というブルーインパルス創設以来の手法が採られている。

Nimg_9403 松島基地を拠点とするブルーインパルスですが、この新田原基地航空祭2011を撮影したこの年、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地はマグニチュード9という東北地方太平洋沖地震による津波により被害を受け、第4航空団は九州新幹線開業記念祝賀飛行へ向け九州芦屋基地へ進出していたブルーインパルスを除き全機津波により使用不能となってしまったのは御存じの通り。

Nimg_9415 東日本大震災から長く松島基地が津波対策工事により運用が制限されていた中、第13飛行教育団の展開する芦屋基地を拠点として訓練を行ってきましたが、基地周辺の防波堤工事完了と、格納庫地区の嵩上げ工事や防水格納庫整備が今年完了、年度末へ松島基地へ戻ることが出来ました。

Nimg_9426 管制塔越しにT-4の編隊が見えます。望遠レンズの圧縮効果で霧島火山と一枚に収まれば、と思たのですが、なかなか。F-2の飛行展示や地上展示機の回で紹介したとおり、この航空祭の時点で霧島火山の火山活動が続いており、航空祭の最中にも幾度か水蒸気爆発の様子が見えました、火山の爆発を見たのは当方、初めて。

Nimg_9430 スモークを曳き再度会場へ進むブルーインパルス、使用している練習機はT-4練習機で、元々は中等練習機という位置づけで国産開発されたもので、開発当時は高等練習機として、やはり国産開発された三菱重工製T-2練習機が運用、実は一世代前のブルーインパルスはT-2を使っていたのですよ。

Nimg_9435 当方は辛うじてT-2練習機時代のブルーインパルスを見たことがある世代ですが、T-2は超音速練習機であるため、主翼が小さくアクロバット飛行向けの機体ではないのですけれども、超音速機の鋭く尖った機影と比べ、T-4の丸っこい、練習機然とした姿へ、ブルーインパルスが機種転換した時は残念に思ったりもしたもの。

Nimg_9442 T-4ブルーインパルスは使用機として三代目にあたります。初代は戦闘機であるF-86で、浜松基地に配備されており、創設当時の航空自衛隊は戦闘機数も防衛力も不十分という時代でしたので、戦技研究部隊、つまり戦闘機を使っての戦闘機動能力を研究する部隊が、併せてアクロバット飛行を行う、という方式を採っていました。

Nimg_9448 F-86の時代のブルーインパルス飛行展示は、東西冷戦下、兎に角ソ連といつ戦闘状態へ展開するかという際どい状況下で、MiG-19など優勢な戦闘機を相手に如何に本土防空を達成し、我が国上空へ爆撃機進入を阻止するかが真剣に考えられていた時代であり、併せて空対空ミサイルの性能が過渡期であったため、戦技がそのまま勝敗と生死に直結する時代、それはそれは過激な展示飛行が行われた、とのこと。

Nimg_9457 編隊のスモークに直射日光が影を浮かび上がらせます。航空自衛隊で最強を宿命づけられている部隊は、各部隊を巡回して教育を行う、この新田原基地飛行教導隊ですが、前述の通り、F-86時代では実戦機であったことから、教官が最高水準の飛行を展示というよりも示威していたといい、その昔は航空祭で展示する際、低空飛行が多く最前列付近でなければ見れない部分が多かった、のだとか。

Nimg_9471 航空自衛隊の精鋭、F-15とブルーインパルス、F-86時代は1981年に航空自衛隊F-86運用終了と共に幕を閉じ、超音速練習機T-2を使用することとなります。T-2はエンジンこそイギリス製アドゥーアですが、その他は国産であり、後期型は火器管制装置と機関砲を搭載、有事の際にはサイドワインダー空対空ミサイルを搭載し補助戦闘機として運用される練習機でした。

Nimg_9475 併せて、T-2は現在F-15を運用している飛行教導隊でも使用されている航空機でした。他方、ブルーインパルスはT-2練習機時代でも戦技研究部隊として教育訓練に当たりつつ、アクロバット飛行を行うという位置づけにあり、特に当時の松島基地第四航空団は二個飛行隊のT-2を装備すると共に、ソ連空軍の戦闘爆撃機行動圏外にあったため、同圏内にある千歳基地と三沢基地の補完や代替という要衝、なかなかアクロバットに専念できない事情があったのです。

Nimg_9480 ブルーインパルスの転機となったのはこのT-4練習機へ機種転換した1995年で、ブルーインパルスは飛行展示任務と訓練飛行任務との兼任から飛行展示を専任とすることになります。これは緊張の緩和と共に、広報任務は国民理解に直結する、いわば平時の実戦、という認識が全体で共有されたことも一部あるのかもしれません。

Nimg_9485 こうして今日のブルーインパルスの姿となりました。ぶすーインパルスの飛行展示ですが、写真の下には飛行教導隊塗装として用途廃止後に保存されているT-2練習機の姿があります。ちなみに飛行教導隊が新編されたのは1981年、奇しくもブルーインパルスがF-86からT-2へ機種転換したのと同じ年だったりします。

Nimg_9491 飛行教導隊とブルーインパルスのT-2時代はある程度任務が似ていますので、もしかしたらば飛行教導隊とブルーインパルスが同じ基地に、となっていた可能性もあるのでしょうかね。そしてT-4練習機ですが、実は2000年代まで、ブルーインパルスをF-2へ機種転換させよう、という計画はあり予算案へ盛り込まれたこともあるとのこと。

Nimg_9496 松島基地第四航空団が第21飛行隊をF-2Bに機種転換しているのですから、ブルーインパルスへF-2A/Bの機種転換を行うことは整備補給上の意味もあり、有事の際には予備戦力として期待でき、併せて日米共同開発の実戦機を曲技飛行に供することの広報効果はそれなりに高いのだと思うのですが、維持費と運用費用も大きく、T-2時代のようにある程度任務と兼任させる方式を採ったとして、事業評価がどう考えられるのか、個人的には賛成なのですが、現実味としてはなんともいえない。

Nimg_9499 と、まあ、飛行展示の写真を掲載してきましたが、ブルーインパルスの飛行展示はまだまだ続きます。一回の掲載でブルーインパルスの写真を全て紹介したかったのですが、機動飛行と編隊飛行を緻密に計画し打ち合わせた妙義の実演、厳選しても写真は意外と枚数が多く、残りは次回に紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな 

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対領空侵犯措置増加、567回 防衛省が緊急発進平成24年度回数統計を発表

2013-04-22 23:09:38 | 防衛・安全保障

◆南西混が最大負担、中国機接近が過去最大へ

 防衛省は平成24年度の緊急発進の統計を発表しましたが、これはソ連崩壊後としては最大の緊急発進の実施を明示していました。

Img_7858 航空自衛隊では、我が国領空へ接近する飛行計画の無い国籍不明機に対し、防空識別圏内への侵入と同時に緊急発進を行い、対領空侵犯措置任務を実施しています。多くの場合、領空に接近する過程で警告を受け引き換えし、軍事的示威とともに我が国防空体制の偵察などを併せて実施、実戦には至らない範囲内での緊張関係が展開されているところ。

Img_8717 緊急発進は567回、航空自衛隊創設以来、緊急発進の回数が500回を超えたのはMiG-25函館亡命事件の発生した1976年以来で、1984年の944回をピークとして1991年の604回を最後に500回を超えることは無く、1998年から2004年までは緊急発進回数が200回を下回っていたものの、近年急増し22年ぶりに500回を超えています。

Img_7422 我が国への接近は元来、ソ連空軍、ソ連崩壊後はロシア空軍の接近が最たるものとなっていましたが、昨年度はロシア空軍機の接近は前年の247回とほぼ同じ248回、対して中国機の接近は前年の156回よりほぼ倍増して306回、2008年の中国機接近は31回でしたので5年間で十倍へ増加したこととなり、異常事態と言わざるを得ません。

Bimg_3001 また領空侵犯事案も二回、ロシア機により北海道北方空域へ一回と中国機により沖縄南西空域で一回の領空侵犯事案があり、航空自衛隊創設以来領空侵犯事案は36回目を数えるに至っています。緊急発進件数の増大と領空侵犯事案の複数発生は、我が国領空への脅威が冷戦時代最盛期の水準へ戻りつつあるといっても過言ではないでしょう。

Img_9000 防空管区は航空自衛隊では三沢の北部航空方面隊隷下の四個飛行隊、入間の中部航空方面隊隷下の四個飛行隊、春日の西部航空方面隊隷下の三個飛行隊、那覇の南西方面航空混成団隷下の一個飛行隊と分けて任務に当たっていますが対領空侵犯措置任務にあって、最も負担が大きいのは南西方面航空混成団です。

Gimg_2634 南西方面航空混成団の緊急発進回数は318回と半分以上をになており、北部の139回、中部の65回、西部の45回と比べても飛びぬけて大きいのが実情です。無論、那覇基地の一個飛行隊のみで対応出来るわけではなく、全国の航空団より増援の戦闘機が展開し、ようやく緊急発進任務の増大へ対応している、とのこと。

Img_2485 那覇基地の負担増は特にここ数年で顕著化しており、政府は防衛計画の大綱改訂に際し、本土より一個飛行隊を那覇へ増強に充てる計画を明示し、将来的に那覇の第83航空隊は第9航空団へと増勢される計画なのですが、航空団改編で対応できる水準を越えつつあるのかもしれません。

Img_0335 併せて過度な那覇基地の緊急発進集中は、那覇基地の整備補給能力が充分だルノ化、という視点や、本土の補給処からの戦闘機運用に必要な機材などの空輸態勢が現状のままで対応しきれるのかを改めて考えさせるものであり、併せて政治が決定すべき分野の問題も含んでいます。

Img_6803_1p 空輸態勢もさることながら、場合によっては基地機能の充実や在日米軍施設への増援部隊の展開、空中給油輸送機の運用体制やその増勢を含め考えるべき命題となりますし、これは現在の防衛計画の大綱が想定している防衛力の上限を超えている脅威ではないか、という疑問符とも重なってしまうところ。

Gimg_3630 他方で日本周辺への国籍不明機の接近は、中国機によるものが最大の規模を占めているものの、中国機の接近はそこまで広い空域で接近しているしているものではなく、沖縄本島から奄美大島の西方空域から尖閣諸島北方海域上空を東シナ海日中排他的経済水域境界線付近へ接近しているのみ。

Img_0356 対してロシア機による領空接近は長距離を長時間にわたり飛行するものが多く、日本列島日本海沿岸を長距離飛行するものや北海道北方空域を飛行し太平洋岸を首都圏へ向け南下する航路や日本列島を周回する長距離飛行するなど、質的にはロシア機による接近がその軍事的意味の度合いを大きくしています。

Img_88_76 中国機の飛行が限定されるのは、日本列島を周回飛行可能な長距離を飛行可能な航空機が無く、沖縄南方空域への接近は台湾空軍に、より北方空域は韓国空軍に阻止されることを意味しています。脅威度は低いものの回数は顕著であり、それだけ意志の強さを反映しているということもいえるもの。

Nimg_7836 日本は冷戦時代、ソ連空軍の強大な圧力へ対応する基盤を構築したことで現状の脅威に対応しているのですが、他方で、冷戦後自衛隊の従来型脅威への対処能力は、特に戦闘機定数という面で縮小され続けています。今後もこの冷戦後の制度の踏襲を続けるだけで良いのか、考えてゆかねばなりません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (35)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久居駐屯地創設61周年記念行事(2013.04.21) PowerShotG-12撮影速報

2013-04-21 23:15:44 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆精鋭!第33普通科連隊 

 本日、三重県津市の久居駐屯地創設61周年記念行事へ行ってまいりました。その様子をG-12の写真から取り急ぎ紹介しましょう。

Himg_2381 国旗と共に連隊旗を掲げ行事へ臨む隊員。久居駐屯地は、近鉄の急行停車駅久居駅から第33普通科連隊と大書された駐屯地がすぐ隣に見える、第10師団隷下の普通科連隊で、長大な海岸線とともに紀伊山間部の峻険な地形と名古屋近郊の都市部を抱えた三重県を防衛警備管区としている普通科連隊です。

Himg_2377 第33普通科連隊は、2002年、中部方面隊で最初に軽装甲機動車を受領した普通科連隊で、イラク派遣などにも活躍しているほか、航空部隊駐屯地である明野駐屯地がほど近く、精鋭部隊で、私事ながら初めて軽装甲機動車を見た2002年の伊丹駐屯地祭でも第33普通科連隊の車両が参加していました。

Hcimg_2388 第10師団は、金沢第14普通科連隊、久居第33普通科連隊、守山第35普通科連隊、豊川第49普通科連隊、そして戦車大隊、特科連隊、高射特科大隊、施設大隊、後方支援連隊、通信大隊などを基幹部隊としています。そして普通科連隊は有事の際に戦車中隊や特科大隊などとともに連隊戦闘団を構成する、いわば師団の根幹というべきもの。

Himg_2389 第33普通科連隊長兼ねて久居駐屯地司令、古屋浩司1佐の観閲を受ける式典参加部隊、第33普通科連隊は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、対戦車中隊、重迫撃砲中隊を以て編成されており、久居駐屯地には連隊に他、支援する第10後方支援連隊第二整備大隊第二普通科直接支援中隊や久居駐屯地業務隊などが駐屯している。

Himg_2392 連隊旗を奉じる82式指揮通信車、本日はかなりの荒天が予報されていまして、事実朝の時間帯はかなりの雨量、駐屯地の式典会場も一部池のように深々と水が張り、その雨量の大きさを思い起こさせてくれましたが、開門後には雨が上がり、式典開始の時間帯では打って変わって快晴に。

Hcimg_2399 普通科隊員の観閲行進。豪雨を想定していましたので、雨具をフル装備とし、EOS-50Dと120-400mmは本日展開させず、EOS-7Dに18-200mmを装着させ主力とし、併せて広角でG-12を三脚に設置しレリーズにて薬指と小指を駆使し、EOS-7Dと同時に操作する、いつもの方式で撮影しました。雨具の出番が無かったのは本当に幸い。

Himg_2397 普通科隊員の徒歩観閲行進、背景を軽装甲機動車の車列が進んでゆくところが印象的な様子、風は強く日章旗も風に薙いでいます。当方は久居駐屯地祭、今回が三回目ですが毎回晴天に恵まれていました。ただ、聞きますと雨天となることが多いようで、今年は晴れて良かった、とのこと。

Himg_2405 三月末に入隊した自衛官候補生の観閲行進、行進も型にはまってきたところ。俯瞰する構図ですが、久居駐屯地祭ではスタンド席が一般に開放されていまして、早い時間帯に近鉄電車にて足を運びますと荒天予報があってかそこまでの混雑は無く、良い位置を確保できました。

Himg_2425 第4中隊の軽装甲機動車、14両の軽装甲機動車が粛々と会場を進んでゆきました。大型装甲車から後者展開を行うよりは小型装甲車多数を装備して分散した機動運用を行った方が火力密度を高め効率的な任務遂行が可能な装備として、開発されたもので、先ほども少し触れましたが、第33普通科連隊が中部方面隊最初の装備部隊となり、今に至ります。

Himg_2443 軽装甲機動車は、小銃のほかにMINIMI機銃か01式軽対戦車誘導弾を搭載します。火力拠点を迅速に転換でき、相手が戦車であっても地形を最大限利用することで有利に主導権を握ることが出来るのですが、装輪式で四輪駆動のため不整地突破能力に限界があり、この利点と欠点をどう動かすかが指揮官の腕の見せどころ。

Himg_2462 重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲RT,中隊に12門が装備されています。フランス製の高性能迫撃砲で制圧力と射程では従来の直掩特科火力となっていた105mm榴弾砲を越えています、持続射撃能力と命中精度では野砲には及ばないのですが、地域制圧と対砲兵戦にも対応する高性能砲で、自衛隊は500門以上というかなりの多数を配備しています。

Himg_2463 高機動車を原型とする重迫牽引車により迅速に起動する120mm重迫撃砲は、短時間の射撃による支援と反撃を回避する機動を繰り返し、普通科連隊の任務を火力支援します。ちなみに、高機動車は普通科部隊自動車化の花形として自衛隊では重宝されていますが、迫撃砲を牽引している状況では迫撃砲の備品扱いになるのだとか。

Himg_2496 対戦車中隊の79式対舟艇対戦車誘導弾、発射器12基が配備されています。射程4km、33kgと比較的大きなミサイルは戦車のみならず上陸用舟艇をも撃破可能で、元々師団対戦車隊に装備されていましたが、一部師団の普通科連隊に対戦車中隊が編制される際に集中配備されました。

Himg_2507 強力な対戦車火力ですが、このほか普通科中隊の対戦車小隊には射程2kmで簡便な87式対戦車誘導弾、小銃班には携帯式で射程1500mの01式軽対戦車誘導弾が装備されており、ミサイルは戦車砲と異なり障害物や最低射程などの制約があるものの、運用次第で重厚且つ強力な対戦車火力を構成可能だ。

Himg_2512 本部管理中隊の観閲行進、情報収集を行う情報小隊や指揮所に重火力の防護用の施設を構築する施設作業小隊や連隊と中隊の通信網を維持し電子戦をも担当する通信小隊など、連隊が独立した運用を行う上で必要な様々な支援を行う部隊です。連隊の車両による観閲行進はここまで。

Himg_2546 豊川駐屯地より展開したFH-70榴弾砲、射程と瞬間火力投射能力や持続射撃能力に瞬発交戦能力といった様々な面で高い制圧力を有する牽引砲で、欧州共同開発となった火砲ですがコストが自走榴弾砲並みに大きくなったため普及せず、他方、我が国地形と道路事情に合致し路上での戦略機動性の高さから日本で大量配備されたもの。今なおその能力は大きい。

Hcimg_2552 春日井駐屯地の第10偵察隊より参加した87式偵察警戒車、25mm機関砲と微光増倍式暗視装置を搭載し、偵察を行う車両、強行偵察を行うには少々火力が不足し、観測監視を行うには監視機材の能力が今日的にやや見劣りするのですが、こうした車両が例えば仮に火力支援用に連隊に配備されていれば心強いとおもうもの。

Himg_2562 観閲飛行の編隊は、第10飛行隊のUH-1J多用途ヘリコプター、航空学校のAH-64D戦闘ヘリコプター、UH-60JA多用途ヘリコプター、CH-47JA輸送ヘリコプターの四機編隊で行われました。観閲飛行は戦車の行進と重なるため、戦車と航空機、迫力の相乗効果はすごい。

Himg_2568 観閲行進の最後を飾るのは今津駐屯地より参加した第10戦車大隊の74式戦車、第1中隊と第2中隊の車両が参加、105mm戦車砲を突き出し、重機関銃を高らかに掲げる戦車が装軌車両独特の履帯音と高出力ディーゼルエンジンの合わさった轟音を響かせると、この装備だけがもつ、ある種の威圧感を生む。

Hcimg_2578 久居駐屯地祭は、この観閲行進に続いて喇叭演奏や格闘展示に続いて戦車と火砲の支援下で普通科部隊が展開する訓練展示模擬戦が行われました。ただ、この様子は縦横無尽に部隊が展開するためG-12では追随できず、EOS-7Dのみの撮影となりましたので、いづれ紹介できれば、と思います。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする