北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

エジプト危機 ムバラク大統領辞任求め民主化デモ、カイロ市内は麻痺状態

2011-01-31 12:33:32 | 国際・政治

◆民主化要求デモは六日目、影響は全土に波及

エジプト危機について、本日は掲載します。民主化要求に対し警察が発砲した事で混乱は悪化しており、エジプトのムバラク大統領は首相更迭など内閣改造を行いましたが、デモは続いています。

エジプト警察の発砲によりアメリカのABCによれば既に死者が100名に達している状況でムバラク大統領はカイロ市内より警察部隊の撤収を命令し、陸軍が治安出動、警察に代わって市内の治安維持にあたっています。カイロ市内は夜間外出命令が発令されておりデモを抑制する方向にあるのですが発砲命令などは出ていないため一部では夜間もデモが続いているようです。

デモ中心地はカイロのタハレール広場で、治安部隊はデモ隊の会場への輸送を行っている様子が豪州ABCにより報じられていました、映像に出ていたのはタンクトランスポータですが、会場にM-60戦車を輸送した車両の荷台に住民が載ってしまったようにもみえますね。政府退陣要求はエジプト全土へ波及しつつあるとのことで、各国は自国民の安全と同時にスエズ運河の通航が維持されるかについて大きな関心を寄せています。

ABCの報道では警察の撤収命令によりカイロ市内の刑務所から多数の脱獄者が出たため、略奪が横行しているとのことです。RTRによれば警察官五万人が市街に出たところで脱獄囚の数は数千人に達していたため、治安が突然悪化、市民が自警団を編成して拳銃や小銃を手に道路の検問を行い、通行する車両に略奪物が載せられていないかを検査、掠奪者は陸軍治安部隊に引き渡されていると報じられています。チュニジア民主化暴動のように外国人への暴行行為は今のところ報じられていません。

RTRによれば暴徒が内務省ビルへ突入を試みたのですけれども、狙撃兵により射殺され阻止されたとのことです。軍の治安出動は官庁街とデモ会場付近に対して行われているとのこと。しかし、内務省と税務当局の建物の一部が放火されたとのことです。暴徒はカイロ博物館に侵入して展示物を破壊したのちに略奪を試みたようですが、市民自警団により捕縛され幸い文化財の盗難は防がれたようです。

空軍はF-16を派遣して二機編隊によりデモ会場付近の示威飛行を実施、市街地にはM-60A3戦車やM-113装甲車を派遣して治安維持を行っているのですが、エジプト政府によるデモに対する発砲命令は現時点で出ておらず、現状では集会会場付近に戦車や装甲車が展開している状況ですが、戦車の砲塔は民衆には向けられておらず、装甲車などに対する投石などは無く、デモを見守っているというような状態が報じられています。

カイロ空港は現在麻痺状態、CNNによれば、アメリカ国務省は31日にもチャーター機を派遣してエジプト国内に取り残されたビジネスマンや観光客、出国予定の外交関係者等の輸送に充てるとのことで、BBCによればイギリス政府も同様の措置を取りつつあるとのことです。空港はマヒ状態ですが空港に集まり旅客機運行の再開を待つ出国希望者は目下のところ戦闘に巻き込まれるなどの危険は差し迫っていないようですね。

カタールの衛星テレビアルジャジーラのカイロ支局がエジプト情報省により混乱拡大を防止するという名目で閉鎖されたため、情報相に対するデモも行われているようです。

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Weblog北大路機関 ありがとう! おかげさまで“3000000”アクセス突破!

2011-01-30 22:42:54 | 北大路機関特別企画

◆300万アクセスを突破

 アクセス解析を確認しましたところ、本日既に303万アクセスに達していました。先週、Weblog北大路機関はアクセス解析開始から300万アクセスを突破していたようです。

Img_7460  本日はいつもお世話になっている方々と電気街でPC用無停電装置UPSを購入、映画館で蒼穹のファフナーを鑑賞しまして無人機と有人機の次世代における区分について少し考えさせられた後に帰宅しますと、アクセス解析が既に303万になっている事に気付きました次第。

Img_3658  ありがとうございます!、と思いますとともに自衛隊関連行事に関して、速報記事だけを掲載して詳報を掲載できていない行事がいかに多いか、と反省も致しました次第。成程聞いてみますと関心を持って待たれている方も多いのですが、四回程度に分けたとしても駐屯地祭で掲載写真はざっと100近くになるので、時間捻出が課題になってしまいますが、何れ何とかしたい。

Img_3378  多くの方に支えられているのですけれども、それに応えられるよう内容を努力しようにも限界があり、せめて毎日の更新はできる範囲内での記事となってしまいました。そんな本Weblogですが、皆々様と末長いお付き合いが出来れば幸いです。今後ともWeblog北大路機関をよろしくお願いいたします。

北大路機関

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エジプト民主化暴動と邦人救出の可能性 チュニジア動乱が北アフリカ・中東へ波及

2011-01-29 22:55:01 | 国際・政治

◆チュニジアからエジプトへ

 エジプトでの民主化要求が暴動に発展していまして、チュニジアでの政変が既に遠くエジプトへも発展したのか、と驚きは隠せません。

Img_0354  邦人救出、特に現時点では民間航空航路や空港運用基盤に影響が出るというようなことは起きていないのですけれども、チュニジア動乱の時は突然でしたからね。エジプトは民主化要求に対しても冷静に対処できたとしても、しかし他のアフリカ諸国や中東諸国への波及が心配です。

Img_0629  準備は考え始めた方が良いのでは、と。邦人救出で物々しく展開するのに抵抗があるのなら日本国内の民間航空会社に、予めチャーター機の契約を準備するというようなものでも良いですし、政府専用機と誘導隊の待機態勢、というようなものでもいいです。

Img_0778  この点で少し疑問というか、印象になった事があるのですけれど、ボーイング747クラスの機体を二機、もしくはボーイング777クラスの機体ならば三機、今日明日中にチャーターしたい、というような要求というのがあったとして成り立つのかな、と素朴な疑問。

Img_4450  いや、政府専用機の必要性に少し関連するのですが、政府チャーター機というのは国際法上、シカゴ条約では軍用機扱いになりますので国外のエアラインを簡単にチャーターするのは難しいです。平時から協定を結んでおいて、というような旗国の国内法と日本の国内法で整合性を取っておく場合は別なのですが、そういう法整備はありません。

Img_4453  日本のエアラインに相当な余裕があって、国内線の長距離旅客機を数機程度ならすぐに都合をつけてくれる、という体制があるのなら、また別の話になるのだけれども、日本航空や全日空にB-747-400やB-777ER300やA-340クラスの機体に余裕はあるのかな、と。

Img_6150  民間が出来ないからこそ国が行う、これ公共事業分野などでもさんざん聞こえた話なのですが、国内エアラインに政府が支援してでも旅客機の余裕を確保するのか、もしくは政府がこの種の大型旅客機を保有するのか、という議論、こういう議論ももう少しあっていいのではないですかね。

Img_6286  他方、邦人救出の必要性、という話を添えた後でこういう事を記載するのもなんですが、政府専用機のような民間塗装に近い航空機に比べて軍用機の塗装を維持しているKC-767や迷彩のC-130Hですと、特に武力紛争以外の場合では不都合があるのではないでしょうか。

Img_9609  まあ、受け入れ国や軍関係者は理解してくれるでしょうけれども、航空機に疎い一般市民では日本空軍が民主化運動に介入した、ととられると大変なことになります。こういうところで、軍用機である機体を投入するのは慎重でなければならないのかな、と、つまり他に手段が無くなった場合以外は、と。ここに政府専用機の意義はあるようにも。

Img_6332  さてさて、邦人救出も一口にいうのではなく、現行の自衛隊法では危険な地域に展開は出来ない事になっているのですが、それを置いても非戦闘地域という戦闘地域と非戦闘地域の境界がある地域への出動か、全く危険は無いが予防的措置による輸送任務、その区分はあっていいのかもしれません。

Img_6430  最も危険な状況では、例えば空港が閉鎖されていて航空管制が途絶し、飛行場に自衛隊輸送機を派遣して周囲に空挺団なり中即連なりを張り付けなければならない状況、または空港に邦人が集合出来ない状況で沖合の輸送艦や護衛艦からヘリコプターを飛行させなければならない状況。

Img_6469  他には、民間航空路線が機能付随に陥っているのだけれども、旅客機さえ派遣すれば空港に邦人が集合できる状態で、そのまま輸送することが出来るというかなり安全性が確立している状態、こういう風に分けて考えるべきだと思うのですよね。そうすれば携行する装備も区分が出来る。

Img_9520  もちろん、この種の任務は二者択一である必要はないのです、とか思ったり。まあ、要するに邦人救出で人数が大きくなる場合には、自衛隊だけで対応できるものでもないのですし、民間空港の滑走路が起きている間に政府専用機B-747を即日投入してその間に民間チャーター機を派遣。

Img_9552  民間チャーター機が政府専用機とともに頑張っている間に情勢が沈静化すればそれでよしとしましょう。駄目ならばC-130Hや輸送艦、護衛艦の出番ですが航続距離や進出速度の観点から遠隔地では時間が掛かりますので並行して派遣準備する。途中で鎮定したのなら、引き返しても税金の無駄だ、という人たちはいないでしょう。

Img_4582  第一に、北アフリカ情勢、中東情勢に充分な注意を払い、国内のエアラインより可能な限りの長距離機を集めるためのチャーター契約を念頭に政府は全日空や日本航空を始めとする交渉の開始、政府専用機の待機態勢への移行と輸送機の派遣準備やジブチ等への前方展開、始めても良いでしょう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報4

2011-01-28 12:58:54 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 思いのほか寒かったという那覇基地航空祭のお話を昨日知り合った方から教えてもらいましたが、如何お過ごしでしょうか。

Img_4017  自衛隊関連行事ですが、霧島噴火が気になるのですけれども、鹿児島で来週火曜日と水曜日に補給艦ましゅう、が一般公開を予定しています。新田原基地でも降灰が始まったという事で風向きによっては鹿屋航空基地も影響が考えられますね。写真は火山灰が降っている様子ではなく舞鶴の雪景色と補給艦ましゅう。

Img_4027  鹿児島での一般公開は鹿児島港谷山一区8号岸壁、2月1日火曜日と2日水曜日。従って今週末に足を運んでも入港していないので要注意です。公開時間は両日ともは0900~1100、1300~1500となっています。0900から一般公開という事は前日の月曜日には鹿児島港へ入港するのかもしれませんね。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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霧島連山新燃岳が爆発的噴火、気象庁は今回の火山活動を中規模噴火に区分

2011-01-27 22:10:28 | 防災・災害派遣

◆半世紀ぶり、日向は高千穂の火山活動

 南九州霧島連山の新燃岳において26日、爆発的噴火が観測され27日時点でも火山活動が継続中です。霧島へは当方行けませんが今回はこの話題。

Img_3984_2  半世紀ぶりの火山活動、思いのほか大きな噴火となっているようです。ただ、霧島火山というと、深部に漏斗型カルデラを有する大きな火山群であることで、大きな火山活動を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、現時点では新燃岳からの小規模噴火に続いて中規模噴火が続いている状況でして、大規模な噴火や破局的噴火へ発展する兆候はないようです。溶岩ドームが形成されていませんので崩落型火砕流の危険性は今のところありませんし、噴煙崩落型火砕流の危険性も今のところ大丈夫ですし、岩屑崩についても住民への危険性は今のところ確認されていません。

Img_0880  現時点で最も警戒するべきは、火山灰と軽石の落下とともに風評被害。風評被害以外では噴石の落下が想定される10km範囲内での警戒。火山爆発による衝撃波が伝播する事で生じる空振は四国まで観測されており近距離地域では建造物に対する限定的な被害の可能性。火山灰の降灰による農業被害、交通への支障、健康被害。この三つです。噴石については、大半はヘルメットなどで致死に至らない軽石等ですが火口周辺では注意が必要な大きさのものがありますので、火口付近への立ち入りが規制されています。

Img_9683  空振はガラスが割れるなどの被害が報告されているようで、思いのほか広範囲まで影響が、四国でも観測されたという発表もあるのですけれどもその一方で現時点では旅客機の運行などへの影響は無いようです。火山灰は最も注意でして、積もればビニールハウス等は圧壊する可能性があり、数十㌢を超えれば家屋等も危険にさらされますが校舎の危険性は現時点では大丈夫、農業被害は火山灰は軽く張りついて植物の呼吸などを阻害し枯死させる事がありますので農業へは国や自治体の補償を行う必要があります。

Img_0723  交通への支障は火山灰の特性上、電線や通信線をショートさせ、また視界を阻害しますので、既に宮崎自動車道の一部区間の閉鎖やJR九州の運行にも影響が出ているようです。健康被害は火山性微粒子を吸い込む事で生じるものがあり、気休めですが降灰地域の方はマスクやゴーグルの着用が望ましいと考えます。また、雪のように降り積もる火山灰ですけれども溶けない特性がありますので、一定以上降り積もった場合は除雪のような作業では無く回収作業が必要となります一方、現時点で火山爆発し数の発表は無く、今後の情報を見護るべきというところ。

Img_2343  噴煙は2500m以上に達していて、火山灰は広範に広がっており、小林市や都城市等50km近く距離の隔てて既に農作物への被害も出ているようです。桜島の噴火被害等鹿児島県ではこの種の災害の影響を受けやすい地域があるのですが気象庁が1986年から新燃岳の観測を開始して以来の噴火活動とのことで、現地ではかなりの混乱もあります。この点については、今後も火山活動の動向を注意深く見守ってゆく必要があるでしょう。火山灰は現在宮崎県を中心に広がっており、風向きによっては南九州や四国で注意が必要、宮崎県は口蹄疫災厄に続く鳥インフルエンザ、そして今回の火山灰による農業被害、一日も早い復興に向けた国を挙げての対応を望みます。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第2師団、上富良野演習場において平成22年度C4ISR部隊実験演習を実施

2011-01-26 17:17:28 | 先端軍事テクノロジー

◆師団等指揮システム等によりネットワーク構築

 旭川第2師団が、平成22年度C4ISR部隊実験演習を北海道上富良野演習場において実施した旨、朝雲新聞に掲載がありました。

Img_2231  1/20日付 ニュース トップ :2師団・研本 野外ネット実験演習 最新装備の有効性確認 全部隊が情報共有・・・ 陸自の野外ネットワーク構築のための部隊実験を続けている2師団(旭川)はこのほど、研究本部と連携して「22年度C4ISR部隊実験演習」を上富良野演習場などで実施した。 最新装備を導入しての「C4ISR(指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察)実験演習」は上富良野演習場で、また、シミュレーションを活用した指揮所演習は旭川駐屯地で行われた。 田中敏明師団長は演習開始にあたり、「部隊実験の目的は今後の陸自の戦い方の創造にある。各部隊・隊員は全陸自のさきがけとして主体的に取り組み、各職種・部隊・隊員の発想が今後の陸自の戦い方の具体化に寄与することを肝に銘じ、実戦的感覚を堅持して実験成果収集に万全を期せ」と訓示した。

Img_1925   同実験演習は、偵察部隊をはじめ地上配置の各種センサー、戦闘ヘリ、無人機などを最大限に活用、得られた敵情報を野外ネットを通じて全部隊に伝送し、情報を共有しながら効率的に敵を撃破する戦い方を創造しようとするもの。今演習では「FiCS(師団等指揮システム)」と連隊、特科などの各システムを連接し、広域での火力・防御戦闘などを実演、その有効性を確認した。 "空のイージス艦"の機能を持つ戦闘ヘリAH64Dアパッチが高性能レーダーなどで探知した敵地上部隊の位置情報などを、僚機のAH1Sヘリに新装備の「空空間情報共有システム」で伝送し、空対地作戦を行ったほか、AH64Dヘリが地上隊員のヘルメット装着眼鏡に敵部隊の最新情報を送り、空陸一体で戦う「個人データ共有システム」の試験などが行われた。 このほか、敵部隊の動きを遠方から探知できる新型の「地上レーダー2号」や携帯型無人機なども投入されたhttp://www.asagumo-news.com/news/201101/110120/11012011.html

Img_4399  陸上自衛隊では2000年代から第2師団、第6師団を実験部隊としてC4ISR部隊運用の実動研究を継続してきました。ネットワーク型の防衛力、記事そのものを読んでみますと、FiCSとか、第2戦車連隊には74式戦車が配備されているのですが、90式戦車がC4ISRに対応するデータリンク装備を搭載している様子が朝雲新聞に掲載されていたのですけれども、74式戦車も対応できたのかな、という点や、五年ほど前にヘリコプターデータリンク実験装置を搭載していたOH-1観測ヘリコプター初号機を見た事があるのですがAH-1Sがデータリンク装置により結ばれているという事は技術的に完成したのか、という点、AH-64Dの重要性について高さを再認識したり、いろいろ注目点はあるのですが、本日はC4ISRについて。

Img_4599 C4ISR,簡単にいえば、指揮官が必要な情報を素早くネットワーク情報から受け取れる体制と第一線部隊が持っている能力と展開している位置に応じて行わなければならない戦闘行動を瞬時に受け取れる体制を創るのが今回の目的。簡単そうに見えるのですが、第一線では敵が何処にいるのか分からないという状況、支援命令を受けたとしてもその射程内に敵がいない場合、補給を要請しても情報が混乱して中々装備が来ない、という事例が起きないような体制をデータリンクによって実現するのです。

Img_6826  東宝の特撮映画に出てくるゴジラに立ち向かうような自衛隊、理想的な陸上戦闘の動態というものを考えてみますと、例としてはあのように明確な目標に対する火力の投射による無力化でしょう。第一作目は位置情報が分からず無線にかじりついて停車していたパトカーがヤラれましたが、まああれはさておき、無力化できているかという一点も置いておいて、位置を補足すれば明確な目標に対して各種装備を射程に応じて投射してゆけばよいのです。しかし、実態は映画のエイリアン2のように、そもそも相手が何処にいるのか分からないというのが実情です。どこそこに敵がいた、それはらしいのか確認したのか、エンジン音と砂煙が見えたという抽象的な情報から、特定地域から攻撃を受けたという情報等など、細かな情報を集めてゆけば全体像、戦場はどうなっているのか分かってくるのですが、分析に時間を掛けてしまうと出た情報の位置に敵が既に移動している可能性が、情報分析が不確かだと誤射等が考えられる訳です。

Img_5344 そこでどうするか。私たちは情報に困ると一昔は書庫や図書館や書架の前で延々と情報を探していました、しかし現代ではインターネットにより公的情報や参考資料のヒントを得ることが出来ます、ネットワークによって情報を得るようになって便利になりました。軍隊でも情報共有という概念が90年代以降各国陸軍の重要なテーマとなっていました。これを可能としたのが戦術インターネット、各部隊間のデータリンクです。一昔は無線電波を出し続けて情報を集めようとすればその電波をたどり攻撃を受けてしまう、電波評定を避けるために無線封止という措置が採られていたのですが、現在の戦闘ではデータを通信して脅威情報の共有化を図る事で脅威対象の電波評定により発信位置が暴露したとしてもその位置情報に基づいての攻撃の兆候を素早く感知し、戦力を投射できる範囲内にある味方部隊の支援を最大限受けつつ対処することが結果的に戦闘を有利に展開させる事に繋がると考えられるようになりました。

Img_9000 同時にデータリンクで支援されているのならば、小隊規模で敵勢力のある地域に分散侵入した場合でも、危険な脅威はやり過ごして位置情報だけ入力すれば後方からの強力な火力支援により対処してくれることになりますし、補給面でも補給を必要な位置に必要な分だけ的確に行う事が可能に、最大の打撃力と防御力を持つ戦車は最強の偵察手段に、ヘリコプターは高い進出能力と情報伝送能力を持つ装備として飛躍することが可能になります。余りこれをやり過ぎると、無駄を削減しすぎたために補給が命取りになる一瞬のタイミングで間に合わなかったり、データリンクのオーバーロードが致命的になってしまう事もあるのですが、これまでよりも任務の対応能力が向上し所要時間が短縮されるので効率的な運用と民生被害の局限化も期待できるとともに部隊が孤立化しにくくなり隊員の損耗も低く抑えることが可能となります。

Img_9100 実はこの方式を陸軍の装備体系で最も早期に実現していたのは砲兵、陸上自衛隊で言うところの野戦特科部隊です。野戦特科部隊はFH-70榴弾砲で30km、99式自走榴弾砲で40kmの長距離射撃を行いますが、当然、30km先の目標情報など見える訳がありません。40kmというと京都から大阪まで京阪本線が確か42kmですが、砲弾の威力は楕円形に35×45m程度、誤差50m以内で撃たなければ効果が無い訳です。この為、着弾観測を行うために空中観測や前進観測を行い、他には音響測定や電波測定を行い脅威情報の捜索を実施、精度を向上させるために気象情報等の部隊間での共有を実施してきました。この方式を戦車部隊やっ兵部隊、工兵部隊等に広める、というのが誤解を恐れずに言えばC4ISRの実現の具現化方法です。砲兵よりも前に、海戦な航空戦では早く実現されていましたけれども、陸戦が最後まで実現に手間取ったのは、海や空で展開される戦いと違い、陸では隠れる場所が多く少人数運用が可能で、分析に必要な情報が桁違いに多かったため時間が掛かった、という事情。

Img_4375 この策の実現のためにデータリンク重視の戦闘に最も適している装備としてAH-64D戦闘ヘリコプターの導入を開始したのですし、新型の10式戦車にもデータリンク装置の搭載を重視していました。基幹連隊指揮システム等、目標情報を素早く共有する体制構築にも努力してきました。まだまだ、このデータリンクを全陸上自衛隊へ普及させなければなりませんし、指揮通信能力の向上は方面隊と師団という位置関係を、指揮部隊と戦闘部隊・戦闘支援部隊と変化させてゆく事も出来るかもしれません。また、災害派遣を考えれば全国に自衛隊を配置する基盤的防衛力は維持する必要がありますが、有事の際には他管区からの支援を迅速に行う動的防衛力の構築にも大きく寄与する、そういう意味で重要な演習だという事が出来る訳です。

HARUNA

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C-2輸送機初飛行から明日で一年 第一線配備へ評価続く航空自衛隊の新輸送機

2011-01-25 22:54:13 | 北大路機関特別企画

◆世界からの注目浴びる新型機

 新型機が初めて大地を空へ舞い上がる初飛行、航空機においては実用化への第一歩です。

Img_7232  2010年1月26日、C-2が初飛行を行ったあの日から明日で一年が経ちます。初飛行が遅れに遅れていたのですが、遂に初飛行したその瞬間は、開発に関係ない集った航空愛好家も新型機の初飛行という瞬間に立ち会った事で不思議な一体感を感じたものです。岐阜基地は離陸するまで、その様子は外から見えない立地にあるのですが、とにかく集まった人数は物凄く、久々に新型機がテレビニュースでも放映されるとともに、急ぎWeblog北大路機関も記事を掲載、足を運べなかった方々とも共有する熱いものがありました。

Img_7257  新型機、しかしそれ以上にC-2は特別な航空機でした。第二次大戦中、日本は世界を相手に戦争を繰り広げまして、航空機も零戦だけで10000機、多数を生産しています。その中には大型機も含まれるのですが、ここまで大型の航空機を量産するのは初めて、飛んだ瞬間は歴史の瞬間。もちろん、性能としては飛行するに十分なものがあったのは知っていますし、機体の強度試験で不具合があったとしても是正すれば飛べる事は知っていたのですが、離陸した先は市街地、慎重に慎重を期して時間が掛かっていまして、やきもきしていました。

Img_7267  新型輸送機、26㌧を搭載して6500kmが飛行でき、フェリー航続距離では10000kmを達成、最大搭載量は37㌧、大型旅客機と同じアメリカ製エンジンを搭載しており旅客機型貨物機の国際航空航路を飛行可能ということで性能としては世界が求めているものでもあった、そういう機体。輸出すれば、性能面ではやっていけそうな機体ですので、輸出したら、という声も大きくありましたほど。競争力は期待としては大きいのですしエンジンはアメリカ製で信頼もあるのですが、まあ、マーケティングやアフターサービス、各国の運用との適合性を考えれば非常に難しいのではありますが、ね。

Img_7271  航空自衛隊の新型輸送機としては、従来のC-1輸送機を置き換える航空機として開発されたのですが、C-1輸送機も国産機として開発され、航続距離は周辺国に脅威を与えないという配慮から、また沖縄返還を想定していなかったため短く収められているのですが、短距離利発着性能と運動性能はアメリカからも注目されています。C-123輸送機とC-130E輸送機の間を往く、今のC-27輸送機のような運用を想定して、かなり輸出が真剣に検討されていたようですが、武器輸出三原則や、適合性などの面から実現はしませんでしたけれども、ね。

Img_7277  世界的に見て、この種の輸送機は開発が望まれているものでした一方、同規模のエアバスA-400輸送機は開発の遅延に遅延を繰り返してようやく2009年末に遅ればせながら初飛行したものの計画遅延の影響は大きく、その間の仕様変更が開発を難航させることになっていました。C-17は高性能ですが近年は価格が早期警戒管制機並になってしまい、傑作機C-130はJ-30型以降が価格高騰、エンブラエルC-390は開発中で性能が中途半端、イリューシンIl-76は設計が古すぎ、ウクライナのAn-70まで注目を集める状況、前述の性能を持つC-2はそうしたなかで、開発が遅れても二年、まだ充分輝いている次第。あれから明日で一年、次の飛躍をこれからも期待したいです。

HARUNA

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政府専用機B-747早期退役の可能性 整備支援行う日本航空の同機種廃止影響

2011-01-24 23:20:21 | 国際・政治

◆邦人救出は?C-747ならば他の整備支援も

 航空自衛隊は現在二機の政府専用機B-747を運用しています。しかし、この二機を早期退役させる可能性が浮上しているとのことです。まだ撮った事ないの数少ない自衛隊機がB-747なのですが本日はKC-767の写真などとともに掲載。

Img_4474  晩酌中に政府専用機が大変、という話を聞き急遽記事の内容を変更しました。政府専用機を引退させたとしても現在の財政難であればチャーター機で代替できるんでは、という声もあるようなのですけれども、しかし有事の際の輸送機として邦人救出や国交のない国に対する乗り入れを考えると、チャーター機というのは可能なのでしょうか。半官半民の日本航空も経営再建で期待できなくなっているのですし、チャーター機に頼るというのならば半官半民の航空会社を設立して、邦人救出から国際平和維持活動に関する輸送まで行う体制を構築する必要があると思うのですがどうでしょうか。現在の政府専用機は、日本航空が運用における支援を行っているとのことで、燃費が悪い、とされるボーイング747、これを四月までに引退させるとの構想、それならば日本航空から支援を受けられなくなるので廃止しようという流れだそうです。747、着陸料などを考えれば燃費を含めた運用コストでは決して高い機体では無いと思えまして、つか、ヨーロッパからの帰路にエアバスA340になってたときのガッカリを考えると747で無ければとも思うのですが、日本航空が退役させるので日本政府も退役させる可能性が出ているそうです、これ去年8月に記事で掲載していますが、ね。http://blog.goo.ne.jp/harunakurama/d/20100816

Img_4456  退役させる理由は千歳基地に配備しているB-747が、日本航空の747の整備部門による整備支援を受けているのですが、日本航空が経費節減のために四月までに747を全廃する方針を出している事で、整備支援を受けられなくなる可能性があるとのこと。航空自衛隊が運用しているという事で、首相や皇族の要人輸送へ活躍しているのですが、B-747,ジャンボジェットですから邦人救出における最大限の輸送能力を有する機体としても期待されています。ううむ、全日空に業務委託するか、アメリカの民間軍事会社に整備支援を委託するなど検討するべきとはと考えます。自衛隊にB-747が導入された背景には、日本政府の貿易黒字が大きくなり過ぎて総理府が政府専用機として1992年に2機のボーイング747-400を導入したところまで遡るのですけれども、要人輸送以外に邦人救出にも活躍できるとのことで先日の邦人輸送訓練でも運用されました。とにかくこの種の大型機は日本にとって必要なのですから、維持する方策を考えるべきでしょう。XC-2の数が揃えば邦人救出はどうにかなるのでは、という声もあるのですが、現在の政府を見ていますと明らかに軍用輸送機というような形状の輸送機では派遣しにくい、違和感を感じる事もあるかもしれません。実際、政府専用機の代わりにXC-2で外遊行きますか?ととわれれば、難色を示す議員が多いでしょう。

Img_4499  チャーター機では、不可能な面で、地対空ミサイルなどの脅威のある地域への輸送が難しい、という点があります。現時点で政府専用機には、ミサイル警報装置や熱源攪乱装置等のミサイル自衛手段は付与されていないのですが、後付けでこの種の装備を取り付けた機体としては航空自衛隊のC-130H輸送機や海上自衛隊のSH-60J哨戒ヘリコプター、陸上自衛隊のCH-47JA輸送ヘリコプター等があります、政府専用機であれば、現時点ではこの種の脅威に対する対抗手段を有していないのですが必要とあらば後付けすることが出来ます。しかし、チャーター機となりますと、まずミサイル脅威のある地域に乗り入れてくれる航空会社は限られてしまうでしょうし、後付けできると行っても緊急時にすぐに取り付けられるようなものでもありません。即応性の面からも先日のチュニジア動乱の際にはチャーター機のチャーターが検討されていますが、チャーターする前に状況が終息したから何とかなったようなものの、どうにもならなかった場合ではチャーターが間に合わなかった可能性もありました。国家動員法のような、有事の際に日本国内の旅客機を政府用として運用できる法律でも制定されるのならば、まあ、納得は出来ないでもないのですが。まあ、周辺事態法改正や日韓防衛協力や物品相互供与協定打診など自民党でさえ憲法問題に遠慮して手を出さなかった事を普通にやろうとする現与党ですから、支持率維持と政権維持ならば何でもしそうな危惧もあるのですが、それは別の話。

Img_4613  チャーター機、難色を示しているのですが実際問題として過去には問題が発生しているのです。イランイラク戦争では有名なのですがイランに取り残された邦人救出に日本航空の組合が危険という事で運行を拒否し、結局、日本との友好関係に起因したトルコ航空がトルコ政府の意向で邦人救出を行ってくれました。あの日の恩は簡単に返せる事ではなく、日本はその後、トルコでの地震災害に対して海上自衛隊の救援艦隊を派遣しています。しかし、次に似たような事態があった際に、果たしてどこか日本の為に命を掛けてくれる国はあるのでしょうか、またその確証があるのでしょうか。そしてルワンダPKOにおける装甲車輸送の為のチャーター機の運行では運行会社の移行により採った経由地のロシアにおいて書類不備を理由とした足止めを受けています。チャーター機を利用するのは平時でこそ可能なのですが、限界があり、象徴的な事案でもありました。のわが国が世界の覇権を握っているのならばチャーター機の運行は意のままでしょうけれども、現時点ではそういう事は望めません。善意に頼るのではなく、日本独自でせめて自国民は救出できる体制を確保する必要はあると考えます。むしろ、いままで恩を受けた国々の国民も自国の航空機で救出するくらいの気概が無ければ、国際社会での信用は高められません。

Img_4590  例えば、もう少し小型のボーイング767を政府専用機として増勢する、そういう選択肢ならば検討の価値はあります。航空自衛隊では空中給油機のKC-767を運用しているのですが、こちらは本土防空の最小限必要な定数に届くか否かの4機しかないのですけれども、これを例えば民間の貨物型を導入する形でボーイング767の派生型を空中給油機と併せて更に5機10機と導入するのならばまた別の話ですが、とにかく輸送力は必要で、何かしらボーイング747の代替機が必要となるのではないでしょうか。また使える機体を早期退役して別の機体を防衛費から導入するよりは、という点を超えても、少し視点を変えればボーイング747は、そういう意味では維持してほしいですね。日本国のフラッグシップとしての地位を示していた大型機でもあるのですから、それこそ、三位とはいえども日本円や高度な経済力を誇った経済大国としての象徴でもあった航空機をそう簡単に廃止する、というのは、国会議事堂に広告料を採って中国万歳の垂れ幕を掲げるような、捨ててはならないものを捨ててしまうようにも思います。軍事的、その他の面ともに考えれば、ボーイング747を要人輸送機として維持する必要があるとは思うのですがどうでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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アメリカ海兵隊CH-46シーナイト輸送ヘリコプター 制式化より半世紀

2011-01-23 22:41:10 | 在日米軍

◆中々見ない機体を撮影に成功

 CH-46輸送ヘリコプター、飛行している様子を偶然見かけまして撮影に成功、実は海兵隊のCH-46は初めて観ました。

Img_4379  海兵隊のCH-46輸送ヘリコプターは1961年に海兵隊の空中機動用として制式化され、1962年より配備開始、今年でその制式化から半世紀を迎える事となります。MV-22へ置き換えが計画されているのですけれども、普天間飛行場に展開する第1海兵航空団第262飛行隊、第265飛行隊等に配備されている機体です。EP,12そんな数字が見えるのですが、これは機体番号なのかな?、第12海兵航空群は固定翼攻撃機を運用している部隊だし、海軍はそういえば補給艦から艦船に補給品を空輸するバートレップ用にCH-46を持っていました。海兵隊用、海軍用、間違ってたら申し訳ない。

Img_4381  初めて、といっても航空自衛隊のV-107を航空祭等でフィルム時代から何度も撮影しているのですが、V-107のいやCH-46のエンジン音やローター音を聞いていましたらば、感想としては陸上自衛隊のCH-47の方が随分とうるさい印象で、またタンデムローターが相互に干渉する音は軽く、陸自のシングルローターであるUH-1のほうが遠方から音が響きますし、騒音としては気になる印象、デシベルに換算すれば違うのかもしれないですけど、そう感じました。実際、音が小さかったので撮影準備が遅れてしまいました、パタパタパタ、というCH-47に比べカタカタカタ、という聞こえでした。しかし、これまで普天間関連の記事を掲載する時は最近展示されないので数年前の岩国の写真を使っていましたが、少々写真が増えたのかも、と思いました次第。

Img_4384  海兵隊のCH-46輸送ヘリコプターは主として強襲揚陸艦からの空中機動に用いられます。陸軍は機体が定員25名で決して大きくないCH-46は余り評価せずに、CH-47,定員が55名の大きいほうの機体を導入しました、その背景にはCH-47では導入当時の強襲揚陸艦に余り数を搭載することが出来なかったのです。そこで、大きさが手ごろで、しかし輸送能力があるCH-46を強襲輸送用に導入して今日に至ります。ちなみに、エンジン三基で物凄く大きいCH-53は1966年に重輸送ヘリコプターとして海兵隊へ配備が開始されています。

Img_4385  CH-46は、強襲揚陸艦に搭載されて機動運用されます。海兵隊は陸軍と比べれば比較的軽装備です、空挺師団や軽歩兵師団ほどではありませんが、機械化歩兵師団や機甲師団の編成と比べると顕著で、自走榴弾砲を持たずに牽引式榴弾砲を装備していて、大隊を中心に海兵遠征群を編成した場合でも戦車は一個小隊4両しか支援につけないのですが、その分空中機動により急速展開し、危険な状況であればそういう地域は避けて航空攻撃を行い、そののちに展開し、任務を達成するという運用を行います。それを支えるのがヘリコプターでして、海兵隊地上戦部隊とヘリコプターは一体なのですね。しかし、何故来たのか、というと、なんでも厚木基地に隣接する日飛、日本飛行機で定期整備を行っているそうで、その関係なのかもしれませんね。

Img_4386  ちなみに海兵隊は第二次大戦中のエセックス級空母を1961年に3隻強襲揚陸艦に改造していて、1961年から7隻が建造された基準排水量11000㌧のイオージマ級強襲揚陸艦を揚陸艦として装備していて、CH-46はこれ等に搭載されています。続いて、タラワ級強襲揚陸艦、ワスプ級強襲揚陸艦が建造されて、ワスプ級は揚陸艦としては40000㌧を超える怪物揚陸艦となってしまいましたが、現在計画されている新型のアメリカ級揚陸艦は45000㌧、下手な空母よりも大きく、こちらにはCH-46ではなくMV-22を搭載することになるようです。しかし、もうしばらくは海兵隊で運用される事になるでしょう、このCH-46,何故ならばCH-46の数は多く、対してMV-22は固定翼機並の速度と長大な行動半径を持つ分、価格が高いですからね。

HARUNA

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海上防衛新戦略 東京・グアム・台湾“TGTトライアングル”に関する批判的一考察

2011-01-22 19:40:03 | 国際・政治

◆もっと広い海のシーレーンを俯瞰してほしい

 海上自衛隊の新しい戦略構想として、東京・グアム・台湾を結ぶTGTトライアングルにおける警戒監視体制を強化するプランがあるそうで、一部報道でも出ていました。

Img_8104  TGT、何やら泣いている顔文字のようにみえてくるのですけれども、こういう任務に対応する防衛力の整備計画こそ防衛計画の大綱に明記するべきだと思うのですが、そもそもこうした任務の具体性を挙げた後で、その任務遂行に必要な部隊や装備定数が出てくるのですからね。海上自衛隊の警戒範囲を具体的に示した、という事になるのかもしれませんが、しかし、この範囲だけ防衛していればなんとかなるのでしょうか、大井篤氏の“海上護衛戦”等を読んでいますと、非常に不安になってきます。シーレーンはその圏外に伸びているのですからね。

Img_7548  陸上自衛隊では南西諸島における緊張が高まった際には地対艦ミサイル連隊や対戦車部隊を輸送艦やヘリコプターにより急速派遣し、緊張が武力紛争へ展開する事を予防する構想があるようですが、陸上自衛隊の場合、台湾や中越国境など海外に前方展開して中国の圧力に対応するという選択肢はあり得ませんので、納得はいきます。しかし、海上自衛隊の場合、シーレーンは台湾よりも南方海域へ伸びているのですから、トライアングルと称して第二次大戦中の絶対国防圏というような意気込みで向かうのではなく、むしろ、マラッカ海峡等を経て欧州や中東から日本へ伸びるシーレーンの防衛こそが必要な防衛力と考えるのですが。

Img_5744  冷戦時代、日本はソ連太平洋艦隊に対して宗谷・津軽・対馬の三海峡にたいして防衛警備を重視するという方策があったのですが、これはソ連太平洋艦隊が広く太平洋へ展開することによりシーレーンへの脅威が及ぶ事を阻止するという目的があった訳です。一方で現在はシーレーンへ、既に中国海軍が東シナ海、南シナ海に面した基地から脅威を及ぼせる範囲にあるわけですので、むしろ、海域を限定して防衛警備、という発想は地方隊にミサイル艇を増勢して、潜水艦に対しては水中マイクロフォンや哨戒機、沿岸用小型護衛艦の再整備等に重点を置いて、護衛艦隊は機動運用を念頭に置いた方が良いのではないでしょうか。

Img_6260  中国海軍は現在、航空母艦を建造し、中古艦の整備による現役復帰等を進めているようですが、中国の空母は長く伸びるインド洋のシーレーンに対し、インド海軍がロシアから空母を、インド海軍もかなり大型の航空母艦を建造している事にも触発されています。過去に中国がインドに攻め込んでいますので、逆を心配しているのでしょうね。他方で戦力投射能力を中国が保有すれば、それは勿論方向を替えてわが国に対しても投じる事が出来るようになる訳ですから、警戒も一応必要になってきます。しかし、相手が空母を建造している訳でこれは日本のシーレーンを非常な遠隔地において脅かせるようになる事を示していますので、ここでTGTトライアングル!、と構えるのもどうかな、と考える次第。もっとも、政治がシーレーン防衛の重要性をどの程度認識しているか、という事で、周辺事態法が示す海域よりも外での任務はまかりならない、というような国民の平和と安全を無視するような主張を続ければ、実現しない訳でして、最近を見ていますとこちらの方が心配になってくるのではありますが。

Img_3935  一方で、シーレーンの話にしますとこれは防衛だけの問題では無いのですよね、沿岸国との関係が重要になる。沿岸国との関係を良好に保つには、という事。援助や技術供与、そういうものも手段になります。開発援助に政治を絡めることは、見返りを期待しているようで違和感を感じるという声を聞いたこともあるのですが、開発援助や通商協定、技術供与を筆頭に極力日本にとって友好国を増やすという努力、一貫した対外政策の明示、これらは国益というものが不変である以上政権や政策にも左右されない内容ですので、外交や通商政策、科学技術政策とも連携して考えなければならない内容、そう政治の問題でもあるのですが、ね。

HARUNA

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