北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑫ 装備品展示と師団司令部

2013-07-31 23:26:33 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆都市部と離島を護る第4師団の装備品展示

 福岡駐屯地祭の行事がすべて終了し、当方も次の目的地佐世保へと向かうべく移動を開始しました。

Fimg_5031 そして、式典終了と共に装備品展示を眺めつつの撤収です。装備品展示は開門と同時に開始されていたのですが、何分初めて足を運ぶ行事ですので撮影位置を考えねばなりません、このためやむを得ず装備品展示は後回しという事で式典会場へ急ぎ、結果素通りした、というはなし。

Fimg_6706_1 74式戦車に描かれた第4戦車大隊の部隊マーク、三又が数字の“4”を描き、戦車部隊に相応しい徽章と数字を摂りあわせて仕上げています。74式戦車そのものは広く見ることが出来るのですが、第4戦車大隊の部隊マークとともに、というと、この管区でしかなかなか見ることが出来ない。

Fimg_6749 93式近距離地対空誘導弾と96式多目的誘導弾システム、高機動車を基本とした機動性の高い、片方は戦術防空システムで片方は戦術地対地ミサイル、特に96式多目的誘導弾システムは北部方面隊の一部師団と旅団に装備されているほかは方面隊装備であるため、壱岐対馬を防衛する第4師団ならではの装備と言えるやも。

Fimg_6717 96式多目的誘導弾と93式近距離地対空誘導弾の並びを背後から、この96式多目的誘導弾は先日旭川駐屯地祭で観ましたが、この時点では富士学校の装備位しか見たことが無く、実戦部隊の装備としては初めてだったかもしれません、真駒内にはありませんでしたし。

Fimg_5029 81式短距離地対空誘導弾C型、通称短SAM-C,ちなみにこの装備については、後継の11式短距離地対空誘導弾の装備がそろそろ始まるはずなのですが、最新装備が研究用に導入される高射教導隊へも、今年度の下志津駐屯地祭高射学校記念行事には展示が無く、まだ装備実験隊に配備されているのみ、とおもわれます。

Fimg_6730 装備品展示、小銃、プライバシー配慮で一部加工してありますが、少年が構えているのは64式小銃、国産初の自動小銃で旧軍の九九式軽機関銃のような短連射での正確な火力制圧が可能な自動小銃をめざし、国産開発されたもの。専守防衛での陣地戦では最大限の威力を発揮できるでしょう。

Fimg_6735 89式小銃との並び、89式小銃は軽量で最小限の部品点数にて故障が少なく堅牢な設計で知られるアーマライトAR-18のライセンス生産での経験をもとに豊和工業が軽量で瞬発火力に優れつつ、遠距離での命中精度を維持するという相反する難題を前に具現化した小銃です。持ってみると重量が同じという東京マルイのエアガンとは重量バランスが違うのに気付く。

Fimg_6743 永世中立国スウェーデンが開発した傑作携帯無反動砲84mmカールグスタフ、文字通り小型の大砲で、対戦車用ではありますが、このほか陣地破壊や突撃破砕射撃に照明弾発射と煙幕展開にも活躍します。映画ガメラⅢではイリスに対し第37普通科連隊が使用したものの効果はありませんでしたが、ゴジラvsビオランテでは致命的な生物剤をゴジラ体内へ投射する用途に活躍、宇宙戦争では米軍がバリアーを展開できないトライポットに射撃し、破壊していました。

Fimg_6712 久留米第4特科連隊のFH-70榴弾砲、何故かこのFH-70とは相性が良いようで、空包射撃の発砲焔常連装備です。しかし、富士総合火力演習では最小射程というに等しい3kmの距離で射撃するため装薬が少なく、その分発砲焔が出ないのが少々残念です。ヤキマ演習場で最大射程射撃を行うと、凄い、のだとか。

Fimg_6692_1 化学防護車から96式装輪装甲車に87式偵察警戒車と、横一列に並んでいる様子、我が国は厳しい道路事情から装甲車が小型となり、結果海外製の装甲車を導入した場合公道を走れない、というため、独自の装甲車体系を構成しています。それが横一列に並んでいる。

Fimg_6689_1 第4特殊武器防護隊、ハッチ部分に重なってマークが描かれているのが興味深い。こちらの車両も将来的には後継のNBC偵察車へ置き換えられることとなるのでしょうが、前述の車幅制限上、必要な容積を確保しようとすれば車高が大きくなり、これが秘匿性を押し下げるため見つかりやすくなり、厳しいところです。

Fimg_6697_1 96式装備装甲車、本車について、構造が凝りすぎて複雑化、車体が不自然に細が無いがた安定性に影響、装甲が近年の車両と比較し厚くない、などなど一部で意見があるようですが、昨年、米軍が横浜港から機動性に優れたストライカー装甲車を饗庭野演習場に持ち込んだ際、車幅が大きすぎ高速道路を自走できず、結果輸送車に搭載し夜間輸送を行ったと聞き、やはり大きい車両は使えない、と痛感しました。

Fimg_6694 そんな96式装輪装甲車は第4戦車大隊の装備です。実は、大型輸送ヘリコプターCH-47JA一機分の予算で三個中隊と本部中隊所要の96式装輪装甲車が導入できるのですが、我が国は装甲車よりもヘリコプター調達を重視したため、普通科部隊へ装甲車が十分行き渡らず、戦車部隊の本部車両となっているのが実情だったりするところ。

Fimg_6701_1 87式偵察警戒車、これまでの特殊でも述べましたが25mm機関砲を武器として威力偵察を行う装甲車です。ただ、この火力と防御力で反撃された場合、生き残れるか疑問ですので、偵察隊へは開発中の105mm砲搭載の機動戦闘車と、複合センサーを搭載する近接戦闘車偵察型を併せ、戦場監視と威力偵察を併せて行うべきと考えます。10式戦車が充分あれば、あの戦車は情報伝送力が大きいので任せられるのですが、ね。

Fimg_6699_1 第4偵察隊のマーク、そして発煙弾発射装置を見ますと本車が初期型であることがわかります。初期型は74式戦車と同じこの形式の発煙弾発射器を搭載しており、中期型からは90式戦車と同型の発煙弾発射器となっています。発射時はこの型式の方が派手に煙幕が展開するのですが、後期型の方が前面へ素早く煙幕が展開します。

Fimg_6750 そして軽装甲機動車、二両に小銃班を分譲させ、木目細やかな火力密度を展開する装甲車ですが、東日本大震災の教訓と今後の島嶼部防衛を考えた場合、電子装置の被膜化による防水措置と、簡易吸気用シュノーケルキットを開発して、揚陸時に海水に沈む程度や渡渉程度は行えるようにするべき、と考える装備です。高機動車やトラックについても同様ですが。

Fimg_6722 野外手術システム、観閲行進の際にも説明しましたが、この装備は移動式の病院装備なのですけれども、病院法の関係上野戦病院は厚労省の許可が無ければ設置できないため、東日本大震災のあの瞬間までは、この装備は実は移動式の医療実習教材と法的に扱いが同じだった、とのこと。

Fimg_6727 しかし、東日本大震災では、それまで法的に移動式の手術実習用教材という曖昧な位置づけであったものが、即座に移動病院施設となった、との話を聞き、実は名称や法的位置づけに拘るのではなく、実態さえ整っていえば緊急時には対応できる、と痛感したのを思い出しました。

Fimg_6724 この装備について気になっていたことは、手術時の感染症対策を確実に行えるのか、という事でしたが、聞いてみますと手術による感染症は野戦病院なので通常の病院のような対策は行言えないが、通常の病院へ搬送していては助からない人命へ究極の応急処置を行うのが、この装備、とのことでした。法律と平時手順を守って死ぬよりは、リスクを冒して人命を助ける、なるほど。

Fimg_6758 こうしたかたちで、装備品展示を一通り撮影し終え、当方は福岡駐屯地を後にすることとしました。九州で初めての駐屯地祭への展開、そして離島と都市部を抱える第4師団の装備を余すところなく見ることが出来たのは、良い天候とともに非常に意義があるものでした。

Fimg_6774 第4師団司令部。こうして福岡駐屯地祭詳報は今回を以て完結とします。第1回掲載の2月15日より今回の第12回まで長きにわたりお付き合いいただきありがとうございました。次回からは総集編を経て新しい陸上自衛隊行事詳報掲載へと新展開します、お楽しみに。

北大路機関:はるな

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ソマリア沖アデン湾海賊対処 第16次派遣対処行動水上部隊、大湊基地と佐世保基地を出港

2013-07-30 23:53:48 | 防衛・安全保障

◆第7護衛隊護衛艦ありあけ、せとぎり派遣 

 防衛省によれば、7月26日と29日、ソマリア沖海賊対処任務第16次派遣行動水上部隊が出港したとのことです。

Pimg_1952 第16次派遣部隊は、第3護衛隊群第7護衛隊を中心に編成され、第7護衛隊司令清水博文1佐以下、艦長甲斐義博2佐指揮の護衛艦ありあけ、艦長岩波俊行2佐指揮の護衛艦せとぎり、2隻を以てソマリア沖合族対処任務へ出港しました。ありあけ、は佐世保基地、せとぎり、は大湊基地を母港としています。

Pimg_19140 派遣規模は、司令部要員30名、ありあけ乗員185名、せとぎり乗員185名、隊員400名と海上保安官8名の約410名が派遣されることとなります。部隊はソマリア沖アデン湾において一隻が船団護衛任務、一隻が多国籍合同部隊へ参加し哨戒任務へあたるもよう。

Pimg_4221 ありあけ、は、むらさめ型護衛艦で定員165名、せとぎり、は、あさぎり型護衛艦で定員220名、しかし、今回の防衛省発表を見ますと、ともに185名が乗艦しているとのことで、少々数が合わない気がしないでもないですが、海賊対処任務という特性上、乗員の配置が若干異なっているのかもしれません。

Pimg_4075 現在、ソマリア沖では、第2護衛隊群第6護衛隊より編成された、第15次派遣海賊対処水上部隊の護衛艦あけぼの、護衛艦はまぎり、が任務に当たっています。なお、その前には先日舞鶴展示訓練へ参加した護衛艦すずなみ、きりさめ、も二隻揃って海賊対処任務へ派遣されていました。

Pimg_3837 海賊対処任務は、周辺国の海洋法執行機関要請への我が国援助や、産業化した海賊問題を解決するべく、開発援助など艦隊の威圧に留まらない様々な解決策が並行して進められており、先の話とはなるでしょうが、着実に艦隊と民生協力が、その海賊事案を抑え込んでいます。

北大路機関:はるな

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祝 Weblog北大路機関創設八周年記念日 阪急十三駅2005年7月29日運用開始から八年

2013-07-29 23:56:18 | 北大路機関特別企画

◆ありがとう、おかげさまで八周年

 Weblog北大路機関は本日、2005年7月29日の運用開始より八周年を迎えました。

Yimg_1044 北大路機関、開始当時はここまでの規模となることは想定していませんでしたし、掲載を続けると共に安全保障や防衛、防災問題などに此処まで考えなければならなくなるとは、考えられなかった、というところが正直な感想ですが、今後も良い記事を出来る限り作成してゆきたいと思います。お付き合いいただければ幸い。

Yimg_3209 Weblog北大路機関は、国際政治学を基本理論から米軍再編問題等までを含め研究する大学の学内自主ゼミ北大路機関をその起源としていまして、ここからWeblogが、2005年7月29日に阪急十三駅にて神戸本線から京都本線への待ち合わせ時間に、紹興酒数本(一説には左右の教授と併せ8本)の酩酊の中、酔った勢いで誕生したもの。

Yimg_6821 北大路機関そのものはWeblogでは誰も寄り付かないような学術的な内容を扱っていまして、そんななか、Weblog北大路機関は娯楽に徹しよう、という理念の下、様々な内容を掲載、京都名所旧跡と鉄道に自衛隊という三基幹を元に記事を作成してきました。当初は毎日更新でもなかったですね。

Yimg_0287 Weblog北大路機関は写真中心のもの、という指針はそのままでしたが、そののち、京都観光や鉄道関連を偶に交えるなかで、比較的防衛関係に力を入れたWeblog,という形で一応一定の方々の関心を引き付けるようになり、防衛政策への視点や、自衛隊関連行事の紹介などを主軸とした記事内容へと転換してゆきました。

Yimg_9350 こうしたなか、世の中の動きとはめまぐるしいもので、北大路機関創設時には京都駅のブルートレイン、名鉄のパノラマカー、阪急の6300系特急、京阪のテレビカーなどはあって当然の日常風景ではあったのですが、これが徐々に新世代車両へ交代され、衰亡の様子をお伝えすることになったのは心苦しい。

Yimg_3757 鉄道関連の写真をもう少し多く伝えるべく、2008年2月7日に更新停止時の予備ブログとして創設した第二北大路機関を鉄道などをかなり比重を置いた記事として平時の運用に充てるなどの対応も行いました。もっとも、第二北大路機関のアクセス数は、非常に少ないのが、少々残念ではありますが、ね。

Yimg_0055 こうしてWeblog北大路機関は、記事を毎日一回という基本姿勢を定めて以来、本記事を以て記事数2905記事、アクセス数は2006年のアクセス解析開始より本日2330時を以て6610934アクセス、過去90日間の平均アクセス数は一日当たり4054、多くの方の閲覧に支えられ、今日に至ります。

Yimg_9060 北大路機関ですが、例えば専門的な分析と情報紹介を展開される“週刊オブイェクト”のような専門性は無く、どちらかというと場当たり的に記事を作成しているところですし、分かりやすい理解の増進を目指した“リアリズムと防衛と学ぶ”のような丁寧な姿勢もありません。

Yimg_2914 唯一全てのコメントへお返事を、という姿勢も昨年ついに維持できなくなり、誤字脱字も校閲時間よりも2359時を過ぎてその日の更新が落ちない事を最重要視している関係上、削減できないのですが、これは当方の人格の限界に依拠するものではないか、とも思うのですが、こんなWeblogでもご覧いただける方々に支えられ、今に至ります。

Yimg_3567 しかし、まあ、多少のこだわりは、と自慢したいのは、EOS-KissNからEOS-40DとEOS-50DにEOS-7DとPowerShotG-12にPowerShotG-9という撮影機材を駆使して、ある程度自分としては満足できる写真を記事に添えて紹介できるところで、その分海外装備の紹介は殆どできませんが、これは、まあ、誇れるのかな、と。

Yimg_1570 もっとも、たまに脱線するのですが、ね。更には防衛の方へ比重を置きすぎ、北大路機関では名所旧跡と鉄道車両の紹介に限界を来し、今年より“榛名の旅”企画を第二北大路機関へ掲載開始、更に“鞍馬の街”というような京都紹介企画も第二北大路機関へ掲載開始することを考えていますので、よろしく。

Yimg_0025 北大路機関は写真だ、ということで、冒頭の観艦式のような写真はもちろん、自衛隊関連行事は北斗極まる北海道から南西は沖縄まで幅広く紹介していますし、記事だけではなく写真を現地へ、この姿勢は今後とも、長躯行動する北大路機関、というような姿勢のもとで頑張ってゆきます。

Yimg_2520 他方、写真はどんどん蓄積する中、特に陸上自衛隊駐屯地祭の写真蓄積が大きくなっており、これをどう紹介するか、説明記事を多く付帯場合、どうしても一つの行事紹介に数か月から半年近くを要するため、こちらも第二北大路機関により写真を軸に紹介してゆく方向にて考えていますので、これももう少しお待ちください。

Yimg_4620 また、連載記事については、北大路機関の記事の中で順番を構成することは少々書き手としては厳しいものもありますが、なんとか広い視点から議論への基点を構築することをめざし、頑張ろうと思います。さて、一昨日、舞鶴展示訓練の写真が加わりました、何とか順次紹介してゆきますので、これからも次の九周年へ、北大路機関をよろしくお願いいたします。

北大路機関

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海上自衛隊舞鶴地方隊 展示訓練2013(2013.07.27) PowerShotG-12撮影速報

2013-07-28 23:36:13 | 海上自衛隊 催事

◆護衛艦5隻など艦艇12隻・航空機6機が参加

 自衛隊関連行事撮影で大活躍するG-12ですが、海上自衛隊と航空自衛隊行事撮影には能力限界があるやもしれません。

Wimg_9139 護衛艦すずなみ洋上を往く。舞鶴展示訓練へ行ってまいりました、同じ頃山陰では豪雨が続いていたようで恐縮ですが天候は霞掛かった晴れ、今年は乗艦券の競争率が高く、金曜日と土曜日の乗艦はどちらも凄い状態だったようですが、天候も若干厳しいものがあった印象でした。主力のEOS-7D,支援のEOS-50Dと予備のG-12とともに撮影展開したのですが、一眼レフの瞬発即応力に対し、G-12では定点撮影を行うにも小型三脚配置が難しく、起動とズームに要する時間が長く、実のところ撮影できた写真で整理できたG-12の写真の出来はご覧の通り。

Wimg_9131 舞鶴展示訓練の今年の参加部隊は、艦艇12隻、航空機6機で、あたご型ミサイル護衛艦あしがら、こんごう型ミサイル護衛艦みょうこう、たかなみ型護衛艦すずなみ、まきなみ、むらさめ型護衛艦きりさめ、そうりゅう型潜水艦けんりゅう、ましゅう型補給艦ましゅう、はやぶさ型ミサイル艇はやぶさ、うみたか、すがしま型掃海艇すがしま、のとじま、ひうち型多用途支援艦ひうち、等が参加、最新鋭の特別機動船SB-25型も参加です。このほか、SH-60J/K哨戒ヘリコプター4機、救難飛行艇US-1A/US-2が2機参加しました。

Wimg_9156 舞鶴地方総監井上力海将乗艦のイージス艦あしがら、へ敬礼。護衛艦まきなみ甲板上に乗員が整列しています。地方隊展示訓練とは、全国の沿岸を防衛警備管区とする地方隊が、隷下部隊を集め総監への観閲式と共に訓練展示などを通じ海上自衛隊の任務への対応能力や装備の運用能力、練度の高さなどを国民へ広く紹介し、併せて海上自衛隊と海上防衛への任務への理解増進を図る、という展示訓練で、部隊行事であると共に大規模な後方行事でもあるわけです。

Wimg_9158 展示訓練の規模としては護衛艦5隻と些かさびしく、舞鶴基地へ3隻、舞鶴西港へ1隻、敦賀港へ1隻と小規模ではありましたが、あしがら、みょうこう、すずなみ、まきなみ、きりさめ、の新鋭五隻揃い踏みは貴重な機会でした。他方、防衛省によれば舞鶴基地を母港とする護衛艦まつゆき、が25日沖縄周辺海域を警戒中に旅洋型2隻、江凱Ⅱ型2隻、福清型補給艦1隻からなる5隻の中国艦隊の出現を警戒したと発表、今回の展示訓練参加部隊より少ないですが、まあ、舞鶴の護衛艦が少なかったのは、実任務上しかたなかったといえるでしょう。

Wimg_9162 井上総監座乗のイージス艦あしがら、あしがら、そして続く、きりさめ、は母港が佐世保基地、当方乗艦の、まきなみ、そして航続する、すずなみ、は大湊基地、先行する、みょうこう、のみが舞鶴基地の護衛艦です。これは現在、地方隊は沿岸部への事案対応に必要な指揮能力を中心に部隊を持たず備え、有事の際には必要に応じ部隊の配属を受ける、という運用から為されている現在の態勢の反映といえるでしょう。ちなみに、あしがら、満載排水量10000t、本型は海上自衛隊の護衛艦として初めて10000tに達しました。

Wimg_9166 展示訓練は、観閲部隊と受閲部隊による観閲式より始まり、観閲飛行及び飛行艇展示飛行、潜水艦航行展示、ヘリコプター水中処分員機動展示、ミサイル艇戦闘展示による高機動航行及びIRフレアー発射展示、多用途支援艦消防展示、機動船高速航行展示、という順番で行われました。展示訓練実施中にはヨットが割り込みを計り掃海艇に排除されていましたし、舞鶴から若狭湾への水道では手漕ぎボートが接近するなどありましたが、なかなか興味深い構図も撮ることが出来、これはよかったです。

Wimg_9169 舞鶴展示訓練に沸いた若狭湾ですが舞鶴基地では舞鶴サマーフェスタも併せて実施されており、こちらへは護衛艦が全て出払った舞鶴基地ではありましたが、第14戦車中隊の74式戦車を筆頭に第3戦車大隊や第7普通科連隊の装甲車などの装備品展示が行われ、海上自衛隊の災害派遣用装備の展示なども行われていたほか、舞鶴航空基地でも一般公開が行われ、陸上自衛隊などの外来機展示や艦艇通過に合わせた離陸が展示され、工夫が凝らされていた、とのこと。

Wimg_9173 潜水艦けんりゅう、そうりゅう型としか発表されていませんでしたが、金曜日も乗艦した方の御話しで、けんりゅう、と入港後に表示されていたそうです。このほか、訓練展示の様子はG-12では撮影できませんでした。やはり起動時間と最初の一枚撮影までが3秒、ズーム操作を加えると6秒、これでは最初の一枚を0.2秒で行えるEOS-7DやEOS-50Dと同じようには使えません、即応性が高いものはありますが、それですと画質や操作感に限界が、FujiFilmのX-10がよさそうだったので、その後継機種X-20を補完機として将来的に考えてもしまうところです。

北大路機関:はるな

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舞鶴基地舞鶴地方隊展示訓練後の情景 PowerShotG-12撮影速報

2013-07-27 23:05:29 | 海上自衛隊 催事

◆昨日撮影の情景を先行して掲載

 先ほど帰ってきましたが、写真を整理していませんのでとりあえず昨日の写真を。

Nimg_9050 ヘリコプター搭載護衛艦しらね、その後ろには護衛艦あさぎり。ご覧の通り定期整備にて造船所入りしています。この通り舞鶴の護衛艦は整備中か、実任務での出航があり、展示訓練期間中ではありますが、艦艇は多くは無く、展示訓練の規模も例年よりも少々規模が縮小されていました。

Nimg_9061 イージス艦みょうこう、護衛艦まきなみ、イージス艦あしがら、後ろには一部しか映っていませんが潜水艦けんりゅう、このほか標的艦が停泊していたのみ、前回の舞鶴展示訓練の規模も、と思われるかもしれませんが、その分舞鶴西港の停泊は、護衛艦すずなみ一隻のみ。

Nimg_9053 特別機動船が展示訓練を終えて帰ってきました。新しく配備された大型のものは20名程度の人員を輸送でき、速力が50ノット程度が発揮可能、とのことで、工作船対処から水中処分員輸送まで、はば広く活躍します。今回最も撮影したかった艦艇の一隻で、EOS-7Dではもう少しまともに撮れていました。

Nimg_9059 元護衛艦みねゆき、元護衛艦はまゆき、は標的艦へ改造され、北吸桟橋へ係留されていました。艦首方向の背景は舞鶴航空基地、艦尾方向の背景にはジャパンマリンユナイテッド舞鶴工場、ジャパンマリンユナイテッドは頻繁に統合で改称される最新の名称です。

Nimg_9060 補給艦ましゅう、沖留となっていました。展示訓練に参加の一隻です。この後夜になりみにいきましたが、電燈艦飾は沖留艦はもちろん、北吸桟橋も含め実施されておらず、西港は護衛艦すずなみ一隻と聞き、撮影への展開は断念しました。本日は少々疲れていますので、写真の紹介はこれくらいにて。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.07.26・27・28・30・31)

2013-07-26 01:31:22 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 いよいよ夏本番ですが、蒸し暑さだけ本番になり曇りでも汗をぬぐうのに忙しい今日この頃、如何お過ごしでしょうか。 

Himg_5004 紋別港まつり、艦艇広報として補給艦が参加します。ちなみに、この艦艇広報は本日金曜日と土曜日に日曜日と行われます。参加は補給艦一隻のようですが、補給艦の艦上を見学できる機会はなかなかないので、お時間がある方は足を運ばれてみては、と思います。とわだ型か、ましゅう型かは、観てのお楽しみ。

Img_2724 釧路港艦艇広報、帯広地本によれば、30日火曜日と31日水曜日に釧路港第四埠頭において一般公開が行われます、時間帯が明示されておらず、更に艦名未定、とありますが、たかなみ型護衛艦の写真が紹介されていましたので、たかなみ型護衛艦が入港するのかもしれませんね。

Mimg_6677 舞鶴展示訓練、舞鶴サマーフェスタ。本日金曜日と明日土曜日に行われます。展示訓練は乗艦券が必要で抽選は終了していますが、基地一般公開も行われ、舞鶴航空基地も一般公開が行われます。展示訓練は先日までの北大路機関詳報で紹介したとおり。

Bimg_3091 高知港みなと祭り、最新型護衛艦あきづき、が展開します。高知新港第七埠頭第二岸壁で、一般公開と体験航海を辞し、体験航海は乗艦券が必要です。乗艦券の抽選は終了しました、抽選実施の情報も北大路機関で扱わねばならないかも。さて、土曜日と日曜日に午前中体験航海を行い、午後に一般公開を行う、という流れ。

Img_7540 江田島基地サマーフェスタ2013、江田島湾クルーズや花火大会等が行われます。なお、この関係で呉基地の日曜日艦艇一般公開は一時中止される、とのこと。江田島基地の教育参考館も開放されますが、慰霊施設であり教育施設であるので、派手な格好での入館はできません。

Img_1263 鳥取港護衛艦ちくま一般公開、土曜日日曜日と鳥取港千代一号岸壁において実施されます。体験航海は行われず、一般公開のみの予定ですので、だれでも自由に見学時間内、護衛艦を見学できます。午前と午後に分かれており、1100から1330時の時間帯は一般公開されていませんのでご注意を。

Img_130_1 翔鶴祭2013、明日土曜日と日曜日に行われるもので、鹿児島県米ノ津港で行われます。翔鶴祭、空母翔鶴と関係があるのでしょうか、そう考え調べると出水市の越冬に飛来する鶴との共存を目指す催事なのだとか。実施は鹿児島地方協力本部で、護衛艦一般公開と体験航海が行われる、とのこと。

Iimg_1516 自衛隊港祭り、何処にでもありそうな行事の名称なのですが、実施されるのは鹿児島県鹿児島港、こちらでも艦艇一般公開や体験航海が行われるとのことです。調べて観ましたら、ミサイル護衛艦しまかぜ、護衛艦さわぎり、が参加するとのことです。電燈艦飾も行うもよう。

Img_6352 那覇新港ではイージス艦こんごう、護衛艦むらさめ一般公開が行われます。一般公開は27日と28日に行われ、る、の、ですが、今調べたらば見学には水曜日までに申し込み申請書をFAXで伝送しなければならず、台風接近時には中止する、とのことです。申請が必要ですが、申請しても駐車場が満車の場合は入れないこともある、という。ちょっと、艦艇広報というよりは特別公開、というべきでしょうか、せっかく有力な護衛艦が二隻も入港するにもかかわらず、勿体無い。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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高高度滞空型無人機導入検討、新防衛大綱盛り込みを中間報告書に明記

2013-07-25 23:29:59 | 防衛・安全保障

◆導入検討を大綱盛り込み、曖昧な表現

 尖閣諸島防衛に関する連載に続く新特集として考えている防衛大綱に関する特集ですが、泥縄式に始まっています。

Img_6654p 政府は年度末に画定する新しい防衛計画の大綱へ、高高度滞空型無人機の導入検討を盛り込む方針で検討している、読売新聞が報じました。この高高度滞空型無人機の導入案は、数年前より出ては消え、出ては音沙汰なしが続いていたものなのですが、今回は明確に防衛計画の大綱へ導入検討を正式に盛り込む模様です。

Img_0057_1 盛り込む模様、という表現がやはり曖昧模糊としていますが、数十時間を滞空し、旅客機の巡航高度よりも高高度から監視する無人航空機の必要性は、特に南西諸島の警戒に際し、P-3C哨戒機やE-2C早期警戒機を常時警戒に充てるには能力的な限界があるため、その必要性は前々より説かれていました。

Img_0679 高高度滞空型無人機については、技術研究本部が日本独自のものに関する基礎研究を進めており、一方で米国製RQ-4グローバルホークの導入も併せて検討されているとされますが、高高度滞空型無人機は技術研究の段階であり、実用的な航空機は見渡せる範囲内の期間では完成の目処が立っていません。

Qimg_9228 対して、RQ-4については、機体単価についてもさることながら地上の情報伝送設備などの整備費用が機体よりも桁違いに高い費用を要し、実際問題、その費用を何処が負担するのかにより、例えば早期警戒機などの整備費用や哨戒機などの整備費用を大きく食い込まれる可能性がありますので、一筋縄ではいかないでしょう。

Img_2321 特に米軍においても緊縮財政下では高高度無人機よりは従来型の有人偵察機の低い運用費用に注視する動きもあり、ただでさえ防衛費が不足している我が国では、むしろRQ-1のような機体、アフガニスタンでは悪天候などの理由で相当数が墜落しているようですが、取得費用を抑えた装備品の方が現実的かもしれません。

Img_2861 併せて無人機は現在転換期にあり、高高度滞空型無人機は平時の経空脅威に対して十分に対応できるものの有事の経空脅威状況下では非常に運用が制約されるため、近年、米軍のX-47Bをはじめとしてステルス性を有し、一定の脅威状況下でも運用可能な航空機が開発中、時代は転換期を迎えました。

Img_5626p 予算が削減され、厳しい状況下ではありますが、昨日の海兵隊創設や本日の高高度無人機など、新装備目白押しではある一方で、装備を導入しても均衡が崩れれば防衛力は破綻してしまうため、それを担保する防衛予算をいかに確保するかも、防衛大綱に盛り込まれなければ実現できません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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防衛省、防衛大綱改訂で陸上自衛隊へ島嶼部防衛主眼の海兵隊機能付与を明記へ

2013-07-24 23:34:19 | 防衛・安全保障

◆部隊は中央直轄か西方直轄か旅団直轄か

 報道によれば、政府は防衛省が進める年末画定へ向け検討が進む防衛計画の大綱改訂に際し、陸上自衛隊への海兵隊機能付与を明記する方針で調整が進められているとのことです。

Kimg_1176 防衛計画の大綱へ海兵隊機能盛り込み、これはどういう事でしょうか。それは即ち、防衛装備品は毎年度の防衛予算により調達されていますが、将来的にどういった任務への対応が求められ、それに基づき装備体系を構築するのかを考えねば、場当たり主義の単なる買い物に終わってしまいます。このため、我が国では長期的な防衛政策を防衛計画の大綱、防衛大綱へ盛り込み整備している、ということ。

Kimg_2434 その上で、まず長期計画の概略を防衛計画の大綱へ明示し、それを元に具体的にどうやって装備品を揃え人員を配置し訓練を行うかを五年ごとの中期防衛力整備計画に明示し、この中期的な計画を年度ごとの防衛予算へ割り振り、自衛隊の部隊を整備してゆく、というのが我が国の防衛政策です。

Kimg_9699 防衛計画の大綱は、民主党政権時代の2009年に改訂され、当初であれば2019年頃まではその大綱に基づく防衛政策を推進すれば我が国と周辺地域及び世界への防衛と抑止力と安定に寄与できる、と考えられていたのですが、民主党政権下では政権公約、マニフェストに防衛費5000億円削減が盛り込まれていた関係上、単なる人員削減と装備削減に終わり、その後の外交的失策で悪化した情勢へ対処することが出来ないものとなりました。

Kimg_9773 その結果、自民党政権へ政権交代後、ただちに防衛計画の大綱を見直す、として様々な施策が提起され、検討されていた陸上自衛隊への海兵隊機能盛り込みが、そのまま防衛計画の大綱へ明記され、本格的な両用作戦部隊を創設する方向が示されたというわけです。

Kimg_0857 ただ、この海兵隊機能は、北大路機関において何度も取り上げたようにアメリカ海兵隊型の大規模な有事への独力対処能力を有するものなのか、イギリスの泊地警備と海外領土警備に重点を置いたイギリス海兵隊型のものであるのか、離島警備と逆上陸による本土防衛を重視した中華民国海兵隊を想定するものなのかは、やはり曖昧模糊とした表現と言わざるを得ません。

Kimg_9503 元々、多数の離島を以て海洋上に国土を有する島嶼部国家である我が国は、離島を防衛する重要性を考えた場合、勿論太平洋の反対側に上陸し相手国首都を占領できるような師団級の海兵部隊と航空及び水上部隊は不用ですが、少なくとも自国の離島を防衛できる両用戦部隊は必要であったわけです。

Bimg_1034 ただ、それならば何故今日まで自衛隊が海兵隊機能を有さなかったのかと問われれば、それ以上に冷戦時代は北海道へソ連軍の着上陸という現実的な脅威があり、他方南西諸島を中心とした離島には在沖米軍、在比米軍、そして連接する在韓米軍とグアム及びハワイの強力な米軍が展開していたため、周辺国では海を越えた軍事行動を行うことが事実上できなかったため、我が国は北海道防衛に集中できました。

Kimg_8550 これが冷戦後、特に在比米軍の撤退と中国の海洋進出の時期が重なり、我が国周辺地域への安全保障上の懸念事項となったため、これまで実質的に棚上げしてきた島嶼部防衛、空中機動部隊を中心に対応してきた島嶼部防衛に本腰を入れる、というものが次の十年を見越す防衛計画の大綱へ反映された、という事なのでしょう。

Kimg_0836 ただ、離島と言えば、第2師団管区には礼文島、第11旅団管区に奥尻島、第12旅団管区に佐渡島など、第1師団管区には小笠原諸島、第13旅団管区には隠岐島など、第4師団管区には五島列島壱岐対馬、第8師団管区には鹿児島県島嶼部など、そして沖縄の第15旅団管区はほぼ全域が島嶼部、とあり、どの水準の部隊を海兵隊化するのか、これではわかりません。

Kimg_0857_2 報道を見る限りでは、南西諸島に重点を置いているのですが、それならば那覇駐屯地の第15旅団を海兵隊化するのか、西部方面隊に直轄部隊としてもつのか、中央即応集団も含め全陸上自衛隊的な取り組みとなるのか、このあたりで、どの程度予算が必要も変わってくるため、慎重に見極めたいところです。

北大路機関:はるな

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武器輸出三原則、F-35国際共同生産多国間国際分業に合わせ見直しへ

2013-07-23 23:40:01 | 国際・政治

◆安倍総理、野田民主党政権下の方針継続へ 

 政府は22日、現在の武器輸出三原則を見直し、新しい指針の下で防衛産業との取り組みへ臨む方針を示しました。

Nimg_7836 航空自衛隊が1971年より運用するF-4EJ戦闘機を代替する新戦闘機として、国際共同開発のF-35A戦闘機を導入決定した際、このF-35戦闘機は多国間国際共同開発の航空機であるが故に開発参加国が生産を協同で行う多国間国際分業により進められていたため、我が国では部品の一部を生産すると共に、最終組み立てなどを担当することとなっています。

Img_2013 しかし、このF-35国際共同生産への参加に際し、F-35はイスラエルなど紛争当事国への輸出が行われるため、我が国が制定した武器輸出三原則、共産圏及び国連武器禁輸国に加え紛争当事国への武器輸出を自制するという国是に反するのではないか、という視点からの議論が為されてきています。

Aimg_0434 加えて、近年、防衛装備品については国防費が情報共有などへの協同交戦能力獲得への大きな比重を移す中で、増額を行えない現状下では、これまでのように全てを自国の技術開発を経て導入することはできないという観点から、共同開発を行い防衛費を節約する観点からも武器輸出三原則の緩和は検討を続けてきました。

Iimg_9119 こうしたなかで、民主党政権でも野田内閣時代には武器輸出三原則の緩和が示唆され、具体的にはF-35導入に関する合意や、イギリスなどとの防衛装備品共同開発において合意に至り、この部分で進展を見てきたのですが、武器輸出三原則については将来的に見直すという範疇で推移してきたもの。

Jimg_2274 これを22日の政府決定では来月より本格化させる防衛計画の大綱改訂への討議等を含め、今日までの武器輸出三原則を実質的に撤廃してゆく方向で調整し、F-35の生産に対応すると共に国内防衛産業を国際競争力の有する水準へ押し上げてゆく狙いがある、と考えられています。

Bimg_2350 ただ、防衛産業については、安易に国際競争力に曝すことは、長期的に安定した防衛装備品、特に自衛隊が必要とする専守防衛の島国で山岳国という稀有な国土に合致した装備を、容易に調達し維持できるのか、という難題については今のところ確たる保証がありません。

Img_8717 また、武器輸出三原則ですが、一応はアメリカへ一旦納入しアメリカが有償軍事供与を行うという方針を採っているため、例えば最終的にアメリカが紛争当事国と解される地域へ輸出する場合でも、日本が輸出しているのはアメリカであり、直接紛争当事国に輸出するわけではない、という視点で物事を考えることは可能でしょう。

Nimg_7880 それならば、武器輸出を行うべきではないのか、という問いがあるかもしれませんが、武器輸出三原則は共産圏と国連武器輸出禁止国に加え紛争当事国への武器輸出を禁じたものなのですから、例えば現時点でもアメリカやNATO諸国など世界の大半への輸出が可能であるものを拡大解釈拡大運用し武器輸出の道を封じているという実情を無視してはなりません。

Img_5975 例えば、永世中立国であるスウェーデンなどは、冷戦時代においてもヴェトナム戦争へ本格介入するまではアメリカは紛争当事国ではない、という視点の下で同等と銃火器を含めた武器輸出を行ってきており、仮に我が国が武器輸出三原則を厳格運用したとしても、これが装備品共同開発や国際搖動生産はもちろん、仮に武器を直接する場合においても阻害する要因とはなりにくい、ということ。

Iimg_2948 こうしたなかで、共産圏や国連決議に基づく武器禁輸国と紛争当事国への武器輸出を禁じた武器輸出三原則を撤廃するという試みは、海外での報じ方によっては北朝鮮へ日本がミサイルを輸出することや、中国へミサイル誘導装置などを輸出する、シリアへ航空機を輸出することを可能とする、と字面では受け取られかねないリスクをはらんでいることを忘れるべきではないでしょう。

Img_0024 それだけではなく、核拡散防止条約を筆頭に武器輸出は分野によっては厳しく国際管理されているものがあり、我が国の友好国でも全てが我が国のこれ間での過剰ともいえる武器輸出自己規制を理解しているとは限らないため、誤った印象を与える可能性があります。国連決議での武器輸出禁止国や、中立国が二の足を踏むような武力紛争当事国、中国と北朝鮮を筆頭とした共産圏へ武器輸出を行う試みがある場合は別ですが、それ以外であれば、武器輸出三原則を厳格適用し、防衛装備品を扱う、とする姿勢の方が、短期的長期的に我が国の国益へ合致しているように考えます。

北大路機関:はるな

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歴史地震再来と日本安全保障戦略④ 防衛上の危機を誘発する沖縄トラフ・八重山地震

2013-07-22 23:06:14 | 防災・災害派遣

◆巨大地震の二次被害、南西諸島有事と台湾有事 

 歴史地震として、八重山地震は遡上高では貞観三陸地震をも上回る津波が伝えられている地震ですが、場合によっては国家間緊張へ転換する可能性があります。

Himg_6519 この八重山地震は、同程度の規模で再来した場合、沖縄本島や台湾北部と中国沿岸部に長周期振動による被害を及ぼす可能性があり、逆にこの地震への災害派遣が、日中台の情報共有や連絡体制を充分確保しないままに迎えた場合、国家間緊張へ発展する可能性が無視できません。

Img_3029 例えば仮に、地震規模が1771年の八重山地震規模よりも局地的被害に収まった場合、地震による離島災害として災害派遣を行い、周辺国は支援の申し出と静観に分かれる事となるのでしょうが、最大規模で発生し、例えば沖縄本島の防衛施設へ深刻な被害が生じた場合は新しい緊張を誘発するでしょう。

Nimg_3101 それ以上に、最大規模の発生で考えられる中国への被害、中国沿岸部が長周期振動などによる高層建築物被害が生じた際に、中国側も大規模な救援任務を展開する必要が生じ、結果、指揮系統の異なる軍事機構が接近し、特に航空部隊と海上部隊が集中した際に、無用の緊張が生じる可能性があるわけです。

Gimg_7157 上記の指摘は前回と重なるところですが、中国はヘリコプターによる空中機動能力の規模が陸上自衛隊と同程度、全天候任務対処能力では質量ともに自衛隊に劣るのですが、それでも規模としては大きなもので、仮に中国は災害派遣へ向かう航空機であっても進路を転換すれば、我が国領域への侵攻が可能となります。

Aimg_2034 そしてこれは言い換えれば必然的に、自衛隊が南西諸島における最大規模の災害派遣任務を遂行する場合、稼働する航空機全てを南西諸島へ本土より展開させることとなりますので、逆に中国側からした場合、我が国の空中機動任務を別の視点で、我が国では検討さえしていない事でしょうが、上海などへの強襲と誤解される可能性は零ではない、ということ。

Iimg_2346_1 また、東日本大震災に際して、新潟中越地震や阪神大震災を含めてですが、災害派遣となれば輸送艦や補給艦のみならず、航空機を搭載できる、物資を搭載できる、人員を輸送可能な全ての装備、これは艦艇航空機を問わず投入されるため、相当な規模の艦艇が南西諸島を遊弋することとなります。

Nimg_8712_1 この大規模な災害派遣に対し、我が国が中国側や台湾側との事前通知態勢を予め構築することが出来なければ、災害派遣に向かい航空機が国籍不明機の進路妨害を受ける可能性、人命救助へ向かう災害派遣部隊でありながら戦闘部隊による護衛を必要とする状況に陥る危惧があるといえるでしょう。

Gimg_3562 そして、これは国家としての良識を求める視点から想像したくない事象ですが、災害派遣の混乱に乗じ生まれる防衛上の空白を突いて、南西諸島の一部地域に対し、隣国が軍事行動を行う可能性を全く想定せず災害派遣計画を構築できるのか、そうではない要素を踏まえるべきなのか、これも一応考慮しなければならない。

Oimg_7805 そしてもう一つの不安要素が、我が国が災害派遣により忙殺され、周辺地域への抑止力が低下している時期に合わせ、平時でも緊張状態にある南沙諸島や台湾海峡において山積する政治課題を軍事力により一挙に解決しようという強硬姿勢と軍事的緊張が生じる可能性がある、ということ。

Img_2653a 具体的には、沖縄トラフ地震は台湾北部へ被害を及ぼす機縁性があるという実情に鑑み、特に中華民国首都台北を中心に混乱が生じた際、これに乗じて台湾問題を中国内陸の部隊が空挺強襲を加え一挙に政経中枢を抑えるのではないか、という危惧で、逆に台湾側がこの懸念を払しょくさせるに十分な中国側との平時の関係を結べなければ、災害派遣と有事を切り離せなくなる緊張の要因となる可能性があります。

Nimg_6297 この問題は、前回安易に沖縄トラフ地震に関する周辺国との研究強化の必要性を指摘したわけですが、加えて災害時の緊張緩和に向けた信頼醸成措置をも必要とすると同時に、これは周辺国が防衛問題を含めた事前通知態勢を構築する必要性を有することとなりますので、逆に台湾との関係をどう考えるかが問題を複雑化させる点を注目しなければなりません。

Gimg_4575 大前提として、離島災害において外部から救援を行うには、洋上で航空機整備基盤を有し、自己完結した後方支援能力に裏打ちされた集団でなければ災害派遣を行うことはできないため、日本では自衛隊でなければ対応できません。港湾設備が破壊される津波災害に際しては、民間輸送機関はもちろん、仮に民間軍事会社であってもヘリを搭載可能な揚陸艦はありませんし、空中機動能力も致命的に限定的です。

Aimg_2434 しかし、日本で発生する災害でありながら、明らかに影響が生じるのは中国と台湾であり、仮に日中台での合同研究を行うことは民間レベルでも特に海洋調査を行う上で大型船を必要としますので容易に行えるとは言い切れないものがあり、そして更に自衛隊と人民解放軍に民国軍が三軍共同での事前通知態勢を構築することは、台湾を日本がどのように外交上の対応を行うかで別の緊張が生じるかもしれない。

Gimg_5851 政治的には防衛省と台湾国防部とのホットラインを構築し、併せて防衛省と共産党中央軍事委員会とのホットラインを併せて構築し、災害時における緊張状態を回避する試みという事は具体的に可能なのか、不可能であった場合は上記の通り災害派遣が武力紛争の緊張を生むこととなるため、代替案をどうするか、これは難しい課題ですが、解決策は模索されなければならない。

Bimg_4766 この問題の厳しいところは、沖縄トラフ地震が最大規模で発生した際には、好むと好まざるとに関わらず、緊張状態へ転換する危険性を回避できず、対して平時に上記の施策を行うことは日本と中華民国が国交回復を行うこととなるため、これが中華人民共和国との緊張状態を先んじて膿んでしまう可能性がある、という。

Bimg_3507 歴史地震再来と日本安全保障戦略、という、本来防衛と防災は主体こそ重なるものであっても、併せて国家戦略という長期的な外交展望と併せ考える必要がある視点からこの特集を執筆開始したのは、歴史地震の被害は今日の国際秩序や安全保障体制が想定していない規模と位置にて生じる大災害であり、防災を突き詰めれば防衛と外交の問題に展開せざるを得ないという複雑性が背景にあるわけです。

Bimg_7132 併せて問題を複雑化させるのは、歴史地震の再来、つまり巨大災害は人知の及ばない、人類の技術と英知では被害を局限することはできても発生を防ぐことはできないところにあり、その被害想定地域に台湾海峡に隣接する、現在世界で最も慎重に国際関係を展開しなければならない地域が重なってしまった。

Eimg_1192 歴史地震としての沖縄トラフ・八重山地震再来は、もちろん大きな被害を想定しなければならないのですが、以上までに述べた課題を解決できなければ巨大地震としての歴史地震再来が、南西諸島有事や台湾有事という非常に大きな二次被害へ展開するということになります。これを防ぐにはどうすればよいのか。

Biimg_5264 そして、この歴史地震としての沖縄トラフ・八重山地震の危険性が広く認識された際には、例えば我が国排他的経済水域内にある沖縄トラフ周辺海域や八重山諸島近海において外国艦船による調査を目的とした航行や、場合によっては八重山諸島への領海侵犯事案にも発展する可能性もあり、地震前に被害が生じる本末転倒な事案も想定しなければならなくなります。

Img_0057_1 特に歴史地震であることから近代的な計測が為されておらず、1771年の八重山地震は正確な進言も分からず、被害情報だけ八重山諸島への巨大津波と最遠では房総半島までの津波被害が記録されているのみで、詳しい震源や津波発生のメカニズムなどは完全に解明されていません。

Img_88_45 こうして考えますと、沖縄トラフ地震については、発生するかしないか、という討議は海溝地震であれば海洋底の大陸プレートと海洋プレートの衝突により、弾性限界に達すれば必ず生じるため、地球上でプレートが衝突している開口部分において、時期は別として確実に定期的な発生だけは断言できます。

Img_6035 その地震を、発生間隔を政治的に無視できる将来の課題であるとして黙殺する選択肢も考えられるのですが、こうした巨大地震も非常に安全保障上課題がある海域において過去に発生している、という前提で物事を考える必要性は、在るのかもしれません、前の八重山地震は1771年の事象、無視できる事象として巨大地震への警戒に限界があった東日本大震災後の現代では、無視できるものなのか、できるならばそれでよく他の防災対策の検証を、できないならば発生した場合への減災への検証を、全てはこの一言に尽きるといえるでしょう。

北大路機関:はるな

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