◆都市部と離島を護る第4師団の装備品展示
福岡駐屯地祭の行事がすべて終了し、当方も次の目的地佐世保へと向かうべく移動を開始しました。
そして、式典終了と共に装備品展示を眺めつつの撤収です。装備品展示は開門と同時に開始されていたのですが、何分初めて足を運ぶ行事ですので撮影位置を考えねばなりません、このためやむを得ず装備品展示は後回しという事で式典会場へ急ぎ、結果素通りした、というはなし。
74式戦車に描かれた第4戦車大隊の部隊マーク、三又が数字の“4”を描き、戦車部隊に相応しい徽章と数字を摂りあわせて仕上げています。74式戦車そのものは広く見ることが出来るのですが、第4戦車大隊の部隊マークとともに、というと、この管区でしかなかなか見ることが出来ない。
93式近距離地対空誘導弾と96式多目的誘導弾システム、高機動車を基本とした機動性の高い、片方は戦術防空システムで片方は戦術地対地ミサイル、特に96式多目的誘導弾システムは北部方面隊の一部師団と旅団に装備されているほかは方面隊装備であるため、壱岐対馬を防衛する第4師団ならではの装備と言えるやも。
96式多目的誘導弾と93式近距離地対空誘導弾の並びを背後から、この96式多目的誘導弾は先日旭川駐屯地祭で観ましたが、この時点では富士学校の装備位しか見たことが無く、実戦部隊の装備としては初めてだったかもしれません、真駒内にはありませんでしたし。
81式短距離地対空誘導弾C型、通称短SAM-C,ちなみにこの装備については、後継の11式短距離地対空誘導弾の装備がそろそろ始まるはずなのですが、最新装備が研究用に導入される高射教導隊へも、今年度の下志津駐屯地祭高射学校記念行事には展示が無く、まだ装備実験隊に配備されているのみ、とおもわれます。
装備品展示、小銃、プライバシー配慮で一部加工してありますが、少年が構えているのは64式小銃、国産初の自動小銃で旧軍の九九式軽機関銃のような短連射での正確な火力制圧が可能な自動小銃をめざし、国産開発されたもの。専守防衛での陣地戦では最大限の威力を発揮できるでしょう。
89式小銃との並び、89式小銃は軽量で最小限の部品点数にて故障が少なく堅牢な設計で知られるアーマライトAR-18のライセンス生産での経験をもとに豊和工業が軽量で瞬発火力に優れつつ、遠距離での命中精度を維持するという相反する難題を前に具現化した小銃です。持ってみると重量が同じという東京マルイのエアガンとは重量バランスが違うのに気付く。
永世中立国スウェーデンが開発した傑作携帯無反動砲84mmカールグスタフ、文字通り小型の大砲で、対戦車用ではありますが、このほか陣地破壊や突撃破砕射撃に照明弾発射と煙幕展開にも活躍します。映画ガメラⅢではイリスに対し第37普通科連隊が使用したものの効果はありませんでしたが、ゴジラvsビオランテでは致命的な生物剤をゴジラ体内へ投射する用途に活躍、宇宙戦争では米軍がバリアーを展開できないトライポットに射撃し、破壊していました。
久留米第4特科連隊のFH-70榴弾砲、何故かこのFH-70とは相性が良いようで、空包射撃の発砲焔常連装備です。しかし、富士総合火力演習では最小射程というに等しい3kmの距離で射撃するため装薬が少なく、その分発砲焔が出ないのが少々残念です。ヤキマ演習場で最大射程射撃を行うと、凄い、のだとか。
化学防護車から96式装輪装甲車に87式偵察警戒車と、横一列に並んでいる様子、我が国は厳しい道路事情から装甲車が小型となり、結果海外製の装甲車を導入した場合公道を走れない、というため、独自の装甲車体系を構成しています。それが横一列に並んでいる。
第4特殊武器防護隊、ハッチ部分に重なってマークが描かれているのが興味深い。こちらの車両も将来的には後継のNBC偵察車へ置き換えられることとなるのでしょうが、前述の車幅制限上、必要な容積を確保しようとすれば車高が大きくなり、これが秘匿性を押し下げるため見つかりやすくなり、厳しいところです。
96式装備装甲車、本車について、構造が凝りすぎて複雑化、車体が不自然に細が無いがた安定性に影響、装甲が近年の車両と比較し厚くない、などなど一部で意見があるようですが、昨年、米軍が横浜港から機動性に優れたストライカー装甲車を饗庭野演習場に持ち込んだ際、車幅が大きすぎ高速道路を自走できず、結果輸送車に搭載し夜間輸送を行ったと聞き、やはり大きい車両は使えない、と痛感しました。
そんな96式装輪装甲車は第4戦車大隊の装備です。実は、大型輸送ヘリコプターCH-47JA一機分の予算で三個中隊と本部中隊所要の96式装輪装甲車が導入できるのですが、我が国は装甲車よりもヘリコプター調達を重視したため、普通科部隊へ装甲車が十分行き渡らず、戦車部隊の本部車両となっているのが実情だったりするところ。
87式偵察警戒車、これまでの特殊でも述べましたが25mm機関砲を武器として威力偵察を行う装甲車です。ただ、この火力と防御力で反撃された場合、生き残れるか疑問ですので、偵察隊へは開発中の105mm砲搭載の機動戦闘車と、複合センサーを搭載する近接戦闘車偵察型を併せ、戦場監視と威力偵察を併せて行うべきと考えます。10式戦車が充分あれば、あの戦車は情報伝送力が大きいので任せられるのですが、ね。
第4偵察隊のマーク、そして発煙弾発射装置を見ますと本車が初期型であることがわかります。初期型は74式戦車と同じこの形式の発煙弾発射器を搭載しており、中期型からは90式戦車と同型の発煙弾発射器となっています。発射時はこの型式の方が派手に煙幕が展開するのですが、後期型の方が前面へ素早く煙幕が展開します。
そして軽装甲機動車、二両に小銃班を分譲させ、木目細やかな火力密度を展開する装甲車ですが、東日本大震災の教訓と今後の島嶼部防衛を考えた場合、電子装置の被膜化による防水措置と、簡易吸気用シュノーケルキットを開発して、揚陸時に海水に沈む程度や渡渉程度は行えるようにするべき、と考える装備です。高機動車やトラックについても同様ですが。
野外手術システム、観閲行進の際にも説明しましたが、この装備は移動式の病院装備なのですけれども、病院法の関係上野戦病院は厚労省の許可が無ければ設置できないため、東日本大震災のあの瞬間までは、この装備は実は移動式の医療実習教材と法的に扱いが同じだった、とのこと。
しかし、東日本大震災では、それまで法的に移動式の手術実習用教材という曖昧な位置づけであったものが、即座に移動病院施設となった、との話を聞き、実は名称や法的位置づけに拘るのではなく、実態さえ整っていえば緊急時には対応できる、と痛感したのを思い出しました。
この装備について気になっていたことは、手術時の感染症対策を確実に行えるのか、という事でしたが、聞いてみますと手術による感染症は野戦病院なので通常の病院のような対策は行言えないが、通常の病院へ搬送していては助からない人命へ究極の応急処置を行うのが、この装備、とのことでした。法律と平時手順を守って死ぬよりは、リスクを冒して人命を助ける、なるほど。
こうしたかたちで、装備品展示を一通り撮影し終え、当方は福岡駐屯地を後にすることとしました。九州で初めての駐屯地祭への展開、そして離島と都市部を抱える第4師団の装備を余すところなく見ることが出来たのは、良い天候とともに非常に意義があるものでした。
第4師団司令部。こうして福岡駐屯地祭詳報は今回を以て完結とします。第1回掲載の2月15日より今回の第12回まで長きにわたりお付き合いいただきありがとうございました。次回からは総集編を経て新しい陸上自衛隊行事詳報掲載へと新展開します、お楽しみに。
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