■超音速のファントム対潜哨戒機
1990年代にロシアが並列複座のSu-32戦闘爆撃機を高速対潜哨戒機へ転用する研究を行っていましたが、1970年代に日本にも同様の研究がありました。
ヘリコプター搭載護衛艦はるな建造が進む1970年代初頭、海上自衛隊では航空集団において新しい防衛体系構築が研究されていたようです。それは高速対潜航空機に関する研究で、海上自衛隊がジェット機を導入する研究はRF-86偵察機の研究以来です。RF-86の研究はソ連海軍へ対潜哨戒機による偵察の限界を痛感しての検討ですが、今回は別視点です。
第四次防衛力整備計画時代の検討過程において海上自衛隊が想定した高速対潜機はF-4戦闘機を転用する対潜哨戒型のF-4戦闘機導入です。F-4戦闘機はマクダネルダグラス社が開発し、当時既に航空自衛隊が要撃機としての運用を開始していた最新鋭機種で、勿論アメリカ海軍でも採用されていますが艦上戦闘機としてです、俄かには信じがたい話でしょう。
高速対潜機F-4の検討は海上自衛隊が洋上を航行する艦艇の捕捉や潜望鏡深度を航行する潜水艦、特に襲撃運動中の潜水艦を捕捉する目的で研究を行ったといい、第四次防衛力整備計画中に最初の10機を導入、運用結果から更に増強する可能性もあったとされ、航空教育体系や整備教育については当面を航空自衛隊からの支援を受ける念頭であったとのこと。
潜水艦を発見する手段ですが、赤外線探知装置を外装式として搭載し、また洋上偵察用に機首か主翼下にカメラを搭載する構想だったとされ、F-4戦闘機というよりはRF-4戦術偵察機に近い運用を想定していた事が伺えます。一説には、潜望鏡深度の潜水艦を赤外線探知装置にて捕捉の場合に音速で急降下を掛けロケット弾攻撃を行う運用を検討したという。
F-4を対潜用途に用いた場合、特に1970年代初頭にはソ連海軍が大量の通常動力型潜水艦を索敵任務用に維持していました。原子力潜水艦が潜望鏡深度を悠長に長時間航行する可能性は低いのですが、スノーケル航行を行う通常動力潜水艦ならば捕捉可能だ。ソ連海軍が大量の通常動力潜水艦を運用した背景には当時急速に配備された対艦ミサイルがあった。
ロメオ級潜水艦は1957年より量産が開始され1970年代初頭には旧式化が進んでいたもののなお十分な能力を有していました、この中で、大洋に展開するアメリカ海軍空母機動部隊などを標定するべく広く潜水艦による索敵網を構築し、その目標情報に基づきミサイル爆撃機やミサイル巡洋艦からのミサイル攻撃を行う、という潜水艦運用があったのです。
高高度からF-4にて潜水艦を発見し、急降下しつつロケット弾攻撃を行えば潜水艦がF-4を発見し潜航する前に撃沈できるのではないか、F-4であればそれだけの速度が発揮できますし、対潜哨戒機に搭載する127mmロケット弾はF-4戦闘機にも搭載可能です、更に潜望鏡深度ならば潜水艦耐圧隔壁を損傷させ、潜航不能の状態へ追いこむ事も可能でしょう。
潜水艦に戦闘機が急降下してロケット弾で潜る前に撃沈、少々無理がある印象は今日では否め無いもの、当時海上自衛隊が運用していた対潜哨戒機、P-2V対潜哨戒機やS-2艦上哨戒機には主武装として127mmロケット弾が搭載されていましたし、国産化されたP-2J対潜哨戒機にもロケット弾は搭載されました。対潜魚雷以上に確実な対潜装備ともいえる。
しかし、問題はないでもありません、戦闘機に搭載する赤外線探知装置で高高度から潜水艦を発見する事が本当に可能なのか、特にF-4は複座戦闘機ですが、対潜哨戒機と比較したらば乗員数は2名に過ぎません、後席はレーダー士官が搭乗しますが、F-4にレーダーは対水上索敵の能力も無く、対潜要員と兼任するも無理があり、実際、実現しませんでした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
1990年代にロシアが並列複座のSu-32戦闘爆撃機を高速対潜哨戒機へ転用する研究を行っていましたが、1970年代に日本にも同様の研究がありました。
ヘリコプター搭載護衛艦はるな建造が進む1970年代初頭、海上自衛隊では航空集団において新しい防衛体系構築が研究されていたようです。それは高速対潜航空機に関する研究で、海上自衛隊がジェット機を導入する研究はRF-86偵察機の研究以来です。RF-86の研究はソ連海軍へ対潜哨戒機による偵察の限界を痛感しての検討ですが、今回は別視点です。
第四次防衛力整備計画時代の検討過程において海上自衛隊が想定した高速対潜機はF-4戦闘機を転用する対潜哨戒型のF-4戦闘機導入です。F-4戦闘機はマクダネルダグラス社が開発し、当時既に航空自衛隊が要撃機としての運用を開始していた最新鋭機種で、勿論アメリカ海軍でも採用されていますが艦上戦闘機としてです、俄かには信じがたい話でしょう。
高速対潜機F-4の検討は海上自衛隊が洋上を航行する艦艇の捕捉や潜望鏡深度を航行する潜水艦、特に襲撃運動中の潜水艦を捕捉する目的で研究を行ったといい、第四次防衛力整備計画中に最初の10機を導入、運用結果から更に増強する可能性もあったとされ、航空教育体系や整備教育については当面を航空自衛隊からの支援を受ける念頭であったとのこと。
潜水艦を発見する手段ですが、赤外線探知装置を外装式として搭載し、また洋上偵察用に機首か主翼下にカメラを搭載する構想だったとされ、F-4戦闘機というよりはRF-4戦術偵察機に近い運用を想定していた事が伺えます。一説には、潜望鏡深度の潜水艦を赤外線探知装置にて捕捉の場合に音速で急降下を掛けロケット弾攻撃を行う運用を検討したという。
F-4を対潜用途に用いた場合、特に1970年代初頭にはソ連海軍が大量の通常動力型潜水艦を索敵任務用に維持していました。原子力潜水艦が潜望鏡深度を悠長に長時間航行する可能性は低いのですが、スノーケル航行を行う通常動力潜水艦ならば捕捉可能だ。ソ連海軍が大量の通常動力潜水艦を運用した背景には当時急速に配備された対艦ミサイルがあった。
ロメオ級潜水艦は1957年より量産が開始され1970年代初頭には旧式化が進んでいたもののなお十分な能力を有していました、この中で、大洋に展開するアメリカ海軍空母機動部隊などを標定するべく広く潜水艦による索敵網を構築し、その目標情報に基づきミサイル爆撃機やミサイル巡洋艦からのミサイル攻撃を行う、という潜水艦運用があったのです。
高高度からF-4にて潜水艦を発見し、急降下しつつロケット弾攻撃を行えば潜水艦がF-4を発見し潜航する前に撃沈できるのではないか、F-4であればそれだけの速度が発揮できますし、対潜哨戒機に搭載する127mmロケット弾はF-4戦闘機にも搭載可能です、更に潜望鏡深度ならば潜水艦耐圧隔壁を損傷させ、潜航不能の状態へ追いこむ事も可能でしょう。
潜水艦に戦闘機が急降下してロケット弾で潜る前に撃沈、少々無理がある印象は今日では否め無いもの、当時海上自衛隊が運用していた対潜哨戒機、P-2V対潜哨戒機やS-2艦上哨戒機には主武装として127mmロケット弾が搭載されていましたし、国産化されたP-2J対潜哨戒機にもロケット弾は搭載されました。対潜魚雷以上に確実な対潜装備ともいえる。
しかし、問題はないでもありません、戦闘機に搭載する赤外線探知装置で高高度から潜水艦を発見する事が本当に可能なのか、特にF-4は複座戦闘機ですが、対潜哨戒機と比較したらば乗員数は2名に過ぎません、後席はレーダー士官が搭乗しますが、F-4にレーダーは対水上索敵の能力も無く、対潜要員と兼任するも無理があり、実際、実現しませんでした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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