北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第三八回》原潜制圧七〇年代ジェット機構想!F-4高速対潜機

2018-03-31 20:12:02 | 先端軍事テクノロジー
■超音速のファントム対潜哨戒機
 1990年代にロシアが並列複座のSu-32戦闘爆撃機を高速対潜哨戒機へ転用する研究を行っていましたが、1970年代に日本にも同様の研究がありました。

 ヘリコプター搭載護衛艦はるな建造が進む1970年代初頭、海上自衛隊では航空集団において新しい防衛体系構築が研究されていたようです。それは高速対潜航空機に関する研究で、海上自衛隊がジェット機を導入する研究はRF-86偵察機の研究以来です。RF-86の研究はソ連海軍へ対潜哨戒機による偵察の限界を痛感しての検討ですが、今回は別視点です。

 第四次防衛力整備計画時代の検討過程において海上自衛隊が想定した高速対潜機はF-4戦闘機を転用する対潜哨戒型のF-4戦闘機導入です。F-4戦闘機はマクダネルダグラス社が開発し、当時既に航空自衛隊が要撃機としての運用を開始していた最新鋭機種で、勿論アメリカ海軍でも採用されていますが艦上戦闘機としてです、俄かには信じがたい話でしょう。

 高速対潜機F-4の検討は海上自衛隊が洋上を航行する艦艇の捕捉や潜望鏡深度を航行する潜水艦、特に襲撃運動中の潜水艦を捕捉する目的で研究を行ったといい、第四次防衛力整備計画中に最初の10機を導入、運用結果から更に増強する可能性もあったとされ、航空教育体系や整備教育については当面を航空自衛隊からの支援を受ける念頭であったとのこと。

 潜水艦を発見する手段ですが、赤外線探知装置を外装式として搭載し、また洋上偵察用に機首か主翼下にカメラを搭載する構想だったとされ、F-4戦闘機というよりはRF-4戦術偵察機に近い運用を想定していた事が伺えます。一説には、潜望鏡深度の潜水艦を赤外線探知装置にて捕捉の場合に音速で急降下を掛けロケット弾攻撃を行う運用を検討したという。

 F-4を対潜用途に用いた場合、特に1970年代初頭にはソ連海軍が大量の通常動力型潜水艦を索敵任務用に維持していました。原子力潜水艦が潜望鏡深度を悠長に長時間航行する可能性は低いのですが、スノーケル航行を行う通常動力潜水艦ならば捕捉可能だ。ソ連海軍が大量の通常動力潜水艦を運用した背景には当時急速に配備された対艦ミサイルがあった。

 ロメオ級潜水艦は1957年より量産が開始され1970年代初頭には旧式化が進んでいたもののなお十分な能力を有していました、この中で、大洋に展開するアメリカ海軍空母機動部隊などを標定するべく広く潜水艦による索敵網を構築し、その目標情報に基づきミサイル爆撃機やミサイル巡洋艦からのミサイル攻撃を行う、という潜水艦運用があったのです。

 高高度からF-4にて潜水艦を発見し、急降下しつつロケット弾攻撃を行えば潜水艦がF-4を発見し潜航する前に撃沈できるのではないか、F-4であればそれだけの速度が発揮できますし、対潜哨戒機に搭載する127mmロケット弾はF-4戦闘機にも搭載可能です、更に潜望鏡深度ならば潜水艦耐圧隔壁を損傷させ、潜航不能の状態へ追いこむ事も可能でしょう。

 潜水艦に戦闘機が急降下してロケット弾で潜る前に撃沈、少々無理がある印象は今日では否め無いもの、当時海上自衛隊が運用していた対潜哨戒機、P-2V対潜哨戒機やS-2艦上哨戒機には主武装として127mmロケット弾が搭載されていましたし、国産化されたP-2J対潜哨戒機にもロケット弾は搭載されました。対潜魚雷以上に確実な対潜装備ともいえる。

 しかし、問題はないでもありません、戦闘機に搭載する赤外線探知装置で高高度から潜水艦を発見する事が本当に可能なのか、特にF-4は複座戦闘機ですが、対潜哨戒機と比較したらば乗員数は2名に過ぎません、後席はレーダー士官が搭乗しますが、F-4にレーダーは対水上索敵の能力も無く、対潜要員と兼任するも無理があり、実際、実現しませんでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成三〇年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.04.01)

2018-03-30 20:08:38 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 桜花爛漫の今日この頃、いよいよ新年度、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 今週末の自衛隊関連行事は、駒門駐屯地祭と川内駐屯地祭が行われます。川内駐屯地は鹿児島県薩摩川内市に所在し、間違えて宮城県の仙台駐屯地東北方面総監部へ行かないようしたいものです。駒門駐屯地は静岡県御殿場市、御殿場線富士岡駅から近くにあります。広い式典会場ではありませんが、戦車の迫力を間近に撮影できる首都圏近郊の駐屯地です。

 駒門駐屯地創設記念行事は、四月一日に実施されます。首都圏を防衛する第1戦車大隊が、第1高射特科連隊駐屯、陸上総隊新設で中央即応集団が発展的に解散し総隊司令部機構へ転換、これに併せ駒門駐屯地の国際活動教育隊が改編移駐します。加えて永らく戦車部隊の教育訓練総本山であった第1機甲教育隊も廃止され、その駐屯部隊の陣容は一変します。

 機甲部隊教育の総本山として、新たに駒門駐屯地へは富士駐屯地より富士教導団機甲教導連隊が新編、移駐します。この機甲教導連隊は戦車教導隊と偵察教導隊という機甲科職種二大任務を統合し新編される連隊で、10式戦車、16式機動戦闘車、90式戦車、筆頭に優秀装備を集約した新しい時代へ対応する新しい連隊です。多数の戦車の雄姿が期待できる。

 川内駐屯地は第8施設大隊が駐屯する駐屯地です。第8師団は3月31日の師団改編により即応機動連隊を新編する機動師団へ改編完了直後の陣容であり、師団には西部方面隊派遣部隊と併せ、10式戦車、16式機動戦闘車と理想的な優秀装備が揃っており、施設大隊の展示と共に機動師団の各種装備がどのように展示されるかも、なかなか興味深い所ですね。

 この他、全国の駐屯地では桜開花時期に併せて駐屯地さくら祭が実施されます。さくら祭は、例外的に駐屯地創設記念行事を併せて実施する場合もありますが、多くは桜並木の一般公開です。日時は決まっており、時間帯も部隊HP等で確認しなければ時間外は立ち入ることはできませんが、61式戦車等保存装備品と桜並木、という情景に出会えるでしょう。

 さて撮影の話題、自衛隊行事とホテルの確保、インターネットカフェやサウナについて。サウナですが、実は当方、神戸では相当利用しています、カプセルホテル併設のサウナで三ノ宮駅から近いサウナ、もちろんJRの新快速で帰ってしまえば神戸に一泊する必要もないのですが、神戸空港早朝利用時や深夜利用時、自衛隊撮影では練習艦隊入港や会合のついでなど、使う。

 三ノ宮のサウナは終電を逃した時に利用するだけではなく、神戸へ所用の際にちょっと時間が空いた時などは、サウナの露天風呂と円形大浴場が非常に快適で、若干お値段高めですが数時間滞在、気分爽快一新躍進、とさっぱりしたものです。カプセルにはTVが標準装備で喫煙所ではデジタルBS放送も受信出来、深夜アニメさえ楽しめるという神戸最高だ。

 ただ、サウナ併設カプセルホテルの難点は、神戸でさえ当たり外れがあるという点、そして確実に宿泊できるか、ということ。特に繁忙期や周辺で大きな行事がある際にはカプセルホテルが満室となってしまうこと、神戸では無かったのですが札幌では数多く遭遇しました。インターネットカフェ、は代替案で、学生時代に東京で何度も使っていますが、最近ですと辛いという正直な感想ですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・4月1日:駒門駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/
・4月1日:川内駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【12】EA-18Gグラウラー,無人機と長距離対空ミサイルを対処

2018-03-29 20:05:02 | 防衛・安全保障
■何故いまEA-18Gグラウラーか
 EA-18Gグラウラー,今までの自衛隊装備体系に無い新装備であるとこれまでに強調しましたが、これが何故いま必要になったのか、その理由は端的に言えば今までにない脅威へ対処するため。

 電子攻撃機導入の背景には、S-500地対空ミサイルに代表される大陸外苑から日本本土を射程とする地対空ミサイルの脅威、日本本土へ脅威を及ぼす核弾頭搭載弾道ミサイル基地への策源地攻撃能力の必要性、島嶼部防衛等限定侵攻に際しての通信システム妨害という専守防衛上の要求等が考えられますが、もう一つ、無人機対策という喫緊課題もあります。

 EA-18G電子攻撃機であれば、我が国防空識別圏から領空侵犯の可能性がある無人偵察機に対し、進路変更や、場合によっては誘導も可能となるでしょう。電子頭脳で飛行する無人偵察機に対し、要撃機を飛行させ、中国語やロシア語の無線で呼びかけても反応は期待できませんが、無人機へ電子攻撃機の電子の声で呼びかける、構図としてはこういったもの。

 無人偵察機、特に今後大きくなる課題は高高度滞空型無人機による南西諸島方面への領空侵犯事案です。具体的には従来の対領空侵犯措置任務での要撃機緊急発進では、無人機への通信は勿論、誰何に応答する可能性も低く、技術的自由や政治的主張と共に領空侵犯を常態化される可能性があります。また滞空型無人機が長時間滞空した場合、要撃が難しい。

 滞空型無人機としてはアメリカ空軍が運用するRQ-4無人偵察機、その海軍型のMQ-4無人偵察機などが36時間もの滞空時間を有する代表的な機種ですが、中国は現在、機体規模や形状が非常によく似た、この中で重要なのは滞空時間がどの程度であるのかが未知数という点ですが、同様の運用を期した滞空型無人偵察機開発を兵器見本市にて発表している。

 南西諸島等へ長時間領空侵犯事案が発生した場合、仮に進出時間から滞空時間が24時間とした場合、南西諸島の那覇基地や南九州から24時間連続し、特定空域での監視活動を継続する事は非常に困難で、同様の滞空型無人機が複数機同時飛来した場合には、対抗措置として我が国も滞空型無人機を当該機発進基地偵察に充てるか、無人機撃墜かを迫られます。

 中国は実際、過去には無人偵察機を南西諸島周辺海域において運用し、南西諸島への領海侵犯事案へ発展の危惧があった時期もありました。しかし、アメリカ海軍が厚木航空基地より嘉手納基地へEA-18G電子攻撃機の前方展開と訓練を開始するのとほぼ同時期に、無人偵察機の出現頻度が著しく低下しています。これは電子攻撃機のポテンシャルのひとつ。

 勿論、滞空型無人機に完全AI人工知能による自己判断能力が付与され、慣性航法能力と地形照合装置を強化し、電子妨害やGPS等による電子標定能力を一切必要とせず、通信が途絶し電子妨害を受け誘導された場合でも航空機接近を自己判断で回避、任務飛行と往復飛行をAIのみで自律飛行できる、究極の無人機が完成した場合はEA-18Gでは対処が難しい。

 ただし、これは極論というもので、ここまで性能が向上した場合、有人戦闘機か無人戦闘機という、現在最新の第五世代戦闘機は勿論、第六世代戦闘機以降の技術、恐らく第七世代戦闘機の時代に入らなければ実現しない技術水準でしょう。従って、それまでの間、無人偵察機による南西諸島等への接近へ対応する、EA-18Gのような航空機は必要といえる。

 グレーゾーン事態として、滞空型無人機による異常飛行の頻繁化も考えられます。例えば滞空型無人機は滞空時間が24時間を超える機種については低速でも南西諸島のみならず本州太平洋岸での滞空が可能です。防空識別圏内を飛行された場合、打つ手なしでは飛行情報区の航空安全確保もままならず、問題が顕在化する前に施策を講ずる必要があるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】神泉苑,桓武帝行幸京の水源は秀吉聚楽第造営と家康二条城造営に神域を譲る

2018-03-28 20:09:39 | 写真
■古京都湖を讃える静寂の神泉苑
 古京都湖。二条城は国内外の観光客で日々喧騒の極みにある城跡ですが、指呼の距離に城郭へ神域を譲った京都はじまりの水源があります。

 神泉苑、京都市中京区にある東寺真言宗の寺院です。二条城に隣接していまして、地下鉄東西線二条城前駅のすぐ隣にある寺院です。二条城は京都中心部の城郭ですが、新二条御所が置かれていた場所を豊臣秀吉聚楽第造営と徳川家康二条城造営により変貌しました。

 弘法大師空海が創建した寺院の一つに数えられ、神泉苑創建年は天長年間824年と千年以上の歴史を持つ寺域が広がります。そして寺院ではありますが元々は法成就池を中心に平安京大内裏に接して造営された禁苑であり、京都御所の池庭園と同じ位置づけの神域です。

 桓武天皇が行幸した、として神泉苑は歴史書に記されており、神泉苑創建年が京都平安遷都よりも長い歴史を持つと共に弘法大師空海、桓武天皇、という歴史と所縁を感じる事が出来る寺院です。しかし神泉苑は鳥居から法成就池に繋がる趣は神社の景に近いものです。

 古山城湖、古京都湖とも呼ばれる湖がこの神泉苑法成就池となっています。古山城湖は京都盆地の中央にかつて位置していた湖で京都盆地の平安遷都に際して重要な水源となりました。古山城湖、今は無く、しかし二条通と三条通に至る広大な水域を有していたという。

 法成就池は日照りの年でも枯渇する事は無く、竜神善女竜王が住むとされました。天長年間には干ばつの大被害を受け、東寺の空海と西寺の守敏という二人の高僧により雨祈祷を行い、実際雨が降ったとも言われ、僧侶による雨乞い神事の原型は此処から始まったとも。

 花見の始り後の一つとも言われていまして、善女竜王社が浮かぶ法成就池と朝廷行事としての始りも、歴史書の日本後紀によれば、嵯峨天皇が弘仁年間に神泉苑にて花宴の節料理を並べたと記録があり、花見にあたる行事が朝廷に記録された最初の場所ともされます。

 祇園祭も貞観年間の863年、疫病による多くの犠牲者を受け律令制度の国の数に当たる66の鉾を八坂神社からから御輿と共に洛中を法成就池へと巡幸し、疾病祓いを祈念しており、ここが祇園祭の原型と言われます。祇園祭では今日も中御座の御神輿が境内渡御します。

 源義経と静御前出会いの場とも伝承され、日本史にはこの神泉苑が幾度も記されます。しかしその割には慶大が狭い、と思われるかもしれませんが、これは二条城造営によるものです。防御と威風の要である堀の水源は京都洛中には法成就池しかなかったのでしょう。

 神泉苑大部分は二条城取り込まれ、法成就池の水源は二条城水源に取られてしまいました。現在では小さな社と泉が広がるのみですが、神泉苑はもともと現在の二条城、その南半分にあたる広い寺域を有していた訳ですね。これにより神泉苑は大きく荒廃してしまいます。

 弘法大師との縁により江戸時代初期、荒廃する神泉苑の復興が始まります。現在は寺院であっても神社の情景を強めているのは、江戸初期の復興に際し同じ真言宗の寺院である東寺との関係を結んだためでして、寺領四十石を受け現在の神泉苑造営の始りとなりました。

 恵方社として神泉苑は恵方を祀りますが、神泉苑の祀は他の寺社とは独特の様式を有している点が興味深い。大歳神として恵方を祀る神事は京都でも行われていますが、毎年大晦日宵の口、神泉苑では恵方へ祠の向きを巡らせる様式を執り、神泉苑での独特のものです。

 二条城は世界遺産であり、徳川家康が最後に造営した城郭、そして大政奉還という歴史上の大転換となった歴史舞台を今日に伝える美しい城郭ではあるのですが、そのすぐ隣には神泉苑という、花見や祇園祭という文化の大転換となった歴史舞台が静かに佇んでいます。

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朝鮮半島有事邦人救出検証(3)有事想定,北朝鮮南侵能力の低下とソウル射程圏の巨大砲兵脅威

2018-03-27 20:15:42 | 国際・政治
■韓国軍強化と自衛隊能力向上
 5万7000名の邦人といいますと、無理難題のように見える救出ですが、それでも1994年朝鮮半島危機よりは状況は幾分改善されています。

 朝鮮半島有事に際し、北朝鮮軍による大規模機甲部隊侵攻の蓋然性が高かった当時は、特に軍事境界線から70kmの位置に韓国最大の都市である首都ソウルがあり、邦人救出任務を展開するには、例えば輸送艦おおすみ型を運用した場合でも、CH-47J輸送ヘリコプターに護衛として機関砲を搭載したAH-1S対戦車ヘリコプターの護衛が必要だったでしょう。

 1994年朝鮮半島核危機に際しては、海上自衛隊には輸送艦みうら型、満載排水量4000tの輸送艦が主力であり、満載排水量14000t、航空機運用能力さえ有する輸送艦おおすみ型の竣工は1998年まで待たねばならず、とても多数の邦人救出は叶わないものでした。おおすみ型輸送艦就役により輸送能力は強化されましたが、それだけでは邦人救出はできません。

 北朝鮮軍の保有戦車数は4000両以上、韓国軍の保有戦車は2800両です。戦車定数が300両という陸上自衛隊からは非常に多く見える規模ですが、北朝鮮軍はT-62戦車の改良型を主力としており、基本設計は旧式ながらライセンス生産を実施しており、砲塔部分を再設計、部分的に複合装甲の採用が分析される等、比較的手堅く強力な戦車を志向しています。

 しかし、1994年当時と比較し、2018年の時点では戦車部隊による大規模な韓国侵攻の蓋然性は低くなっています。一つは韓国軍に1994年当時の主力戦車M-48A5やK-1に代えてK-1A1や最新K-2戦車の開発、そしてもう一つは北朝鮮の石油備蓄能力が非常に限られている状況です。現状ではソウル占領、続き韓国全土の電撃占領等、とても不可能でしょう。

 国連経済制裁の強化により核開発及び長距離ミサイル開発を継続する限り、北朝鮮は石油関連資材の輸入制限が厳しく制限され、第三国沖からの洋上での密輸も海上自衛隊哨戒機による警戒強化により非常に厳しくなっています。機甲部隊は当然燃料消費量が大きく、石油関連物資の供給が制限される以上、戦車部隊の大規模運用には燃料問題が付きまとう。

 邦人救出任務を展開する場合、北朝鮮軍がソウル侵攻を第一とする場合には自衛隊救出部隊と北朝鮮軍戦車の遭遇という懸念が払しょくできず、特にCH-47J輸送ヘリコプターは陸上自衛隊と航空自衛隊が運用する一方、米陸軍や韓国陸軍のCH-47D輸送ヘリコプターと外見が共通しており識別が難しく北朝鮮軍から誤射を受ける可能性が低くはありません。

 2018年朝鮮半島危機では、勿論備蓄燃料を全て放出する覚悟でソウルへの直接侵攻を試みる可能性は否定しないのですが、1994年当時ほどの優位性はありません。そこで可能性として高いのは、6000門という砲兵火力を集中してのソウル北方への大規模砲撃、長距離ロケット弾によるソウル中心部への攻撃でしょう。砲兵火力では北朝鮮軍に優位性がある。

 K-9自走榴弾砲や中古MLRS多連装ロケットシステムの大量調達等、韓国軍も北朝鮮砲兵火力への対抗策を強化している最中ですが、首都圏が軍事境界線に近いという不利は拭えません。北朝鮮軍は砲兵火力を朝鮮戦争休戦以来、掩砲所建築等堅固な陣地を構築し続けており、火砲総数も含め、米韓連合軍も短期間で無力化できるようなものではありません。

 朝鮮半島有事にはこの砲兵火力優位を発揮しない理由はありません、この為、在韓邦人が非常な危険にさらされる事は確かな問題ではあるのですが、それでも、邦人救出任務を展開する際、間近に戦車が照準を加えてくる状況よりは幾分か難易度が下がるもので、あまり悲観的にならず、邦人保護の取り組みを研究、日韓政府間の調整も含め検討すべきです。

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【11】EA-18Gグラウラー,最強F-22ラプターに初戦で勝利!

2018-03-26 20:05:25 | 先端軍事テクノロジー
■EA-18G,卓越した空戦能力
 防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。NHKにて気になる報道があり、F-35B&EA-18G、二つの新しい装備体系が具体的に動き出すもよう。

 EA-18G電子攻撃機、戦闘機としても強力な機種です。電子攻撃装備はAN/ALQ-99 TJS戦術妨害装置とAN/ALQ-218-V2無線周波受信システムにCCS対通信装置、全て主翼に電子戦装置として搭載されていますが、F/A-18E/Fと同じAPG-79AESAレーダーを搭載し、AIM-120D-AMRAAM空対空ミサイルにて180km先の戦闘機を攻撃する事も可能です。

 原型のF/A-18F戦闘機は航空自衛隊のF-4EJ戦闘機後継選定、F-X選定においてボーイング社が提示した二機種の一つでした。候補機はロッキードマーティン社製F-35A戦闘機、BAE社製の欧州国際共同開発EF-2000戦闘機など。実はF/A-18Fは財務省と防衛省の一部が有力視していた、とも伝わりまして、理由は高性能の第4.5世代機ながら安価、という。

 F-15E戦闘爆撃機、実はボーイング社がF-X選定に提示していた機種はF/A-18E/Fの他にF-15Eがありまして、ボーイング社は一本化しなければ支持が分散するとの懸念から、将来的にF-15SEとしてステルス化する事も可能で、航空自衛隊が運用しているF-15J戦闘機と比較し、他候補よりも運用面などで共通化する部分が多く、爆撃能力の高さで推した。

 F-35戦闘機がこの候補の中で唯一の第五世代戦闘機であることから、当時はF-35戦闘機の開発が相次ぐ開発期間遅延により、相当割高になっている最中ではありましたが最終的にF-35Aに決定したことはご存知の通り。しかし、F/A-18E/Fならば限られた防衛予算でも毎年多数を調達でき、短期間でF-4EJを置き換えられたのでは、という声もあるにはある。

 F-22戦闘機、アメリカ空軍が誇る世界最強の第五世代戦闘機で、F-15C戦闘機との模擬空中戦では220対1という驚異的な戦勝記録を持つステルス戦闘機ですが、実はEA-18Gは初の異機種間模擬空戦においてF-22を撃破判定に追い込んだ実例があります。海軍ではF/A-18Eが苦杯を並べていた中で、派生型EA-18Gは初登場で呆気なく勝利を勝ち取った。

 AN/ALQ-99 TJS戦術妨害装置とAN/ALQ-218-V2無線周波受信システムがF-22の勝利立役者で、この話は少し面白いのですがF-22のAPG-77レーダーを妨害しEA-18GがF-22から見えない状態とした為です。もっともAPG-77には対抗電子戦装置という、電子戦を挑まれた際には即座に解析し対抗手段を構築し逆に電子戦を仕掛ける能力があるのですが。

 APG-77の対抗電子戦能力よりもALQ-99 TJS戦術妨害装置の妨害能力が勝っていたようで、勿論この種の電子戦装置と対抗電子戦装置は数か月単位でアップデートを行い双方が日進月歩、改めてF-22とEA-18Gが空戦を行った場合にEA-18Gの勝利は確証されていないのですが、初戦ではEA-18Gの方がアップデートを先に行っていた功名があった、とも。

 EA-18GはF-22のAPG-77電波を辿り、ステルス機はレーダーに映らない設計であるもののレーダー波を感知したわけですね。一説にはF-22が編隊間で行うデータリンクをEA-18GがALQ-218-V2無線周波受信システムにて辿った、とも言われています。目に見えないだけに難しい視点ですが、兎も角、EA-18GがF-22へ金的のように打ち勝った、と。

 日本へアメリカがEA-18Gを販売する可能性が生じたからこその、今回報道と考えられるのですが、実はもう一つ、ボーイング社とアメリカ政府の事情があります。ボーイング社は戦闘機を製造するセントルイス工場を維持するにはF/A-18E/FやF-15Eを生産し続ける必要がある一方で既に必要数製造完了、この為に輸出先を開拓する意図もあるのでしょう。

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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【03】普通科教導連隊行進(2017-07-09)

2018-03-25 20:11:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■勇壮!89式装甲戦闘車の行進
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭、実は本文が2013年行事紹介用に作成したもので、写真選定に先立ち作成した為、若干本文と写真の乖離をご容赦ください。

 89式装甲戦闘車、高性能の一方調達開始が冷戦終結直前とあり少数配備に留まっています。他方、この次に行進します軽装甲機動車は大量に配備されました。小型ですので小銃班7名は乗車できませんが、一個小銃班が2両に分乗、軽量ですのでヘリコプターによる空輸も可能です。実際、配備開始と同時に同年の富士総合火力演習では輸送ヘリコプターにより空輸が展示されました。

 機甲歩兵として例えばドイツ連邦軍などは装甲戦闘車を戦車と同じ装甲兵科としているのが迫力だ。さて、普通科部隊の象徴というべき軽装甲機動車、勿論、数が多く部隊当たりの配備数も多い事は整備負担や運用負担も大きいのですが、機動力をもって分散と集合が迅速に行えるのです。負担といえば、1個班で常時運転手と車長が2名づつ必要になり休めない、という。

 元々は350両が北部方面隊へ配備される予定でした。一方軽装甲軌道車、小型装甲車として、フランスのVBL軽野戦車やドイツのウィーゼル空挺装甲車を参考として研究、下車戦闘を重視するべく装輪小型装甲車に扉を多数配置した国産車両を開発する方針が示され、小松製作所により開発されました。大量生産により単価も2700万円ほど。

 軽装甲機動車の話題ですが、一方でPKO任務等では装甲戦闘車のような装備の必要性が高まっている。国際平和維持活動など自衛隊の海外での任務では必須の車両となっていまして、初陣はイラク復興人道派遣任務、以来自衛隊海外派遣では常連となり、南スーダンやジブチ自衛隊航空拠点へも派遣されました。輸送車両の警護から巡回任務まで幅広く運用されています。

 普通科教導連隊第3中隊は高機動車を装備する部隊です、高機動車は陸上自衛隊全般から広く支持されている汎用車両で、多数を積めて車内に余裕もあり高速で移動でき故障が少なく乗り心地がいい。先頭を往く1/2tトラックはコータム無線機を装備していますね。

 高機動車は1992年より、普通科部隊自動車化の中枢として導入されたもので、1t半トラックにより移動していた普通科隊員の機動力を大きく向上させました。1t半トラックは73式中型トラックと旧称されたもの。高機動車は民生品を多用し部隊使用許可を受けています。実のところ、この車輛が揃うまでは大変だった、師団輸送隊のトラック支援も必要でしたからね。

 本文を作成した後に写真を選定した為に少々写真の順番が異なる事についてご容赦を。高機動車について、悪い話を一つとしてきかない、というところが実情で、唯一の苦情は、もっと数が欲しい、というもの。トヨタ自動車製で毎年400両ほどが量産されています。一両当たり量産開始当時は1200万円と高価でしたが、現在は量産効果で650万円ほど。

 軽装甲軌道車は2000両という水準ですが高機動車は更に多く、3000両以上が生産され、まだ生産が続いています。長距離機動の場合には基本10名が乗車し、うち1名が操縦手で1名が車長、残る8名は休憩できます、1/4tトレーラをけん引し、必要な装備を携行する事が出来ますし、国際活動型として装甲を施したものもある。

 装甲車である軽装甲機動車に対し、高機動車の車体はFRP製で防弾性は全くありません。そこで高機動車は敵と接触する前に下車戦闘に移る必要があります。基本的に敵の有無は連隊の情報小隊や師団旅団の偵察隊に任せ、敵部隊と接触する前に下車、普通科隊員は地形防護を最大限活かし戦闘展開させてゆきます。

 汎用性の面から軽装甲軌道車を見ますと、特にヘリコプターによる空輸などを考えた脚気小型すぎるとの指摘があります、一方で高機動車は120mm重迫撃砲牽引車、96式多目的誘導弾、中距離多目的誘導弾、93式近距離地対空誘導弾、低空レーダ装置P-18,発煙機3型、数えきれないほどの派生型が配備され、自衛隊の友というべき車両となりました。重心が低く安定性が高い故の汎用性と云えます。

 続くのは普通科教導連隊第4中隊の観閲行進、96式装輪装甲車を装備しています。もともとは全国の普通科連隊第4中隊へ装備すべく安価にまとめた装甲車ですが、360両ほどしか生産されていません。汎用装甲車ですので冷戦後の脅威多極化を考えれば1000両以上必要ですね、自衛隊が1200両あった戦車を300両で充分として戦車を削減したのですから、対戦車隊の整備費用をそのまま装甲車中隊へ置き換えても良かったように思う、これができないのは戦車脅威がある最中に戦車を減らした為の高価な代替案といえる。

 小銃班に複数車輛を配備させるのが軽装甲機動車ですが、96式装輪装甲車は10名を乗車させ機動に用いる装甲車両で、概ね重機関銃に耐える25mm程度の装甲を有しています、車幅が日本の道路事情に対応すべく抑えられており、C-17輸送機ならば一度に6両が輸送可能、こう書くと期せずして戦略機動性の高さが見えてくる。

 96式装輪装甲車の基本設計は車高を抑えた形状も特色で、これは日本本土で専守防衛として運用する場合に敵に見つかりにくいという利点があります、装輪装甲車という設計は車輪の大きさに車軸の高さが制約されるため、設計上どうしても車高が高くなりがちです。

 自衛隊車両全般にもいえる事ですが、車高を抑えた事で見つかりにくくなりましたが、その分は地雷への防御力に限界があると指摘されています。ただ、これはそれ程重要な問題とは言えません。地雷はこちらの武器、専守防衛では地雷はこちらが仕掛け遅滞行動するものという実情を忘れてはなりません。

 理想としては、普通科連隊4個中隊のうち、3個中隊に96式装輪装甲車を配備し、1中隊に斥候とl火力の機動運用手段となる軽装甲機動車を配備するところでしょうか、各中隊に14両を配備し、連隊本部にも配備した場合は一個連隊だけで合計45両が必要となります。

 高機動車は開発当時一両1200万円と云われましたが96式装輪装甲車も開発当時は一両1億2000万円といわれていました、しかし長期的に量産しますと量産効果が徐々に大きくなる。量産が進んだことで一両当たり9600万円程度に抑えられており、安価として知られるアメリカのストライカー装甲車が140万ドルを要する事と比較すればかなり費用を抑えられたといえるでしょう、もっと生産すべきと思うのですが現在は新型装甲車が開発中とのこと。

 高機動車の背後に96式装輪装甲車が。96式装輪装甲車に欠けているのはコンセントでしょうか。充電というと現在自衛隊では将来戦闘用に各種情報端末を普通科隊員個々人へ配備させる方向で装備開発を進めています。すると最前線で重要課題となるのは充電で、装甲車には充電拠点としての意味が加わる。

 新型装甲車は96式装輪装甲車よりも車体を若干大型化し、更に車体の車高を大きく撮り車内容積を拡大すると共に、国際協力任務への対応を念頭に地雷などへの防御力強化構造を採り、更に車高が大きくなりました。現段階では機動連隊などへ大量生産されるという。

 国際平和維持活動は現在、南スーダンからの撤収により全任務を完了しています。要因は治安悪化とともに文民保護等の戦闘を想定される状況へ派遣できないというもの。仮に新型装甲車が地雷防御出来ても、安全保障関連法制整備後でも現行法では用途がありません。大量生産される装備、という視点もそもそもこの高機動車に続き96式装輪装甲車は全国の普通科連隊へ一個中隊程度は配備される予定でしたので、申し訳ないが実現するかは信じられない。

 96式装輪装甲車、継続は力なりと云いますので、無理に新型を開発せず、現行型を基本とし、輸送能力が不足するのであれば1/4t牽引車を高機動車の様に引っ張ればよい、と思う。更に近代化するのであればRWS遠隔操作銃搭として暗視装置と火器管制装置に12.7mm機銃を一体化したものを搭載し、車内容積が足りないならば対戦車ミサイル等を車上発射架搭載等とし、充電設備や電気系統を改良する事で十分対応可能と思うのですがどうでしょうか。

 96式装輪装甲車に続いて実施されるのは普通科教導連隊対戦車中隊の観閲行進、79式対舟艇対戦車誘導弾と中距離多目的誘導弾が配備されています。79式対舟艇対戦車誘導弾と中距離多目的誘導弾は前者に対し後者が後継装備という扱いで、世代は幾つも異なりますが新旧装備が混成運用されている訳ですね。

 対戦車隊としてその昔、陸上自衛隊の師団には16セットの79式対舟艇対戦車誘導弾が配備されていました。この1セットには発射器と弾薬車輛が付、初度携行弾薬として12発を装備していました。即ち、対戦車隊全体で192発の対戦車ミサイルを装備していました。

 師団長最後の手札、と言われていまして、自衛隊では草創期より対戦車ミサイルの国産化を努力しています。最初の64式対戦車誘導弾はワイヤーを通じ十字釦と双眼鏡で命中させる高い練度が要求されましたが、79式対舟艇対戦車誘導弾は赤外線半自動誘導で狙い易い。

 96式装輪装甲車の背景、対戦車隊についての写真は次回紹介します、79式対舟艇対戦車誘導弾は通称重MAT,上陸用舟艇の撃破用HE弾頭と戦車撃破用のHEAT弾頭が開発され射程は4km、対戦車用としては弾頭が大型で威力が大きい。対戦車隊から一部師団普通科連隊対戦車中隊へ移管、自衛隊では240セットが調達されました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【7D特報】横須賀基地軍港巡り,日米全通飛行甲板母艦と米ミサイル巡洋艦隊(2018-01-08)

2018-03-24 20:04:06 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■新春に憩う横須賀基地日米艦艇
 横須賀軍港めぐり遊覧船、EOS-M3撮影写真に続いてEOS-7Dmark2にて撮影の写真を紹介しましょう。

 7D特報、横須賀軍港巡り遊覧船20180108、20“18”年に併せ1月8日に乗船してまいりました。この日は三連休最終日となっていたのですが、おりしも低気圧の影響で列島全土は大荒れ予報、北日本では風雪や着氷への警戒を促す気象庁予報が出ていたところです。

 横須賀軍港巡り遊覧船は毎日運航されている横須賀基地周遊観光船で、2010年ごろまでは夏期のみ季節運航でしたが、乗船希望者の増大を受け、横須賀市と海上自衛隊や日米海軍交流協会、アメリカ海軍との調整を経て毎日運航が実現しました。多数の艦艇が見られる。

 京浜急行汐入駅からショッパーズプラザと横須賀基地を望見するヴェルニー公園方面へ歩みを進めますと、横須賀軍港巡り遊覧船の看板が見えてきます。遊覧船はカフェを兼ねた受付で乗船券を販売、一日五便が運航されていまして、Web予約や電話予約も可能です。

 DDH183ヘリコプター搭載護衛艦いずも、DD107護衛艦いかづち、DD101護衛艦むらさめ、AOE423補給艦ときわ、DDG171ミサイル護衛艦はたかぜ、DD152護衛艦やまぎり、護衛艦隊の精鋭だけで、吉倉桟橋、逸見桟橋を巡りますと、これだけ停泊していました。

 いずも型護衛艦については軽空母運用を想定した改修が防衛計画の大綱改訂や中期防衛力整備計画へ盛り込まれるとの報道が続いています。ヘリコプター搭載護衛艦最大のポテンシャルは多種多様な航空機を搭載する事で多様と任務に対応する事ですので妥当です、が。

 F-35B戦闘機搭載に関しては賛同するのですけれども、改修となればスキージャンプ台設置などが行われるいずも型を改修する必要はそれ程大きいのかな、とも考えます。ヘリコプター搭載護衛艦には平時の警戒監視任務があり、なかなか運用を抜ける事は出来ません。

 アメリカ海兵隊などは垂直離着陸型のF-35B戦闘機をスキージャンプ台を用いず90m程度の短距離滑走の上で発艦させている、その程度の滑走距離で充分な兵装を搭載出来る事を意味し、いずも型は勿論、90m短距離滑走は、ひゅうが型でも可能です、そのままでよい。

 護衛艦へのF-35B搭載については、まず自衛隊がF-35Bを取得しなければ始まらず、どれだけ早くとも日本にF-35B初号機到着は、例えば来年度予算補正予算に調査費や研究費と併せてF-35Bの機体購入費が計上されるような緊急取得でも、概ね五年後となるでしょう。

 軽空母運用を急ぐならば、改修という手間を省いて、先ずは岩国航空基地に前方展開するアメリカ海兵隊第一海兵航空団のF-35Bを評価試験という形で護衛艦へ着艦させる事が先決でしょう、運用能力を明確にするだけでも、護衛艦の抑止力全般は高まると考えます。

 DDG174きりしま、海上自衛隊が8隻運用するイージス艦の一隻が横須賀基地を母港としているのですが、北朝鮮による弾道ミサイル攻撃の恫喝や弾道ミサイルによる太平洋上核実験の示唆を受け、イージス艦は日本海上にて警戒中、きりしま、この日いませんでした。

 DDG54カーティスウィルバー、DDG65ベンフォード、CG67ミサイル巡洋艦チョーシン、DDG89ミサイル駆逐艦マスティン、DDG85ミサイル駆逐艦マッキャンベル、CG62ミサイル巡洋艦チャンセラーズヴィル、CG56ミサイル巡洋艦サンジャシント、イージスが並ぶ。

 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦はアメリカ海軍が初めて実用化したイージス艦として知られます。イージスシステムは1980年代より発展を続けてきましたが、常に世代ごとに、変容を続け、恰もパソコンの基本ソフト、WindowsOSのように着実に進化を続けています。

 巡洋艦が二隻並ぶ様子、世界では巡洋艦は年々減少し、貴重だ。アメリカ海軍のタイコンデロガ級、ロシア海軍のスラヴァ級、キーロフ級、等に限られています。最も14000t規模のズムウォルト級駆逐艦や中国が建造中の055型駆逐艦は巡洋艦に区分すべきでしょう。

 AGS6102試験艦あすか、AGS5105海洋観測艦にちなん、AGS5106海洋観測艦しょうなん、MST463掃海母艦うらが、MS304掃海艦あわじ、支援艦艇や特務艦も船越地区に多数が停泊していたほか、潜水艦の16隻から22隻への増勢に併せ桟橋工事の様子も見られました。

 アメリカ海軍横須賀施設、所謂アメリカ海軍横須賀基地とヴェルニー公園の中間を航行して遊覧船の旅路は始まります、日米の艦艇を望見しつつ、運が良ければ陸上からは見えにくい航空母艦の桟橋に原子力空母ロナルドレーガンが停泊しているのをみられるでしょう。

 ニミッツ級原子力空母ロナルドレーガン、五年間最高速力で航行を継続できると共に75機の空母艦載機を駆使し、1000km以内を早期警戒機と戦闘攻撃機による勢力圏内に収める事が出来、F-35B,続くF-35Cの搭載によりステルス機による航空打撃戦闘も可能となります。

 ロナルドレーガン、乗員は5000名以上、空母戦闘群を構成する場合はイージスシステムを搭載したミサイル巡洋艦とミサイル駆逐艦が周辺を航空攻撃は勿論弾道ミサイル攻撃からも防護し、海中では前衛を攻撃型原潜が継続し実施、その威力は勿論、費用も絶大です。

 空母は、しかし冷戦終結当時にはアメリカ海軍は15隻を運用していましたが、維持費の増大と艦載機の高価格化により現在は10隻にまで減退、海軍は12隻の保有を求めています。一方、後継のジェラルドフォード級原子力空母は遂に建造費が100億ドルとなり、難しい。

 アメリカ級強襲揚陸艦として航空部隊の揚陸作戦を実施する新型艦の整備を開始し、将来的には12隻を整備し、F-35B戦闘機と搭載、航空母艦の補完に当たる構想で、満載排水量は後期型で50000tを越える大型艦となりますが、早期警戒機などの搭載は出来ません。

 日本海へ北朝鮮への核開発放棄を求める圧力としてアメリカ海軍は原子力空母三隻を集中運用する久々の空母外交を展開しましたが、その分定期整備が一度に重なる事となり、集中運用後空白期間が懸念するところです。空母が今後どう発展するか、興味は尽きません。

 旧帝国海軍が掘削した吾妻島へ海上自衛隊の吉倉桟橋と逸見桟橋左手に遊覧船は航行します。ここで運が良ければ艦船入港の瞬間と出会えたり、また、日米以外の幹線が親善訪問する様子を見ることもできます。そして船は吾妻島沖を長浦湾の船越地区へと向かいます。

 船越地区には自衛艦隊司令部が置かれるとともに、掃海母艦や機雷戦艦艇、海洋観測艦などが入港しています。また横須賀地方隊の輸送艇等も船越地区に係留されていまして、遊覧船はかなり奥の方まで進み、除籍後留置やえやま型掃海艦の間近、これは貴重な情景だ。

 吉倉桟橋は吾妻島との水路を通り最後に航行します。横須賀基地一般公開にて一般に開放される横須賀の象徴のような桟橋です、昨今は逸見桟橋の完成しましたが、外洋に向け即座に出航できるよう護衛艦が並ぶ様子は印象的です。JR横須賀線からも一瞬は眺められる。

 アメリカ海軍のイージス艦多数入港、アメリカ海軍の大型水上戦闘艦に関しては全てイージス艦となっており当然ですが、日本近海での実任務増大を受け海軍作戦部長が必要としていた艦艇増強が叶った形、日本のイージス艦は出航、厳しい現状を考えさせられました。

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平成二十九年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.03.24/25)

2018-03-23 20:02:36 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 春分の日に首都圏では降雪という不思議な気候の最中皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の自衛隊行事紹介です。今週末は特に何もありません。

 今週末の自衛隊行事無し、という週末にははんなりと旅先で買い求めたものの冷凍庫で保存の銘茶を茶器で点てて過ごしたいものですが、全国に保存展示航空機を探しにドライブ、というのはどうでしょうか。浜松の広報館等は有名ですが、この他津波を乗越えた東松島市鹿妻駅前のT-2等有名どころは多いですが、真面目に人に聞いてみると山の中に自衛隊機一機、意外に多いようで驚きます。

 F-35の配備が開始される青森県だけでも、そもそも三沢空港の隣に航空博物館がありますが、八戸公園こどもの国展示のB-65練習機、昔F-104とナイキミサイルが車力村農民研修センターに展示されていたという話題、五所川原市の芦野公園という森に囲まれた公園の一角にT-2練習機の鋭い優美な機体を見た、現地を知る人に聞いてみると話題は尽きません。

 ただ、保存展示航空機の保存予算は無く、自治体には可能であれば格納庫のような施設で屋内展示が望ましいのですが予算は無く、一部の博物館館内に展示されているものを例外として屋外展示、予算次第で再塗装が出来るのですが太陽光による劣化は覆い難く、一定以上腐食が進んだ場合は廃棄されてしまう事もあります、そんな意味でも貴重なのですね。

 さて撮影の話題、寒い日々には暑い日々のことを懐かしく思うのかもしれませんが、自衛隊行事にて注意しなければならないのは五月初旬でかなり厚い日々が始まる、という事です、特に快晴の日に直射日光を浴び続けると、意外なほどに日焼けで消耗するという。伝聞ですが、当方はそんな時には極力撮影位置に木陰でよい撮影環境の場所を探します、何時間でも平気だ。

 木陰の撮影位置、観閲台やスタンド席の周辺にはほぼありませんが、例えば観閲更新を正面から撮影できる立地や、訓練展示の仮設敵陣地や攻撃側陣地を撮影できる立地等から木立がある場所を見つけますと、今日は一風かわる個性的な写真が撮れそうだ、と思ったりするものです。そして涼しい場所から撮影しますと日焼けで判断力を消耗する事も少ない。

 紫外線が厳しくなり始める季節は、同時に桜の青葉が茂る季節でもある。自衛隊駐屯地には桜が植えられている駐屯地が多く、実際に地元では観桜マップに載る駐屯地も多いほどです。そして、青葉の木陰は、新緑ですと適度に陽光を通しますし、なかなか快適です。直射日光下では撮影機材には黒いカメラが多く、その分熱をため込んでしまうのですよね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・今週末の自衛隊行事はありません

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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護衛艦くらま退役一周年,DDHのヘリコプター巡洋艦型から全通飛行甲板型へ世代交代

2018-03-22 20:09:04 | 北大路機関特別企画
■護衛艦くらま退役一周年
 DDH,ヘリコプター搭載護衛艦は海上自衛隊が独力で構想し構築した艦船装備体系です。

 ヘリコプター搭載護衛艦くらま退役から今日で一年となりました。ヘリコプター搭載護衛艦かが就役から一周年である事も意味します。海上自衛隊は1973年から1981年までヘリコプター搭載護衛艦四隻の建造という一大事業を推進し達成しています。これは1973年の第一次石油危機、1979年の第二次石油危機の影響下では非常な困難を乗り越えて、です。

 2009年から2017年にかけ、海上自衛隊は上記第一世代型ヘリコプター搭載護衛艦の第二世代への更新、はるな、ひえい、しらね、くらま、ヘリコプター巡洋艦型護衛艦の全通飛行甲板型護衛艦への世代交代という一大事業を推進し、航空機運用を重視した、ひゅうが、いせ、いずも、かが、四隻を四個護衛隊群へ配備する新たな防衛力整備を完了しました。

 HSS-2対潜ヘリコプターの艦載運用以来、海上自衛隊は限られた予算から洋上航空部隊の錬成を継続的に実施し、HSS-2A対潜ヘリコプター、HSS-2B対潜ヘリコプター、SH-60J哨戒ヘリコプター、SH-60K哨戒ヘリコプター、と継続的な機種更新を実施し、日本独自の洋上航空運用体系を構築、普遍化させてきました。これは特筆すべき防衛力整備といえる。

 はるな、最初のDDH竣工の1973年には、大型ヘリコプターの艦載運用はまだまだ世界各国では模索の時代で、海上自衛隊は陸上用のHSS-1運用評価を経て、その洋上配備へ乗り出した事が、同時にアメリカ海軍の運用体系からの脱却を意味するものでした。独自の運用体系と戦術研究を実運用にあわせ、装備化し、日本に必要な装備体系を独力で模索した上での回答です。

 くらま竣工の1981年は、その運用体系を普遍化させた意味で大きな節目となりました。ヘリコプター巡洋艦を一隻整備する、軽空母を一隻導入する、これは世界各国ではあまり珍しいものではありません。しかし複数を導入し、常時複数を稼働できる体制が構築できなければ、防衛力として内部化したとは言い切れず、四隻目くらま竣工の意味は大きかった。

 HSS-2B対潜ヘリコプターは現在のMCH-101掃海輸送ヘリコプターと同規模の大型機です。言い換えればEH-101としてMCH-101がイギリスイタリアで開発された要求仕様に、イギリス海軍とイタリア海軍が運用したHSS-2、シーキングヘリコプターを運用可能な艦艇にEH-101をそのまま搭載できるという、EH-101をHSS-2機体規模に収めた背景がある。

 MCH-101は非常に大型機である事は一見して分かりますが、HSS-2も当時はアメリカ海軍が航空母艦艦載機として対潜空母に搭載していた高性能機で、駆逐艦規模の艦艇へはSH-2という小型機を想定していました。HSS-2はそれ程大型で、イタリア海軍やイギリス海軍のヘリコプター巡洋艦を除けばカナダ海軍が新技術により駆逐艦へ艦載していた程度です。

 SH-60K哨戒ヘリコプターの対潜水艦任務でn高性能が伝えられる一方、HSS-2は独立してソノブイにより潜水艦兆候を計測します。SH-2であればソノブイを投下できますが分析機材を搭載する余力が無く、計測と分析は母艦へデータを伝送していました。HSS-2はこちらを独立し実施できた他、SH-2にはない吊下ソナーを直接海中に展開可能する事ができる。

 HSS-2Bは母艦へ情報を伝送すると同時に独立した対潜哨戒機として、ソノブイ情報を分析し、兆候のある海域へは直接ソナーによる高精度の索敵を行う。これでも最新鋭の潜水艦を捕捉する事は至難ですが、逆に潜水艦はヘリコプターが展開している海域で身動きが取れません。そして潜水艦にヘリコプターを排除する手段は無く行動を封じられる事を示す。

 くらま除籍は、同時に新しい全通飛行甲板型護衛艦へヘリコプター搭載護衛艦が世代交代したことを意味し、ヘリコプター搭載護衛艦という日本独自の装備体系を全通飛行甲板型として四隻揃えた事に新しい意味があります。全通飛行甲板型護衛艦の新しい意味とは、第一に航空機と航空隊規模で収容できること、第二に多種多様な航空機を搭載できること。

 航空隊規模で収容できること。これはSH-60J/K哨戒ヘリコプターでもMCH-101掃海輸送ヘリコプターでも、この他の機種であっても飛行隊ではなく航空隊規模で、勿論常時搭載する事には限界がありますし、甲板係留併用や航空燃料と整備機材の上限もあるのですが、収容し運用出来る事に直結します。つまり、護衛隊に航空隊、2個の部隊を洋上に出せる。

 航空隊規模で収容できること。即ち航空機は進出能力が高く、護衛艦とは比較にならない巡航速度を以て素早く展開可能です。難点は滞空時間が艦艇の遊弋可能な時間とは比較にならない程短く、航空基地か母艦が必要という点でした。ここで、航空隊を収容できるヘリコプター搭載護衛艦が加わる事で、航空機の能力を最大限発揮できる事へと昇華します。

 多種多様な航空機を搭載できること。全通飛行甲板型護衛艦は、SH-60J/K哨戒ヘリコプターやMCH-101掃海輸送ヘリコプターに加え、AH-64D戦闘ヘリコプターやCH-47J輸送ヘリコプター、新たに導入されるV-22可動翼航空機は勿論、アメリカ海兵隊が岩国航空基地へ前方展開を開始したF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載する事さえ可能だ。

 多種多様な航空機を搭載できること。この意味は大きく、特にF-35Bの艦載能力は護衛艦くらま、ではほぼありませんでした。海上自衛隊には航空自衛隊のエアカバー圏外での行動に際し、イージス艦とターター艦のスタンダードミサイル、護衛艦のESSM/シースパローミサイルにて防空を担っていましたが、当たり前ですがこれらの装備は平時使えません。

 平時という戦わない戦争での勝利、F-35Bが艦上に配備、そこまで行かずとも配備される可能性を残すだけでも、艦隊防空に新しい一歩を示す事が出来ます、即ちF-35Bはスクランブル発進を行える。重要です、航空自衛隊は如何に地対空ミサイルが強化されようとも戦闘機による緊急発進を任務から外さないのは、傍観か撃墜、以外の選択肢を果たすため。

 防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。自民党国分部会が20日に示した防衛計画の大綱改訂への骨子です。これは近年、突如進む中国海軍による航空母艦量産の動き、連動して南西諸島や南シナ海での進出と南シナ海での不法奪取環礁人工島化という流れ、中国ミサイル爆撃機西日本沖への進出、新しい段階の防衛力が必要となったもの。

 防衛型空母や最新鋭戦闘機F35Bの導入を自民が提言へ。この防衛型空母が示すものは新造艦となるのか、ひゅうが、いせ、いずも、かが、を改修するのかは未知数ですが、海上自衛隊は過去にもヘリコプター搭載護衛艦の増勢を検討した事が幾度かあり、護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦を2隻づつ配備していた時代、6隻から8隻体制構想もあった。

 くらま退役から一周年、かが就役から一周年、我が国周辺情勢が緊張度を増して、冷戦時代には考えられなかった西日本沖ミサイル爆撃機の進出、南西諸島着上陸脅威の顕在化、そして1100回を超えた国籍不明機への対領空侵犯措置任務緊急発進、これらは残念な事ではありますが、万一への備え、戦闘を交えない戦いへの勝利の基盤は固まりつつあります。

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